聖戦士ダンバイン(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『聖戦士ダンバイン』は、1983年から富野由悠季が名古屋テレビと日本サンライズで放送・制作したロボットアニメである。
異世界と地上で起こる戦争に巻き込まれた人々がおのれの愛と憎しみ、エゴに翻弄され自滅していくさまを残酷なまで丁寧に描き切っている。 美しいファンタジー風の世界観と救いようのない人の業のコントラストが特色である。
第48話より。
物語の終盤になって、ドレイクとビショットを影で操っていたのはルーザだとドレイクから愚痴られたリムルは、今まで母であるルーザから優しくされたことがなくファザコン気味だったのもあってか、単身ルーザの暗殺を試みた。
ルーザの私室に入って短剣を持ち「女として許せない」とルーザに向かっていくリムルだが、ルーザは化粧台に隠していた拳銃でリムルの眉間を撃ち抜いた。リムルの死にオーラの反応で気づいたニーが、オーラバトラーごとルーザの部屋に突進してリムルの亡骸をみて悲しみ、その悲しみを憎悪に変えてルーザをオーラバトラーの機銃で撃ち殺した。
母が実の娘を殺して何も動じていないというショッキングなシーンだが、物語の中の出来事は全部チャムの受け売りと、話を聞いたアメリカ兵の解釈が混ざっていると思われる(名場面「物語の終わり」参照)ので、ルーザとリムルが実際はどのようなやり取りをしていたかは永遠のなぞである。
「俺は人は殺さない、その怨念を殺す!」
最終回より。
最終決戦で、ショウは黒騎士の仮面を脱いだバーンと生身で戦った。 長い戦乱の間に、ショウへの憎しみに凝り固まったバーンへショウが引導を渡すべく言ったセリフである。
ショウが言いたいのは、怨念を持たない人は殺さないが、怨念しか持ってない人は殺さざるを得ない、ということだろう。
実際ショウに戦いを挑んできたのはバーンだけではなく、トッドやジェリルは功名心ゆえ、ガラリアやミュージィは愛する家族や恋人のために怨念の塊になっていた。聖戦士とは怨念の塊となった救われない魂を戦いによって引き寄せ、浄化する使命を果たす存在であったかもしれないと、この場面から解釈できる。
国の大義や平和の為に戦い続けたショウと、自分の功名心と誇りのために戦い続けたバーン。
ふたりとも優れた戦士であったが人の業に翻弄され戦いに明け暮れ、最後は壮絶な死を遂げていった彼らの人生を考えると、オーラバトラーに乗って活躍しても人として幸せだったかは当人しかわからないだろうし、富野アニメ特有の戦争や憎しみ合いの虚しさしか漂ってこない場面である。
物語の終わり
最終回のラストシーン。
悪意のオーラを拡散し続けてきたドレイク、ルーザ、ショット、バーンの死亡を確認した女王シーラが、かつてフェラリオの長ジャコバがやったように、自らのオーラ力をすべて使ってバイストン・ウェルの住人とオーラマシン、オーラシップを浄化させた。シーラは「バイストン・ウェルへ帰還する」といったので、玉砕ではなく巨大なオーラロードを開いた方が近いと思われる。
この浄化によりバイストン・ウェルの住人は全員地上から消滅したが、別行動をとっていたチャムだけは一人取り残されアメリカ海軍に救助される。チャムは自分の知っているバイストン・ウェルの物語を彼らに語り、とある月の夜に姿を消した。
チャムが去ったあと月夜と海だけが写った中、物語の最後で語られる「それゆえに、ミ・フェラリオの伝えるバイストンウェルの物語を伝えよう」のナレーションによって、今まで本編に入る前のナレーションにあった「語り部のミ・フェラリオ」とはチャムのことであると判明する。
壮大な世界観の物語が浄化という禁じ手によって幕が降ろされるという無常観と、物語のはじめのナレーションから張られた伏線が見事に回収されたカタルシスの両方を味わえる、理想的な最終回と言って過言ではない。
聖戦士ダンバインの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
EDに出てくるフェラリオの正体はエル・フィノ
幻想的なバイストン・ウェルの風景の中、一糸まとわぬ美少女のミ・フェラリオが跳ねる映像に視聴者は虜にされ、この美少女は誰なんだと話題になった。
結論から言えば、彼女は本編に出てくるエル・フィノであると公式発表があった。
しかし本編中の彼女は外見こそ美少女だが、口は悪く相棒のベルを殴るわ蹴るわでEDの幻想的なイメージとは全く別人だった。
実質上のヒロインであるチャム・ファウではなく、物語の中ではコメディリリーフでしかないエルがなぜEDを飾っているのかについての理由は、本来エルはEDだけの存在だったが、後半の重要キャラであるシーラを初期設定である初老の男性から美少女に変更したと同時にエルをシーラのお付として登場させることにしたからである。
英語が分かるショウ
第33話から。
マーベルの地上での親友バルベラの家に立ち寄ったショウが、、英語を学んでもいないのにオーラ力の共鳴によってバルベラの英語が日本語のようにわかることに驚くシーンである。
バイストン・ウェルで地上人がバイストン・ウェルの住人や他国出身の地上人と普通に会話ができた理由は作中で説明されていないが、富野作品の「伝説巨神イデオン」ではイデという絶対的力によって異星人同士が会話できた設定があったので、ダンバインでも同じような設定であろうと思われる。 ちなみにバルベラの声は『聖戦士ダンバイン』の主題歌を歌った歌手MIOで、声優初挑戦ながらプロの声優と比べても引けを取らない演技力であった。
赤い三騎士
第34話より。
ビショットの配下であるガラミティ・マンガン、ダー、ニェットの二つ名である。赤い塗装がされているビアレスが愛機で、三位一体攻撃の「トリプラー」を得意技としている。機動戦士ガンダムに登場する「黒い3連星」のセルフパロディキャラであり、ガラミティはオリジナル同様、ショウの踏み台にされている。
国の名前の由来
ミの国(ピネガン陣営)、ナの国(シーラ陣営)、ラウの国(フォイゾン、エレ陣営)を合わせると「みならう」。
アの国(ドレイク陣営)とクの国(ビショット陣営)は「あく」。
農耕士コンバイン
専門の知識も機材も予算もない大学生が、ダンバインへの愛と情熱だけで作り上げた渾身の一作である。
本来は学園祭の出し物なので知る人ぞ知る伝説のアニメだったのだが、1991年に放送された「平成名物TV・三宅裕司のえびぞり巨匠天国」にて取り上げられたので一躍名を広めた。
OPのパロディが「農耕士コンバイン」、EDのパロディが「そだつだろう ダイコン・ウェル」というタイトルで、OPはオリジナル曲通り3番まで歌詞が存在する。過疎化が進む農家という悲惨なモチーフであるにも関わらず、元歌のエネルギーと替え歌の歌詞のセンスが想定外の化学反応を起こした逸品となってる。
余談だが、このパロディ作品のパロディとして、ボーカロイドを使った全7話にわたるストーリーもののMMDが2009年からニコニコ動画にて公開されている。
『聖戦士ダンバイン』の主題歌・挿入歌
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目次 - Contents
- 『聖戦士ダンバイン』の概要
- 『聖戦士ダンバイン』のあらすじ・ストーリー
- 異世界での戦い
- それぞれの野心
- ショウ、地上へ戻る
- 聖戦士ショウ
- 再び地上へ
- 浄化
- 『聖戦士ダンバイン』の登場人物・キャラクター
- 主要人物紹介
- ショウ・ザマ
- マーベル・フローズン
- ギブン家
- ニー・ギブン
- チャム・ファウ
- キーン・キッス
- ドレイク軍およびルフト家
- ドレイク・ルフト
- ルーザ・ルフト
- リムル・ルフト
- バーン・バニングス
- ガラリア・ニャムヒー
- ショット・ウェポン
- トッド・ギネス
- トカマク・ロブスキー
- ミュージィ・ポー
- ゼット・ライト
- アレン・ブレディ
- ジェリル・クチビ
- アの国
- フラオン・エルフ
- クの国
- ビショット・ハッタ
- ミの国
- ピネガン・ハンム
- パットフット・ハンム
- ナの国
- シーラ・ラパーナ
- エル・フィノ
- ベル・アール
- ラウの国
- フォイゾン・ゴウ
- エレ・ハンム
- フェラリオの国
- シルキー・マウ
- ニクス・ティタン
- ジャコバ・アオン
- 地上に住む人々
- シュンカ・ザマ
- チヨ・ザマ
- ヨーコ・川原
- トルストール・チェシレンコ
- 『聖戦士ダンバイン』の用語
- バイストン・ウェル
- オーラ力(ちから)
- オーラマシン
- 聖戦士(せいせんし)
- フェラリオ
- ガロウ・ラン
- ハイパー化
- 『聖戦士ダンバイン』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 「バイストン・ウェルの物語を覚えているものは幸せである。 心豊かであろうから。 それゆえに、ミ・フェラリオの語る次の物語を伝えよう」
- シルキーの涙
- 「私とゼット殿と同じようによくなじむオーラバトラーだ」
- 「うさぎはなんで目が赤い?」
- 父をかばう息子のオーラ力
- 「わたしは、騎士の出のはずだ!」
- 毛布を掛けられるバーン
- ハイパージェリル
- トッドの死
- ルーザに射殺されるリムル
- 「俺は人は殺さない、その怨念を殺す!」
- 物語の終わり
- 聖戦士ダンバインの裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- EDに出てくるフェラリオの正体はエル・フィノ
- 英語が分かるショウ
- 赤い三騎士
- 国の名前の由来
- 農耕士コンバイン
- 『聖戦士ダンバイン』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング): MIO『ダンバインとぶ』
- ED(エンディング):MIO『みえるだろうバイストン・ウェル』
- 挿入歌 :小出広美『青のスピーチ・バルーン』
- 挿入歌:小出広美『水色の輝き』