
『おろち』とは、楳図かずお原作のホラー漫画。『週刊少年サンデー』誌上にて、1969年から1970年まで連載された。2008年には、実写映画版が公開されている。同作品の特徴は、視覚的な恐怖描写よりも人間の深層心理の不気味さを克明に描いた点にあり、サイコサスペンスものの先駆けとして人気が高い。『おろち』は、謎の美少女おろちを狂言回しにして、数々の人間の暗部がドラマとして紡がれていくオムニバスホラー作品である。
楳図かずおは、1955年に漫画家デビューした。約8年間、貸本漫画界で活躍した彼は、1963年に上京し、以降はメジャー漫画雑誌に活動の場を移していく。当初は、『週刊少年マガジン』や『週刊少女フレンド』など、講談社の漫画雑誌に執筆していたが、1969年に『おろち』を連載した後は、『週刊少年サンデー』や『ビッグコミックスピリッツ』といった小学館の漫画雑誌にて作品を発表するようになった。楳図は、かつてインタビューで「サンデーは僕のホームグラウンド」という趣旨の発言をしており、同誌を気に入っていた様子が窺える。楳図が、『週刊少年サンデー』に描いた主な作品は以下の通り。
『おろち』(1969年~1970年)
『アゲイン』(1970年~1972年)
『怪獣ギョー』(1971年)
『漂流教室』(1972年~1974年)
『まことちゃん』(1976年~1981年、1988年~1989年)
『猫目小僧』(1976年)
2つのエピソードを基にした『おろち』映画版

『おろち』映画版ポスター
『おろち』は、連載終了の38年後である2008年に、実写映画版が公開された。監督を『ほんとにあった怖い話』の鶴田法男、脚本を『女優霊』や『リング2』で知られる高橋洋が手がけ、本格的なホラー映画として知られている。映画版は、『姉妹』と『血』の2エピソードを基に1つのストーリーとして構成された。原作者の楳図かずおは、「自身の作品のちゃんとした初映像化」という趣旨の発言をして映画版を高く評価している。『おろち』映画版は、DVDがリリースされているほか、Amazon Prime VideoやU-NEXTなどの有料動画配信サービスにて視聴可能である。
『おろち』の主題歌・挿入歌
映画版主題歌:柴田淳「愛をする人- Orochi's Theme」
『おろち』映画版の主題歌は、シンガーソングライター柴田淳の歌う「愛をする人-Orochi's Theme」である。作詞・作曲を柴田が手がけ、編曲は羽毛田丈史が担当した。同曲は、柴田の17枚目のシングルとして2008年9月17日にリリースされ、オリコンチャート最高13位を記録している。元は彼女の6thアルバム「親愛なる君へ」に収録されていた同名曲で、映画のために再録音された。ピアノをベースにした荘厳なバラードであり、映画のイメージに合っていると高く評価されている。
映画版挿入歌:木村佳乃、谷村美月、中越典子、山本太郎「またあした」

『おろち』映画版DVDジャケット
「またあした」は、『おろち』映画版の挿入歌。作詞を児島由美、作曲を川井憲次が手がけ、歌唱は出演者である木村佳乃、谷村美月、中越典子、山本太郎が担当した。
イメージソング:楳図かずお「おろち」
漫画家の楳図かずおは、シンガーソングライターの一面も知られている。1975年にリリースされたデビューアルバム『闇のアルバム』には、自作品のタイトルを冠した曲を含む全10曲が収録された。「おろち」はその中の1曲であり、作詞・作曲も楳図自身が手がけた。同曲は、同アルバムの5曲目に収められていて、同名作品をモチーフにしたユニークな歌詞と、楳図の朗々としたボーカルが楽しめる。なお、『闇のアルバム』は、2005年にCD化された。
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目次 - Contents
- 『おろち』の概要
- 『おろち』のあらすじ・ストーリー
- 姉妹
- 骨
- 秀才
- ふるさと
- カギ
- ステージ
- 戦闘
- 眼
- 血
- 『おろち』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- おろち(演:谷村美月)
- 姉妹
- 竜神エミ(りゅうじんエミ)
- 竜神ルミ(りゅうじんルミ)
- 弘(ひろし/演:山本太郎)
- 骨
- 大森千恵(おおもりちえ)
- 三郎(さぶろう)
- 大森(おおもり)
- ジュン
- 秀才
- 立花優(たちばなゆう)
- 優の母親
- 優の父親
- カギ
- 渡辺ひろゆき(わたなべひろゆき)
- ひろゆきの両親
- 恵美(えみ)
- 恵美の両親
- ふるさと
- 杉山正一(すぎやましょういち)
- 良子(りょうこ)
- 新次(しんじ)
- ステージ
- 目黒佑一(めぐろゆういち)
- 田辺新吾(たなべしんご)/花田秀次(はなだひでじ)
- 戦闘
- 岡部正(おかべただし)
- 正の父親
- 佐野(さの)
- 眼
- 田口恵子(たぐちけいこ)
- さとる
- 血
- 門前理沙(もんぜんりさ/演:中越典子、山田夏海(少女時代))
- 門前一草(もんぜんかずさ/演:木村佳乃、佐藤初(少女時代))
- 佳子(よしこ/演:谷村美月)
- 『おろち』映画版オリジナルキャラクター
- 門前葵(もんぜんあおい/演:木村佳乃)
- 西条(さいじょう/演:嶋田久作)
- 昌江(まさえ/演:大島蓉子)
- パパ(演:エド山口)
- 君田(きみだ/演:楠見薫)
- 北村(きたむら/演:鯉沼トキ)
- 片岡(かたおか/演:久世星佳)
- 撮影所長(演:国枝量平)
- 撮影所の重役(演:研丘光男)
- 飲み屋の客(演:諏訪太朗)
- 飲み屋の客(演:齋藤康弘)
- 飲み屋のママ(演:みやなおこ)
- トーク番組・司会者(演:久保田麻三留)
- 歌謡ショー・司会者(演:島田弘久)
- 歌謡ショー・ピアニスト(演:佐孝康夫)
- 撮影所の運転手(演:徳健人)
- 映画監督(演:平田忠継)
- 号外を配る男(演:小野義行)
- 得体の知れない女(演:大口与枝)
- 劇中劇の男優(演:眞島秀和)
- 『おろち』の用語
- 精神感応(せいしんかんのう)
- 呪術(じゅじゅつ)
- 念動力(ねんどうりょく)
- ねむり
- 『おろち』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ナレーション「これははき気をもよおすほどいやらしい女心の恐ろしさと執念をえがいたものである」
- 三郎「舌が……!!くさっているのだ!!」
- 一生を懸けた目黒佑一の復讐
- 戦争という極限状態の中で生き延びる岡部正の父親
- 『おろち』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- サイコホラー作品の先駆けとなった『おろち』
- 楳図かずお作品の中でも人気の高い美少女キャラクターおろち
- 楳図かずお作品が多数連載された『週刊少年サンデー』
- 2つのエピソードを基にした『おろち』映画版
- 『おろち』の主題歌・挿入歌
- 映画版主題歌:柴田淳「愛をする人- Orochi's Theme」
- 映画版挿入歌:木村佳乃、谷村美月、中越典子、山本太郎「またあした」
- イメージソング:楳図かずお「おろち」