紅グモ(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ

『紅グモ』とは、楳図かずおによる恐怖漫画。1965年から1966年にかけて『週刊少女フレンド』にて連載された。楳図の少女向け作品初期の傑作として知られている。クモを題材にして人間が異形の者に変貌する怖さと、少女姉妹の明暗を分けた不条理ドラマが見どころである。同漫画は、可愛らしい姉妹が継母の策略に嵌り、紅グモという恐ろしい虫に翻弄されていく様子が描かれたホラー作品である。

『紅グモ』の概要

『紅グモ』(べにグモ)とは、楳図かずおによる恐怖漫画。『週刊少女フレンド』1965年47号から1966年10号まで、全16回連載された。同作品のコミックスは、佐藤プロ花文庫版全2巻、朝日ソノラマサンコミックス版全1巻、朝日ソノラマソノラマ文庫版全1巻、朝日ソノラマサンワイドコミックス版全1巻、小学館クリエイティブ版全2巻(花文庫版の復刻)など多くのバリエーションが刊行されている。小学館クリエイティブ版が電子書籍化されており、最も手軽に読めるバージョンである。

楳図かずおは、恐怖漫画というジャンルを確立したパイオニアとして知られるが、彼をメジャーな存在にした作品群の一つに『紅グモ』がある。同作品は、クモという万人から嫌われる毒虫をストーリーの核に置き、クモの恐怖に苛まれる主人公姉妹が描かれた。継母が義理の娘の口にクモを入れるシーンや、おびただしい数のクモが人体から出てくるシーンなどが多くの読者に強烈なインパクトを与えた。また、可愛らしい主人公姉妹とホラーシーンとの対比が見事で、絵で読む者を怖がらせることに成功している。『へび少女』や『赤んぼ少女』とともに、楳図初期の傑作として名高い。

『紅グモ』は、クモを研究している父親を持つ北村たか子(きたむらたかこ)・美也子(みやこ)姉妹が、継母の企みによって紅グモという毒虫の影響に巻き込まれていく恐怖と不条理ストーリーが展開されるホラー作品である。

『紅グモ』のあらすじ・ストーリー

恐ろしい毒虫

北村たか子(きたむらたかこ)と美也子(みやこ)は、クモ研究者を父に持つ姉妹である。姉妹に生みの母親はおらず、父親が再婚したことで、その女性が継母となった。継母は美しい容姿をしていて、当初は姉妹に優しく接していた。ところが、彼女には恐ろしい企みがあった。継母は姉妹を亡き者にして、自分とこれから生まれるであろう実子に北村家の財産を継がせようとしているのだ。継母は、夫が研究している紅グモを手に入れた。紅グモは、動物の口や目から体内に入って寄生するという恐ろしい習性を持っている。継母は、寝ているたか子の口に強引に紅グモを入れた。すると、たか子はあっという間にやせ衰えて亡くなってしまう。たか子は土葬されたが、実はまだ生きていた。何とか力を振り絞って脱出に成功したものの、彼女の髪は全て真っ白になっていた。そして、たか子の体内で、恐ろしい紅グモが育っていたのだった。

北村美也子の危難

美也子は、優しい姉だったたか子を失って悲しみのどん底にいた。継母の次の狙いは当然美也子なのだが、彼女は美也子には紅グモを寄生させずに、心理的に彼女をいたぶることで廃人にさせようと企てた。蘇生したたか子は、継母がとんでもない悪人であることを妹に伝えようとする。しかし、美也子は、変わり果てた姿のたか子を姉だと認識することができなかった。たか子は、自らを老婆と位置付けて、北村家にお手伝いのばあやとして入った。継母は、ばあやの正体がたか子だと知らない。美也子は、継母から紅グモになってしまうという暗示をかけられ、メンタルが弱ってきた。ところが、美也子は継母ではなく、ばあやが自分を追い詰めていると誤解してしまう。なぜなら、ばあやの口からクモが出てきたことで、ばあやこそが紅グモの本体だと思ったのだ。継母の美也子いじめが佳境に差し掛かった時、ばあやはたか子としての正体を明かした。そして、継母のせいで自分が紅グモに寄生されたことを美也子に告げ、継母に紅グモを飛ばして彼女を殺害する。こうして継母がいなくなった北村家に、束の間の平和が訪れたのだった。

紅グモの暗躍

継母への復讐を果たしたたか子だったが、そのまま北村家に残ることは叶わなかった。彼女の身体は完全に紅グモに乗っ取られており、無数の紅グモが体内から出現したからである。そのため、たか子の肉体は既に元に戻ることができず、そのまま死亡してしまった。残った紅グモたちは、次の寄生先を探して、美也子の友人であるれい子(れいこ)の体内に入ることに成功した。紅グモが入ったれい子は、美也子を襲う。窮地に立たされた美也子だったが、れい子を学校のプールに突き落とすと、彼女の体内から紅グモが続々と離れていった。れい子も無事だった。美也子の父親は、たか子の事件もあってクモの研究を止め、紅グモを退治する薬を完成させていた。薬がプールに撒かれたことで、紅グモが1匹残らず退治されたのだ。こうして、真の平和が訪れた。美也子と父親が、たか子のお墓参りをしたシーンで、『紅グモ』の物語は完結したのだった。

『紅グモ』の登場人物・キャラクター

メインキャラクター

北村美也子(きたむらみやこ)

北村美也子(きたむらみやこ)は、『紅グモ』の主人公。ロングヘアを三つ編みにしてリボンを着けている可愛らしい容姿の少女である。年齢は不明だが、セーラー服を着ているシーンがあるので中学生以上と思われる。姉のたか子(たかこ)と非常に仲が良かったが、継母の策略で引き離されてしまう。姉を失った後はメンタルが弱っており、継母に紅グモをけしかけられたことで、自分がクモになってしまうという暗示にかけられた。廃人寸前の状態にまでなったが、生きていたたか子から全ての真相を聞かされて回復した。たか子と継母の死後も紅グモに寄生されたクラスメイトのれい子(れいこ)に襲われたが、父親の作った薬で紅グモ殲滅に成功する。その後は、父親とともにたか子を弔いながら幸せに暮らしたもよう。

北村たか子(きたむらたかこ)

北村たか子は、美也子の実姉。ロングヘアが特徴の美少女で、年齢は不明である。継母の企みで、紅グモを口から飲まされて寄生される。死亡したと間違えられてしまい一度土葬されたが、蘇生して北村家に戻ってきた。しかしながら、髪が全て白くなったことで、かつての面影は全くなかった。美也子に気味悪がられてしまったことで、ばあやとして北村家に入った。美也子に真相を伝えることと、継母に復讐するために虎視眈々と機会を窺っていたが、次第に肉体と意識を紅グモに乗っ取られて粗暴な一面も出てきた。たか子としての意識が勝ったことで本懐を遂げたが、肉体はボロボロになってしまい、全ての紅グモが体内から脱出すると抜け殻となって息絶えた。

その他

北村(きたむら)

北村は、たか子・美也子姉妹の実父で、下の名前や年齢は不明である。クモの研究をしていて、多くの種類のクモを飼っていた。性格は穏やかで優しく、紅グモのせいでたか子が亡くなったことを大変後悔していた。その後はクモを飼うのを止め、紅グモを殺す薬を開発・成功して美也子を救った。

北村姉妹の継母

北村の再婚相手で、たか子・美也子姉妹の継母となった。美しい容姿をしており、表向きは優しい態度で姉妹に接していた。ところが、北村家財産乗っ取り計画を企てており、手始めにたか子に紅グモを寄生させて家から追い払う。その後は、美也子に紅グモをけしかけて、クモになってしまうという暗示をかけることで彼女を廃人にしようとした。計画成就の直前に正体を現したたか子が放った紅グモに襲われて死亡する。

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