『黒いねこ面』とは、楳図かずおによるホラー漫画。1966年に『週刊少女フレンド』誌上にて連載された。ホラー漫画の第一人者である楳図の出世作の1つとして知られており、同時期に描かれた『へび少女』や『紅グモ』と共にファンの間で人気が高い。また、化け猫をモチーフにした物語と視覚的な恐怖描写で、多くの読者に衝撃を与えた。『黒いねこ面』は、江戸時代に起きた飼い主一家惨殺事件の復讐劇であり、化け猫が転生した少女に襲われる主人公の少女の恐怖と不条理が描かれている。
『黒いねこ面』の概要
『黒いねこ面』(くろいねこめん)とは、楳図かずおによるホラー漫画。『週刊少女フレンド』誌上にて1966年30号から同年45号まで、全16話連載された。コミックスは、秋田書店サンデーコミックス版全1巻、秋田漫画文庫版全1巻、秋田コミックスセレクト版全1巻、角川ホラー文庫版『こわい本11 猫』、講談社漫画文庫版『楳図かずお画業55th記念 少女フレンド/少年マガジン オリジナル版作品集4 黒いねこ面』など、多くのバージョンが存在する。この中では『こわい本11 猫』が電子書籍化された。また、講談社漫画文庫版は、雑誌掲載時のオリジナルを読むことができる。
『黒いねこ面』はメディアミックスされていないものの、楳図の初期の代表作の1つに数えられている。楳図は1955年に漫画家デビューして以降、約10年間貸本漫画の分野で活躍した。1963年に上京すると、所謂大手出版社に作品を連載するようになり、ホラー漫画の第一人者としての地位を確立した。そうした時期に発表されたのが同作品である。『黒いねこ面』の大きな特徴は、猫を題材にして異形の者が描かれた点だ。楳図の独特の描線で紡がれたホラー描写は圧倒的な恐怖感に満ちており、読む者に衝撃を与えた。また、江戸時代に起きた惨劇を軸にして、現代で化け猫の復讐譚が展開された点も、1960年代の漫画としては新機軸だと高く評価されている。
同作品は、安政の時代と現代の2つの時代が舞台となっている。安政時代では、飼い主を城主に殺された黒猫が、復讐のために化け猫となる物語が描かれた。その後の現代では、城主の子孫の医者が、化け猫が転生した自分の娘を他の赤ん坊と入れ替えたことで巻き起こる惨劇が展開された。
『黒いねこ面』のあらすじ・ストーリー
江戸時代に起きた惨劇
『黒いねこ面』の序盤の舞台は江戸時代、時は安政の世である。とある領地を治めている城主の柴田兵庫(しばたひょうご)は、竹庵(ちくあん)というお抱え医師を斬殺した。理由は、薬の調合を間違えたからである。さらに、竹庵の妻と娘お美代(おみよ)も投獄されてしまい、妻は獄中で亡くなってしまう。ただ1匹残された竹庵の飼い猫のクロは、復讐のために兵庫の母親大奥さまを殺害し、彼女に化けてその機会を窺っていた。しかしながら、兵庫に見破られてしまい、クロも無残に殺される。そして、獄中のお美代は大奥さま殺害犯の濡れ衣を着せられて、生きたまま城壁に塗り込まれて死亡した。これで竹庵にまつわる悲劇は終わったかに見えたが、クロの怨念は時代を超えることになるのだった。
取り替えられた赤ん坊
『黒いねこ面』の舞台は、現代へと移る。とある街で医院を営む柴田正雄(しばたまさお)は、兵庫の子孫である。彼にはさえ子(さえこ)という妻がおり、彼女は今出産の時を迎えていた。さえ子が産んだ女の赤ん坊は、猫そっくりの風貌をしていた。正雄は妻に真実を話すことができず、思い余って同じ時に生まれた赤ん坊の大森たまみ(おおもりたまみ)と自分の子供を入れ替えたのだった。こうして、赤ん坊はえみ子(えみこ)と名付けられ、事情を知らないさえ子と入れ替えの罪を忘れようとする正雄との間で、健やかに育った。正雄は美少女に成長した娘を愛しく思いながらも、自分の本当の娘がどうなったのか気が気でない様子である。
ある日、柴田医院に3人の親子がやって来た。それは大森家だった。たまみは、まるで猫が擬人化したかのような少女に成長しており、そのことを不憫に思った両親が娘を美少女に整形手術するように正雄に依頼したのだ。たまみの両親は、娘を正雄に託すと何処かへ行ってしまった。たまみは、えみ子と同じ顔に整形するよう正雄に頼んだ。ところが、正雄はこの機会を利用して、たまみ殺害を決心する。たまみは、手術の際に麻酔を使わないように頼み込み、正雄のメスが彼女の顔に刺さると、どういうわけかえみ子が痛みで苦しみ悶えた。たまみ殺害に失敗し、さらにたまみが自分の先祖が殺した猫のクロだと知った正雄はメンタルに異常をきたしてしまい、彼女をえみ子と瓜二つの顔に整形手術した。たまみが美少女に生まれ変わった姿を見た大森夫妻は、喜びの表情を浮かべて娘を連れて柴田医院を出たのだった。
化け猫の復讐
体調が回復したえみ子が、通っている藤波学園(ふじなみがくえん)に登校すると、自分にそっくりな転校生の少女がいた。少女はたまみだった。えみ子とたまみは仲良しになり、ある日えみ子がたまみの家へと遊びに行った。恐ろしいことに、たまみの部屋には、手術の際に剥がされた猫の顔と両手の皮が飾られていた。すると、猫面と手の皮がえみ子を襲い、さらにたまみが彼女を屋敷の地下室へと監禁する。ここでえみ子はたまみの真の正体が竹庵の飼い猫だったクロだと知ることとなる。クロは柴田家に復讐するためにえみ子になりすまして、柴田医院へと向かうのだった。さらにえみ子は、正雄の先祖が惨たらしい方法で竹庵一家を殺したことを知る。何とかたまみの家を脱出したえみ子は、柴田医院へ戻った。ところが、柴田家ではたまみが完璧に娘のふりをしており、正雄は後から来たえみ子をたまみだと思い込んで追い回すのだった。やがて、柴田家の面々が揃ったところで、クロの能力によって壁に埋め込まれた多くの死体が蘇り、正雄たちを襲った。正雄は、えみ子が実は大森家の娘であることを告白して彼女を逃がし、自分のみがクロの復讐の標的となって死亡する。本懐を遂げたクロは、何処へと消えた。全てが終わった後、えみ子は、たまみとして実の両親である大森家に引き取られたが、柴田の両親のことを思い出して寂しい表情を浮かべるのだった。大森夫婦が、やがてたまみ(えみ子)の心の傷が癒えて、自分たちに心を開くだろうと確信したところで『黒いねこ面』の物語は完結したのだった。
『黒いねこ面』の登場人物・キャラクター
柴田家
柴田えみ子(しばたえみこ)
柴田えみ子(しばたえみこ)は、『黒いねこ面』の主人公。医者である柴田正雄(しばたまさお)とさえ子(さえこ)夫妻の娘として何不自由なく育てられたが、実は赤ん坊の時に正雄によって入れ替えられており、本当は大森家(おおもりけ)の一人娘たまみである。可愛らしい顔立ちをした美少女で、性格も穏やかで優しい。藤波学園(ふじなみがくえん)に通っているが、年齢と学年は明かされていない。先述の事情のため柴田家の血を引いていないにも拘わらず、化け猫クロの復讐の対象となり、安政の時代の竹庵(ちくあん)家の悲劇を見せられてしまう。クロの復讐が遂げられると、本来の家族である大森家に引き取られてたまみとして暮らすが、育ての両親を失った心の傷は癒えていないもよう。
柴田正雄(しばたまさお)
柴田医院を経営する医師。医者としての専門分野や年齢などは不明である。安政の時代の城主柴田兵庫(しばたひょうご)の子孫であり、クロの復讐対象となった。実の娘がクロによって猫そっくりの容姿に生まれたことで、秘密裏に大森家の赤ん坊と入れ替えた。10数年後に大森たまみをえみ子そっくりの顔に整形手術するよう強要され、一時的にメンタルを壊してしまう。クロの復讐が本格化すると、柴田家の血を引いていないえみ子を逃がして死亡した。
柴田さえ子(しばたさえこ)
正雄の妻でえみ子の母親。夫が実の娘の入れ替えを行ったことは知らない。優しい性格をしており、えみ子に愛情を注いで育てていた。クロの復讐の対象となるも、柴田家の血を引いていないので正雄の尽力で生存した。しかし、えみ子との別れを余儀なくされてしまう。
ばあや
顔を痛がる柴田えみ子を心配する柴田さえ子(右)とばあや(左)
元々柴田医院の看護師長だったが、引退後にばあやとして柴田家に入った老女。正雄の赤ん坊入れ替えを知っている数少ない人物だが、そのことで彼を脅したりはせずに、懸命に柴田家に尽くしていた。
大森家
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目次 - Contents
- 『黒いねこ面』の概要
- 『黒いねこ面』のあらすじ・ストーリー
- 江戸時代に起きた惨劇
- 取り替えられた赤ん坊
- 化け猫の復讐
- 『黒いねこ面』の登場人物・キャラクター
- 柴田家
- 柴田えみ子(しばたえみこ)
- 柴田正雄(しばたまさお)
- 柴田さえ子(しばたさえこ)
- ばあや
- 大森家
- 大森たまみ(おおもりたまみ)
- たまみの母親
- たまみの父親
- 安政時代
- 柴田兵庫(しばたひょうご)
- 大奥さま
- 竹庵(ちくあん)
- 竹庵の妻
- お美代(おみよ)
- クロ
- 『黒いねこ面』の用語
- 安政(あんせい)
- 柴田医院(しばたいいん)
- 藤波学園(ふじなみがくえん)
- 『黒いねこ面』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 残虐な手段で殺害される竹庵一家
- 柴田家への復讐を誓うクロ
- 柴田正雄の娘「ニャ~ゴ」
- 大森たまみ「わたしの顔の手術をつづけるのです」
- 『黒いねこ面』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 楳図かずおの出世作の1つである『黒いねこ面』
- 上京直後の楳図かずお作品の主要発表媒体は『週刊少女フレンド』
- 痛みが伝わる視覚的ホラー描写が衝撃的な『黒いねこ面』
- 『黒いねこ面』以外の猫を題材にした楳図かずお作品
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