恐怖(高校生記者シリーズ)のネタバレ解説・考察まとめ

『恐怖』とは、楳図かずおによるホラー漫画。『月刊平凡』にて1966年から1970年まで連載された『高校生記者シリーズ』をコミックスにまとめたものである。全21エピソードから成り、視覚的な怖さやサイコサスペンス的な恐ろしさなど、あらゆる形の恐怖ストーリーが描かれている。同作品はみやこ高校新聞部に所属する高校生男女が、様々な恐怖体験や事件に巻き込まれていくホラー作品である。

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『恐怖』の概要

『恐怖』(きょうふ)とは、楳図かずおによるホラー漫画。『月刊平凡』誌上にて、1966年7月号から1970年3月号まで全21エピソードが連載された。連載当時は『高校生記者シリーズ』のタイトルが冠されており、1971年に単行本化された際タイトルが『恐怖』に改められた。コミックスは、秋田書店サンデーコミックス版全3巻をはじめ多くのバージョンが刊行されたが、電子書籍化されたのは小学館ビッグコミックスペシャル版全2巻である。同作品のメディアミックスには、1エピソードを1985年に実写ビデオ化した『うばわれた心臓』が存在する。

『恐怖』の大きな特徴に、あらゆるホラー要素が詰め込まれている点がある。同作品は短編オムニバス形式であることから、視覚的な怖さが追及されたエピソードもあれば、サイコホラーエピソードもある。また、雪女など昔ながらの怪談をベースにした話もあり、バラエティーに富んでいる。さらに、掲載誌が芸能雑誌だったこともあり、男女の恋愛や女性の美醜にまつわる話が多いのも特徴である。連載期間が約4年間に及んだことで、楳図の絵柄の変化を楽しむことができ、ファン人気の高い作品集だと言われている。

『恐怖』は、みやこ高校新聞部員の荒井エミ子(あらいえみこ)と彼女のボーイフレンド青木夏彦(あおきなつひこ)を狂言回しとして、2人が様々な怪事件や恐怖体験に巻き込まれていく様子が描かれたオムニバスホラー作品である。

『恐怖』のあらすじ・ストーリー

800年目のミイラ

みやこ高校新聞部員の荒井エミ子(あらいえみこ)は、サークル「神秘会」が降霊術を行うという情報を掴み、同じく新聞部員の青木夏彦(あおきなつひこ)と共に取材へ向かう。そこで、2人は神無月京子(かなづききょうこ)に何者かの霊が降りたことを確信した。京子に取り憑いたのは、静御前(しずかごぜん)の霊で、静は夏彦を恋仲だった源義経(みなもとのよしつね)だと思い込む。静に操られた京子は、博物館に保管されていた静のミイラを目覚めさせてしまう。ミイラは、謎を解こうとして吉野へ向かった夏彦を我がものにしようとして、人気のない洞穴へと誘い込んだ。しかし、後を追っていたエミ子の活躍で夏彦は助け出され、ミイラのみが洞穴の中に残り、岩が崩れて閉じ込められたのだった。

悪魔の24時間

みやこ高校を退職した元化学教師の仁木(にき)は、自宅にて実験に没頭していた。エミ子は、仁木を取材しようとした際に彼の双子の弟と知り合って、それ以降頻繁に会うようになる。仁木の弟の正体は悪魔で、兄が開発した薬によって24時間良い人間でいられた。しかしながら、そのことを良く思わない悪魔は、仁木を腕力で押さえつけて拘束する。そして、悪魔の本性を露わにしてエミ子に近づこうとした。悪魔はエミ子を攫ったが、拘束から逃れた仁木によって彼女は難を逃れた。翌日、エミ子は夏彦を伴って仁木宅を訪れたが、そこでは再び悪魔が仁木を拘束していた。仁木になりすました悪魔は、彼に心を悪にする注射をする。悪魔の能力を得た仁木だったが、善の心を失っておらず、悪魔と対峙した。その最中仁木宅は火事になり、エミ子と夏彦は何とか避難できたものの、仁木兄弟は焼死したのだった。

雪女

夏彦は、友人の水島(みずしま)と加藤(かとう)と共に蔵王へスキーに来ていた。水島と加藤は、夏彦の制止を聞かずに山奥へ入っていき遭難してしまう。そこで、2人は雪女と遭遇した。加藤は雪女に殺害されたが、容姿の良い水島は雪女に助けられる。雪女は、水島を助ける条件として、他の女性を愛してはいけないと告げた。水島たちが戻ると、みやこ高校に小夜雪子(さよゆきこ)という美人女子が転校してきた。雪子は水原につきまとうものの、雪女との約束を恐れる彼は雪子を避け続ける。しかし、水島が入院した時、尽くしてくれる雪子に対して、彼は想いを伝えた。雪子の正体は、雪女だった。雪女は約束を破った水島を殺害しようとしたが、エミ子と夏彦の尽力で一命を取り留めたのだった。

吸血面

節分の日、みやこ高校演劇部は豆まきを行った。男子部員たちは、神社から鬼の面を勝手に持ち出し、美人部員の美原レイ子(みはられいこ)に鬼の役をやらせた。すると、鬼の面が外れなくなってしまい、面はレイ子を操って夜な夜な女性生徒たちの生き血を吸い出した。事態を重く見たエミ子と夏彦は、レイ子を伴い鬼の面が祀ってあった神社を訪れた。そこでは、神主が護摩を焚いており、レイ子は気分が悪くなりその場を離れようとする。神主が護摩木が燃えた灰を面に撒くと、面が割れて血が流れてきた。面は改めて封印され、レイ子は救われたのだった。

コンドラの童話

エミ子のクラスメイトさち子(さちこ)の弟正(ただし)は、小児麻痺を患っていた。怪獣好きな正は、特にコンドラという怪獣がお気に入りでその人形を大切にしていた。ある日、正は轢き逃げ事故に遭い亡くなった。さち子が正の遺影の横に、コンドラの人形を備えたある晩、コンドラは意志を持って動き出す。巨大化したコンドラは、正を轢いた犯人を追って大暴れした。正を轢いた犯人は、エンゼルタクシーの運転手だった。コンドラは復讐を果たすと、元の人形に戻ったのだった。

孤独なヨット

みやこ高校ヨット部の女子部員宮下久美(みやしたくみ)と聖子(せいこ)は、同じ部の先輩男子剛三(ごうぞう)のことが好きだった。どちらが剛三と付き合うか決着をつけるべく、2人の女子部員はヨットに乗って海の沖へ出る。2人は言い争いになるが、荒天となりヨットが転覆した。泳ぎの得意な久美は助かったが、彼女は聖子を見捨ててしまった。久美は、聖子の死に責任を感じてヨット部を辞めた。彼女は剛三のことも諦めようとしたが、想いは断ち切りがたい。すると、聖子の幽霊が現れ、剛三と会わないように久美を脅した。剛三は久美のことを想っており、彼女の異変を敏感に察知して、久美を救った。この一連の不思議な話を、エミ子は久美から聞かされたのだった。

恐怖の館

エミ子と夏彦は、山でハイキング中に遭難し、偶然見つけた洋館に助けを求めた。しかし、そこには老人を縛り付けて、巨大な振り子の刃を使った恐ろしい実験をしている男がいた。老人は男の父親だったが、かつては父が息子を実験材料にしていたことが判明する。拘束され続けた男は、唯一自由だった舌を変形させることができ、そこから脱出して逆転したのだった。狂気の現場を目の当たりにしたエミ子と夏彦は、洋館を脱出しようとするものの、男が追ってくる。すると、男が振り子の刃で頭部を割られて死亡し、辛くも2人は洋館を抜け出すことができた。

イヌ神

ある日、エミ子と夏彦は、犬部(いぬべ)という青年と知り合った。不気味な雰囲気を漂わせる犬部は、城壁の石垣に隠されていた棺に安置されていた犬部典膳(いぬべてんぜん)という男の子孫だった。典膳は、許嫁のいた阿矢(あや)という姫と無理矢理結婚しようとしたが、恐ろしいイヌ神憑きの持ち主で獣のような姿に変貌する。実は犬部もイヌ神憑きで、エミ子を阿矢姫の代わりにして棺に閉じ込めようとした。しかし、夏彦の尽力もあって、エミ子は無事に救出されたのだった。

白い右手

みやこ高校に通う女子高生の五十嵐文子(いがらしふみこ)は、大のピアノ好きだが、演奏は下手だった。ある日の下校途中、文子は車に右手を轢かれて意識を失ってしまう。目が覚めると、彼女は病院にいて、そこには名ピアニストの野木カオル(のぎカオル)がいた。カオルは病で余命幾許もなく、右手を誰かに移植したいと考えており、文子を選んだのだ。カオルの右手を移植された文子は、ピアニストとして注目を集めたが、次第に右手に支配されるようになる。思い余った彼女は、自分の右手をベッドに縛り付けた。しかし、右手の暴走は止まらず、遂には右手のみで動こうとして床を這いずり回った。エミ子と夏彦の協力もあり、右手の暴走は収まった。文子は元の下手なピアニストに戻ったのだった。

魔性の目

みやこ高校に通う女生徒の直美(なおみ)は、期末テストに向けた勉強のし過ぎで高熱を出し両目を失明した。失意の直美だったが、大晦日の夜に彼女は枕元に座る奇妙な老人から両目をもらう。なおみの視力が回復した上に、彼女は人の本当の姿が見えるようになった。多くの人の姿が醜く見えてしまい、特にみやこ高校屈指の美人えり子(えりこ)も直美には恐ろしく見えた。そのため、直美は周囲から気味悪がられるようになってしまう。実はえり子の正体は直美が見た通りの醜女で、彼女は直美のボーイフレンドを拉致監禁して手術しようとする。そこへエミ子と夏彦が駆けつけたことで、ボーイフレンドは助かったが、えり子が逃げた際にガラスの破片が直美の両目に入った。目は無事だったものの、真実の姿が見える特殊能力は失われたのだった。

枯れ木

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