
『おろち』とは、楳図かずお原作のホラー漫画。『週刊少年サンデー』誌上にて、1969年から1970年まで連載された。2008年には、実写映画版が公開されている。同作品の特徴は、視覚的な恐怖描写よりも人間の深層心理の不気味さを克明に描いた点にあり、サイコサスペンスものの先駆けとして人気が高い。『おろち』は、謎の美少女おろちを狂言回しにして、数々の人間の暗部がドラマとして紡がれていくオムニバスホラー作品である。
杉山正一(すぎやましょういち)は、『ふるさと』のメインキャラクター。中瀬村(なかせむら)出身の純朴な青年だったが、上京後に友人に裏切られて借金を抱えたことがきっかけでチンピラになってしまう。チンピラ同士の喧嘩で頭部に重傷を負い、おろちに助けられた。脳に鉄片が入ったことで外科手術を受け、生死の境を彷徨う。中瀬村に帰りたいと強く願う正一の思いが通じたのか、村へ向かう電車内でおろちと出会った。しかし、村の荒廃ぶりに驚き、おろちに原因があると彼女を邪険に扱う。手術中に突然鉄片が消失し、その後は回復したもよう。村での一連の出来事は、正一が手術中に見た夢である可能性が高いが、真相は不明である。
良子(りょうこ)

良子(りょうこ)は、『ふるさと』に登場する正一の幼馴染の女性。既に結婚しており、新次(しんじ)という息子がいる。子供時代、正一に光る石を祀る中瀬神社のお堂に閉じ込められたことがあった。新次のことをひどく恐れており、何でも言いなりになっている。やがて、新次に殺害され、舌を切り取られてしまう。しかし、この出来事は正一の脳内で起きた可能性が高く、実際には台風で中瀬村が全滅した際に亡くなったことが示唆されている。
新次(しんじ)

良子の息子で小学生。光る眼を有しており、超能力で中瀬村の子供たちを支配している。性格は残忍・非道で、大人たちについても容赦なく牙を剝く。子供たちを操って大人たちをも皆殺しにしようとした。その過程で、両親を斬殺した。おろちとの超能力勝負では、全く引けを取らずに応戦し、彼女の額を傷つけた。中瀬村を全滅に追い込もうとした際、おろちに全ての元凶である光る石を破壊されたことで消滅した。本当に新次が存在したのかについては不明であり、実際に村を全滅させた台風のメタファーではないかと考察されている。
ステージ
目黒佑一(めぐろゆういち)
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『ステージ』のメインキャラクター。幼い頃に父親を轢き逃げで亡くしたが、その相手の田辺新吾(たなべしんご)が無罪となってしまったことでグレてしまう。その後、歌手の花田秀次(はなだひでじ)に弟子入りすべく、独学で歌をマスターして上京した。花田の弟子になって以降、献身的なサポートぶりで頭角を現す。しかし、彼の本当の目的は、花田を追い落とすことだった。花田の正体は、整形した田辺であることを突きとめ、最終的に自白することに成功した。復讐を果たした後は故郷へ戻り、ラーメン屋に勤めている。
田辺新吾(たなべしんご)/花田秀次(はなだひでじ)

花田秀次のレコードジャケット
『ステージ』に登場する朝の子供番組に出演していた芸能人の青年。運転中に目黒佑一(めぐろゆういち)の父親を轢いて死なせたが、唯一の目撃者である佑一が幼過ぎて正確な証言ができなかったことで無罪となった。その後、芸能界から姿を消したが、整形して歌手の花田秀次として大スターになった。佑一を弟子に取り、彼を信頼するようになる。しかし、祐一の策略で喉を潰してしまい、彼が替え玉として歌うようになって以降は、荒んだ生活を送った。全てが佑一の復讐だと判明した後、彼にお詫びの手紙を渡した。
戦闘
岡部正(おかべただし)

岡部正(おかべただし)は、『戦闘』に登場するメインキャラクターの少年。中学生で、父親が同校の教諭である。真面目で成績優秀な少年であり、どんな時でも親切な父親のことを尊敬していた。ある日、佐野(さの)という片手片足の松葉杖をついた男と出会ったことで、人生が狂い始める。佐野から父親が戦争時に何をしたのかを聞かされて以降、父親に対して不信感を抱くようになった。学校での評判も落としていく中、父親と2人だけで登山に出かける。遭難しそうになった時に、ザイルを切って自死しようとしたが、父親から必死の説得を受けて考え直す。そして、過去に父親が人肉を食べたという事実も、生きるためには仕方のないことだったと受けとめた。
正の父親

正の父親は、ガダルカナル島における激しい戦争を生き抜いてきた。その際、部隊にて飢えの極限状態を経験する。一切の道徳や倫理が通じない状況下で、最後まで人肉を喰らうことを躊躇う。しかし、佐野に促されて人肉を喰い、命を取り留めた。その後、撤退命令が出て帰れることとなり、爆撃で重傷を負った佐野の右手を捥いで彼を見捨てる。この時の経験が元で、誰にでも親切にしようと心に近い、戦後の人生を送ってきた。
佐野(さの)

ガダルカナル戦線における正の父親の同僚。畜生道に堕ちずに飢えで衰弱する岡部のことを気遣っており、彼にトカゲの肉と偽って人肉を喰わせた。しかし、佐野は爆撃で左足を失い、右腕も使い物にならなくなった。岡部は、佐野が自分を最後の食料にしていたのではないかと推察していた。撤退の際に岡部から見捨てられるも、別ルートで帰国していて、数十年後に正の前に姿を見せ、父親のことを語った。その後間もなく死亡している。
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目次 - Contents
- 『おろち』の概要
- 『おろち』のあらすじ・ストーリー
- 姉妹
- 骨
- 秀才
- ふるさと
- カギ
- ステージ
- 戦闘
- 眼
- 血
- 『おろち』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- おろち(演:谷村美月)
- 姉妹
- 竜神エミ(りゅうじんエミ)
- 竜神ルミ(りゅうじんルミ)
- 弘(ひろし/演:山本太郎)
- 骨
- 大森千恵(おおもりちえ)
- 三郎(さぶろう)
- 大森(おおもり)
- ジュン
- 秀才
- 立花優(たちばなゆう)
- 優の母親
- 優の父親
- カギ
- 渡辺ひろゆき(わたなべひろゆき)
- ひろゆきの両親
- 恵美(えみ)
- 恵美の両親
- ふるさと
- 杉山正一(すぎやましょういち)
- 良子(りょうこ)
- 新次(しんじ)
- ステージ
- 目黒佑一(めぐろゆういち)
- 田辺新吾(たなべしんご)/花田秀次(はなだひでじ)
- 戦闘
- 岡部正(おかべただし)
- 正の父親
- 佐野(さの)
- 眼
- 田口恵子(たぐちけいこ)
- さとる
- 血
- 門前理沙(もんぜんりさ/演:中越典子、山田夏海(少女時代))
- 門前一草(もんぜんかずさ/演:木村佳乃、佐藤初(少女時代))
- 佳子(よしこ/演:谷村美月)
- 『おろち』映画版オリジナルキャラクター
- 門前葵(もんぜんあおい/演:木村佳乃)
- 西条(さいじょう/演:嶋田久作)
- 昌江(まさえ/演:大島蓉子)
- パパ(演:エド山口)
- 君田(きみだ/演:楠見薫)
- 北村(きたむら/演:鯉沼トキ)
- 片岡(かたおか/演:久世星佳)
- 撮影所長(演:国枝量平)
- 撮影所の重役(演:研丘光男)
- 飲み屋の客(演:諏訪太朗)
- 飲み屋の客(演:齋藤康弘)
- 飲み屋のママ(演:みやなおこ)
- トーク番組・司会者(演:久保田麻三留)
- 歌謡ショー・司会者(演:島田弘久)
- 歌謡ショー・ピアニスト(演:佐孝康夫)
- 撮影所の運転手(演:徳健人)
- 映画監督(演:平田忠継)
- 号外を配る男(演:小野義行)
- 得体の知れない女(演:大口与枝)
- 劇中劇の男優(演:眞島秀和)
- 『おろち』の用語
- 精神感応(せいしんかんのう)
- 呪術(じゅじゅつ)
- 念動力(ねんどうりょく)
- ねむり
- 『おろち』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ナレーション「これははき気をもよおすほどいやらしい女心の恐ろしさと執念をえがいたものである」
- 三郎「舌が……!!くさっているのだ!!」
- 一生を懸けた目黒佑一の復讐
- 戦争という極限状態の中で生き延びる岡部正の父親
- 『おろち』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- サイコホラー作品の先駆けとなった『おろち』
- 楳図かずお作品の中でも人気の高い美少女キャラクターおろち
- 楳図かずお作品が多数連載された『週刊少年サンデー』
- 2つのエピソードを基にした『おろち』映画版
- 『おろち』の主題歌・挿入歌
- 映画版主題歌:柴田淳「愛をする人- Orochi's Theme」
- 映画版挿入歌:木村佳乃、谷村美月、中越典子、山本太郎「またあした」
- イメージソング:楳図かずお「おろち」