まことちゃん(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ

『まことちゃん』とは、楳図かずおによる漫画。『週刊少年サンデー』にて1976年から1981年まで連載された。続編的な位置付けの『超!まことちゃん』も存在する。恐怖漫画家の楳図かずおが、ホラーの手法を用いつつもハイテンションのギャグを生み出したことで大ヒットを収め、『がきデカ』と共に1970年代を代表するギャグ漫画として認知されている作品である。幼稚園児の主人公沢田まことが、通っている聖秀幼稚園や沢田家などで大騒動を巻き起こす様子と、それに巻き込まれた人々が描かれている。

『まことちゃん』の概要

『まことちゃん』は、楳図かずおによるギャグ漫画。『週刊少年サンデー』で1976年16号から1981年30号まで連載された。同誌にて1988年37号から1989年32号まで連載された「平成版『まことちゃん』」と呼ばれるヴァージョンもあり、そちらは後に『超!まことちゃん』に改題された。『まことちゃん』のコミックスは、本編が少年サンデーコミックス版全24巻と平成版『まことちゃん』が同ブランドにて全4巻刊行された。また、本編と平成版『まことちゃん』の一部が収録された小学館文庫版全12巻や少年サンデーコミックスセレクト版全24巻もある。電子書籍として読むことができるのは少年サンデーコミックスセレクト版である。本編連載中の1980年にアニメ映画版が公開された。『まことちゃん』は、ホラー漫画家の大家として有名な楳図かずおが手がけたギャグ漫画であるが、彼は「恐怖と笑いは紙一重」や「追っかければギャグ、追っかけられれば恐怖」などの持論を展開しており、同作品以前にも『ロマンスの薬』や『アゲイン』などのギャグ作品を世に送り出してきた。『まことちゃん』は、楳図ギャグ漫画の集大成にして最高傑作という意見も多く、多くのファンを獲得した。『まことちゃん』は過激な下ネタやエロネタによるギャグが多い作風だが、奇妙なスピード感があり下品さとの絶妙なバランスが持ち味で、「グワシ」などの流行語を生みだすなど新たなギャグ表現を確立させた。そのため、同時期に連載された『がきデカ』、『東大一直線』、『マカロニほうれん荘』、『すすめ!!パイレーツ』などと共に1970年代を代表するギャグ漫画の1つに数えられ、高い評価と人気を得ている。また、国民的人気を誇るギャグ漫画『クレヨンしんちゃん』について、「主人公が幼稚園児であり規格外の大暴れをして周囲を巻き込む」というフォーマットが『まことちゃん』の影響下にあるのではないかと考察する人も多いといわれている。作品人気が上昇するにつれて作者の楳図かずお自身の人気も高まりを見せ、本人が本編に登場することもあった。さらに、バンドを率いてのライブ活動や、『クイズダービー』などのバラエティー番組に出演する機会も増え、後の赤白のボーダーシャツがパブリックイメージのテレビタレント活動のきっかけになったとされている。

聖秀幼稚園に通う主人公の沢田まこと(さわだまこと)のぶっ飛んだ日常生活と、彼の家族や周囲の人々がそれに巻き込まれる様子を描いたギャグ漫画である。

『まことちゃん』のあらすじ・ストーリー

まことちゃん登場

抜き打ちテストをでたらめに解答するまことちゃん

聖秀幼稚園に通う幼稚園児の沢田まこと(さわだまこと)は、在籍するうめ組の中でも問題児である。まことは幼稚園の授業中にクラスメイトのピョンコやモン太(もんた)たちと一緒になって大暴れしていた。また、担任の百倉花子(ももくらはなこ)先生が行った抜き打ちテストでも変な解答を連発して先生を困らせている。また、家に帰ってもまことのおバカぶりはパワーダウンすることなく、父親の英一(えいいち)、母親の貴世子(きよこ)に怒られていた。

まことちゃんと美香の関係

まことには、小学3年生の姉美香(みか)がいる。2人はしょっちゅう喧嘩していた。しかし、まことは美香のことが決して嫌いなわけではなく、幼稚園から帰ってきた時に仲良くしようと甘えて抱き着いたことがある。ところが、その時美香は習字の練習をしていて、まことが接触してきたせいで書き損じしてしまった。こうして、些細なことで喧嘩が始まるのだが、気がつくと仲直りしていることがほとんどであり、美香もまことのことをかわいい弟だと思っているようだ。それでも、まことの性格や行動が普通ではないことを感じ取っていて、あまり友達に彼のことを積極的に紹介しようとは思っていない。

まことちゃんのパパとママ

他にまことのいたずらや奇行に手を焼いているのは、両親の英一と貴世子だ。特に、ママの貴世子はまことが何かしでかす度に「百たたき」や「逆さはりつけ」などのお仕置きをしているが、まことには効果がなかった。パパの英一は、表立ってまことを強く叱ることはあまりないが、それでも度を越したいたずらをした際には怒っている。ところが、一般人の基準から見ると英一と貴世子も相当な変人であることが描かれていた。英一は酔っ払うと人が変わり、女性的な言葉遣いと態度になって服を脱ぐ癖がある。花見の席上で全裸ストリップを披露して大恥をかいたこともあった。貴世子は下半身に関する失敗が多く、まことが食べ残したものを食べてお腹を下して一刻も早くトイレへ行こうとするが、まことがそばにいたため苦悶していた。息子には苦労ばかりかけさせられているが、英一と貴世子の夫婦仲は喧嘩することがあっても仲の良い様子が窺える。

幼稚園でのまことちゃん

まことちゃんには、聖秀幼稚園うめ組の中で仲が良い友達がいる。特に仲良しなのが、ピョンコともん太の2人だ。まことを含めた3人はいつも一緒にいることが多く、ピョンコ・モン太はまことの下品な行動にも臆せずついていった。まことの影響力は大きく、大森あん子(おおもりあんこ)というおとなしい園児もいつしか共に野グソをする間柄になっている。うめ組の担任の花子先生は、まことたちの行動に手を焼いているが、決して負けることはなく気丈に振る舞う様子も見られた。うめ組の生徒は基本的に変わらないが、ストーリーの終盤で星ひがみ(ほしひがみ)という園児が登場し、まことたちの暴走に巻き込まれていく。

まことちゃんの人間関係

まことちゃんの行動力は沢田家と聖秀幼稚園の中に留まらず、様々な場所へ行き多くの人々との出会いがあった。まことのことが大好きでストーカーのような行動を取る「どど彦」こと林久美子(はやしくみこ)や、人気者でありながらファンに秘密を持っているロックシンガーらん丸(らんまる)などがまことちゃんと関りを持っていく。また、英一の会社の取引先社長令嬢のラーラ・リーンのホームステイ先が沢田家に決まり、ラーラはまことと美香に振り回される日々を送った。まことはラーラに日本語を教えたが、間違いを教えるなど多大な迷惑をかけた。しかし、負けず嫌いのラーラは完全にまことに飲み込まれることなく、見事に1ヶ月のホームステイを終えた。

変わることのない日常

人間関係に広がりが出ても、まことの性格や行動は相変わらずだった。ビチグソをこよなく愛し、幼稚園ではピョンコ・モン太たちと暴れ回り、家に帰れば家族の面々を困らせている。そうしたこれまでと変わらない日常が描かれて、『まことちゃん』の本編は完結した。

『まことちゃん』の登場人物・キャラクター

沢田家(さわだけ)

沢田まこと(さわだまこと)

CV:杉山佳寿子

本作品の主人公。聖秀幼稚園うめ組の幼稚園児だが、年齢は不明。一人称は一定しておらず、「ぼくちゃん」、「ぼくしゃん」、「わし」、「マコリン」などが確認されている。「マコリン」は愛称でもあり、他に「まことちゃん」の愛称がある。また、話し言葉の語尾に「〇〇なのら」と付くなど舌足らずな幼児であることが窺えた。口癖は「グワシ」、「サバラ」などがある。常に鼻水を垂らしており、それをトリモチのようにして虫を取ることができる。髪型はおかっぱ型のざんぎり頭で、現実社会で「まことちゃんカット」と呼ばれている。性格は捉えどころがなく、度を越したいたずらや下ネタで周囲を困らせることもあれば、人命救助や動物を保護するなど優しい面も持ち合わせている。好きな食べ物はカレー、ハンバーグ、ソフトクリーム、大福、松長製菓のお菓子。

沢田美香(さわだみか)

CV:吉田理保子

まことの姉で小学3年生。愛称は「ミカリン」。カラーページや映画アニメ版では茶髪に描かれており、ヘアスタイルは短めのポニーテール風でヘアゴムを着けていた。個性的な顔立ちのまこととは違い、誰が見てもハッとするほどの美少女である。しかし、表情を崩すことが多いため、あまりその長所が目立たない。真面目な性格だが、内弁慶な面がある。また、恋愛方面にかなり積極的なところがあり、度を越した化粧をして意中の人にアタックするなど時折暴走を見せていた。まこととは仲が悪くしょっちゅう喧嘩ばかりしているが、家族としての愛情は持ち合わせているもよう。パンツが破れるとそこから声のような音を出す「またぼえ」という特技がある。好きな食べ物はちくわ。好きな芸能人は山城新伍。

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