漂流教室(楳図かずお)のネタバレ解説・考察まとめ

『漂流教室』とは、1972年から1974年まで『週刊少年サンデー』にて連載された楳図かずおによるSF漫画作品。公害と「時間を越えた母子の愛」がテーマになっている。小学6年生の高松翔が通う大和小学校が、ある日大きな爆音と揺れに襲われる。揺れが収まり門の外を見てみると、荒廃した大地が広がっていた。生徒のみならず教師までもパニックに陥り次々と死んでいく。環境破壊によって滅びた未来の世界に放り込まれた子供たちは、なんとか生き延びようと様々な困難に立ち向かう。

『漂流教室』の概要

『漂流教室』とは、1972年から1974年まで『週刊少年サンデー』にて連載された楳図かずおによるSF漫画作品である。1974年に刊行された『少年サンデーコミックス』第一弾にも掲載されている。楳図は、本作を含めた一連の作品で第20回小学館漫画賞を受賞した。
大和小学校に通う小学6年生の高松翔は、些細なことで母親と喧嘩をし、「もう二度と帰ってこないから!!」と怒鳴って学校へ向かう。学校へ着いてすぐ大きな揺れと音に襲われ、外を見ると荒れ果てた砂漠に変貌していた。そこは文明が崩壊し、人類や生物の滅んだ遠い未来だったのだ。公害と「時間を越えた母子の愛」をテーマにしており、現代に残った翔の母親は息子がどこかで生きていると信じ、時間を越えて翔を手助けする。未来へ飛ばされた子供たちが飢えの恐怖だけでなく、怪虫やペスト、未来人類など数多な困難に立ち向かうSFホラー作品である。

『漂流教室』のあらすじ・ストーリー

漂流編

大和小学校に通う6年生の高松 翔(たかまつ しょう)は、ある朝、母親と大喧嘩をして学校へと向かう。途中で同級生の山田 信一(やまだ しんいち)と会い、給食費を忘れたことに気付くが帰りたくないため、そのまま学校へと向かった。
学校に着き、6年3組で朝のホームルームを迎えていると、突如として大きな揺れに襲われる。学校の外の様子を見に行くと、そこには砂と岩ばかりの荒れ果てた大地が広がっていた。生徒たちは家に帰りたいと泣き叫び、教師らは電話やテレビ、ラジオも繋がらないことが分かり困惑し恐怖する。混乱の中、怪我人や事故死する者が出る中で、教師らは子供たちを鎮めようとする。翔のクラスメイト川田 咲子(かわだ さきこ)の弟が家に帰ろうと門の外へ逃げてしまう。咲子の呼び止めを無視して荒地を走り続けるが、急に倒れて動かなくなった。咲子は助けに行こうとするが、翔達に止められ、弟を放っておくしかできなかった。

事態は変わらぬまま時間だけが過ぎ、翔は担任の若原(わかはら)に指示されて皆の昼食を取りに給食室へと向かう。途中、他クラスの生徒と合流し給食室へと着くが、給食屋のおじさん関谷(せきや)が食料を譲るまいと襲い掛かってくる。翔たちが事態を伝えると、教師らは閉ざされた給食室前に集まり関谷に説得を試みる。しかし、関谷は室内にあった油を扉下の隙間に流し込んで火をつけ、教師たちは大火傷した。水が出ないという更なる問題も降りかかり、事の重大さを知った翔たちは、子供だけで給食室奪還を試みる。しかし待ち伏せていた関谷に返り討ちにあい2人死亡してしまう。
翔が教室へと逃げ帰ると、外から子供の笑い声が聞こえてきた。急いで校庭に出ると、三輪車に乗った小さな男の子がいた。男の子は昨日翔と学校で遊んだ小野田 勇一(おのだ ゆういち)で、「また遊ぼう」と言った翔の言葉の通り、朝から学校へと来て待っていたのだった。勇一の三輪車には「大和小学校」と書かれた、錆びてボロボロになった看板が紐で結ばれていた。翔は門を確認しに行くと「大和小学校」の看板が外れている。勇一は砂場で看板と「ねむれ」と書かれた石も見たというが、砂場には何もなかった。翔は勇一を連れた教室に戻ると、15時頃にも関わらず外が暗くなってきた。関谷が持ち物を強奪しに各教室を襲い始めるが、翔たちの6年3組は関谷に対抗し、なんとか縛り上げることに成功する。関谷を更衣室へ閉じ込め、教師たちを助け、無事に給食を食べることができた。

翌朝、翔は勇一が「大和小学校」の看板を見つけたという砂場へと連れて行ってもらう。その砂場とは裏門の外の砂漠であった。おそるおそる門を出て行くと、「大和小学校の八六二人の霊ここにねむる」と書かれた石碑があった。そして翔たちは自分たちが未来へとやって来てしまったことを知る。皆、自分の家がある方向へ走って行くが、そこには荒れた大地が続くだけだった。咲子は弟の元へ走り寄るが、すでに死んでいた。一方、教師らは遂に平常心を保つことが出来なくなり、若原により教師らは次々と殺される。翔たちが校内へ戻ると、若原以外の教師はみんな死んでいた。そして「現実を受け入れられずに自殺した」と伝えられる。若原は翔を含む5人の生徒を引き連れ、校内にあった車に乗って探索に出かける。翔は道中で、松葉杖をつき一人で歩く西 あゆみを見つける。足が悪い彼女は、足手まといになるからと学校を出てきたのだ。翔は西を車に乗せ、探索を再開する。荒川付近に着き、車を降りて周りを見ると、水は枯れて橋は土になってしまっていた。突如、若原は車に乗りこみ、生徒たちを次々と轢き殺していく。翔は洞穴を見つけて、足の悪い西を連れて飛び込む。気絶してしまった西を担ぎ、真っ暗闇を進むと光が見えてきた。しかしそこは高層ビルのような廃墟の一室で、地上は遥か下であった。そこに、追ってきた若原が翔の首を絞めようとする。翔は思わず「おかあさん!たすけてー!」と叫んだ。

現代に残され、翔の死を受け入れられない母恵美子(えみこ)は、夜中に翔の叫び声を聞く。声のする方へと寝巻のままタクシーに乗り込む。高級ホテルの一室へとたどり着くが、そこには見知らぬ男女しかいない。「むすこをかえしてください!」と詰め寄る恵美子は、ホテルのスタッフに取り押さえられ、帰宅を余儀なくされる。諦められない恵美子は、翌日すぐに昨晩の部屋を予約し、変装してホテルへと乗り込む。そして信一に協力してもらい、部屋の壁に穴をあけ、翔が大切にしていたナイフを包んで隠した。

未来で若原に首を絞められていた翔は、咄嗟に手に触れた何かを掴み若原に突き刺す。そのまま若原は倒れこみ地の底へと落ちて行った。気絶していた西を起こすと、翔の母の不思議な夢を見たという。翔は自分の手に残った錆びたナイフに気付き、やはりここが未来であることを確信する。生き残った2人が学校へと帰ると、下級生による暴動が起こっていた。しかし、プールにたくさんの水がはってある知らせが入り、子供たちは喜び暴動は治まる。さらに、学校の塀にくっついてマーケットの倉庫や電気製品の工場も未来に飛ばされていたことが分かる。翔は全校生徒を体育館に集め、未来へ来てしまった事や大人は皆いなくなったこと、残された物を大切に使わなければいけないことを説いた。子供たちは滅びた地球で生きていくことを心に決め、涙するのだった。

怪虫編

夜、翔は門を叩く音が聞こえて確認しに行くと、若原に轢き殺されたと思っていた男子生徒が奇妙な葉を手に倒れていた。「どこにこれが!?」と聞くが、男子生徒は息絶える。植物を見つけた報せは学校中に知れ渡り、子供たちは歓喜する。捕らえられていた関谷は、食事を持ってきてくれた生徒を騙し、更衣室から抜け出す。関谷は勇一を人質にとり、植物のある場所へ案内するよう翔たち数人を連れて砂漠へと向かった。そして見たことない植物ばかりが生えた森を見つける。そこには怪虫(かいちゅう)が住んでおり、翔たちは襲われる。同行していた6年生の赤羽(あかばね)と勇一のみが学校へと逃げ帰れた。
その頃、学校では女番長(おんなばんちょう)と呼ばれる6年生の女子生徒が子分2人を連れて取り仕切り始めていた。女番長は、こんな事になったのは翔のせいだとし、反対する生徒を暴力でねじ伏せる。しかし、死んだと思われた翔たちが戻ってきた。関谷は怪虫に襲われそうになったことで錯乱し、中身が赤ん坊のようになっていた。翔は、怪虫が学校へ襲いにくるかもしれないと忠告をするが、女番長は怪虫の存在を信じず罵倒する。そこに5年生の天才児我猛(がもう)がやって来て、学校をまとめるには政治が必要であること、そのために投票をしてリーダーを決める必要があることを説く。そして体育館に全校生徒を集め、「大和小学校国」の総理大臣を決める投票が行われることになった。女番長は脅しで生徒たちに票を入れるよう根回しするが、1票差で翔が総理大臣に決まる。納得できない女番長は、子分と数人の支持者と共に学校を去った。総理大臣になった翔は、各クラスのリーダーを大臣に任命した。6年3組のクラス委員だった大友は厚生大臣に、池垣(いけがき)は防衛大臣となった。また、投票を提案した我猛は文部大臣となった。

5年2組の仲田(なかた)が、どんなに食べても飢えてしまう謎の症状で苦しみ始める。仲田は監視の目を盗んで、皆の分の食料まで食べ始める。そこに怪虫が学校へと襲いに来る。仕掛けておいた罠も簡単に破り、校内へと入ってくる。池垣は身を挺して怪虫に攻撃し、腕を切られても最期まで攻撃をやめなかった。その間、翔たちは対抗策を考えていた。翔たちが怪虫に襲われた時、助かった人は皆気絶していた。関谷は襲われる直前に錯乱したと考えられる。我猛は「精神がねむってる人が助かって、起きている人がくわれたんだ!」と答えを出した。翔たちは急いで理科室にあったクロロホルムを下級生たちにかがせて眠らせ、上級生たちは物になったつもりで考えを止めた。やがて怪虫は翔たちがいる教室に乗り込み、考えを止められなかった子供のみを襲い、学校を去る。
池垣など殺された者たちの死体を目にした翔は、怪虫を倒すことを誓う。手作りの武器を手に5・6年生の男子を連れ、怪虫を見つけた森へと向かう。そこに西がやって来て、仲田が2年生の時に描いた怪虫にそっくりな絵を見せる。怪虫の正体は、仲田の妄想が生み出したものであった。直後に怪虫が現れるが、翔が仲田を気絶させると怪虫は砂となって消え去った。しかし学校へと戻ると、小さな無数の影が子供たちに襲い掛かる。それは怪虫が学校に産み落とした無数の怪虫の仔であった。大友ら数人の生徒は、仲田の妄想のせいだとして仲田を殺そうとする。西は仲田を守ろうと立ちふさがり、仲田と一緒に逃亡する。翔も必死に大友たちを止めようとするが、暴動を止められない。ついには怪虫の仔も襲ってきて、子供たちは学校の外へと逃げ出す。逃げていた仲田だが、西が怪虫の仔に囲まれたのを見て立ち止まる。「西さん、ぼくのこと忘れないでね!!」と言い残して自ら石斧で頭を打ち死亡した。そして怪虫の仔は消え去った。
このことで、翔は大友を非難する。大友は反論しかけたが、総理大臣は翔であることを思い出し、謝罪した。そして仲田の遺体を連れて学校の門をくぐる時、翔の「ただいま!!」という一言を皮切りに、皆それぞれが「ただいま!!」と声を上げて泣き崩れるのだった。

ペスト編

6年1組の橋本が高熱で倒れる。翔たちは橋本を保健室へ連れて行き、咲子は医者の息子で医者になる夢を持つ柳瀬(やなせ)を連れてくる。「助からないかもしれない」と柳瀬が翔に伝えたのを聞いていた大友は、苦しみ続けるのは哀れだし皆の重荷にもなるとし「橋本くんを殺すんだ!!」と提案する。翔は反論し、大友は現状への不満もあり怒りをぶつける。そこに桃の花が咲いたという一報があり、翔たちは橋本を残して外に出る。橋本は下痢をしてしまい、もがき苦しみながら保健室を這い出てトイレへ向かおうとする。それを見つけた生徒数人が橋本を介抱し、保健室へと戻してやった。
咲子と柳瀬が保健室に戻ると、橋本の足に黒い斑点が浮き上がっていた。橋本はペストに感染していたのだ。急いで翔たちに報告し、ペスト感染した疑いがあることを皆に伝え学校を出る。感染を恐れた一部の生徒が暴徒化し、保健室ごと橋本を焼き殺してしまう。そして翔たちと親しかった生徒らを閉じ込め隔離した。

翔たちは薬を探しに病院の跡地へと行くが、見つかったのはミイラ化した遺体のみだった。翌日、翔たちに症状は出ておらず感染してないことが分かるが、暴徒化した生徒たちによって学校へ入れずにいた。そこでミイラを利用して生徒たちを怯ませ突入し、閉じ込められていた勇一や西を救出する。しかし、すでに暴徒たちの間で感染が広がっており、翔たちにも次々と感染してしまう。症状に苦しみ始めた翔は、またもや「おかあさん!!たすけて!!」と叫ぶ。すると、どこからか「翔!!」と叫ぶ恵美子の声が返ってきた。

現代では、大和小学校の跡地に慰霊碑が建てられていた。世間は大和小学校の事件を報じなくなり、代わりにペスト感染者が出たというニュースで騒がれていた。恵美子はテレビから翔の叫び声を聞き、ペストに感染したことを知る。そして、近くに右手首に傷痕のあるミイラがいるので中に薬を入れてほしいと伝えてくる。恵美子は治療薬ストレプトマイシンとミイラも見つけるため、信一にも協力してもらい、ミイラと同じ傷跡をもつのがプロ野球選手の大木であることを突き止める。大木(おおき)は誘拐犯を捕まえようとして腹部を刺されて死亡する。恵美子は病院の遺体安置所に忍び込み、院内で盗んだストレプトマイシンを腹部へと入れた。
翔は恵美子との交信が途絶えた後、半信半疑でミイラの腹部を開けるとストレプトマイシンが入っていた。急いで柳瀬を呼び、皆に注射した。数日して翔たちの症状は治まるが、半数近くは死んでしまった。

未来人類編

ペスト騒動が収まった直後、プールに巨大なひび割れができたことで水が全てなくなってしまう。翔たち大臣は水を求めて探検に行くが、かつて海だった場所も荒れた砂漠と化している。学校に残る咲子は、気を紛らわせるために全校生徒で雨乞いの合唱をする。すると雨が降り始める。ペストの犠牲者を古い校舎ごと燃やしたことが天候に変化を与えたのだ。しかし、雨により山津波が起き、大量の泥水が流れ込む。咲子らのバリケードのお陰で多くの植物は守られたが、翌日、不気味なキノコ(以降未来キノコ)が大量に発生する。大臣の1人である大月(おおつき)は、幼児退行した関谷に未来キノコが食べられるのかを試させるが、吐き出してしまう。その夜、1人で校舎を歩いていた大月は、何者かに後ろから掴まれ未来キノコを無理矢理に食べさせられる。それは正気に戻った関谷だった。しかし大月は怯む様子もなく、急に明るく笑い出し、未来キノコをばくばくと食べ始める。そして「キノコは食べられるぞー!」と走り回り、大切にしてきた校内の植物を抜き出す。翔は大月を止め、未来キノコを危険視し、処分する。その夜、皆が体育館で眠っていると奇妙な生物が現れる。それは不気味な姿に変貌した大月であった。怪物と思い込んだ見張りの生徒に攻撃され、大月は外へと逃げ出した。

翌日、咲子は様子のおかしいクラスメイトの美川(よしかわ)の後をつけると、不気味な仮面を被る生徒たちに捕まる。ホルマリン漬けにされた標本がいくつも並べられた教室に連れて行かれると、美川が待っていた。彼女は不気味な一つ目の置物を作り「一つ目教」という教団を作っていた。そして咲子を無理矢理に入信させようとするが、こっそり見張っていた大臣たちによって止められる。

その夜、外から奇妙な鳴き声が聞こえ、不気味な一つ目で四つ足の生き物が現れる。そして大月や美川、未来キノコを食べたと思われる他の子供たちは、その不気味な生物を追って四つん這いで駆け出て行った。残った子供たちは恐怖で混乱し、翔は必死に鎮めようとするが、1人の生徒から学校をタイムスリップさせたのは翔だという噂があると非難を受ける。正気に戻ったことを隠していた関谷は、ここぞとばかりに割って入った。そして翔含む大臣たちを孤立させ、子供たちを仕切り始める。そして翔たちに砂漠での井戸掘りを命じた。
砂漠を掘り進めていた翔たちは、大きな穴を見つける。中に入ると、地下鉄の跡地であった。線路を伝って探索をしていると、昨夜の一つ目の怪物(以降未来人類)が集まっている。そこには四つん這いになった大月達もいた。彼らは、古い映像を見ていた。翔たちがいた現代から未来に至るまでの様子が映し出され、未来人類の先祖の姿があった。思わず声を出してしまった翔たちは、未来人類に襲われそうになるが、美川らの助けでなんとか逃げ出すことに成功する。更に奥へと進むと、地底から湧き出た水を発見した。しかしそれは火山帯で、突如として噴火し溶岩が流れ出す。翔達は命からがら地上まで逃げ出すが、後を追ってきた未来人類に再び襲われる。
学校へと逃げ着くが、関谷によりバリケードが張られ入り込めない。未来人類は、翔たちに蜘蛛の糸のようなものを巻き付け、学校を襲い出す。子供たちが必死に戦う間に、関谷はすべての食料を車に乗せて砂漠へと逃げ去った。翔は必死の想いで未来人類に「やめてくれっ!!」と叫び、気を失う。目が覚めると、翔の願いが届いたのか、未来人類は去っていた。しかし食料は関谷が踏みつけて行ったわずかな量しか残っていなかった。

天国編

いよいよ食料が尽きて来た状況で、大友は皆の前で翔を非難する。翔が学校をタイムスリップさせたという噂を突きつけ、校内の半分を大友軍の領地として別行動を取ることを宣言する。そして大友に賛同する子供たちも去って行った。
その夜、翔は急な腹痛で苦しみ始める。盲腸であった。咲子は急いで柳瀬を呼び、緊急手術を行う。食料を狙う大友軍からの急襲に対抗しながらも、学校にあるものだけで手術を行い、無事に成功する。その直後、老婆のような姿になった女番長が現れる。しかし、「富士山が見える所に天国があるわ…」と言って息絶えた。

4日後、翔が目を覚ますと、周りにいたのはろくに食事もとれずに飢え始めている仲間であった。外には気味の悪い未来生物たちがひしめき合い、共食いをしていた。その時、遠くから黒雲が学校へと迫って来ていた。大友軍から食料を強奪し、外へと逃げた少年たちは黒雲に触れて倒れていく。黒雲はスモッグだったのだ。子供たちは黒雲から逃げるために学校を出て、女番長が言っていた天国を探しに富士山方面へと向かう。飢えに耐えつつ歩き続け、遂に円盤の形をした建物を見つける。そこはレジャーランドの跡地であった。原始時代や江戸時代など、地球の歴史を模したテーマーパークであり、翔たちは未来エリアへと着く。しかしそこは崩れており、皮肉にも本当の未来世界の砂漠が広がっているだけだった。
絶望する翔たちに、唯一残っていた未来コンピューターが話しかける。コンピューターは過去に戻る方法は「巨大な衝撃力で時間の壁をひろげることです」と仮説を述べた。翔は、最後のわずかな食料を食べて、学校へと戻ることを決意する。そこに、飢えた大友軍が襲い掛かり乱闘となる。翔は「こんな未来に来てしまったのはぼくのせいだ!!」と叫び、追いかける子供たちを背に、西を担いで学校へと逃げ帰る。

学校に着いた翔は、先ほど言ったことは皆を学校へ連れ帰るための嘘であること、再び大きな衝撃を起こして現代へ戻らなければならないことを伝える。しかし信じる者はおらず、翔を殺そうと襲い掛かってくる。突如、翔の目の前に大友が立ちはだかり「犯人はぼくだ!!」と泣き叫んだ。いつも1番でなければならないことが苦痛で学校にダイナマイトを仕掛けたことを白状する。そして鞄からダイナマイトを1本取り出した。翔は大友と和解し、ダイナマイトと西の不思議な力を使って現代に戻るため、輪になって手をつなぎ、全員で祈り始める。爆発の瞬間、輪の中にあった勇一の三輪車のみが消えていった。失敗に終わったと思われたが、ダイナマイトの爆発の影響で、遠くの火山が噴火し地下水があふれ出した。そして、死んでいった子供たちの遺体に小さな植物が生え始めていた。そこに、空からロケットのようなものが降りてくる。中には、恵美子が翔に宛てた手紙と、多くの物資が入っていた。希望が見え始めた子供たちは、未来の世界で生きていくことを決心する。しかし、幼い勇一は「おうちへ帰るんだ!」と泣き叫ぶ。翔たちは、勇一だけでも帰してあげようと、噴火の力を利用して再び祈り始める。そして子供たちの祈りが届いたのか、勇一は消えて現代へと戻っていった。

家の戸を叩く音を聞き、恵美子は玄関を開けた。そこには「ゆうちゃん」と名乗る幼い男の子が立っており、翔のノートを渡してきた。それは未来世界で翔が書き残した日記であった。ある晩、恵美子が夜空を見上げていると、翔たちが元気よく駆けていくのを見たような気がするのだった。

『漂流教室』の登場人物・キャラクター

主要人物

高松 翔(たかまつ しょう)

大和小学校6年3組の男の子。漂流前はごく普通の明るいやんちゃな少年だが、漂流後は辛い状況にも感情を抑え冷静に判断する。またリーダーシップを発揮して、全校生徒をまとめあげる総理大臣に選ばれる。運動神経もよく体力もあり、何度もくじけそうになるがその度に立ち上がる強い精神力も持つ。西を介して、現代に残る母と交信をしており、徐々に西を特別視する。学校をタイムスリップさせた犯人と仕立て上げられ、大友らと分断するが、最後は和解する。そして、現代に帰るのではなく、未来にまかれた種としてこの世界で生きていくことを決意する。

川田 咲子(かわだ さきこ)

大和小学校6年3組の女の子。翔の隣の席で、密かに翔に好意を寄せており、事あるごとに翔の味方をする。勇一のお母さんとしてお世話をしたり、翔が不在の時は代わりにみんなを指揮するなど、しっかりした性格。しかし、すべては翔の為の行動であり、責任感からではない。漂流後すぐに小3の弟を亡くす。現代へ帰るよりもこのまま翔と一緒にいたいという想いから、罪悪感で自殺を図ろうとするが大友に止められた。

大友(おおとも)

翔に賛同する大友(左)

大和小学校6年3組のクラス委員長。大和小学校国では厚生大臣となる。翔とは仲が良く「翔ちゃん」と呼んでおり、漂流前はよく家に遊びに行くなどしていた。物語前半では翔とともに生き残るために奮闘するが、後半からは敵対するようになる。実は学校をタイムスリップさせてしまった張本人であり、密かに咲子を好いている。最後には全てを告白し、翔達と和解する

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