呪怨 終わりの始まり（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『呪怨 終わりの始まり』の概要

『呪怨 終わりの始まり』とは、2014年に公開されたホラー映画『呪怨』シリーズの5作目である。監督は落合正幸、脚本は落合正幸と一瀬隆重。落合正幸は2008年にハリウッドでホラー映画『シャッター』の監督を務めた人物である。
シリーズの3作目と4作目に当たる『呪怨 白い老女』と『呪怨 黒い少女』では新しい形の『呪怨』として伽椰子は登場しなかったが、今作では再び伽椰子が俊雄と共に恐怖をもたらしている。しかし佐伯一家の設定は、清水崇が監督を務めた『劇場版 呪怨』『劇場版 呪怨2』の時から異なっている。
念願の小学校教師になった生野結衣は、長期欠席をしている佐伯俊雄に会うために佐伯家を訪れてから心霊現象に襲われるようになる。また、女子高生の七海は友人たちと幽霊が出るという空き家を訪れてから心霊現象に襲われるようになる。そして映画冒頭で語られる少年の虐待死事件。2人の女性の視点で交互に描かれる恐怖は収束していき、虐待死事件も交えて佐伯一家に一体何が起きたのかという謎が解き明かされていく。
全ての謎が解き明かされたとき、伽椰子と俊雄に襲われて絶叫を上げた結衣が目を覚ます。全て夢だったと安堵した結衣は、首が折れた恋人の直人の姿を目の当たりにして更なる深い絶望へと叩き落されることになる。最早叫ぶこともなく、ただ涙をこぼすだけの結衣の姿がその絶望の深さを印象的に表現している。
キャッチコピーである「肌が粟立つ恐怖の極点。日本発、世界を絶叫させた最恐ホラーシリーズ、再誕！」通りの内容となっている。

『呪怨 終わりの始まり』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

児童相談センターの吉崎（よしざき）と区の福祉部職員の山本（やまもと）及び警察官1名が、児童虐待の疑いで通報された家を訪問する。応答の無い家に入ると、室内には食べかけの食品が散乱し悪臭が充満しているという悪環境だった。俊雄（としお）という少年と両親を探して2階に上がった一同は、押入れの中に死後数日経った男児の遺体があるのを発見する。警察官は署に通報するために、吉崎は現場の惨状に具合を悪くして部屋を出ていく。残った山本もショックで部屋の中でへたりこんでいた。そんな彼の背後に真っ白で不気味な少年の霊が現れる。不穏な気配を感じて立ち上がり振り向く山本だったが、自分の足元に立って見上げてくるその少年の霊と目が合ってしまう。

小学校の先生になる夢を叶えた結衣

小学校の先生になることが夢だった生野結衣（しょうのゆい）は、個人的な都合で急に退職した教師の代わりとして小学校に採用されることになる。更に教頭の乾（いぬい）からは、「退職した教師の受け持っていた3年3組の担任も任せる」と告げられる。大喜びで恋人の宮越直人（みやごえなおと）に採用決定の報告をした結衣だったが、電話を切って目を向けた先には晴天にも関わらず黄色い傘が落ちていた。傘を拾い上げた結衣は、校庭に自分を中心とした渦巻き模様が描かれていることに気付く。
夜に結衣が急に欠員があったことを直人に話すと、「寿退職？」と尋ねられる。「違うんじゃない？男の先生だから」と答える結衣の手には、男性教師と子供たちが写った3年3組のクラス写真があった。
教師として働き始めた結衣は、自分が担当するクラスの佐伯俊雄（さえきとしお）という児童が長期欠席をしていることを知る。前任の小西（こにし）の日誌を読んでみると、保護者と連絡がつかないので佐伯家を訪問するつもりであることが書かれていた。乾に尋ねてみても「今日からはあなたが佐伯俊雄の担任です」と言って立ち去ってしまう。
教室にある佐伯俊雄の机には渦巻き模様が彫られていた。

幽霊が出る家に遊びに来た七海達

七海（ななみ）は莉奈（りな）、葵（あおい）、弥生（やよい）の3人と幽霊が出ると噂の空き家へ向かう。葵の姉夫婦が不動産屋を営んでおり、その空き家の管理もしていたので、葵が勝手に鍵を持ち出してきたのだ。弥生は勝手に入ることを躊躇い、怖がりの七海も入ることを嫌がる。しかし「賃貸物件の下見だから」と押し切られて入った家は明るく綺麗なものだった。拍子抜けした莉奈は噂を聞いてきた葵に文句を言うが、葵も「人に貸す物件なんだから綺麗なのは当たり前でしょ」と言い返す。弥生は口論する2人の仲裁をし、そんな3人を置いて七海は1人で2階へと上がっていく。彼女にだけは「ん～ん、ん～ん、ん～んんんん」という子供の鼻歌みたいな声が聞こえていたのだ。そして開け放していた玄関のドアが勝手に閉まっていく。
1階では弥生が気味の悪い絵の描かれた画用紙を見つけていた。子供の落書きらしいそれは顔が真っ赤だったり、縦に大きく口を開けていたり、ベッドに寝ていたりするもので、3人は絵の下手さに笑いあう。
ふらふらと和室に入った七海に突然、足元の畳から黒い液体が染み出る、押入れの襖がガタガタなるなどの心霊現象が襲い掛かる。逃げようとした七海の前で襖が閉まり、助けを呼んで叫ぶ彼女の足元に不気味な真っ白い少年の霊が現れる。悲鳴をあげて和室から飛び出した七海に対して、3人は「怖いものでも見ちゃった？」と笑いながら言うと、七海を置いて走り去った。七海も3人の後を追うように家から逃げ出していく。

佐伯家を訪問する結衣

結衣は佐伯家を訪問することにした。俊雄の母の佐伯伽椰子（さえきかやこ）に俊雄のことを尋ねるが、伽椰子は「主人が連れて行きました」と答え、結衣を中へと誘い入れる。しかし2階から「ん～ん、ん～ん、ん～んんんん」という子供の鼻歌が聞こえてきた為、2階へ上がった結衣はガムテープで目張りをされた襖を見つける。鼻歌はその中から聞こえてきていた。目張りをはがし中に入ってみるが和室の中は無人だった。同じく目張りをされた押入れに向かって「俊雄君なの？」と呼びかけ、耳をそばだてる結衣の背後に伽椰子があらわれる。驚く結衣に伽椰子は「お茶が入りました」と告げると階下へと降りていってしまう。1階へと降りた結衣は、ノートに何かを書いている伽椰子の後姿を見る。伽椰子もまた「ん～ん、ん～ん、ん～んんんん」と鼻歌を歌っていた。結衣の「おかあさん」という呼びかけに向けられた伽椰子の表情は、思わず結衣が息を飲むほどに不気味なものであり、伽椰子の手はひたすらに渦巻き模様を描き続けていた。
驚いた結衣は家から走って逃げだしていく。

霊に連れていかれる弥生

バスケ部の練習中に気分が悪くなった弥生は、体育館から保健室へと向かう。無人なのに突如鳴るピアノ、自分の足を掴む子供の手の感触など不気味な現象に襲われて保健室に駆け込むが、保健室には誰も居なかった。大急ぎでベッドの布団に潜り込んだ弥生だったが、布団の中に空き家で見つけた落書きがあることに気付く。広げてみるとベッドに寝ている人の絵だった。悲鳴をあげてその絵を放り出した弥生は、布団の中から自分を見つめる不気味な真っ白い少年と目が合う。そしてそのまま彼に引きずり込まれていった。

乾に佐伯俊雄の件で相談する結衣は「俊雄君のお母さんの様子がなんだか変だった」と訴えるが、乾に「迂闊な発言をしてはいけない」と叱責されてしまう。「前任の小西先生にお会いしたい」と言う結衣に、乾は「小西先生は亡くなりました」と告げて立ち去る。
小西の残した日誌を読み返した結衣は、日誌に渦巻き模様がいくつも描かれていることに気付く。
直人は様子のおかしい結衣を心配するが、この頃はまだクラスに無断欠席の子がいるせいだと思っていた。
翌日、登校していた俊雄に気付き笑顔になる結衣。授業中、机にガリガリと渦巻き模様を彫る俊雄を叱り止めようとするが、俊雄の腕を掴んだ瞬間にその姿は消えていた。そして教室内の児童が全員、結衣のことをジッと見ていた。

精神に異常をきたす莉奈

葵と七海は学校を休みつづけている莉奈の見舞いに行く。自室に引きこもっている莉奈は、窓に新聞紙をべたべたと貼りつけて塞ぎ、机の下に潜り込んで恐怖に震えていた。莉奈は「来るの。来るの。白い子供が」と言うや否や錯乱する。そして七海は机の引き出しから子供の手が出てくるところを目撃する。部屋中に張り巡らされた目張りが勝手に剥がれ、開いた扉からは不気味な白い少年が皆を見ていた。「帰ろう！」と葵に呼びかける七海。葵は莉奈に持っていた御守りを渡すと七海と帰ろうとする。そんな葵にしがみついた莉奈は「呪いで死ぬの！」と叫ぶ。葵と七海が走り去った部屋の中では、莉奈が叫びながらのたうち回っていた。
深夜に台所で湯を沸かしていた莉奈は、牛乳パックから血が出てきたことに驚き、沸騰した薬缶で顔面に火傷を負う。パニックを起こす莉奈の後ろにある冷蔵庫のドアが開き、少年の真っ白い腕が中から伸びてくる。そして泣き叫ぶ莉奈を掴むと、そのまま冷蔵庫の中へと引きずり込んでいった。

夜、自宅で仕事をしていた直人は猫の鳴き声を聞く。猫を探す直人の目の前で突然電子レンジのスイッチが入ると、猫の暴れる音と叫び声が響き渡る。恐る恐る開けた電子レンジの中は空だった。
結衣が放課後の職員室でテストの採点をしていると、すっかり暗くなって他の教員は1人また1人と帰宅していく。ついうとうとしてしまった結衣に、背後から男の子の声が「先生」と呼びかけた。しかし結衣が振り向いても職員室の中には誰も居ない。その代わりに廊下を歩いていく佐伯伽椰子の姿を目撃する。廊下に出て「佐伯さん」と呼びかけ後を追うが、2階の教室に入っていったはずの伽椰子の姿は消えていた。そして机の上には伽椰子の日記が置かれていた。
帰宅した直人は、ぼんやりと窓ガラスに渦巻き模様を描く結衣を目撃する。呼びかけても反応しない結衣は気絶して倒れこみ「俊雄君」と呟く。結衣の鞄から伽椰子の日記を見つけた直人は、不妊に悩む伽椰子の書いていた日記の異様な内容に恐れおののく。しかし日記の最後の方には、伽椰子がとうとう妊娠したことが書かれていた。2階の和室で寝ている伽椰子のところに男の子が現れて「おかあさん」と呼びかけたのだという。伽椰子は剛雄にはお父さんを演じてもらうことと、子供の名前は俊雄が良いかしらと綴っていた。驚いて立ち上がった直人の目の前では風も無いのに日記がバサバサと捲られていき、直人はその光景に悲鳴を上げる。止まったページには多数の渦巻き模様が描かれていた。

葵と七海の末路

竹田美和（たけだみわ）は最近様子のおかしい妹の葵の心配をしていた。幽霊が出ると噂の家について気にする葵の態度から、美和の夫の京介（きょうすけ）は「まさかあの家に行ったわけじゃないよね？」と尋ねる。否定した葵にひとまずは安心する2人。しかし美和の「あの家にようやく借り手が見つかりそう」という発言に驚く葵の態度から、実は葵があの家に行ったことを察する。葵が風呂に行った後、美和は葵にあの家の話をした京介を責める。
葵は鏡を見ながら弥生と莉奈のことを心配して泣くが、鏡に映る自分の口に下から伸びてきた真っ白い少年の手がかかる。不審な物音に気付いた美和が風呂場へ向かうが、そこにあったのは血痕と引きちぎられた葵の下顎だった。
電車に乗っていた七海は、車内で葵と莉奈に良く似た女子高生の後ろ姿を見かける。声をかけて振り向いたのは下顎が無い葵と顔面が赤く爛れた莉奈だった。悲鳴をあげて逃げる七海の前に巨大な弥生が立ちふさがる。更に悲鳴を上げて倒れた七海が起き上がったとき、そこは電車の車内ではなくあの空き家の中だった。見えない何かに床を引きずり回され、天井や床に叩きつけられ、「ごめんなさい」と謝り続ける七海はそのまま引きずられて消えていった。
その直後、美和が佐伯夫妻を物件の内見の為に連れてくる。明るくていい家だと喜ぶ伽椰子を見て、美和は剛雄（たけお）に「この物件の事、奥様にはお話されていますよね？」と確認する。美和は事故物件を勧めることに消極的で剛雄も乗り気ではなかったが、家を気に入った伽椰子が「ここに決めましょう」と夫に告げる。
美和がふと見上げると階段には通学鞄が落ちていた。

佐伯家の謎を追う直人

直人は佐伯家に立ち寄った後、不動産屋の竹田を訪ねる。学校関係者を装って色々質問しても無難な返答しかしない竹田に、直人は佐伯家の子供の担任が自分の恋人だと告げる。その子の家を訪ねてから彼女の様子がおかしいと訴える直人に、竹田は「家族じゃない。おかしいのは家です」と告げる。「あの家で19年前に子供が虐待死したことは佐伯夫妻にも伝えてある」と言う竹田に、直人は噂話で誤魔化された落胆を隠そうともせず立ち上がる。そんな直人に竹田が「噂話をしているわけではありませんよ。10年前、私の妻と妹はあの家に入った。ただ入っただけだ。それだけで」と告げながら向けた視線の先には美和と葵の遺影があった。
図書館で過去の新聞を調べた直人は、19年前の事件の記事を見つける。その事件で死んだ子供の名前も俊雄だった。
自分もまた開けっぱなしの玄関から佐伯家の中へ足を踏み入れていた直人は、家に入っただけで死んだという竹田の妻と妹の話を思い出し、大急ぎで家へと帰る。寝ている結衣の布団が不自然に蠢いているように見えてめくってみるが、特に不審なものは見当たらなかった。持ち帰った資料と3年3組のクラス写真を見くらべてみると、19年前に死んだ俊雄と佐伯俊雄は同じ子供だった。
そんな直人の顔に後ろから伸びてきた真っ白い女の手が触れる。力づくで頭を捻られながら直人は、ぼやける視界で不気味な真っ白い少年の姿を見た。
起き上がってきた結衣は、変わり果てた直人の遺体を発見して悲鳴を上げる。
誰も居ない教室に立ち尽くす結衣が見た俊雄の机には2つの渦巻きが彫られていた。

佐伯家で起きた惨劇

結衣は再び佐伯家を訪れる。19年前に子供の遺体が発見された押入れの襖を開けた結衣は、そこにあった段ボールからアルバムを見つける。貼られていたのは息子の誕生と成長を喜ぶ家族の写真だったが、子供の顔の部分は傷つけられていた。そしてアルバムの下からビデオテープも見つける。ビデオに映っていた佐伯夫妻は最初は息子の誕生を2人でとても喜んでいた。しかし俊雄が成長するにつれて、父親に懐かず、父親を拒絶する俊雄に苛立つ剛雄の姿が目立つようになる。最後のビデオテープには、寝ている伽椰子に不気味な真っ白い少年が「おかあさん」と呼びかけながら入っていく姿が写っていた。
振り返った結衣は夫婦喧嘩をする佐伯夫妻の幻覚を見る。「俊雄が誰の子なのか言え」と詰問する剛雄に、伽椰子は「俊雄は私だけの子。この世にあなたの子なんていないのよ」と告げて高らかに笑う。そんな伽椰子の首を憤怒の形相の剛雄がへし折った。ペットの黒猫を電子レンジに入れて焼き殺した剛雄は、包丁を持って俊雄へと近づいていく。
幻覚が消えたリビングから2階和室に向かった結衣は、押入れの天井裏で伽椰子を発見する。不気味な真っ白い伽椰子が血塗れの姿で這い寄ってくる姿を目撃した結衣は、逃げる途中で階段を踏み外してしまう。階段から落ちて倒れ込む結衣に俊雄が「先生」と呼びかける。俊雄に助けを求める結衣だったが、俊雄が見詰める先には伽椰子が居た。這い寄る伽椰子から必死に逃げて階段を昇る結衣だったが、2階には不気味な真っ白い俊雄がいた。俊雄と伽椰子に挟まれた結衣が絶叫したところで彼女は目を覚ます。
部屋の外から聞こえる直人の声に全ては夢だと安堵した結衣だったが、部屋を出た彼女に近づいてきたのは首が折れた直人だった。そんな2人を不気味な真っ白い少年がじっと見ていた。

『呪怨 終わりの始まり』の登場人物・キャラクター

主要登場人物

生野結衣（しょうのゆい／演：佐々木希）