【進撃の巨人】サシャ「もう、嫌だ……暴力なんて……」【厳選名作SS】
進撃の巨人の厳選名作SSを掲載しています。なんだか最近サシャの様子がおかしい。ちょっとしたことで感情的になったり、対人格闘訓練中にぼーっとしていたり…一体サシャに何が起こっているのでしょうか?
245 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:29:15.82 ID:CJ8mGq6lo
ライナー「それにお前はもう助かった!元通りだ!お前は誰も傷付けない!
俺たちも傷付かない!お前はもう、理由のない暴力なんか振るわない!!」
……ライナーは出すべき言葉は全て出し切ったと言うように、そこで口を閉ざす。
サシャも何も言わず……辺りは再び静寂に包まれた。
しばらく2人は至近距離で、何も言わず見つめ合い、そして、次に口を開いたのは……
サシャ「ラ、イナー……」
ライナー「……!あ、あぁ、なんだ!」
サシャ「本、当……?本当に、私、もう……誰も……?」
ライナー「本当だ……!お前はもう、元通りだ。あいつらもみんな、お前の帰りを待ってる。
だから、早く帰ろうぜ。あいつらのところに!」
サシャ「……!あ、ありが、と、う……」
ライナー「!?サシャ!」
突然、サシャは膝から崩れ落ちた。
247 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:35:49.77 ID:CJ8mGq6lo
ライナーは慌ててそれを支える……が、しかし。
ライナー「あつッ……!?」
サシャの体は異様な熱を持っていた。
その熱さにライナーは思わず手を離し、サシャはうつ伏せに倒れる。
サシャの体からは、蒸気が上がっていた。
まるで……巨人が消える瞬間のように。
ライナー「まさか……!」
サシャは消えてしまうのか、とライナーは一瞬思った。
しかし、違った。
すぐに蒸気は治まり、そして、その後にもサシャの体はそこにあった。
それを見て安堵に胸を撫で下ろすライナーだが、
すぐに慌ててサシャの体を仰向けにし、何度か顔を叩いて呼びかける。
ライナー「オ、オイ、サシャ!大丈夫か、オイ!」
サシャ「……ん……」
248 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:42:21.48 ID:CJ8mGq6lo
少し眉根を寄せ、声を出すサシャ。
それを見て命に別状はないと判断し、ライナーは安堵する。
……しかし、今の蒸気は一体……。
と、疑問に思ったのはほんの一瞬。
すぐにライナーは、熱と蒸気の原因に気付いた。
気付くと同時に、ライナーはサシャの体を確認する。
直前まで巨人と同じように、あるべき器官の無かった体だったが……。
ライナー「……!」
人間と、同じ体になってる。
つまり……正真正銘、サシャは元通りだ。
そう確信し、ここでようやく、ライナーの表情がほころぶ。
後はなんとかしてサシャを……と、目線をサシャの顔に向けたライナーの目に映ったのは、
目を覚まして首を少し上げ、こちらを見ているサシャの顔だった。
250 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:48:25.41 ID:CJ8mGq6lo
ライナー「!サシャ、お前目を……」
と、安堵の声を上げかけたライナーだったが、異変に気付き口を止める。
サシャの表情は……今までに見たことのないもの。
あらゆる感情、考えが渦巻き、気持ちの整理がつかないといった表情だった。
……そして次の瞬間、サシャの顔は一気に赤くなった。
それを見てライナーはようやく、あぁそうか、と気付いた。
サシャ「ひっ……ひぇあぁああああ!?」
サシャが素っ頓狂な声を上げ、
ライナーが“こいつも裸を見られるのは恥ずかしいんだな”だとか
“やっぱり顔を叩いて起こすのは後にした方が良かった”だとか思ったと同時に、
ライナー「おふうッ!?」
割と理由のある暴力がライナーを襲った。
252 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:53:43.46 ID:CJ8mGq6lo
・
・
・
ハンジ「どう、居た!?まだ見付からない!?」
調査兵1「すみません、まだ……!全力で森の中を調べていますが……」
ハンジ「っ……引き続き調べて!」
調査兵2「はっ!」
しかし果たして見付かるのか……。
ハンジを含め、サシャを探す調査兵全員がその疑念を抱かずには居られなかった。
部屋の中から姿を消したとなると、外に逃げたと考えるのが普通……。
しかしそれは人間の場合だ。
巨人の場合は……殺された場合でも姿は消える。
もしサシャが何者かに殺されたのだとすれば……
ライナー「ハンジ分隊長!」
253 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:59:06.55 ID:CJ8mGq6lo
突然後ろから呼びかけられ、驚いて振り向く。
と、建物の陰からライナーが姿を現した。
ハンジ「君は確か……え?何、その格好……下着?」
見ると確かにライナーは、上下共に肌着を一枚ずつしか着ていない。
その服装に疑問を抱くことは当然だったが……
ライナー「俺の格好より……こいつを見てください!」
そういうと同時に、ライナーの後ろからもう1人姿を現した。
それは、ライナーの服を着た……サシャだった。
ハンジ「……は?」
サシャ「ど……どうも……」
256 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 22:04:46.06 ID:CJ8mGq6lo
複雑な表情を浮かべ、気まずそうに挨拶するサシャ。
それを見て、ハンジは……
ハンジ「ちょっ、え!?サ、サシャ!?サシャ・ブラウス!?」
サシャ「え?は、はい、まぁ……」
ハンジ「ストぉーーップ!動かないで!!手を挙げて!!」
サシャ「は、はい!?」
ハンジの勢いに押され、サシャは反射的に両手を挙げて固まる。
それと同時にハンジはサシャの元へ駆け寄り、
そして、上着を捲り上げてズボンをずり下げた。
サシャ「ッ!?ひぃぁああああ!?」
ライナーは学習していたので目を背けた。
258 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 22:11:00.89 ID:CJ8mGq6lo
サシャ「や、やめっ!やめてくださいぃいいい!!」
ハンジ「良いからじっとして!今確認するんだから!!」
サシャ「あうっ!?」
2人で暴れるうちに、サシャはハンジに押し倒される。
仰向けに倒れ、そして起き上がる暇もなく、サシャは両足を掴まれて思い切り開かれた。
サシャ「あぁああああ!?あぁあっぁああああああ!?」
ハンジ「!?あ、ある!間違いない!生殖器だ……!」
ライナーは全身で汗をかきながら遠くを見つめていた。
そして、少し見る方向を変えた時、いつの間にか近くに誰か来ていたことに気付いた。
リヴァイ「オイ……どういう状況だ、これは」
261 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 22:18:20.16 ID:CJ8mGq6lo
ライナー「リ……リヴァイ兵士長!」
ハンジ「あっ!リヴァイ!ちょっと見てよこれ!ホラ!生殖器だ!生殖器があるんだよ!」
サシャ「やめてぇええええ!!」
リヴァイ「……ついにイカれたかクソメガネ……」
ハンジ「違うんだって!ホラよく見てよ!サシャなんだよこの子!サシャ・ブラウスだ!」
リヴァイ「っ!何……!?」
それを聞き、リヴァイはハンジの横にしゃがみ込む。
人類の英雄にアソコを覗き込まれるってのはどんな気持ちなんだろうな、とライナーは思った。
リヴァイ「……確かにあるな。オイ……こいつを連れて来たのはお前か?」
ライナー「!はい、俺です」
リヴァイ「詳しく聞かせてもらおうか……。ここは人目につく。場所を移すぞ」
ライナー「……はっ」
290 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 20:19:03.60 ID:IkOagJb0o
そうして4人は、サシャの姿を他の誰かに見られる前に室内へと場所を変える。
そこでライナーは、自分がサシャを発見し今に至るまでの経緯を話した。
リヴァイ「……するとお前はこう言うんだな?
明け方、外に気配を感じて様子を見に行ってみると、こいつの姿を見かけた、と」
ライナー「はい、その通りです」
ハンジ「それで後を追うと、サシャが突然倒れた。駆け寄って見てみると、人間に戻っていた……か」
リヴァイ「ずいぶん都合の良い話だな」
ハンジ「それはその通りだけど……信憑性の無さで言えば
ライナーがサシャを連れ去って何らかの方法で元に戻した、って展開も大して変わらないよ。
私はそっちの方がロマンがあって好きだけどね」
リヴァイ「……まぁ良い。話が進まねぇから取り合えず信じといてやる」
ライナー「はい……ありがとうございます」
292 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 20:26:52.75 ID:IkOagJb0o
ハンジ「えーっと、それでサシャ。君は何も覚えていないの?」
サシャ「ぐすっ……何も覚えてないです……」
ハンジ「自分が今までどういう状態になってたかも?ライナーから聞いてない?」
サシャ「は……はい。ここに着いてから説明する、って……」
ハンジ「……参ったな、何も覚えてないのか……。
じゃあさっきの私達はこの子から見ればまるっきり変態じゃないか」
リヴァイ「…………」
サシャ「……?え、えっと……?」
ハンジ「誤解を解くというのもあるけど……流石にこれは、教えないわけにはいかないよね」
リヴァイ「あぁ……全て話せ。こいつ自身、自分に何か起きたのか知っておくべきだ」
293 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 20:38:20.30 ID:IkOagJb0o
ハンジ「今の君はどこからどう見ても普通の人間だけど、観察や検査その他諸々……
調べる必要はあるだろうし。それでも良いかい?」
サシャ「は、はい……!調べてください、ぜひ……!」
そう自ら懇願するサシャ。
自分が人間であることを確かめたいという、強い気持ちが窺えた。
ハンジ「そうか、理解してくれて良かったよ」
リヴァイ「……オイ」
ハンジ「わかってるって。ちゃんと人間として扱うからさ。
そうだ、それから……調査兵団のみんなにも説明が要るよね。
みんなに黙ったままサシャを調べるのは無理だろうし、
それにこっそりやってるのがバレたとなれば余計厄介になる」
リヴァイ「しかしどう説明するつもりだ?
1.7m級巨人と脱走兵サシャ・ブラウスを結び付けて考えている奴は、
せいぜいお前と一緒に実験をしていた2人ぐらいのもんだと思うが」
ハンジ「だろうね。あの光景を見てない限り、
人間が巨人になったなんて発想は思い付きもしないだろうし」
294 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 20:47:47.04 ID:IkOagJb0o
ハンジ「だから……うん。みんなに事実をありのまま伝えるかどうかは要検討ということで。
混乱を防ぐためには多少の嘘も必要だしね」
リヴァイ「その嘘とやらは通用するのか?」
ハンジ「どうだろう。通用しなかった時は、またその時考えよう。
とりあえず……ちょっと待ってて。今サシャに着替えを持ってくるから、それに着替えてもらうよ」
サシャ「あ……は、はい」
そうしてハンジは部屋を出て、後にはリヴァイ、サシャ、ライナーが残される。
気まずい……とライナーが思うが早いか、リヴァイが口を開いた。
リヴァイ「お前……その怪我はどうした」
サシャ「え?あ、これはさっき……」
リヴァイの目線の先には、肘をすりむいた後が。
どうやら、ハンジから逃れようと暴れた時についた傷らしかった。
295 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 20:55:11.31 ID:IkOagJb0o
リヴァイ「治らないのか」
サシャ「え?あっ……。は、はい、そうみたいです……」
リヴァイ「……そうか」
ライナー「…………」
リヴァイの質問の真意は、2人にはすぐ読み取れた。
巨人なら怪我はすぐに治るはず、治らないということはお前は巨人じゃないんだな?
暗にそう確認しようとしているのだと思った。
そして直後、リヴァイはまた口を開く。
リヴァイ「お前、巨人になる前の最後の記憶はなんだ」
サシャ「あ、えっと……教官に連れて行かれて、そこで検査を受けた辺りから
記憶が途切れ途切れで、曖昧で……。
なんとか覚えてるのは、立体機動装置で壁を越えたこと……です。
そして気付いたら、ライナーが……うぅ……」
ライナー「すまん……」
サシャ「い、いえ……。か、確認しなきゃ、いけなかったんですし……」
296 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:05:12.38 ID:IkOagJb0o
リヴァイ「……壁を越えてから今日まで、一切記憶はないのか」
サシャ「は、はい……。あ……でも、夢は見ていたような気がします。
私がみんなに暴力を降るって、それについて謝るっていう、夢を……」
ライナー「…………」
リヴァイ「……そうか」
サシャ「…………」
ほんの少し、沈黙が続いた。
が、すぐに扉が開き、
ハンジ「お待たせ!服のサイズはたぶん合ってると思うよ。
私達は部屋の前で待ってるから、着替え終わったら出てきてくれ」
サシャ「あ……はい、ありがとうございます」
297 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:12:06.61 ID:IkOagJb0o
サシャを1人残し、3人は部屋を出る。
そうして数分後、扉が開いた。
サシャ「お、お待たせしました」
兵士の服を着、ゴムで髪を結ったサシャ。
これでようやくいつもの見慣れたサシャの姿になった、とライナーは感じた。
ハンジ「うん、やっぱりサイズはちょうど良かったね。それにこれなら全然巨人っぽくない」
サシャ「ど、どうも……。あ、ライナー、これ……あ、ありがとうございました」
ライナー「ん?あぁ、そうか……」
サシャが持っていたのは、先ほどまで自分が着ていたライナーの服。
ライナーはそれを受け取り……
ライナー「…………」
サシャ「も、もう!早く着てくださいよ!」
ライナー「あ、あぁ。そうだな、すまん」
299 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:21:07.39 ID:IkOagJb0o
ハンジ「さて、仲良しなところ悪いけど……付いてきてくれるかな、サシャ」
サシャ「ハ、ハイ!えっと……しかし、どこへ……?」
ハンジ「君を探すのを手伝ってくれたみんなが外で待ってる。
まぁ、君は私の隣で敬礼して立っていてくれれば良い。説明は全部こっちでしちゃうから」
サシャ「は……はい」
ハンジ「取り合えず、私が先に外へ出るよ。サシャは私が呼んだら出てきてくれ」
サシャ「わ、わかりました」
ハンジ「それじゃ、行ってくる」
そうしてハンジは外へ出る。
建物の前には……調査兵が数十人集まっていた。
300 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:26:45.55 ID:IkOagJb0o
建物からハンジが出てきたのを見、兵士たちは声を上げる。
調査兵1「分隊長!例の巨人は発見できたのですか!?」
調査兵2「捜索に当たっていたものを全員集めろとは、一体……!」
ハンジ「みんな落ち着いて。それを今説明するから……」
彼らをなだめつつ、兵士たちの前に立つ。
そして、落ち着いた声で話し始めた。
ハンジ「みんなも薄々分かってたとは思うけど……彼女は多分、死んでしまったんだ。
あれだけ探し回っても見付からなかったんだし、
それにあの拘束から抜け出すなんて考えられないからね……」
落ち着いたどころか、落ち込んだ様子で話すハンジ。
その様子を見て、確かに貴重な被検体を失ったのは残念だが
それだけではないんだろうな、と兵士たちは思った。
301 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:32:50.26 ID:IkOagJb0o
調査兵1「あの……分隊長。では……」
と、兵士の1人が声をかけたが、それを遮るようにハンジは言った。
ハンジ「でもね、彼女の代わりになるかは分からないけど、良い子を見つけたんだよ。
ちょっと君たちに紹介するから……オーイ、サシャ!出ておいで!」
ハンジの発言に疑問符を浮かべる兵士たち。
そして、直後……建物の中から、1人の少女が現れた。
緊張した面持ちで歩みを進め、ハンジの隣に立つ少女。
調査兵2「……?あ、あの、分隊長?その子は……?」
ハンジ「さぁ、サシャ。自己紹介して」
サシャ「ウ……ウォール・ローゼ南区、ダウパー村出身!
訓練兵団所属、サシャ・ブラウスです!」
見事な敬礼と共に自己紹介するサシャ。
しかし兵士たちには、その意図がまったく掴めなかった。
302 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:40:56.19 ID:IkOagJb0o
「サシャ・ブラウスって確か……脱走した訓練兵がそんな名前だったよな?」
「まだ見付かってないと聞いていたが、見付かっていたのか」
「しかし、なぜ今ここでその子が……?」
例の巨人についての話だったはずが、何故か唐突に紹介された脱走兵の少女。
……が、ある兵士が1人、呟く。
調査兵3「……なんかあの子、例の巨人に似てないか?」
彼の周りに居た兵士たちはそれを聞き、サシャの顔を凝視する。
そして……
「……い、言われてみれば、確かに……」
「あ、あぁ。似てるな、確かに。しかし……」
「でもあいつはどう見ても人間、だよな?」
徐々にざわつき始める兵士たち。
それを見たハンジは、最初に呟いた兵士を指差し、叫ぶ。
ハンジ「そう、その通りだよ!この子は例の巨人に似てるんだ!」
303 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:49:46.54 ID:IkOagJb0o
調査兵3「え……?」
ハンジ「この子の身柄は今日からしばらく、調査兵団が受け持つことにする!
そして、色々調べるんだ!サシャと例の巨人が似ていることに、何か関係がないかをね!」
調査兵3「な……何か、関係?どう関係があると……?」
ハンジ「だからそれが分からないから調べるんだよ!」
調査兵3「は、はぁ……」
兵士たちは白熱するハンジを見るうちに、その熱に反比例して徐々に冷静になっていく。
またいつもの分隊長の暴走か……と。
その温度差は、室内から様子を窺っていたリヴァイとライナーにも感じ取れた。
ライナー「……なんというか、意外ですね……。
思ったより誰も、サシャに対して疑念を抱いていないように見える……」
リヴァイ「当然だ……あいつが変身するところを見たわけでもねぇんだからな」
304 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 21:56:50.34 ID:IkOagJb0o
リヴァイ「人間が巨人になるだの、巨人が人間になるだの……。
顔が似てるってだけでそんなことを本気で考える奴は居ない。
仮にその発想が浮かんだとしてもそんなもんが妄想の域を出ねぇことくらい、あいつらは全員わかってる」
ライナー「……なるほど」
リヴァイ「まぁ……そう思ってない奴らも居るがな」
ライナー「……!」
リヴァイの視線の先には、こちらへ戻ってくるハンジとサシャ。
そして後ろから付いてくる2人の兵士が居た。
恐らく彼らが、実験に携わってあの光景を見た2人だろう、とライナーは思った。
ハンジ「お疲れ、サシャ。緊張した?」
サシャ「は……はい、ものすごく……」
調査兵1「…………」
調査兵2「……その、ハンジ分隊長……」
305 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:07:37.05 ID:IkOagJb0o
ハンジ「ん?何?」
調査兵2「分隊長は、どの程度本気で……その少女と例の巨人が関係しているとお考えですか?」
ハンジ「うーん……どの程度と言われてもなぁ」
調査兵1「……率直に言って、私は……この少女は危険だと思います。
もし本当に例の巨人がこの少女だとすれば……」
サシャ「っ……!」
ハンジ「コラコラ、本人を目の前にしてそういうことを言うものじゃないよ」
調査兵1「しかし……!」
リヴァイ「……お前がそう主張する根拠はなんだ?」
調査兵1「やはり……外見が酷似していることと、
例の巨人が人間の言葉を喋ったこと……この、2つです」
306 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:15:01.52 ID:IkOagJb0o
調査兵1「それらのことから、あの巨人がサシャ・ブラウスであると……。
この少女は、巨人が化けたものであると、そう推測します」
ハンジ「うん、まぁそう考えるのも仕方ないと思うけど……
君の言う根拠はどちらも決定的な証拠にはならないな。
喋ったって言っても、『私はサシャ・ブラウスです』って自己紹介したわけでもないんだし。
あの巨人がサシャに変身する瞬間か、それともその逆か、
そのどっちかを目撃していれば話は別になるけど」
調査兵1「それはっ……その通りですが……」
ハンジ「しかし確かに君の言う通りである可能性が高いことは事実だ。
だから、君たちに協力して欲しいんだよ。
サシャと例の巨人との関係性の有無を調べることにね」
調査兵1「……わかりました」
調査兵2「その……現時点では、まだ何も……?」
ハンジ「取り合えず今分かってるのは、サシャは意思疎通が可能なこと、
人肉に興味を示さないこと、生殖器があること、怪我が再生しないこと……くらいかな」
調査兵2「……そうですか」
307 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:23:08.82 ID:IkOagJb0o
ハンジ「他に質問は無い?無いなら早速調査に取り掛かろう」
調査兵たち「……はっ!」
ハンジ「それじゃ、悪いけど……ライナー。君はもう訓練兵舎に戻りなさい。
サシャのことは私達に任せてくれ。
あぁそれから、分かってると思うけど今日あったことはまだ内密に頼むよ。
訓練兵のみんなには、また私達の方から説明に行くからさ」
ライナー「……はい、わかりました」
サシャ「……ライナー……」
サシャは少し震えた声で名前を呼び、ライナーを見上げる。
自分に向けられる敵意と、何をどう調べられるのかという不安で、サシャは涙目になっていた。
今ここで唯一知っている顔と離れ離れになってしまうことが心細くて仕方ないのだろう。
そんな風に怯えるサシャの肩に手を置き、ライナーは言った。
ライナー「大丈夫さ、お前は人間なんだ。誰もお前に酷いことはしない。
すぐに証明されて、あいつらのところに帰れる。だからそんな顔をするな」
サシャ「ぐすっ……は、はい……」
そうして、サシャはハンジたちに連れられて行き、ライナーもその場を去った。
308 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:33:58.61 ID:IkOagJb0o
訓練兵舎に戻った頃には、ちょうど朝食の時間になっていた。
食堂に入ってきたライナーを見つけ、ベルトルトが声をかける。
ベルトルト「!ライナー……今までどこへ?」
ライナー「あぁ、ちょっとな。早くに目が覚めたもんで、散歩に出てた」
ベルトルト「……そうか」
ジャン「オイ、コニー!さっきから呼んでるのに無視しやがって!聞こえてんだろうが!オイ!」
コニー「……!」
ライナー「……あいつはどうかしたのか?」
ベルトルト「あぁ……余計なこと喋らないようにって、
一切声を出さないことに決めたらしいんだ。おかげで今朝からずっとあの調子だよ」
ライナー「…………」
すぐに声を出せるようになるからもうしばらく頑張ってくれ、とライナーが思った、その時。
食堂に教官と、そして調査兵が何人か入ってきた。
309 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:41:11.34 ID:IkOagJb0o
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コニー「なんだったんだ、さっきの……?」
エレン「わからん……。なんだって急に全員の刃を調べたりしたんだ……」
アルミン「多分、無許可で刃を使った者が居ないかを調べるためだと思うんだけど……。
でも一体何があったのか……」
調査兵たちが突然現れたかと思えば、
ほとんど何の説明もされないまま、訓練兵は各々の立体機動装置の刃を調べられた。
何故こんなことをするのか、大半の兵士はまったく分からなかったが、
ライナーはそれを知っていた。
サシャ……つまり1.7m巨人を殺した犯人を捜していたのだ。
情報を明かさなかったのは、恐らくハンジの指示だろう。
しかし当然、犯人など見付かるはずはない。
巨人の血は蒸発するため痕跡など残らないし、
そもそもサシャは死んでいないし犯人など存在しないのだから。
310 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:48:57.35 ID:IkOagJb0o
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エルヴィン「やはり、犯人は見つからなかったか」
リヴァイ「……犯人とやらが存在してるかどうかも怪しいがな」
エルヴィン「あぁ。ハンジの言うことが真実であれば、1.7m巨人は殺されてはおらず……
サシャ・ブラウスとして生き続けている可能性が高い。
犯人が特定できなかった以上、サシャの検査結果が出るのを待つしかないな」
リヴァイ「お前は……あいつをどうするつもりで居る」
エルヴィン「検査の結果次第だ。今はあらゆる可能性が考えられるが、
仮定の段階で何を言っても仕方がない」
リヴァイ「……そうだな」
エルヴィン「彼女の検査はすべてハンジに任せている。
我々にとってもサシャにとっても望ましい結果が出ることを祈ろう」
リヴァイ「あぁ……そう伝えておこう」
311 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/06(木) 22:56:11.68 ID:IkOagJb0o
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ハンジ「団長、なんて?」
リヴァイ「良い結果を期待しているんだそうだ」
ハンジ「……良い結果って言ってもなぁ。もし何も出なかった場合、団長は納得してくれるかな」
リヴァイ「さぁな……。取り敢えず現段階であらゆる可能性を想定していることには違いないだろう。
その中に、1.7m巨人とサシャは無関係というのもあることにはあるだろうが……」
ハンジ「やっぱり本命は1.7m巨人=サシャ?」
リヴァイ「だろうな」
ハンジ「だよね……」
リヴァイ「だがまぁ……ヤツのことだ。仮に巨人とサシャが結びつくような結果が出たとしても、
そう悪いようには扱わないはずだ。だから安心して全力で検査に取り組め」
ハンジ「あぁ……もちろん、そのつもりだよ」
322 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 20:38:32.72 ID:IXUTFnZOo
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翌日、夜。
ハンジ「お待たせ、サシャ。夕食を持ってきたよ」
サシャ「!わーい!ありがとうございます!」
ハンジ「どうだい?今日も色々調べさせてもらったけど、体の調子は……」
サシャ「むぐ、ハムッ、ハフハフっ……!えっ?あ……はい、大丈夫です!」
ハンジ「……そうか、なら良かった。それじゃ、私はこれで」
そう言い、ハンジはサシャの居る部屋を出、別室へ行く。
そこには調査兵2人が既に待っていた。
ハンジ「さて……それじゃあ現段階での検査結果を確認しようか」
調査兵たち「はっ」
324 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 20:48:53.52 ID:IXUTFnZOo
ハンジ「まず今日の昼に行ったサシャと通常の巨人との接触実験だけど……。
やっぱり以前行った時とは明らかに結果が違っていたね」
調査兵1「はい。以前とは全く逆の結果……。
サシャ・ブラウスは巨人の肉を食おうとはしませんでしたが、
あの巨人の方は彼女を食おうとしていました」
調査兵2「つまり巨人から見ても、今のサシャは巨人としては認識されていないということに……」
ハンジ「うん。サシャが巨人を見た時の反応も、人間と同じだった。
それから体組織だけど、これも昨日と今日調べた限りでは人間と同じだ。
だから既に判明していることも含めて、肉体は人間と変わらないと言って良いと思う。今の段階ではね」
調査兵1「……しかし……」
ハンジ「……あぁ。やっぱり、アレは少し気になる。もう少し様子を見よう」
調査兵2「ひょっとすると、肉体ではなく精神の方に問題が……?」
ハンジ「その可能性もあるし、まだ調べきれていない体の一部に原因があるのかも知れない。
いずれにせよ、まだ観察と検査は必要だ」
325 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 20:57:50.86 ID:IXUTFnZOo
・
・
・
それから数日が経った。
ここ数日でサシャの面会に行ったメンバーは何度かサシャについて質問されることもあったが、
コニー以外は全員、特に不自然なこともなく適当にごまかした。
そして、ある日の夕食後……ついにその時が来た。
ハンジ「……というわけで、今日は面会させてあげられるよ!
まぁ、やっぱりあんまり大人数は困るんだけどね。
誰かサシャに会いたいっていう子は居る?」
訓練兵たちがハンジから伝えられたのは、サシャが快方に向かっているという話だった。
それを聞き、特に驚いたのはやはり真実を知っている者たち。
当然彼らは今日も面会を望む。
更に今日は、前回の重苦しい雰囲気に圧されて面会に行けなかった者も何人か増えた。
ハンジ「おっ、今日はなかなか多いね。あんまり広い部屋じゃないけど……
このくらいなら行けるか。それじゃ、行こう。ついておいで」
326 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 21:04:51.30 ID:IXUTFnZOo
・
・
・
ハンジ「やぁ、お疲れ。変わりはない?」
調査兵1「はい、問題ありません」
調査兵2「……その子たちが……」
ハンジ「うん、サシャの友達。仲良しな子が多かったみたいだね」
調査兵1「……そのようですね」
ハンジ「それじゃあみんな、入って。サシャもきっと喜ぶよ」
そう言い、扉を開けるハンジ。
訓練兵たちは……特に前回の面会に行った者たちは、恐る恐ると言った様子で中に入る。
部屋の中には前回と同じようにベッドがあり、前回と同じようにサシャが寝ており、そして……
サシャ「!みなさん来てくれたんですか!」
327 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 21:12:29.10 ID:IXUTFnZOo
エレン「サ……サシャ、お前……!」
アルミン「な、なんともないのか!?どこか、異常は……!?」
サシャ「アルミン……はい、おかげさまで」
トーマス「な、なんだ。サシャの奴、いつも通りじゃないか」
サムエル「あぁ、一体どんな酷い有様なのかと思ったが……」
ミーナ「良かった……元に戻ったんだね、サシャ!」
マルコ「ははっ……良かったよ。本当……」
ジャン「あいつらが隠しやがるからどんなもんかと思えば……拍子抜けしちまったぜ」
そう軽口を叩くジャンだが、やはりその表情には他の同期と同じように安堵の色が浮かんでいた。
表には出さなかったが、ジャンも仲間のことは多少なりとも気にかけていたらしい。
328 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 21:18:46.33 ID:IXUTFnZOo
自分たちのよく知るサシャの姿……。
それを見て、小さな影が飛び出した。
クリスタ「サ、サシャぁ!」
ユミル「あっ、オイ……!」
ユミルの制止も間に合わず、クリスタはベッドの横まで行ってサシャの手を握る。
その目には早くも涙が浮かんでいた。
クリスタ「も、元に戻ったの……?元のサシャに、戻ったの……!?」
サシャ「クリスタ……はい、私、その……ほ、本当に……本当に……!」
クリスタ「良いの、私……サシャが元に戻っただけで……!良かった、良かったぁ……!」
サシャ「ぐすっ……ぅえぇえ……クリスタぁあぁ……!」
喜びの涙を流すクリスタを見て、とうとうサシャまで泣き出してしまう。
その様子を見て、ユミルは複雑そうな表情を浮かべた。
329 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 21:29:54.45 ID:IXUTFnZOo
尤も……複雑そうな表情を浮かべていたのはユミルだけではない。
コニー「オイ、これ喜んで良いんだよな?なぁ?喜ぶぞ?良いよな喜んでも?」
ユミル「わからねぇなら黙って喜んでろよバカ」
アルミン「た、確かに喜ばしいことではあるんだけど、でも……」
真実を知る者たちの大半は、もちろん喜びや安堵の感情はあったが、
やはり困惑や疑問も抑えきれなかった。
そんな彼らの様子を見、ハンジが声をかける。
ハンジ「今日初めて来た子たちはそのままサシャと会話してもらって構わないんだけど、
前回も来てた子は、ちょっと部屋の外に来てくれるかな?話さなきゃいけないこともあるしね」
エレン「ハ……ハイ、わかりました」
ライナー「…………」
330 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 21:43:00.90 ID:IXUTFnZOo
そうして、真実を知っている全員が外に出た。
と同時に、まずエレンが口を開く。
エレン「ど、どういうことですか!?あいつ、どうやって……」
ハンジ「しっ!声が大きいよ。ちゃんと私が話すから、質問はその後で。良いね?」
エレン「……!は、はい、すみません……」
ハンジ「まず先に言っておくと……どうしてサシャが元に戻ったのかは全く分からない」
エレン「は……!?じ、じゃあなんで……」
ミカサ「エレン、落ち着いて」
エレン「っ……」
ハンジ「実は君たちが面会に来た日の深夜から早朝にかけて……サシャが部屋から姿を消したんだよ。
それで行方を追っていたんだけど見付からなくて……。
もしかして何者かに殺されたんじゃないかとそう思ってた頃に、
人間に戻ったサシャを連れて現れたのが、そこに居るライナーだ」
331 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 21:53:59.49 ID:IXUTFnZOo
ベルトルト「っ!?」
アニ「……!」
コニー「ラ、ライナー!?お前本当かそれ!?」
ライナー「あぁ、本当だ」
クリスタ「で、でもどうして……!?」
ライナー「明け方、外に気配を感じたもんで見に行ってみたら、あいつが居たんだ。
俺が見つけた時には既に人間に戻っていた。気を失っていたがな」
ユミル「…………」
エレン「なんだよライナー!黙っていやがったな!早く言えっての!」
アルミン「し、仕方ないよ、エレン……。
これは流石に、そう簡単に公開して良い情報じゃない」
332 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:01:18.64 ID:IXUTFnZOo
ミカサ「……それじゃあ、先日みんなの刃を調べられたのは、犯人を捜すために……」
エレン「ん……?だが誰もサシャを殺してはいないんだよな?
犯人なんか居ないのに、なんで……」
アルミン「調査兵にも……情報をある程度伏せている、ということですか?」
ハンジ「その通り。1.7m級巨人=サシャ・ブラウスという可能性を考えているのは、調査兵団の中でも極一部だ。
彼らは『1.7m級巨人は殺されておらず、サシャになって生き続けている』と考えているけど、
それ以外の大半の兵士は、サシャと巨人とは無関係だと思ってる。
だから1.7m級巨人は殺されたものとして考えているのさ。
まぁ、無駄な労力と時間を使わせてしまって、彼らと訓練兵には少し申し訳ないと思ってるけどね」
コニー「…………」
ハンジ「今の説明でわかってくれたかな?」
コニー「!は、はい。なんとか、多分」
333 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:09:53.97 ID:IXUTFnZOo
アルミン「……一般の兵には情報を伏せていることは分かりました。
では、その……団長には、どの程度の情報を?」
ハンジ「そりゃ全部話したよ。こんな重大な情報を団長にまで隠すわけには行かないだろ?」
コニー「え……!だ、大丈夫なんですか?それ……」
ハンジ「多分ね。団長も、サシャの命は出来るだけ救ってやりたいと考えている。
口には出さないけれど、もしかしたらサシャの体に
巨人の痕跡が残っていないことを望んでさえいるかも知れないね。
イヤ……それは流石に言い過ぎかな。
まぁでも、もし何か異常が見付かってお偉い方に報告しなきゃいけなくなるような事態は、
団長も出来るだけ避けたがっているとは思うよ」
エレン「そ、それで!何か発見されたんですか!?」
その質問を聞いた途端……ハンジの表情が真剣みを増したのをエレンは感じた。
ハンジ「……そう。今日の本題はそれだ。
君たちを呼んだのも、第一の理由はそれを説明するためなんだ」
334 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:15:11.06 ID:IXUTFnZOo
険しい表情と、重々しい口調。
ハンジのその様子を見て、訓練兵の間に一気に緊張感が走る。
ライナー「まさか……見付かったんですか?何か、異常が」
ハンジ「検査の結果は、今のところは異常なし。人間と変わらない。
巨人としての特徴は一切見られなかった」
コニー「だ、だったら……!」
ハンジ「異常が発見されたのは検査によってじゃなく……観察によってだ。
数日あの子を観察するうちに、どうしても無視できない性質が見付かったんだよ」
アルミン「む、無視できない、性質……?」
固唾を呑んで、ハンジの説明を待つ訓練兵。
しばらく間を置き……ハンジは重々しく口を開いた。
ハンジ「……食欲が尋常じゃないんだよ、あの子。
なんというか、我慢ができないみたいで……十分な量は与えているはずなのに。
もしかしたら、巨人化の後遺症なのかも知れない……」
アルミン「…………」
337 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:22:34.99 ID:IXUTFnZOo
ハンジ「これが唯一なんだけど、やっぱり1つでもそういうのが見付かってしまうと……」
エレン「あぁ、イヤ……それはいつも通りです」
ハンジ「は?」
コニー「調理場から芋を盗んで入団式中に食うような奴ですから」
アルミン「他にも何度か盗みはやってるかと」
クリスタ「パンをあげたら神様扱いされたこともありますし……」
ミカサ「食べ物さえ与えれば何をしても許してくれます」
ハンジ「あぁ……そうなのか。すごいね、あの子」
ライナー「……それでは、今のところあいつには異常はないということですね?」
ハンジ「あははっ、うん。そうみたいだね。安心したよ。
この調子なら君たちのところへ帰れる日もそう遠くはなさそうだ」
そうして、エレンたちも再び部屋へと戻り、サシャと会話をして……。
懐かしい雰囲気を堪能し、建物をあとにした。
339 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:32:15.42 ID:IXUTFnZOo
そして……その日の深夜。
みんなが寝静まったのを確認し、再び3人は屋外に集まっていた。
ベルトルト「……ライナー……。サシャはもしかして……」
ライナー「あぁ、そうだ。俺がやった」
アニ「!つまり……アルミンの考えは正しかったってこと?」
ライナー「そのようだな。大したもんだぜ、あいつは本当に」
ベルトルト「……しかしわかってるのか?お前がやったことはあまりにも……」
アニ「そうだね……。結果は確かに良かったみたいけど、
下手すればあんただけじゃなく私達まで……」
ライナー「あぁ……その通りだ」
ベルトルト「ライナー。もう二度と……こんな無茶はしないでくれよ」
ライナー「……わかってるさ。もう、あんな馬鹿な真似はしない……絶対にな」
340 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:40:09.54 ID:IXUTFnZOo
・
・
・
1ヶ月後。
エルヴィン「……そうか。異常は無しか」
ハンジ「えぇ。この1ヶ月間あの子の体を隅々まで調べつくしましたが、人間と変わりありませんでした。
行動も観察しましたが、報告にあったような精神的異常などは見られませんでした。
本当にただの健康な人間だと判断して構わないかと」
エルヴィン「あぁ……そのようだ。しかしそうなると、本当に彼女は巨人とは無関係だったのか。
それとも、巨人としての性質をまったく失ってしまったのか……。
謎は謎のままでわからずじまいになってしまったな」
ハンジ「私も貴重な1.7m巨人を失ってしまい、とても残念です」
エルヴィン「……とにかく、わかった。サシャの身柄を訓練兵団へと返そう。
ただし分かっているとは思うが……今後も警戒を怠ってはいけない。
彼女らも、そして我々もな」
ハンジ「えぇ……もちろん」
341 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:49:27.22 ID:IXUTFnZOo
・
・
・
サシャ「か、帰れるんですか!?みんなのところへ……!」
ハンジ「うん、団長の許可も下りたことだしね!」
リヴァイ「……つまり、この1ヶ月間ただのガキの体を調べまくってたというわけだな。
こんなくだらねぇことに付き合わされてたお前らには同情するが……」
調査兵1「い、いえ。サシャを疑っていたのは自分ですし……」
調査兵2「それに、ただの人間だと分かって寧ろ安心しました。
あ、いや!もちろん、巨人の謎に迫る手がかりが得られなかったのは残念ではありますが!」
リヴァイ「とにかく……そういうわけだ。お前にはもう用はない。
とっとと自分の居るべき場所へ帰れ」
サシャ「あはは……。え、えっと、お世話になりました、みなさん……!
本当に、ご迷惑、その……あ、ありがとうございました!」
342 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 22:58:52.56 ID:IXUTFnZOo
調査兵1「良いって別に。それより、仲間が待ってるんだろ?
早く帰って安心させてやりな」
調査兵2「だがもし何か異常があったらすぐ来いよ?」
リヴァイ「…………」
サシャ「は、はい!では、その……失礼します!」
ハンジ「取り合えず外までは付き添おう。そこからは迎えに任せるけどね」
サシャ「はい?迎え……?」
ハンジがその疑問に答える前に、2人は屋外へ出る。
そしてそこには……
ライナー「!よぉ……サシャ」
サシャ「えっ?ラ、ライナー?……だけ?」
344 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:05:55.63 ID:IXUTFnZOo
ライナー「あぁ。ハンジ分隊長にお前の迎えを頼まれたんだが……」
ハンジ「そういうこと。早く恋人と2人きりになりたいかなと思ってね」
ライナー「……は?」
2人にとってまったく想定外の発言。
それを聞いてライナーは呆気に取られ、サシャはほんの少し慌てた。
サシャ「こっ、恋人っ?私とライナーが?」
ハンジ「え?うん……アレ?もしかして違った?」
ライナー「そりゃ、勘違いです……俺とサシャは別に」
サシャ「し……しかし何故そんな勘違いを……?」
ハンジ「だってあんまり仲良さそうだったし……。
お互い好き合ってる感じはしたんだけどなぁ」
345 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:12:46.98 ID:IXUTFnZOo
ライナー「…………」
サシャ「…………」
ハンジ「……ま、いっか。
取り敢えずライナー、サシャを訓練兵舎までエスコートしてあげて。
この子は道を知らないはずだからさ」
ライナー「……わかりました」
ハンジ「あ、そうそう。それからサシャにはさっきも言ったけど……。
次にもし何か異変が起きたらすぐにここに来るんだよ。約束できるね?」
ライナー「はい、もちろんです」
ハンジ「よろしい。それじゃ、もし縁があれば卒業後にまた会おう。じゃあね」
サシャ「え、えーっと……さようなら!ありがとうございました!」
346 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:21:01.95 ID:IXUTFnZOo
・
・
・
そうして……サシャ・ブラウスは訓練兵団へと帰って来た。
サシャはまずみんなの前で迷惑をかけたと言って謝り、
それから個別にアルミン、ライナー、クリスタにも改めて謝った。
当然、3人ともそれを笑顔で許した。
彼ら以外の大半の同期は、やはり初めはどう接すれば良いのか少し戸惑っていたようだったが、
被害者であるライナーやクリスタたちがサシャと楽しく話しているのを見て、
翌日にはぎこちなさもほぼ解消され、それまで通りの雰囲気が戻っていった。
……ただ、ほんの少しだけ、サシャの様子に違和感を覚える者が居た。
前日にサシャが帰ってきて、そして今日半日を過ごした結果……
サシャに対して覚えた違和感。
クリスタ「……サシャ?何見てるの?」
サシャ「あぁ、はいっ?なんでしょう?」
347 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:31:07.23 ID:IXUTFnZOo
クリスタ「あ、イヤ……今、ぼーっと何か見てなかった?確かあっちの方を……」
ユミル「ぼーっと、だと?……オイお前、まさか……」
サシャ「え?あっ……!ち、違いますよ!?前みたいに意識が飛んでたりとかは……」
クリスタ「あ、うん!大丈夫、前のとはちょっと違う感じだっていうのは分かってるから!」
ユミル「じゃあなんだってんだよ」
サシャ「あ、はい……。その、ちょっと考え事をしてて」
クリスタ「考え事……?」
ユミル「はッ。どうせ今日の晩飯のことでも考えてたんだろ?」
サシャ「あぁいえ、それはいつも……」
ユミル「…………」
348 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:38:01.30 ID:IXUTFnZOo
クリスタ「じゃあ、何の考え事をしてたの?」
サシャ「え?えーっと……ゆ、夢を……」
ユミル「夢?なんだそりゃ」
サシャ「あはは……。ま、まぁなんでもない夢なので、気にしないでください」
ユミル「あぁ?そこまで言ってやめんのかよ」
サシャ「す、すみません……」
クリスタ「……悪い夢じゃ、ないんだよね?」
サシャ「あ……はい。悪くはないと思います。たぶん……」
クリスタ「そっか、だったら良かった!じゃあ、無理して話さなくても良いからね」
ユミル「チッ……」
サシャ「あ、ありがとうございます」
349 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:45:46.86 ID:IXUTFnZOo
・
・
・
夢の内容と、何をぼーっと見ていたのかを追求されなくて良かった、とサシャは思った。
サシャはこの1ヶ月間、同じ夢をよく見るようになった。
厳密には細かいところが色々と違うのだが、共通してそれは……助けてもらう夢。
真っ暗闇の中で彷徨っていると、誰かが手を引いて明るいところまで導いてくれる。
暗い水の底で息が出来ず苦しんでいると、誰かが手を掴んで引き上げてくれる。
そんな夢。
そして、その手はすごく温かい。
冷たく冷え切った自分の両手を、温かな、大きな手のひらで包み込むように掴んでくれて、
自分を温かな光の中へと連れて行ってくれる。
そんな夢。
夢の中では、その誰かの顔を確かに見た。
ただ、はっきり見えたのはその人の瞳だけ。
距離が近すぎたのだろうか?
目だけははっきりと覚えているのに、顔全体はぼんやりとして思い出せない。
350 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/07(金) 23:52:36.71 ID:IXUTFnZOo
しかしサシャには、その目に見覚えがあった。
自分のよく知る目だった。
夢の中で自分を助けてくれたのは、
あの苦しみから自分を解放してくれたのは、多分……
サシャ「!」
ライナー「おっと……悪い。ぶつかりそうになっちまった」
食事を終え、一足先に部屋に戻ろうとしていたサシャ。
そんな彼女の目の前には……夢でよく見る、あの瞳があった。
完全に意表をつかれ、サシャは咄嗟に目の前のライナーから距離を取ろうとする。
……が、足がもつれてバランスを崩し、そのまま後ろに……
351 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/08(土) 00:03:53.15 ID:J0tosHhQo
ライナー「!?」
サシャが倒れる前にライナーはいち早く反応し、
片手でサシャの手を掴み、もう一方で背中辺りを支える。
その瞬間……自分を支えてくれる手の大きさと伝わってくる温かさを、サシャは確かに感じた。
ライナー「オイオイ……しっかりしろよ、サシャ」
体勢を立て直し、そして改めてライナーと向かい合うサシャ。
ほんの数秒見つめ合ったかと思えば、不意にサシャは顔を俯かせる。
ライナーがそれを疑問に思ったのと同時に、サシャは右手を振りかぶり……。
とん、と軽くライナーの胸板を叩いた。
サシャ「ラ……ライナーの馬鹿」
ぽつりと呟き、食堂を足早に出るサシャ。
そんなサシャの後姿を眺めながらライナーは、
サシャと結婚するのも悪くないかも知れん、と思った。
おしまい
355 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/08(土) 00:07:38.42 ID:J0tosHhQo
付き合ってくれた人ありがとう、お疲れ様でした。
ギャグのシリアス化とか無謀なことをしてはいけない(戒め)
362 :おまけ 別エンド 2013/06/08(土) 00:16:00.66 ID:J0tosHhQo
ライナー「オイオイ……しっかりしろよ、サシャ」
体勢を立て直し、そして改めてライナーと向かい合うサシャ。
ほんの数秒見つめ合ったかと思えば、不意にサシャは顔を俯かせる。
そして……
サシャ「……ありがとう……」
ぽつりと呟いた。
その様子を見てライナーは、おかしい、どこか様子が変だ、と感じた。
そしてすぐに……最悪の可能性に思考が至った。
ライナー「オ、オイ!お前、まさかまた……!」
サシャ「へっ?」
ライナー「くそっ……!早く調査兵団のところへ連れて行かねぇと……!」
サシャ「……ラ、ライナーのバーカ!」
そう叫び、サシャは走って食堂から出ていく。
363 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/08(土) 00:17:47.57 ID:J0tosHhQo
その様子を、同期の大勢が見ていた。
そしてその視線が……主に女子からの視線が自分に突き刺さるのを、ライナーは感じた。
アニ「はぁ……」
ミーナ「……やっちゃったね、ライナー」
ミカサ「ライナー、あなたはサシャに謝るべき」
ユミル「お前もなかなか酷ぇことするなぁ、オイ。見てる分には笑えたけどよ」
クリスタ「わ、笑えないよっ!ライナー、今のはあんまりだよ!」
ライナー「……!?」
割と理由のある言葉の暴力がライナーを襲う!
おしまい
関連リンク
進撃の巨人の厳選面白SSまとめ - RENOTE [リノート]
renote.net
『進撃の巨人』に関する名作SSを厳選してまとめています。シリアスな本編に辛くなったら、たまにはクスっと笑える面白いSSをお楽しみください。中にはキャラ崩壊・ネタバレしているものもあるかもしれないのでご注意ください。
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アニ・レオンハート(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
アニ・レオンハートとは、『週刊少年マガジン』に連載されている諫山創原作の漫画・テレビアニメ作品に登場する人物である。主人公のエレン・イェーガーと同じ第104期訓練兵団に所属し、卒業後は憲兵団に入団する。口数が少なく感情を表に表さないため、取っ付きにくい印象を与える性格。しかし格闘技に優れており、冷静な判断を下せるため訓練兵団卒業の際は4位の成績を収める実力の持ち主。
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フロック・フォルスター(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
フロック・フォルスターとは『進撃の巨人』の登場人物で、104期訓練兵団の卒業生。当初は駐屯兵団に所属していたが、ウォール・マリア最終奪還作戦の前に調査兵団に移籍した。「獣の巨人」を倒すための特攻作戦では唯一生き残り、瀕死のエルヴィン団長をリヴァイ達の元へ連れて行った。その後はエレンをパラディ島の救世主として祭り上げる「イェーガー派」の中心人物として、兵団総統を暗殺しクーデターを先導した。
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エレン・イェーガー(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
エレン・イェーガーとは諫山創による漫画『進撃の巨人』の主人公。壁の外の世界に強い憧れを持っており、幼少期から調査兵団に入ることを目指してきた。その想いは、母親を巨人に食い殺されたことで一層強まり、調査兵団に入って巨人を駆逐することを心に誓う。性格は熱血漢で直情的。無鉄砲と思えるほどの勇敢さから、強大な巨人相手にも物怖じせずに向かっていく。命の危機に瀕した際に巨人化する能力に目覚め、人類の自由のためにその力を振るっていくことになる。
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グリシャ・イェーガー(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
グリシャ・イェーガーとは『進撃の巨人』の登場人物で主人公エレン・イェーガーの父。シガンシナ区で診療所を開き街の人々から尊敬を集めていたが、シガンシナ区に巨人が流入した後行方不明となる。失踪直前エレンに巨人化の薬を打ち込み、世界の真実が隠された自宅地下室の鍵をエレンに託した。物語中盤で彼が壁外の世界から「始祖の巨人」奪還のためにやってきた巨人化能力者であったことが明らかとなる。
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ピーク・フィンガー(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ピーク・フィンガーとは『進撃の巨人』の登場人物で「車力の巨人」の継承者。「九つの巨人」継承者で構成されるマーレの戦士の一員として、数々の戦場で功績を打ち立ててきた。当初は始祖奪還計画に参加せずマーレ本国を守っていたが、850年「獣の巨人」であるジーク・イェーガーと共にパラディ島に上陸する。ウォール・マリア奪還を狙う調査兵団との決戦では後方支援を担当し、負傷したジークと「鎧の巨人」であるライナー・ブラウンの逃走を助けた。性格はマイペースだが、冷静沈着で判断力に優れている。
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ファルコ・グライス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ファルコ・グライスとは『進撃の巨人』のキャラクターでマーレの戦士候補生。戦士候補生の同期であるガビ・ブラウンに好意を抱いており、彼女を救うために「鎧の巨人」継承を目指している。内気な性格だが、「悪魔の末裔」と言われるパラディ島の人々に対しても自分達と変わらない人間だと捉える優しい心の持ち主。心的外傷を負った兵士にも親切に接しており、そこでクルーガーと名乗る負傷兵と出会い、交流を深めていく。
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キース・シャーディス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
キース・シャーディスとは『進撃の巨人』の登場人物で第104期訓練兵団の指導教官。スキンヘッドに顎ひげを生やした強面の男性で、訓練兵の間では鬼教官として恐れられている。元々は第12代団長として調査兵団を率いていたが、無謀な壁外調査を繰り返し多くの部下を死なせたにもかかわらず成果を残せなかったことから、自分の無能を悟りエルヴィン・スミスに団長職を引き継がせた。主人公エレンの父親であるグリシャ・イェーガーとは以前から面識があり、彼が消息を絶つ直前に顔を合わせた最後の人物である。
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ロッド・レイス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ロッド・レイスとは、「進撃の巨人」に登場するキャラクターである。壁内人類の真の王家であるレイス家当主。実質的には壁内での最高権力者である。ウーリ・レイスの兄であり、フリーダ・レイスやヒストリア・レイスの父親。正妻との間に5人の子がいたが、当時使用人として働いていたアルマとも関係を持ち、ヒストリアが産まれたことにより、事実的には子供は6人。だがグリシャにより正妻との間の子は皆殺されてしまい、生き残っている子供はヒストリアただ1人である。
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ダイナ・フリッツ(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ダイナ・フリッツとは『進撃の巨人』の登場人物。主人公エレンの父親グリシャの前妻で「獣の巨人」ジークの母。その正体はフリッツ王家の末裔。ストーリー上、巨人の歴史と王家の情報を語る重要な役割を持つ。パラディ島に移住することを拒みマーレに留まった一族は、代々巨人の情報を隠し持っており、その末裔であるダイナはエルディア復権派と共に始祖の巨人の奪還を企てるが、計画は息子ジークの密告により失敗。ダイナは巨人化後、グリシャの後妻であるカルラを捕食する。最期はエレンの持つ座標の力で巨人の群れに喰われた。
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ケニー・アッカーマン(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ケニー・アッカーマンとは『進撃の巨人』の登場人物で、中央第一憲兵団対人立体機動部隊の隊長。かつて「切り裂きケニー」の異名を取った大量殺人鬼だったが、ウーリ・レイスとの出会いを経て現在は中央第一憲兵団に所属し対人戦闘を専門とする部隊を率いている。リヴァイ・アッカーマンの育ての親であり、彼に戦闘技術を教えた人物でもある。その戦闘能力はリヴァイと同等かそれ以上であり、対立した調査兵団を大いに苦しめた。
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ヒッチ・ドリス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ヒッチ・ドリスとは『進撃の巨人』の登場人物で、憲兵団の新兵。アニ・レオンハートとは同期でルームメイト。ウェーブヘアが特徴の少女で、軽薄で不真面目な言動が多い。他の新兵同様安全な内地で楽をするために憲兵団に入ったが、実は機転の利くところがある。アニのことは愛想のない同期だと思っていたが、ストヘス区の戦闘以降行方不明になったことを心配しており、アニの正体が「女型の巨人」であることを知って大きなショックを受けていた。同期のマルロ・フロイデンベルクに好意を持っているが、マルロ本人は気づいていない。
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エルヴィン・スミス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
エルヴィン・スミスとは『進撃の巨人』の登場人物であり、調査兵団第13代団長である。調査兵団は人類の生存圏を広げることを目的とし、日々巨人との死闘を繰り広げている。その類まれなる頭脳と判断力から大きな功績を挙げているが、目的のためなら手段を選ばない非情さから「悪魔的」と称されることもある。彼の真の目的は世界の真実を解き明かし、「人類は王家によって記憶を改竄された」という父の仮説を証明すること。人類最強と称されるリヴァイ兵士長を調査兵団に入れたのも彼である。
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ベルトルト・フーバー(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ベルトルト・フーバーとは『進撃の巨人』の登場人物で調査兵団団員。第104期訓練兵団を3位で卒業し、どの分野でもそつなくこなすことができる優秀な人物である。ただし優柔不断で判断を他人に任せる傾向があり、積極性に欠けることから他の同期と比べると少し影が薄い。その正体は、ウォール・マリア陥落の主因となった「超大型巨人」であり、始祖奪還作戦のために大国マーレから派遣された「マーレの戦士」の1人だった。任務を達成し故郷に帰ることを切望していたが、結局その願いは叶わず異国の地で命を落とすこととなる。
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ポルコ・ガリアード(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ポルコ・ガリアードとは『進撃の巨人』の登場人物で「顎の巨人」の継承者。「九つの巨人」継承者で構成される「マーレの戦士」の一員として、「顎の巨人」の持ち味である硬い顎と牙や俊敏性を活かし数々の戦場で活躍している。戦士候補生時代の同期であるライナー・ブラウンとは「鎧の巨人」継承権をめぐって争ったライバルだった。自分ではなく能力の低いライナーが「鎧の巨人」継承者として選ばれたことや、兄のマルセルがライナーをかばって巨人に食われたことから、ライナーに対して悪感情を抱いている。
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ライナー・ブラウン(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ライナー・ブラウンとは『進撃の巨人』の登場人物で調査兵団の団員。主人公エレン・イェーガーとはウォールローゼ南区第104期訓練兵団時代の同期である。責任感が強く、リーダーシップもあることから同期の中ではまとめ役を担っていた。しかし、その正体はウォール・マリアを破壊した「鎧の巨人」であり、始祖奪還を目的にパラディ島に送り込まれたマーレの戦士である。正体が判明した後はたびたびエレン達と対立し、始祖の力を巡って死闘を繰り広げていく。
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ガビ・ブラウン(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ガビ・ブラウンとは『進撃の巨人』の登場人物で、「マーレの戦士」候補生。天真爛漫で型破りな性格で、憧れの従兄であるライナーから「鎧の巨人」を継承するため日夜訓練に励んでいる。パラディ島のエルディア人を悪魔の末裔として強く憎んでおり、彼らを皆殺しにして自分達善良なエルディア人を収容区から解放することを願っていた。しかし成り行きでパラディ島に渡ることとなり、そこで出会った人々との交流からガビの考え方は変化し始める。
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ハンジ・ゾエ(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ハンジ・ゾエとは『進撃の巨人』の登場人物で調査兵団所属のベテラン兵士。初登場時は分隊長だったが、後にエルヴィン・スミス団長の後を継いで調査兵団第14代団長に就任する。ゴーグル(平常時は眼鏡)を着用し、茶髪を無造作に1つにまとめた中性的な外見をしている。明るく聡明な人物だが、巨人に対する情熱は人一倍で変人揃いの調査兵団内でも特に異彩を放っている。ウォール・マリア最終奪還作戦以降は左目を負傷したことから眼帯を着用している。
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ダリス・ザックレー(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ダリス・ザックレーとは『進撃の巨人』の登場人物で憲兵団・駐屯兵団・調査兵団の3つの兵団を束ねる総統。特別兵法会議においてエレン・イェーガーの処遇を調査兵団に委ねた人物である。王政編では調査兵団団長のエルヴィン・スミスや駐屯兵団司令官のドット・ピクシスらと共にクーデターに加担する。実はエルヴィンが決起する以前から王政に根深い嫌悪感を抱いており、密かに体制転覆の機会をうかがっていた。王都制圧後は身柄を拘束した王政幹部達に喜々として拷問を行っている。
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アルミン・アルレルト(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
アルミン・アルレルトとは『進撃の巨人』の登場人物で、主人公エレン・イェーガーの幼馴染。金髪ボブカットの中性的な外見を持つ。大人しいが芯の強い勇敢な性格で探求心が強い。祖父の影響で人類はいずれ壁の外に出るべきだという思想を持っており、エレンが外の世界に憧れるようになったのもアルミンの影響である。小柄で身体能力は低いものの、知能や判断力はずば抜けており、エレンや調査兵団の窮地をその知略で度々救っている。
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進撃!巨人中学校(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ
『進撃!巨人中学校』とは中川沙樹が描く、諫山創の『進撃の巨人』の公式学園パロディ漫画。2015年にProduction I.G製作でアニメ化。前半をアニメパート、後半を出演声優たちによるバラエティ番組の実写パートとして30分枠で放送。中学生になったエレン・イェーガーは進撃中学校へ入学する。学校には巨人も在籍しており、エレンは巨人に恨みを持っており巨人を駆逐しようと非公式部活「調査団」へ入部した。
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ミカサ・アッカーマン(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
ミカサ・アッカーマンとは諫山創による漫画『進撃の巨人』の登場人物で、主人公エレン・イェーガーの幼馴染。本作のヒロイン的ポジションで、幼い時にエレンに助けられた経験から、彼を守ることを自分の使命だと考えている。驚異的な身体能力を持ち、トップの成績で訓練兵団を卒業。実戦でも1人で複数の巨人を討伐する実績を残す。性格は寡黙で口下手だが、エレンのこととなると取り乱す一面もある。物語後半において、母方の祖先が東洋にあるヒィズル国将軍家だったことが明らかになった。
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クリスタ・レンズ/ヒストリア・レイス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
クリスタ・レンズ(ヒストリア・レイス)とは、諫山創による漫画『進撃の巨人』の登場人物。第104期訓練兵団卒業生であり、主人公エレン・イェーガーは同期の1人。小柄で温厚、思いやりのある可愛らしいアイドル的な存在として登場する。同期のユミルと仲が良い。成績10位以内に入っているが、実際はユミルからその座を譲られただけで身体能力は人並みである。本名はヒストリア・レイスといい、壁内世界の真の王家の末裔であることが後に発覚する。
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フリーダ・レイス(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
フリーダ・レイスとは『進撃の巨人』の登場人物であり、レイス家の長女。黒髪で青い瞳を持つ。レイス家当主のロッド・レイスとその正妻の第1子として生まれた。表向きは地方の貴族として振る舞っているが、実際は壁内の真の王家の末裔。レイス家に代々引き継がれている特別な巨人能力を叔父のウーリ・レイスから引き継ぎ、宿している。本人の飾らない性格は多くの者から慕われており、妾の子である異母妹ヒストリアにも姉として優しく接していた。
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イェレナ(進撃の巨人)の徹底解説・考察まとめ
イェレナとは『進撃の巨人』の登場人物で反マーレ派義勇兵の中心人物。マーレに滅ぼされた国の出身で、「獣の巨人」継承者で王家の血を引くジーク・イェーガーの信奉者として活動し、パラディ島の近代化に大きく貢献した。ジークの提唱する「エルディア人安楽死計画」達成のためなら寝食を共にした仲間すら殺害する冷酷な性格の女性。しかし実際にはマーレの被害者というのは虚偽であり、「世界を救う英雄」に憧れているだけのごく一般的なマーレ人である。
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