【進撃の巨人】サシャ「もう、嫌だ……暴力なんて……」【厳選名作SS】
進撃の巨人の厳選名作SSを掲載しています。なんだか最近サシャの様子がおかしい。ちょっとしたことで感情的になったり、対人格闘訓練中にぼーっとしていたり…一体サシャに何が起こっているのでしょうか?
97 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/02(日) 23:30:44.80 ID:j/wo2EsFo
時間にすれば短いものだが、その暴力はクリスタにとってはそのまま永遠に続くとすら感じられた。
このまま自分は何も抵抗できずにサシャに殴られ続けるのか……そう思った。
……が、サシャは唐突に殴打をやめた。
そして、一瞬後。
サシャは大きく口を開け……
サシャ「っ……!?」
強い蹴りがサシャの胸元に直撃したのは、それとほぼ同時だった。
その衝撃に彼女は上半身を仰け反らせ、勢いよく後ろに倒れ、
クリスタは、ようやくサシャから解放された。
……何者かがサシャの暴力を、別の暴力によって強制的に止めたのだ。
仰向けに倒れたサシャはわずかに上半身を起こし、蹴りの主を確認する。
自分とクリスタの間に立ち、こちらを見下ろしていたのは……
ユミル「……何してんだ、お前……?」
99 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/02(日) 23:38:58.38 ID:j/wo2EsFo
ユミル「なぁ……オイ?今、お前……クリスタに何してた?」
ユミルの表情は、同期の誰もが今までに見たことのないものだった。
口調こそ静かだったが……その目には尋常でない怒りがこもっていた。
……当然、異変を察知し駆けつけたのはユミルだけでない。
周りには……特にクリスタの周りには、彼女を心配する仲間たちが多く集まっていた。
エレン「クリスタ!オイ、大丈夫か!?」
クリスタ「う……う、ん……」
アルミン「っ……なんて、ことを……!」
意識は、一応ははっきりしているようだったが……。
クリスタの愛らしい顔は今や、
見る者すべての心を悪い意味で締め付けるのに十分な有様に変わり果てていた。
ユミル「…………」
100 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/02(日) 23:45:22.55 ID:j/wo2EsFo
サシャに対峙していたユミルだが、クリスタの周囲に居る者たちのざわめきを聞き、
一瞬だけ振り向き、その姿を見……その目はより黒く染まる。
サシャに向き直ったユミルの目には、怒りとも憎しみともつかない、強い負の感情が宿っていた。
ユミル「……てめぇも……てめぇも同じ目に遭わせてやろうか?」
そう言って、ユミルは地べたに座り込んでいるサシャに歩み寄り、胸倉を掴む。
そして拳を振り上げる……が。
その拳が振り下ろされることはなかった。
ミカサ「待って……!」
ユミル「……離せよ」
ミカサ「駄目。落ち着いて、ユミル……」
ユミル「離せって……言ってんだろうが!!てめぇは今のを見て何も感じねぇってのか!?
エレン以外の奴はどうなっても構わねぇってか!?あぁ!?」
101 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/02(日) 23:53:07.19 ID:j/wo2EsFo
ミカサの手を振り解けないもどかしさからか、ユミルは遂に感情を表にだした。
しかしそれでも、ミカサは冷静に対応する。
ミカサ「違う、私だって何も感じてないわけじゃない。でも……何か様子が変……」
ユミル「は!?何言って……」
……ミカサは、じっとサシャを見ていた。
ユミルは反射的にミカサの目線を追う。
感情を表に出したことで逆に少し冷静になれたのか……
直前まで気付かなかったサシャの明らかに異常な様子が、はっきりと見えた。
サシャ「はっ……はっ……はっ……はっ……」
呼吸は乱れ、体は震え、涙すら流し……その表情は、絶望に染まっている。
その異常の原因がユミルの蹴りのダメージなどではないことは、ユミル自身にも分かった。
ユミル「……なんだよ、お前……」
サシャ「わ……わた、し……あ……」
キース「……一部騒がしいと思えば……どういうことか説明してもらおうか」
102 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/02(日) 23:59:18.43 ID:j/wo2EsFo
異変が起きてから恐らく1分も経ってはいない。
しかし事態がほぼ収拾してから現れたキースに、ユミルは不満を感じずにはいられなかった。
ユミル「……随分早いご登場ですね……」
キース「不満はあるだろうが後にしろ。まずはクリスタ・レンズを医務室まで運べ」
ユミル「……はっ」
サシャ「き、教、官……」
キース「サシャ・ブラウス……あれは貴様がやったのか?」
怒鳴ることなく、キースは静かに問いただす。
もっとも、サシャの両手は血で濡れており、サシャが加害者であることをキースはほぼ確信していた。
しかし状況の異様さを感じ取りキースは敢えて冷静に質問した。
そしてやはり……状況は普通ではなかった。
加害者であるはずのサシャはキースに向かって跪き、声を震わせてすがり付いた。
サシャ「や……やだ……助け、助けて、ください……!助けて……!わ、私、わたし……!」
103 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 00:06:37.46 ID:gozl7qrXo
その様子を見て、キースはサシャの手を掴み、立たせる。
そして周りに集まっていた訓練兵に向かって言った。
キース「私は一度この場を離れるが……他の者は引き続き訓練に励め」
ライナー「……しかし教官」
キース「ここの医務官は優秀だ。それに貴様らが心配したところで
クリスタ・レンズの回復には関係ない。わかったら訓練に戻れ」
ライナー「……はっ」
キース「来い、ブラウス」
サシャ「うっ……ぁ……ぅぁあ……」
そうして、サシャはキースへ連れられ、
訓練場に異様な雰囲気を残したままその場を去った。
115 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 20:58:33.54 ID:gozl7qrXo
・
・
・
医務室。
ベッドに横になってぼんやりと外を眺めていたクリスタだったが、
ふと人の気配を感じて入り口の方へ顔を向ける。
ユミル「…………」
クリスタ「あ……ユミウ……」
ユミル「はッ……酷ぇツラだな。それになんだよユミウって。笑える喋り方しやがって」
クリスタ「……ごめんぇ。口の中が切ぇたってて……」
ユミル「だったらもう喋るんじゃねぇよ。ただでさえ面白ぇツラになってんだ。
私を笑い死にさせるつもりじゃないんなら黙ってろ」
クリスタ「……ん……」
116 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:04:45.99 ID:gozl7qrXo
ユミル「で……具合はどうだ」
クリスタ「……さっき喋ぅなって」
ユミル「……うるせぇよ……。私が質問したのには答えて良いんだよ」
クリスタ「ふふっ……」
ユミル「ちっ……。まぁ笑えるぐらいならまだマシみたいだな」
クリスタ「あぃぁと、ユミウ」
ユミル「だから私まで笑わせる気かっての。アイアト?意味がわからねぇ。
何言ってるかさっぱりだからもう喋るな」
クリスタ「ん……」
117 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:09:59.09 ID:gozl7qrXo
しばらく、沈黙が続いた。
何も話すことがないのでクリスタはまたぼんやりと窓から外を眺め、
ユミルはそんなクリスタの横顔を眺める。
視線を感じクリスタがユミルの方へ顔を向くと、ユミルは目を逸らす。
そんなことが何度か続いた、その時。
アルミン「クリスタ、入るよ……?」
ライナー「…………」
ユミル「……あぁ?なんだお前ら」
クリスタ「あ……」
ユミル「お前は喋るなっつってんだろクリスタ。……で、何の用だよ」
アルミン「……ごめん。クリスタに少し、話があるんだ……」
118 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:16:12.87 ID:gozl7qrXo
ユミル「そういうことなら悪いが帰ってくれ。今のこいつは喋るのは無理だ」
ライナー「なら、話を聞くだけで良い。相槌程度でも十分だ」
ユミル「……お前ら分かってんのか?こいつがどんな状態なのか……」
クリスタ「ユミ……ル」
ユミル「……!」
クリスタ「きっと、大切な、話……だかぁ……ね?」
ユミル「……あぁーわかったわかった、流石女神さまだ。
2人のご足労は無駄にできないってか、お優しいね」
クリスタ「ユミゥ……」
ユミル「はぁ……ホラ、とっとと済ませな。話とやらをよ」
アルミン「ありがとう、ユミル、クリスタ。
えっと……喋るのが辛いようなら、ライナーの言った通り相槌でも構わない。
こっちも出来るだけ質問はハイかイイエで答えられるものにするから」
クリスタ「……うん」
119 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:24:25.86 ID:gozl7qrXo
アルミン「先に言っておくけど、話っていうのはサシャの件だ」
クリスタ「ん……」
アルミン「それじゃあ、早速訊くけど……。
自分がサシャに殴られる理由に、何か心当たりはある?」
ユミル「は?お前、クリスタが悪いって言いたいのか?」
アルミン「えっ?イ、イヤそういうわけじゃ……」
ライナー「ユミル。……こいつにはこいつなりの考えがある」
ユミル「……チッ」
ライナー「気にするなアルミン、続けてくれ」
アルミン「う、うん……。えっと、それで、どう?クリスタ……心当たりはある?」
クリスタは黙って首を横に振る。
アルミンはそれを見て、やっぱりそうかと言うように、そのまま次の質問に移る。
120 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:31:01.76 ID:gozl7qrXo
アルミン「じゃあ、サシャに殴られる直前、彼女の様子が変わったりした?
……例えば突然無表情になって黙ったりとか。そういうことはあった?」
クリスタは今度は黙って頷く。
それを見てアルミンとライナーは顔を見合わせ、更に質問を続ける。
アルミン「その表情は……昨日、ライナーを殴った時のものに似ていた?」
クリスタは再び頷く。
アルミン「……そうか。それじゃあ……」
そこでアルミンは自分のポケットを探り、そこから何か取り出す。
それは、紙とペンだった。
ユミル「……それがあるんなら最初から出しとけってんだよ」
アルミン「まずは色々確認しておきたかったんだ……。
ハイかイイエで答えられる質問なら、動作で答えた方が早いしね」
121 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:40:24.83 ID:gozl7qrXo
アルミン「今からする質問への答えは、その紙に書いてくれ」
そう言ってアルミンはクリスタに紙とペンを渡す。
クリスタはそれを受け取り、黙って頷いた。
アルミン「じゃあ訊くよ……。異変が起きる前のサシャに何か変わったことはなかったか、
直前の会話ややり取りなんかを思い出して、書いて欲しいんだ。
急がなくて良いから、じっくり思い出して欲しい」
クリスタ「…………」
その質問を受け、クリスタはすぐにペンを走らせた。
思い出すまでもなく……ずっと心に引っかかっていたことがあったから。
しばらくし、クリスタは紙をアルミンに渡す。
そこには、訓練が始まる直前のサシャの発言について書いてあった。
『何か様子が変だと思ったり危ないと思ったらすぐに逃げてくれって言ってた』
122 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 21:49:48.83 ID:gozl7qrXo
ユミル「……何……?」
ライナー「こりゃつまり……訓練前にサシャが自分でそう言った、ってことか?」
クリスタは頷き、そして黙って手を出した。
それが次の紙をくれと催促しているのだと気付き、アルミンは別の紙を渡す。
クリスタはその紙にペンを走らせ、すぐにそれを見せる。
『何か怖がってるみたいだった』
それを見て更に疑問符を浮かべるライナーとユミル。
そんな2人を尻目に、クリスタはその紙を裏返し、また何か書き始める、
今度はさっきよりも早く、その文字を3人に見せた。
『サシャは悪くない』
そして誰かが何かを言うより先に、クリスタはまたその紙の余白にペンを走らせ……。
『助けてあげて』
クリスタ「おね、がい……」
クリスタの目には、涙が溜まっていた。
126 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月)21:57:00.96 ID:gozl7qrXo
・
・
・
食堂には、例の事件直後ほどではないまでも、やはり重苦しい雰囲気が漂っていた。
クリスタの安否が心配だというのもあるが……みんなが気にかかっていたのは、サシャの挙動。
訓練で相手を……それも力も体格も劣るクリスタを
あそこまで一方的に痛めつけるなど、どう考えても異常なことだった。
直後のサシャの反応を見ていた者は特に混乱していた。
あの時のサシャは絶対にどこかおかしい。
今まではそんなことなかったのに……。
大半の者がそんな風に困惑していた、その時。
食堂の扉が開いた。
キース「……全員揃っているか」
127 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:03:26.33 ID:gozl7qrXo
キースの姿を確認し、真っ先に反応したのはコニー。
コニー「き、教官!サシャは、サシャはどうなったんですか!あいつは……!」
キース「座っていろスプリンガー。今説明する」
そう言うと、キースは落ち着いた声で淡々と説明し始めた。
曰く……暴力行為の罰に関しては保留になったらしい。
サシャには何らかの精神的疾患の疑いがあるため
検査と治療のためにしばらくは隔離されることが決まり、
そして結果によっては、兵士としての適正がないと判断され開拓地へと移される、とのことだった。
アルミン「っ……」
コニー「……そんな……」
キース「ブラウスが優秀な兵士となる資質を持っていたことは事実だ。
貴重な兵力を減らすことは至極残念だが……精神面に問題があるのならそれも仕方ない。
回復できなければ兵士になどなれるはずもない。
……現時点で伝えられることは以上だ。何か質問はあるか?」
128 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:12:55.26 ID:gozl7qrXo
そこで真っ先に手を挙げたのは……やはりコニーだった。
コニー「その……精神に異常が起きた原因は、やはり頭部への……」
キース「原因についてはまだ分からん。判明し次第また伝える。他に質問は?」
アルミン「……面会は可能ですか?」
キース「まだ許されていない。それも可能になれば伝えよう。他に質問のある者は?」
しかし以降は挙手も発言もなく……それを確認し、キースは食堂を出る。
後に残されたのは、“やっぱりおかしくなっていたのか”という、
知っていた事実を改めて話されただけで終わったような、すっきりしない空気だった。
エレン「……くそっ!結局何もわからねぇってことかよ……」
ミカサ「私達が文句を言っても仕方ない……。サシャの回復を祈ろう」
アルミン「…………」
“どうか、次のニュースが朗報であって欲しい”と、その場に居た誰もがそう思った。
……しかしその願いは、翌朝に早くも崩れ去ることになる。
サシャはその夜のうちに医務官と駐屯兵を負傷させ、行方をくらました。
129 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:21:01.39 ID:gozl7qrXo
翌日、医務室。
クリスタ「う……嘘、そんな……!」
ユミル「本当のことさ。正常なままやったのか、
それともイカれた状態でやったのか……。どっちかは知らねぇが……」
クリスタ「け、怪我させて、逃げ出すだなんて、そんな、何か、理由……っ……!」
ユミル「オイ……多少マシになったようだがまだ切れてんだろ?無理して喋んなって」
クリスタ「ま……まだ、見付かってないの……?」
ユミル「……あぁ。普通に考えりゃ、もう見付かってもおかしくはねぇんだが。
……まさかマジで……」
クリスタ「……?」
ユミルは、サシャが見付からない原因について……
何か心当たりというか、推測していることがあるらしかった。
132 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:29:36.73 ID:gozl7qrXo
それが一体何なのか、クリスタが訊こうとしたその時。
アルミン「……ユミル、やっぱりここだったんだね」
ユミル「なんだ……何か用か?」
アルミン「悪い予感が的中した……。もう結構な騒ぎになってるよ」
ユミル「……!くそっ、お前の言ってた通りかよ……」
クリスタ「な、何……?何なの?悪い、予感……?」
アルミン「……サシャの立体機動装置がなくなってた」
クリスタ「っ!?そ、それってもしかして、壁を……!」
アルミン「うん……その可能性が高い。
だから少しでも人手を増やすために、僕達にも捜索命令が出てるんだ。
と言っても訓練兵が捜すのはトロスト区内だけだけど……。
とにかくそういうわけだ。行くよ、ユミル」
ユミル「……ちっ。あの馬鹿なに考えてんだ……」
133 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:37:54.46 ID:gozl7qrXo
そうして、サシャ・ブラウスの捜索活動が開始された。
しかし、トロスト区内はもちろん……区外でも、今日1日では発見されなかった。
立体機動装置を使って壁を登ったと推測されることから、
ウォール・ローゼ内に入り故郷へ向かったとも考えられていたが……。
故郷にも、そこに至るまでにも、サシャの影は見当たらなかったらしい。
エレン「故郷に帰ったわけじゃなかったのか……?じゃあ一体どこへ逃げたってんだよ……」
マルコ「故郷が駄目だったとなると、捜索範囲は一気に広がる……。
本当に見付かるのか、サシャは……?」
コニー「オイ!何言ってんだよ!?諦めるってのか!?」
マルコ「イ、イヤ違うよ!そうは言ってない!僕はただ……」
ライナー「落ち着け、コニー!俺たちが今焦ったところで、どうにかなる問題じゃないだろ」
ベルトルト「…………」
コニー「っ……くそっ……」
134 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:48:16.44 ID:gozl7qrXo
しかし、焦燥感を覚えていたのはコニーだけではない。
サシャを見つけられる可能性が一気に下がったことで、
みな少なからず不安や焦りを抱えていた。
重い沈黙が続く……そんな中。
不意に、ジャンがぽつりと声を漏らした。
ジャン「……そう言や、妙な噂を聞いたぜ」
アルミン「噂……?って、どんな?」
ジャン「単なる噂だし、こんなことを知って何かの役に立つとも思えねぇが……」
エレン「なんだよ、ジャン。勿体つけずに早く言えよ」
ジャン「……街を捜索してる時に上官方が話してたのをたまたま聞いたんだ。
サシャが逃げる時に2人傷を負ったって言ってたよな?
その傷……どうやら、噛み付かれて負った傷らしいぞ」
136 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 22:55:36.00 ID:gozl7qrXo
エレン「……は?どういうことだよそりゃ?」
ジャン「今言ったとおりだよ。あいつ、逃げる時に医務官と駐屯兵に噛み付いたらしい。
しかも駐屯兵の方は、指を食い千切られかけたんだと。
幸いギリギリ食い千切られずに済んで、なんとかくっ付きそうだって話だが……」
アルミン「噛み付くなんて……余程錯乱していたのか、
あるいはそれほど必死に抵抗したということなのか……」
ライナー「どちらにしろマトモな話じゃなさそうだな……」
ジャン「……続きを聞けば更にマトモじゃねぇって思うぞ」
コニー「つ……続きがあんのか?」
ジャン「その噛み傷だが……1つや2つじゃないらしい。
無数にあって、しかも……噛み傷以外の傷はまったくと言って良いほどなかったんだそうだ」
ベルトルト「っ……!?」
ライナー「そ、そりゃ確かな話か……!?」
139 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 23:02:55.03 ID:gozl7qrXo
ジャン「さぁ、どうだかな……。先にも言った通り、単なる噂だ。
話しといてなんだが、俺だって丸っきり信じてるわけじゃない。
噂なんてもんにゃ尾ひれが付いて当たり前だしよ」
コニー「そ、そうだよな……」
エレン「それに……仮にその噂がマジってんならサシャの奴、
相手に噛み付くことしか頭になかったってことになる。
いくらなんでも、そりゃちょっと信じがたいっつーか……」
ライナー「……俺もそれはないと思いたいが」
ベルトルト「…………」
ジャン「まぁ……なんだ。こんな馬鹿げた話、やっぱするべきじゃなかったかもな……。
どうやらオレもこの異常事態に頭がイカれちまったらしい」
マルコ「イ、イヤ……尾ひれが付くとは言っても、まったくのデタラメってわけでもないはずだ。
恐らく、少なくとも噛み付いたということは事実だと考えて良いと思う……。
今のサシャがどんな状態にあるのか、少しは実態に近付けたんじゃないかな」
アルミン「…………」
140 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/03(月) 23:09:03.65 ID:gozl7qrXo
……ジャンの話を聞き、アルミンはあることを思い出していた。
それは、サシャがクリスタに暴行を加えたあの時のこと。
アルミンは、サシャの暴力が終わる瞬間に“それ”を目にしていた。
直前までのあまりに異常な光景と、“それ”がほんの一瞬だったことで、
今の今まで忘れていたが……たった今、鮮明に思い出した。
サシャはユミルの蹴りを食らう直前……何をした?
拳での殴打を唐突に止めたその直後、サシャは何をした?
サシャはクリスタに馬乗りになったまま、彼女を見つめ、そして……。
脳裏に鮮明に浮かぶその一瞬の光景を、アルミンは今聞いた噂を思い起こしながらじっと見る。
そこに映るサシャの姿はまるで……。
そこで一瞬出かけた言葉を、アルミンは無理に抑え込んだ。
いくらなんでもそれはない。
あまりに飛躍し過ぎているし、何より不謹慎だ。
こんな発想馬鹿げている……ふざけていると言って良い。
そうだ、そんなはずはない。
そんなこと……あり得るはずがない。
167 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 20:53:00.28 ID:jIKjmfaHo
・
・
・
サシャが発見されたという知らせを聞いたのは、それから数日後だった。
訓練兵たちにとってはそれだけでも十分大きなニュースだったのだが、
何より驚いたのは、サシャを発見したのが……
エレン「は!?ち、調査兵団!?」
マルコ「調査兵団はつい昨日まで壁外調査に出ていたはず……ということはつまり……!」
ユミル「あいつは壁外に居た、ってことか……?」
ベルトルト「っ……」
アニ「……普通なら考えられないけどね」
ライナー「話によると、今日にでも調査兵団から直々に説明があるらしいが……」
と、その時。
食堂の扉がノックされた。
168 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:02:56.92 ID:jIKjmfaHo
その音に全員扉に注目し……直後、扉が開く。
そして入ってきた2人を見、一斉にざわついた。
ハンジ「みんな、ここには揃ってるかな?」
リヴァイ「…………」
エレン「リ……リヴァイ兵士長……!?」
マルコ「じ、人類の英雄が、こんなところに……!」
ハンジ「みんな初めまして。私は調査兵団で分隊長をやってるハンジ・ゾエ。
こっちの彼は……紹介は必要ないみたいだね」
アルミン「分隊長に、兵士長……!?」
調査兵団とは聞いていたが、まさか分隊長と兵士長が、来るとは1人として予想していなかった。
そして全員、この予想外の展開が事の大きさを表していることに薄々気付いた。
169 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:11:21.33 ID:jIKjmfaHo
この状況の中、アルミンは先日の嫌な予感が再び湧き上がってくるのを感じた。
こう言ってはなんだが……
彼らはたかが精神を病んだ訓練兵1人に関わるような人たちではないと、そう思った。
ハンジ「それで、今日私達がここに来た用事はみんな聞いてるよね?
君たちの友達、サシャ・ブラウスのことについてだ。
みんなも知っての通り彼女の身柄は今、我々調査兵団が預かっている」
エレン「サ……サシャは、無事なんですか?」
ハンジ「ん?……怪我はないと言う意味では、無事だね。
ただし君たちの知ってるサシャとは、恐らく全然違っていると思うけど」
コニー「……!?あ、会わせていただくことは可能ですか!?」
ハンジ「……君はサシャの友達?」
コニー「は……はい」
ハンジ「そうか……うん。あんまり大勢は無理だけど、どうしてもと言うなら。
あの子と仲の良い子たちだけなら会わせてあげられるよ」
170 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:18:59.36 ID:jIKjmfaHo
ハンジのその言葉を聞き、少し後ろに立っていたリヴァイが初めて口を開く。
リヴァイ「オイ。お前……わかってるよな?」
忠告とも警告とも取れるリヴァイの発言。
その真意はわからずとも、訓練兵たちはそれで一気に緊張感を覚えた。
しかしハンジは、落ち着いて答える。
ハンジ「わかってるよ。でもいつまでも隠し通せることじゃないし、
それにあの子と仲が良かった子たちは知っておいた方が良い。そうでしょ?」
リヴァイ「…………」
ハンジ「それで、どうする?あの子と面会したいっていう子は居るかな?」
……サシャがどんな状態なのかは確かに気になる。
しかしリヴァイ兵士長の発言を考えると、軽々しく会って良いようなものではないかも知れない。
訓練兵全員にそんな緊張感が充満する。
そしてその中、真っ先に反応したのはコニーとエレンだった。
コニー「行きます!あ、あいつに会わせてください!」
エレン「オレも、行かせてください……!」
171 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:26:39.22 ID:jIKjmfaHo
エレンはミカサとアルミンに目配せし、2人はそれに対し頷く。
彼らもサシャに会うことを決意したらしい。
そして他の訓練兵たちも、各々どうするかを決めていく。
マルコ「ど……どうしよう。サシャは気になるけど……」
ジャン「……俺は行かねぇぞ。行方は気になってたが、捕まったってんならそれでもう良いだろ」
アニ「……ライナー」
ライナー「そうだな……行こう」
ベルトルト「…………」
クリスタ「私も……!ユ、ユミルも行くでしょ?」
ユミル「……あぁ」
172 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:32:58.61 ID:jIKjmfaHo
・
・
・
そうしてエレンたちは、ハンジに連れられてサシャの元へ向かう。
と、ハンジは不意に立ち止まって振り返って言った。
ハンジ「そうだ、まず……聞いておきたいな。サシャが脱走に至る経緯について……。
大体の内容は君たちの教官から聞いたけど、
あの子と多く接してる君たちにしか分からないことがあるかもしれないしね」
リヴァイ「…………」
ハンジ「例の、クリスタという子の事件についてでも良いし、
それ以前に何か話しておきたいことがあれば教えてくれ。どんな些細なことでも構わないよ」
クリスタ「あ、その……ク、クリスタは私です」
ハンジ「!あぁそうか、その怪我は……。
思い出すのは辛いかも知れないけど、事件について教えてくれるかな?」
クリスタ「は……はい。わかりました」
173 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:40:35.56 ID:jIKjmfaHo
クリスタは、以前アルミンたちと話したことと同じ内容を話す。
そして彼女に続いてアルミンたちも、自分たちの体験、知っている情報をすべて話した。
ハンジ「……なるほどね。随分前から兆候はあったのか。ありがとう、色々教えてくれて。
あ……そうだ。えっと、コニーと言ったかな」
コニー「!は、はい」
ハンジ「君は自分がサシャに負わせた怪我が原因だと考えてるようだけど……。
直接的な原因ではないと思うよ。だから、そのことについて気負う必要はない」
コニー「そ……そう、ですか……!」
ハンジの言葉に、ほんの僅かに声色を明るくするコニー。
だが自分に原因がないと分かったからと言って、それでサシャが元に戻るわけではない。
そのことはコニーもわかっていたので、決して喜んだりはしなかった。
ただ、彼がずっと抱えてきた罪悪感は、この瞬間にようやく解消された。
ハンジはそれを見て、少しだけ表情を和らげたが……それも一瞬。
今度は先ほどより一層真面目な表情となって、言った。
ハンジ「……サシャに会う前に、君たちに2つほど言っておくことがある」
174 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:48:10.14 ID:jIKjmfaHo
リヴァイ「…………」
ハンジ「まず1つ、これから見ることはかなり刺激が強いということ。
そしてもう1つは、他の人にはあまり言い触らして欲しくないということ」
エレン「は……?ど、どういうことですか?」
ハンジ「それが分かった子だけ付いて来てくれ。良いね?」
それだけ言い、質問に答えることなくハンジは再び歩き始めた。
エレン「っ……」
ミカサ「エレン」
エレン「あぁ……わかってるよ。それしかないなら、従うさ……」
アルミン「…………」
175 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 21:55:44.44 ID:jIKjmfaHo
そのまま全員しばらく歩き続け、ある建物に着いた。
中に入り、1つの扉の前でハンジは立ち止まり、言った。
ハンジ「この部屋の中にサシャは居る。
君たちにも入ってもらうけど……私とリヴァイより前には出ないように」
一呼吸置き……ハンジは部屋の扉を開けた。
まずはハンジとリヴァイが部屋に入る。
そして、その後に続いて入った訓練兵たちの目に飛び込んできたのは……
エレン「ッ……!?えっ、は……!?」
ライナー「……!」
ユミル「っ……」
そこに居たのは、確かにサシャだった。
しかし……彼女の姿には決定的におかしなところがあり、訓練兵たちは言葉を失った。
ハンジ「……話しておこうか。私達がサシャの身柄を確保した経緯を……」
176 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:03:04.02 ID:jIKjmfaHo
・
・
・
エルド「右後方から7m級2体、5m級1体!更に15m級接近!」
グンタ「前方からもだ!右から3m級!左から15m級!1体ずつ接近中!」
リヴァイ「ちっ……多いな。前の奴らは俺がやる!お前らは後ろの班を支援しろ!」
ペトラ「はっ!」
オルオ「行くぞお前ら……。間違っても俺の足は引っ張ってくれるなよ?」
ペトラ「うるさいな!早く行くよ!」
それは、壁外調査からの帰途でのこと。
行きだけでなく当然、帰り際にも巨人は現れるため、必要があればこうして交戦にもなる。
177 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:10:20.06 ID:jIKjmfaHo
リヴァイ「俺はさっさと帰って汗を流したいんだ……邪魔をしてくれるな」
ぶつぶつと何か文句を言いながら……
人間の常識を超えた動きでリヴァイは右側の1体を秒殺する。
そしてその数秒後には、左側の1体も倒れ伏せていた。
リヴァイ「…………」
屋根の上に立ち、すぐに後方に目を向ける。
目に映ったのは、兵士の1人が最後の一体のうなじを見事削いだ瞬間だった。
それを見たリヴァイは一息つきながら刃を納め、後方と合流する。
ハンジ「!リヴァイ。流石、お早い到着で」
リヴァイ「……怪我人は居ないか?」
ハンジ「あぁ、1人ちょっと巨人の手に当たっちゃって……足が折れたかも知れない」
リヴァイ「命に別状は?」
ハンジ「大丈夫、それは心配ないと思うよ」
リヴァイ「……なら良い」
178 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:16:18.32 ID:jIKjmfaHo
リヴァイ「他に巨人は居ないな?早急に他の班と合流するぞ」
エルド「はっ!」
と、その時。
その場に居た兵士の1人が何かを発見し、大声を上げた。
調査兵「オ、オイ!見ろあそこ!」
その場に居た全員が彼の指差す方向を見る。
するとそこには……フラフラとこちらへ向かって歩く影が1つ。
グンタ「……巨人か?」
ペトラ「え……ま、待って。……小さすぎない?あれは、流石に……」
そう、その影は巨人というにはあまりに小さかった。
距離が離れているためはっきりとは分からないが、2m……。
いや、2mもないくらいに、サイズは人間のそれに近かった。
179 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:22:58.70 ID:jIKjmfaHo
それによく見れば……その面積はかなり小さくなっていたが、
その影は衣服の残骸のようなものを身に着けていた。
“……まさか、人間か……?”
その影が近付くにつれ、みながそう考えるようになり……
そして今、もうはっきりと分かる。
明らかにそれは、巨人の大きさではない。
どう見ても170cmかそこらのただの人間、そして……少女だった。
だが……あり得ない。
あの少女は衣服すらボロボロで、馬もなく、立体機動装置も付けていない。
そんな丸腰で、壁外で生存できているなどあり得ない。
……武器は、つい最近失ったのか?
途中までなんとか馬や立体機動で乗り切ったが、限界を迎え……
丸腰のまま今まで必死に逃げた結果が、あの状態なのか……?
確率で言えば奇跡に近いものだったが、そう考えるのが一番自然で、妥当だった。
180 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:30:47.30 ID:jIKjmfaHo
奇跡的に壁外で生き残った人間。
まだその少女との距離はそれなりに離れていたが、
その場に居た多くの兵士は既にその結論に至った。
そしてうち1人が、その少女に駆け寄る。
調査兵「あ、あなた、大丈夫?でもどうしてこんなところに……」
少女の瞳に光はなく、表情も虚ろだった。
そんな彼女を心配するように、駆け寄った兵士は顔を近づける。
調査兵「とにかく、こっちへ来て。もう大丈夫、私達が守ってあげるから……」
そう言って手を差し伸べた……次の瞬間。
リヴァイ「ッ!離れろ!!」
リヴァイの叫びとほぼ同時に……少女は、その兵士に噛み付いた。
182 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:37:57.52 ID:jIKjmfaHo
調査兵「いッ……!?ぁあああ、ぐ……!」
腕に思い切り噛み付かれ、苦痛に顔を歪める兵士。
その顎の力は、とてもじゃないが人間とは思えない。
分厚い服の上からでも徐々にその歯は肉へと食い込んでいくのを兵士は感じた。
調査兵「ぁ、ぐっ……!は……離せ、このッ……!」
空いている方の腕で、調査兵は少女の顔を掴む。
その際、親指が少女の右目にずぶりと食い込んだ。
その痛みに怯んだのか、少女はうめき声を上げ調査兵の腕から口を離す。
調査兵「ハァ、ハァ……!な、なんだ、こいつ……!?」
ハンジ「大丈夫!?傷を見せて!」
調査兵「は、はい……痛ッ……く、くそっ……」
184 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:45:44.89 ID:jIKjmfaHo
オルオ「オイ、なんだこいつは……イカレちまってるのか……!?」
エルド「わからん……だがマトモじゃなさそうだ」
グンタ「とにかく危険だ。すぐ拘束して……」
その瞬間、グンタは言葉を失った。
グンタだけではない。
少女に目を向けていた全員が……自分の目を疑った。
ペトラ「う……嘘でしょ……?」
うなり声ともうめき声とも付かない声を上げ、顔の右側を両手で覆う少女。
……その手の下からは、蒸気が上がっている。
呆然とその様子を見る兵士たち。
しばらく後、少女は顔から手を離すと……
潰されたはずの右目が、元に戻っていた。
185 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:52:23.26 ID:jIKjmfaHo
ハンジ「あ……えっ?」
負傷した兵士の手当てを行っていたハンジだが、
異様な空気を察知し、少女へと目を向ける。
そして、何が起きたのか理解した次の瞬間、
ハンジ「こ……拘束しろォッ!!壁内に連れ帰るぞぉおお!!」
大声で叫びながら、少女へと突進する。
拘束しろと命令を口にしつつ、自ら少女へ接近し、
素早い身のこなしで身動きを封じ、無力化した。
調査兵「ぶ、分隊長、なんて危険なマネを!無茶しないでください!」
ハンジ「早くロープを!拘束するんだよ!急いで!早くぅうう!」
リヴァイ「……まさかこんな収穫があるとはな」
そうして、人類史上初の“1.7m級巨人”……サシャ・ブラウスは捕獲された。
187 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 22:59:10.35 ID:jIKjmfaHo
・
・
・
コニー「……は?え、あ……?き、巨人……?」
ハンジ「話だけなら当然信じられないだろうけど……分かるだろ?
サシャは今君たちの目の前に居るんだから」
エレンたちは初めに拘束されたサシャを見た時……一瞬、裸だと思った。
イヤ、確かにサシャは何も身に着けておらず、裸だった。
しかし彼女の体には……人間には当然あるはずの器官が存在しなかった。
サシャ「うぅ~~……あぁ~~~……」
エレン「な……なんだよ、これ……。巨人、だってのか……!?
あいつ……巨人だったってのかよ!?」
クリスタ「ちっ……違うよ……!あ、あんなの、違う……!サシャは、だって……!」
ハンジ「女の子たちは……浴場なんかで確認してるはずだよね。
やっぱり君たちの知ってるサシャの体には、生殖器があったの?」
ミカサ「……はい。少なくとも……こんな体ではありませんでした」
192 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:07:42.85 ID:jIKjmfaHo
コニー「ってことは……き、巨人に、『なっちまった』ってのか……!?」
ハンジ「信じられないかも知れないけど……そういうことで間違いないと思うよ。
少なくとも今のあの子は、サイズが小さい以外は巨人とほぼ同じだ。
知能もなければ生殖器もない。人の肉を食おうとすることも驚異的な再生能力も確認済みだ」
クリスタ「そ、んな……」
アルミン「サ……サシャにそっくりな巨人という可能性は考えられないのでしょうか!?」
ハンジ「……そのことについて教えるには、
まず私がサシャに行った実験について話さなきゃいけないんだけど」
コニー「じ、実験!?」
リヴァイ「…………」
ハンジ「そんなに睨まなくても分かってるよ、リヴァイ。
彼女は他の巨人とは違う。私だって心を痛めてるんだ」
アルミン「は……話してください。実験について……」
ハンジ「……部屋の外に出よう。ここじゃ集中できなさそうだしね」
194 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:14:29.26 ID:jIKjmfaHo
・
・
・
捕獲した巨人に行う実験は、まずは意思の疎通。
これは過去にも何度か試した、実験の第一段階だ。
ハンジ「こんにちは!」
サシャ「……う~~……」
ハンジ「君は他の子に比べて随分小さいよね。どうしてそんなに小さいの?」
サシャ「う~、うぅ~……」
巨人との意思疎通は、人類史上例がない。
そしてこの子の場合も、この段階では意思疎通は不可能であるという結論に至った。
次に私は、この巨人が人間そっくりであるということに着目し……。
他の巨人が彼女に興味を示すかどうかを試すことにした。
195 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:21:25.73 ID:jIKjmfaHo
巨人「あ~~~……う~~~~~……」
サシャ「……う~~~」
彼女とは別に捕獲した3m級巨人。
彼とサシャとを接触させた。
サシャは私より小さいくらいだったからね。
兵士が2人も居れば動きを封じるのも移動させるのも、そう苦労しなかったよ。
……とにかく、サシャをその3m級巨人のところまで移動させたんだ。
結果は……その巨人は、サシャには興味を示さなかった。
まぁ予測はできていたけどね。
丸腰にも関わらず壁外で生存していたという事実があったから。
しかしここで予想外のことが起きた。
3m級の方はまったく無反応だったのに……なんとサシャの方が向こうに食い付いたんだよ。
196 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:29:02.94 ID:jIKjmfaHo
巨人「あァアァアアア!!」
サシャ「ぐむ、がりゅ、ぐちゅ……」
兵士1「なッ……!?」
兵士2「く、食ってるのか!?巨人を……!」
ハンジ「うぉおおおおお!?君は他の巨人を食うのか!?共食い!?
その肉どうするの!?飲み込むの!?飲み込んじゃうの!?消える前に飲み込めるの!?」
兵士1「分隊長!あまり顔を近づけないで!危険です!」
ハンジ「あぁッ!?今飲み込んだ!飲み込んだぜ!!すげぇ!!
でも巨人の肉って消化できるものなのか!?それも調べ……」
……その時だった。
サシャ「……ぅ……ぁ……」
ハンジ「ん!何?どうしたの?美味しかった?友達の味はどうだった?」
サシャ「……た、すけ……て……」
197 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:36:30.25 ID:jIKjmfaHo
ハンジ「……え……?」
サシャ「や、だ……嫌だ……」
兵士1「ッ……!?」
兵士2「……こ、こいつ今……」
ハンジ「黙って!……何?良いよ、続きを言ってごらん」
サシャ「ごめん、なさい……すみません、ごめんなさい……」
ハンジ「……!」
サシャ「助けて……嫌だ……私……ごめんなさい……」
ハンジ「何が、嫌なの?君は何を謝ってるの……?」
俯いている彼女の顔を覗き込んで、私は気付いた。
彼女は……涙を流していた。
サシャ「もう、嫌だ……暴力なんて……」
201 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:42:30.09 ID:jIKjmfaHo
ハンジ「……君は……」
兵士1「ッ!危ない!!」
ハンジ「うわッ!?」
次の瞬間、サシャは大きく口を開け私に食い付こうとした。
間一髪で避けて、改めてその顔を見ると……
サシャ「……う~~……」
ハンジ「……!」
兵士2「な……なんだったんだ、今の……」
兵士1「あ、あぁ。確かに今、言葉を喋っていた……。
だが間違いなく巨人、なんだよな?こいつ……」
兵士2「そりゃ、まぁ……。生殖器もねぇし……」
ハンジ「…………」
202 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:47:43.50 ID:jIKjmfaHo
・
・
・
アルミン「っ……!」
ハンジ「その直後だったよ。脱走した訓練兵、“サシャ・ブラウス”の話を聞いたのは。
ただ私は、話を聞く前から……この子を巨人として扱うのをやめようと決めた。
この子は巨人なんかじゃない……。サシャは間違いなく、人間だ」
ライナー「……暴力が、嫌だ……か」
クリスタ「や……やっぱり、そうなんだよ……!サシャは、悪くない……。
あの時のこと、すごく後悔、してるんだよ……!」
ハンジ「あぁ……脱走に至る経緯は聞いたよ。仲間に対しての度を越した暴力が原因だって……。
しかしそれはサシャの意思とは関係なかった。
恐らく、この……巨人化とでも言えば良いのか……その兆候だったんだ」
ユミル「…………」
203 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:53:39.38 ID:jIKjmfaHo
ハンジ「あの子に残ってる記憶はきっと、自分が仲間に振るった暴力についてのことだ。
そして何故か……他の巨人の肉を食べたときだけその記憶と意識が少しだけ戻る。
どういう仕組みになってるのかはさっぱりだけど……実験の結果はそう言ってる」
リヴァイ「オイ……もう良いだろ。これ以上ガキ共をここに居させる意味はない」
エレン「っ……し、しかし!原因は分からないんですか!?
何故サシャが巨人になってしまったのか……!元に戻すための方法は!?」
ハンジ「残念ながら、何も。今話したのが現時点で判明しているすべてだよ」
エレン「……くそっ……」
ライナー「…………」
リヴァイ「先にも言ったが……このことはあまり言い触らさない方が良いぞ。
あいつを解剖されたくないならな」
クリスタ「か、解剖……!?」
ハンジ「巨人になった人間なんて、
お偉い方に知られればどんな扱いを受けるか分からないからね……」
205 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/04(火) 23:58:05.84 ID:jIKjmfaHo
ハンジ「私たちのように、彼女を元の人間に戻すことを最優先に考える人ばかりじゃないってことさ。
巨人の謎を解明するためには1人の命なんて安いもの……。
そう考える人はいくらでも居る。
正直言うと……私もそれが間違ってるとは言い切れないし」
リヴァイ「お前らがあのガキを解剖すべきだと考えているのなら止めはしない。
その時は好きなだけ言い触らすと良い。上の奴らにもあっという間に伝わるだろう」
エレン「じ……冗談じゃない!サシャを解剖なんてさせてたまるか!嫌ですよそんなこと!」
リヴァイ「そうか……ならせいぜい必死に黙っていろ。……話は終わりだ。
これ以上お前らの相手をしている時間はない。わかったらさっさと帰れ」
アルミン「……わかりました。
こんな重要なことを教えていただいて……本当にありがとうございました」
ハンジ「イヤイヤ。まぁ、何か分かればまた教えるよ。
……帰りは案内は要らないね?それじゃ、また」
そうして訓練兵たちは各々、様々な思いを胸に抱き……サシャの居る建物を後にした。
219 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 18:13:11.74 ID:CJ8mGq6lo
・
・
・
訓練兵舎への帰り道……。
今までに経験したことのない異常事態に、訓練兵たちは頭を悩ませる。
コニー「ど、どういうことだよ、あれ……。サシャが巨人になったって……?
まったく頭が整理できないのはオレが馬鹿だからじゃねぇよな……!?」
エレン「どうすりゃ良いんだよ、くそっ……!なんでサシャが巨人なんかに……!」
ユミル「しかし……ただの巨人でもねぇんだろ?
デカさもそうだが、巨人の肉を食ったり、しかも……」
ライナー「……大量に食わせりゃ完全に元に戻るってことはないのか……?」
ベルトルト「…………」
アニ「さぁ……どうだろうね。その程度のことはすでに試されてると思うけど……」
クリスタ「ぐすっ……ぇぐっ……」
ユミル「……お前が泣いてどうにかなる問題なら良かったんだがな」
220 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 18:21:06.16 ID:CJ8mGq6lo
クリスタ「で、でも、だって……」
ミカサ「巨人の謎がもう少し分かれば……サシャを元に戻す方法も分かるかもしれないけど……」
アルミン「……巨人の謎……か」
ライナー「!アルミン……お前、何か分かったのか?」
アルミン「っ!あ、あぁ、イヤ……何か分かったとかじゃなくて、その……」
ユミル「なんだ……言えよ。何を考えてたんだ、お前?」
アルミン「み、みんなと同じことだよ。
サシャと他の巨人との違いだとか、どうすれば元のサシャに戻れるんだろう、とか……」
ライナー「……詳しく話してくれ」
アルミン「え?な、なんで……」
ライナー「お前のことだ、何か仮説を立てたんだろ?
今は全員、少しでも情報を得たいと思ってる。
それが単なる推測であってもな。だから話してみてくれ、アルミン」
221 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 18:28:37.95 ID:CJ8mGq6lo
ライナーの言い分は尤もだった。
全員きっと、ワケの分からない状況に放り出されて、頭が混乱してる。
謎が謎のままで、思考がそこから先にまったく進まない。
だから、少しでも意見や考えを得て、手がかりにしようとしている……。
みんなが自分の意見を求めるのはそんな状態にあるからなのだと、アルミンは思った。
自分の意見が役に立つだなんて到底思えなかったが、
みんながそれを求めているのなら……
アルミン「ほ……本当に単なる憶測だし、くだらないことなんだけど……。
も、もしかしたらサシャは、今は巨人として不完全な状態にあるのかも知れない……」
エレン「ふ……不完全……?」
アルミン「人だけでなく巨人の肉をも食うことと、それと何より、
体の大きさがまったく変わってないこと……。これらのことからそう思ったんだ。
そして不完全だからこそ、時折人間の意識が戻るのかな、って……」
ユミル「……巨人の肉を食えば意識が戻ることの説明は?」
222 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 18:38:35.69 ID:CJ8mGq6lo
アルミン「その仕組みは分からないけど……やっぱり、肉に秘密があって……。
でも、意識が戻るのがほんの一時だということは……
た……多分、ただの巨人の肉じゃ駄目ってことなんじゃないかな……」
コニー「そりゃつまり……き、奇行種の肉を食わせれば良いってことか!?」
アルミン「それも考えたんだけど……。僕は……イ、イヤ、やっぱりよそう。
こんなの、本当に妄想だ。根拠なんて欠片もないし、あまりに……」
コニー「オ、オイ……気になるだろ。話してくれよ……!」
エレン「あぁ……話してくれ、アルミン」
アルミン「っ……も、もしも。仮に……知性を持つ巨人が居たとして……。
そいつの肉なら、サシャにも知性が戻るんじゃないか、とか……」
ユミル「…………」
アルミン「それから……サシャと同じように巨人化した人間が居て……
その巨人が、サシャとは違って人間としての意識を保っているとすれば……。
そいつの肉を食わせれば、サシャの意識は完全に戻るんじゃないか、って……」
224 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 18:48:19.58 ID:CJ8mGq6lo
アルミン「た、ただの巨人の肉の効果が一時なら、
そういう巨人の肉ならもしかして……って、そんな風に、考えてたんだ……」
アニ「……あんたは、本当にそんな巨人が居ると思うの?」
アルミン「イヤ……。そんな巨人の存在も、そいつの肉を食えばサシャが元に戻るというのも、
そうだと良いなっていう……僕の願望、妄想だ」
ライナー「確かに……妄想だな、そりゃ」
ベルトルト「…………」
アルミン「……ごめん。こんなの、ふざけてる……。
サシャが大変だって言うのに、こんなくだらない……」
クリスタ「そ、そんなことないよ……! サシャを何とか元に戻す方法はないかって、
アルミンが一生懸命考えた結果でしょ……!?
それに私だって、アルミンの話聞いて……
本当に、そうだったら良いなって……思っちゃったもん……!」
アルミン「クリスタ……」
226 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 18:57:38.28 ID:CJ8mGq6lo
クリスタ「ほ……本当に、本当に、そう、だったら……」
コニー「そりゃ……オレもアルミンの話がマジなら、とは思うけどよ……。
でもやっぱ……流石に……。そんな巨人が居るってのは……」
クリスタ「っうく……嫌だ……嫌だよ……。
サシャぁ……戻ってきてよぉ……ひっく……ぇぐっ……」
ライナー「…………」
ミカサ「……もうすぐ訓練兵舎に着く。みんな、くれぐれもこのことは……」
コニー「あぁ……黙ってるよ。何を訊かれても答えたりしねぇ。
あいつを絶対に、解剖なんてさせてたまるか!」
エレン「少しでも……あいつが元に戻るための時間を稼ぐんだ。
誰にも知られなけりゃ、その分謎を解明する時間が増える……!」
アルミン「あぁ、信じよう……サシャは必ず、僕達のところに戻ってくるって……」
227 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 19:03:30.45 ID:CJ8mGq6lo
・
・
・
そして、その日の深夜。
みんなが寝静まった後……屋外で話し合う3人の影があった。
アニ「……どうする?今の状況は、はっきり言ってあまり良くないんじゃないの?」
ベルトルト「サシャがどうしてあぁなったのかは分からないけど……。
少しでも早く状況を変えた方が良いのは、間違いないだろうね……」
ライナー「特別な巨人の肉を食わせれば元に戻るってのは……お前らはどう思う……?」
アニ「何の根拠もないよ。ただの巨人で無理なら……って考えも
分からないわけじゃないけどね。試すにしたってリスクが高すぎる」
ライナー「……そうか。そうだよな……」
ベルトルト「…………」
228 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 19:14:13.88 ID:CJ8mGq6lo
ライナー「だが……ならどうする。あいつがこのまま調べられ続ければ、いずれ……」
ベルトルト「あぁ。元に戻すのが無理だとなると、あとは1つしかない……。
ライナー、お前も……もう分かってるはずだろ」
ライナー「……くそっ……」
アニ「じゃあ……いつ実行するのが良いと思う?」
ベルトルト「今日にでも、実行するべきなんじゃないのか……?」
アニ「……イヤ、流石に早すぎる。
このタイミングだと私達に疑いがかかる可能性が高くなるだろうし」
ベルトルト「!あぁ……確かに、そうかも知れないな」
アニ「やるなら、もう少し空けてから。詳しいことは……また話そう。
それで異論はないね……?ライナー」
ライナー「っ……あぁ。異論、なしだ……」
229 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 19:19:51.93 ID:CJ8mGq6lo
・
・
・
夜明け前。
物陰から辺りを窺う。
あの時から増えて居なければ、見張りは1人のはず。
……大丈夫、増えてない。
予定通りやろう。
調査兵「ッ!誰だ!」
物音に気付き、武器を構えそちらへ向かう見張りの調査兵。
しばらく注意深く辺りを探っていたが……
調査兵「……気のせいか」
230 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 19:24:10.28 ID:CJ8mGq6lo
周りは木々で囲まれている。
きっと動物か何かだったのだろう。
そう思い、見張りの兵士はもと居た位置に戻る。
……がやはり気になって、念のために例の部屋を見に行く。
扉を開けるとそこには……
サシャ「……うぅ~~~~」
暗い部屋で変わらず、サシャ・ブラウスはベッドに固定されていた。
調査兵「…………」
それを確認し、部屋を出る。
そしてしばらくして……ベッドの下から、大きな影が現れた。
ライナー「…………」
233 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 19:29:46.58 ID:CJ8mGq6lo
ベッドに両手足を固定されたままライナーを見つめるサシャ。
うめき声を上げながら、目の前の肉に食い付こうと歯をカチカチと鳴らす。
ライナー「…………」
ライナーはそんなサシャを、黙って見下ろし……不意に右手を動かす。
その手を、サシャの顔の目の前まで持って行き、そして……
ライナー「ッ……」
サシャはその手に思い切り食い付いた。
直後、嫌な音を立てて、ライナーの右手の小指と手の端の肉が食い千切られる。
それをサシャは、口の中でよく噛み、そして、飲み込んだ。
そして……すぐにまた、新たな肉を求めて歯をカチカチと鳴らす。
ライナー「……駄目か」
分かっては居たが……やはりこれではサシャは何も変わらない。
それもそのはず。
今サシャが食ったのは、人間の肉なのだから。
234 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 19:36:18.04 ID:CJ8mGq6lo
サシャを元に戻したいのなら、巨人の肉を食わせなければならない。
しかもただの巨人ではなく……。
だがそれも、推測に過ぎない。
“特別な巨人”の肉を食わせたところで、本当に元に戻る保証などどこにもない。
それに今のこの状況で巨人の肉を食わせることは、恐らく不可能。
出来たとしても、すぐに人が集まり……そうなれば何もかもおしまいだ。
リスクが高すぎる。
……だからと言って、当然このまま何もせずに帰るわけにはいかない。
あの後の2人との話し合いで……
“サシャをこのまま調べさせるわけにはいかない”と意見が一致したのだから。
だからこそ、ライナーは覚悟を持って今この場に立っていた。
目を閉じて、その覚悟を改めて自身に問いかける。
僅かな希望にかけて自分の肉を食わせ、それが駄目だった時は……。
ライナー「……すまん、サシャ」
そう呟き、ライナーはゆっくりと目を開く。
そして……刃渡りが十分にあるナイフを取り出した。
239 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 20:38:33.21 ID:CJ8mGq6lo
・
・
・
夜明け直前。
時間が来たので、見張りの兵は部屋へと向かった。
何か問題が起こっているとも思えないが、そう決められているからだ。
眠い目をこすりながら部屋の扉を開ける。
そして……その目は一気に覚めた。
調査兵「なっ……!?う、嘘だろ!?くそっ……!」
慌てて外へ飛び出し、辺りを見回す兵士。
しかしすぐにそんなことをしても無意味だと悟り、人を呼びに行く。
彼が去った後の部屋には、静寂だけが残る。
うめき声もうなり声も、物音すら聞こえない。
サシャが居たはずのベッドには今や……誰も寝ていなかった。
跡形も無く消えていた。
巨人が消えるということは、考えられる可能性は2つ。
逃げ出したか、それとも……。
240 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 20:46:55.23 ID:CJ8mGq6lo
・
・
・
森の中、ライナーは息を切らせて走っている。
どれくらい走っただろうか?
周りは木々に囲まれ、建物もとっくに見えなくなっており、当然人の気配もない。
葉の間から、空を見上げる。
いつの間にか夜が明け始めていた。
そんなに走っていたのか……。
それに気付くと同時に、ついにライナーは地に膝をついた。
ライナー「……ぐっ……!限界だ、流石に……」
呻くようにそう呟き、担いでいたものを半ば投げ飛ばすように、地面に下ろす。
ライナー「はぁ、はぁ……くっ……」
ライナーの右腕は、真っ赤に染まっていた。
指からの出血もあったが、それ以上に、腕の傷の方が酷かった。
ライナーの右腕の肉は既に半分近く無くなっており、そしてその肉の行方は……
サシャ「うぅ~~~~……」
241 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 20:56:21.43 ID:CJ8mGq6lo
ライナー「俺の腕をこんなに食っちまいやがって……パンじゃ済まされねぇぞ、サシャ」
……そう憎まれ口を叩きつつも、それはお互い様か、とライナーは思っていた。
と言うのも、サシャを拘束から解放するために、彼女の両手足を切断したからだ。
もちろんすぐに再生することは分かっていたし、
そうでもしなければサシャを逃すことなど出来なかったのだが……。
そしてライナーはサシャを解放してからここまで担いでくるまで……
彼女が声を出したり余計に暴れたりしないよう、ずっと右腕に噛み付かせていた。
自分の右腕を食わせながら、ここまで担いで走って来たのだ。
サシャ「うぅ~~……」
地面に下ろされたサシャは、再び目の前の肉に向かって歩き始める。
ライナーはそれを見て……苦痛に汗を流しながら、
ライナー「だが、まぁ……自分で傷付ける手間が省けたぜ」
そう言って僅かに笑った次の瞬間、爆発が起きた。
243 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:09:58.49 ID:CJ8mGq6lo
衝撃と爆風で、サシャはよろけ、倒れる。
しかしすぐに起き上がり、爆発のした方向に目を向けると、そこには……
ライナー「あんな小さい腕じゃ物足りなかっただろうが、これなら十分だろ?
固さは抑えてるつもりだが……まぁ多少固くても我慢しろ」
巨大な腕……。
サシャはそれを見て、その肉の塊へフラフラと歩いて行き、
口を大きく開け、かぶりついた。
かぶりつき、引きちぎり、咀嚼する。
その様子を、ライナーは見下ろす。
そしてサシャはしばらく噛んだあと、ライナーの肉を飲み込んだ。
ライナー「…………」
ライナーはサシャの様子を、緊張した面持ちで見つめる。
もし、これが駄目なら……今度こそ……。
サシャ「……ぁ……」
ライナー「!サシャ、聞こえるか……?」
サシャ「あ……嫌、私……もう、嫌だ……私……!」
244 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします 2013/06/05(水) 21:19:22.87 ID:CJ8mGq6lo
ライナーはそれを見て急いで腕を引き抜き、サシャの元へ駆け寄る。
ライナー「オイ、サシャ!聞こえてるのか、サシャ!」
サシャ「ごめんなさい、ごめんなさい……!嫌だ、助けて……!ごめんなさい……!」
頭を抱え下を向き……拒絶、謝罪、そして助けを求める声を叫び続けるサシャ。
ライナーは、自分の姿も、声も……彼女に届いていないことに気付くと、
サシャの頭を彼女の両手ごと掴み、強引に自分の方へ向けさせた。
ライナー「サシャ!俺の方を見ろ!!」
サシャ「あ、あ……ご、ごめんなさい、ごめんなさい……!」
ライナー「ッ……!」
初めて間近で見るその表情は……ライナーの心を強く締め付けた。
罪悪感、後悔、恐怖、絶望……その痛々しい表情を見、思わず顔を背け目を瞑る。
しかし……その目はすぐに開かれた。
強い決意を持ったその目で、ライナーは再びサシャに顔を見る。
そして、黒く染まった彼女の瞳を覗き込むようにし、叫んだ。
ライナー「お前は……お前は悪くない!俺も怒っていない!
お前の仲間は……!誰1人お前を責めていない!!」
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