少女不十分(西尾維新)のネタバレ解説・考察まとめ
『少女不十分』とは2011年に執筆された西尾維新によるミステリー小説、およびそれを題材としたミステリー漫画。小説家を目指す僕は、謎の少女Uの異常なある行動を見てしまったことをきっかけに、彼女によって誘拐されてしまう。彼女との一週間の監禁生活を送る中、Uの行動に隠された謎を紐解いていく。その巧みな場面描写により、一種のモキュメンタリーとして成立させ、そのリアリティさにより人気を博した。キャッチコピーは「西尾維新、原点回帰にして新境地の最新作。」、「この本を書くのに10年かかった。」
『少女不十分』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
U「あなたは私を見たから私を見たから連れて行くんです」
Uの異常な言動を目撃した後、帰宅した僕。しかし、家にはなぜかUがおり、僕を誘拐しようとする。僕を監禁しようする理由を聞かれ、Uは「あなたは私を見たから私を見たから連れて行くんです」という言葉を残す。Uは自分の行動を僕に目撃されたことに気が付いていた。自身の異常性を隠すため、唯一の目撃者である僕を監禁しようとしたのである。
Uの両親「自分の正体を知られないこと」
僕はUの置かれている状況を調べる中、Uが大切にしているノートを見つける。そのノートには、Uが守るべき様々なルールが書かれていた。そのうちの文言の一つには「自分の正体を知られないこと」とあった。この文言に従い、Uは自分の異常性に気づいた僕を監禁することを決意したのであった。
この文言は、Uの両親がUの異常性を隠す故に書いたものである。Uの異常性を知られないようにすることで、Uを守ろうとしたのではないかという考察もなされているが、真相は不明。
僕とUとの再会シーン
小説家となった僕は、新しい編集者と出会う。その編集者は成人したとUであった。彼女との再会した際、僕は「はじめまして」といい、あえて彼女と初対面のふりをするのだった。
本来であれば、かつてのUと僕の出会いは異常なものであり、あってはならないものである。Uの幼少期は親からの虐待という忌まわしいものであり、それらを忘れて生きていく方が幾分か楽であり、それに伴う僕との交流も忘れたほうがよかった。
しかし、僕とUは再び出会うことができた。Uと再会した時のこの台詞はかつての忌まわしい出会いではなく、Uとの新しい関係を構築するための、僕なりの決意表明と言える。
『少女不十分』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
僕がUに聞かせた「お話」は作者の著書が元ネタ
Uに対し、僕が話したお話。この物語は、『少女不十分』の作者である西尾維新が書いた作品である。元ネタは全て判明しており、それらすべてが現在発表された作品である。
「言葉だけを頼りにかろうじて生きている少年と世界を支配する青い髪の天才少女の物語」は『戯言シリーズ』
「妹を病的に溺愛する兄と物語の曖昧をどうしても許せない女子高生の物語」は『世界シリーズ』
「知恵と勇気だけで地球を救おうとする小学生と成長と成熟を夢見る魔法少女の物語」は『りすかシリーズ』
「家族愛を重んじる殺人鬼と人殺しの魅力に惹きつけられるニット帽の物語」は『人間シリーズ』
「死にかけの化け物を助けてしまった偽善者と彼を愛してしまった吸血鬼の物語」は『物語シリーズ』
「映画館に行くことを嫌う男と彼の十七番目の妹の物語」は『ニンギョウガニンギョウ』
「隔絶された島で育てられた感情のない大男と恨みや怒りでその身を焼かれた感情まみれの小娘の物語」は『刀語シリーズ』
「挫折を知った格闘家と挫折を無視する格闘家の物語」は『蹴語』
「意に反して売れてしまった流行作家と求職中の姪っこの物語」は『難民探偵』
「奇妙に偏向した本読みと本屋に住む変わり者の物語」は『なことシリーズ』
「何をしても失敗ばかりの請負人とそんな彼女に好んで振り回される刑事の物語」は『哀川潤の失敗』
「意志だけになって生き続けるくのいちと彼女に見守られる頭領の物語」は『真庭語』
以上のようになっている。
『少女不十分』はあくまでフィクション
作中で僕が語ったお話は、作者である西尾維新が書いている作品である。さらにこの本のキャッチコピーが「この本を書くのに10年かかった」であり、僕が小説家としての活動歴がおよそ10年である。この点から、作中の僕とは西尾維新のことであり、この『少女不十分』は実際にあったことではないかと考察されるケースがある。
一方で実際にこのような事件が起こったとされる証拠は存在しない。
現在では、何かしらのモデルやモチーフはあるだろうが、あくまでノンフィクションに見せかけた高度なフィクションであるという説が一般的である。
少女Uは『物語シリーズ』の原点
少女Uはのちに登場する西尾維新が書いた小説に登場する人物の元になったのではないかと考察されている。『物語シリーズ』に登場する八九寺真宵というキャラクターは、両社とも幼い少女である。さらに同シリーズに登場する戦場ヶ原ひたぎや羽川翼というキャラクターは、家庭環境に大きな問題がある。
西尾維新は奇妙な名前を好むが、彼女の本名である夕暮誘も十分に変わった名前である。
さらに少女である点や、非常に凶暴な一面を持つ点、ルールという制約を持つ点など、西尾維新が作品で多用する様々な要素が詰め込まれている。
当時『少女不十分』が刊行された際、キャッチコピーが「西尾維新、原点回帰にして新境地の最新作。」、「この本を書くのに10年かかった」とある点からも、この『少女不十分』が西尾維新が手掛けた作品に大きな影響を与えたものである。
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