戯言シリーズの語り手『ぼく』の謎に迫る

西尾維新の処女作にして出世作、クビキリサイクルから始まる戯言シリーズ。そのシリーズ全巻を通しての語り手である『僕』。ごくわずかしかない確定されない彼の情報。一体彼は何者なのか?謎に包まれた彼の素性に迫ってみたいと思います。

戯言シリーズとは?

西尾維新の処女作にして出世作。このライトノベルがすごいの一位に選ばれ、アニメ化も決まり、今も根強いファンがいる作品。当初は新書サイズでしたが、文庫化もされ、新書サイズよりお手頃価格で買えます。
語り手の僕の周りで起こる様々な事件。

現れる『天敵』

すべてがねこそぎ終わった後で僕が掴んだものは?

それは青い少女と欠陥をもつ少年の
おわりのない物語。

戯言シリーズの主要登場人物・キャラクターについて

物語の語り手であるぼくを取り巻く人々は実に個性的です。

玖渚友…僕の友人で、京都市の億ションをワンフロアぶち抜きで暮らしています。劣勢遺伝のため青い髪に青い瞳を持ち、体躯はまるで子供のよう。ただし、情報工学の方面の天才。もともとは政治面の権力が高い玖渚機関の令嬢でしたが、何らかの理由で絶縁。兄が機関長になるとともに復縁。一人で極端な上下運動ができないなど、身体能力に制限があります。一時期世間を混乱させたサイバー集団<チーム>のリーダーでもあり<死線の青>と呼ばれていました。

哀川潤…人類最強の請負人。その名の通り人類最強の万能家。仕事は何でも請け負います。ぼくの評価によれば、スタイル、顔共に極上。ただ、いようなまでの目つきの悪さを除けば。胴短く足長い、らしい。何でもできますが、基本的に口より先に手が出る。なんでも請け負うわりに成功率はイマイチ。漫画好きな一面も。<赤き制裁>、<砂漠の鷲>、<歩く疾風怒濤>など異名が多数あります。

西東天(狐面の男)…哀川潤の実父。ぼくのことを『俺の敵』と呼ぶ人です。幼いころから才能の頭角を現し、若くして医院を設立し不老不死の研究をしていたりしたとか。世界のおわりを求める<人類最悪の遊び人>。哀川潤とのなかは険悪であるが、恥ずかしい親をもつのが恥ずかしいという感覚です。ぼくとは様々な因果でつながれていました。

想影真心…ぼくのER-3時代の友人で、ぼくを『いーちゃん』と呼んでいます。実験の最中、ぼくの目の前で紅蓮の炎に焼かれて死んだと思われていたのですが、西東天により、ふたたびぼくと引き合わされました。哀川潤より性能の高い後続とされ<橙なる種>と呼ばれてもいました。出来たことが奇跡らしいです。見様見真似が得意で、オレンジの瞳とオレンジの髪、自分の力を制御するため幼児くらいの体躯だそうです。いーちゃんとは友人であると同時に過去に色々あった様子。

零崎人識…殺人鬼集団<零崎一賊>の唯二の生き残りです。ぼくとは五月の時に出会い、一度は生死をかけた仲。作中では『仲良しさ』とも答えています。基本的にナイフを殺しに使うものの、体術もなかなかの腕前。身長は150センチ代。顔面に入った刺青が特徴です。『クビシメロマンチスト』で出会い『ネコソギラジカル』で再会。それまではヒューストンにいました。一時期死んだとされていましたが、それは誤報でした。ぼくと別れてから、哀川潤の仕事に付き合わされる形で北海道へ。その後の消息は不明となっています。

僕について分かっていること

『僕』については大体の情報がぼかしてあり、本名も明らかにされてはいません。わかることといえば、
京都市の骨董アパートに暮らしていること
もともとはただの一般人だったこと
井伊遥奈という妹がいたこと
鹿鳴館大学に通っていること(クビシメロマンチスト時19歳と2カ月)
ER-3システムというアメリカヒューストンにある機関に留学していた
普通免許所持
血液型はAB型Rhマイナス
トラブルメーカー

これだけです。特に留学期間中がよく分からない部分でもあり、そもそもなんで逃げるように留学したのかはよく分かってません。玖渚友との間で何かあったことは確かで、留学の手引きをしたのは友の兄である玖渚直であったこと。また友との出会いも直の手引きであったこと。
そして肉親である妹が友のために犠牲になっているらしいこと。
その妹も飛行機同士の正面衝突で死んでいるそうです。
本人によれば下手したら最終学歴小学校卒位かもしれない…、との事なので、中学を卒業する前に留学していたと思われます。ちなみにそこで得たのは卒業資格らしく、卒業できる学力があるという証明だったからこそ、学歴に不安があるのかもしれません。それが怖くて本人も調べてはいません。

アンニュイ系の大学生…、『ズバ抜けた一般人』らしいです。

本名が全く分からない?

『い』がつく苗字らしい。多分、苗字が井伊。
『ぼく』としか表記されず、作中で一回も本名が登場しないキャラです。いーちゃん、いっくん、いーいー、いの字などと呼ばれており、『い』が付くことは間違いないでしょう。クビツリハイスクールにおいて萩原子荻とのやり取りでヒントが三つまで出てきます。
前述した『い』がつくあだ名であること
ローマ字表記の場合母音が8、子音が7
『あ』を1とし『ん』を46とし名前に変換させた場合の総和は134

以上を踏まえ、考えると100万通り以上の候補があるとか。しかし、作者によると名前はきちんと決まっているらしいです。

戯言遣いってなに…?

一番よく分かってないんですよね。僕の天敵である西東天曰く、
『舌先三寸口八丁、立てば嘘つき、座れば詐欺師、歩く姿は詭道主義』
とのこと。
言葉で翻弄する。もしくは人を翻弄させる言葉を遣う人=戯言遣いの可能性が高いですね。
高いスペックをもつキャラクターは出てきても、なぜかエスパーは出てこない小説ですから。いわゆる魔法的なものであったり、超能力的なものであったり、そういう非科学的なものではないようです。霊能者っぽい人も一人しか出ていませんし。『クビキリサイクル』で出て以来、真似と名前以外は出てませんが。そして完結前になくなっています。

ある種、常軌を逸した言語能力であるとも思えます。
若き才能が集っていたER-3。そこを辞めたとはいえ所属していたあたり、天才といえるのではないでしょうか。そもそもが玖渚機関という政治に強い権力を持つ巨大な組織と渡り合った過去がある。本人が明言したわけではないですが、西東天や西東天の手足の一人、医者である絵本園木にそういわれています。この能力自体が留学した理由にもつながるかと。全体を通してのキーワードでありながら、一番謎の多いものです。

実は意外と一番平凡

頭がいいことは確かなんです。ただ、何かにすば抜けた才能があるわけではないらしいです。玖渚友のようにPC関係の天才でもなければ、戦闘力に優れているわけでもない、想影真心や哀川潤のように万能なわけではない。
アンニュイ系で、記憶力が悪くて、でもなぜか頭はよくて、仏頂面で教室のど真ん中に鎮座してる、女の子が好きで、メイド好きな普通の男の子。

闇口崩子という美少女に『私が人肌脱ぎましょう』の言葉と共に刺され、朦朧とした意識のまま主従契約を交わしています。その後の話で崩子ちゃんが美少女から何の問題もなく美女に成長しつつあり、二十歳を超えるのを楽しみにしている節もあります。いつかメイド服を着せたいらしく、完全なる崩子ちゃん育成の為にまだだ!と自分を戒めてもいます。メイド云々はともかくとして、一応普通に美少女を愛でてるあたり、普通の感覚を持ち合わせてもいます。

絵本園木を好みだと思ったり、カラスの濡れ羽島で本物のメイドをしているひかりさんをやや神聖視しつつも好きだったり、隣人の浅野みいこさんに純粋に思いを寄せていたり。
普通に恋愛して、普通に大学に通って、いるというだけの理由でなぞに巻き込まれ事故にあう、残念な一般人でした。

『よう、俺の敵』

とのたまう西東天と出会うまでは。

『ぼく』についてのまとめ

迫れば迫るほど謎が増えましたね。最終的に玖渚友と結婚し、女の子が産まれたらしいんですよ。そして名前は哀川潤から拝借してると。多くの謎があるのに、意外に普通。どこまでも読者を翻弄した彼。西尾維新の作風を世に決定づけたものですから、今なおファンが多く、愛されるキャラクター何でしょうね。そして、成長した彼はなかなかのイケメンです。
アニメ化も決まり、ますます波にのっている『戯言シリーズ』。動いて話す『ぼく』や個性的なキャラクターを見れるのが待ち遠しいですね。

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