ゴジラ対ヘドラ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『ゴジラ対ヘドラ』とは、1971年(昭和46年)に公開された日本のアクションパニック映画である。ゴジラシリーズ第11作品目となる本作の監督を板野義光、主演を山内明が務めた。駿河湾で公害による魚への影響を調べていた海洋生物学者の矢野徹(矢野 とおる/演:山内明)は海の中でヘドラと遭遇する。汚染物質と海のヘドロから誕生したヘドラは、海から陸へと上がり飛行できる姿へ進化し上空を飛び回る。飛行中、硫酸ミストをふりまき人間たちを白骨化させていく。そこにゴジラが現れ、ヘドラと死闘を繰り返すのであった。

人々を睨むゴジラのシーン

ヘドラを倒した後のゴジラ

ヘドラによって沢山の死者や負傷者を出したものの、なんとかゴジラと協力してヘドラを倒すことに成功した人類であった。しかし、ほっとしている人々をゴジラは睨みつけるのである。そもそも原因を作ったのは、自分勝手な人間である。自然を壊している人間へのゴジラからの警告ともとれるシーンである。その後、荒れ果てている海や空を見たゴジラは雄たけびを上げている。これはゴジラの怒りからの叫びにも捉えることが出来る。そして唯一ゴジラとテレパシーで心通わせていた研に、サヨナラの挨拶をしているように唸り声をあげるのである。
ゴジラもまた、人間によって生み出された悲しい怪獣なのである。宇宙生物であったヘドラも、あそこまで大きくなってしまったのは人間のせいである。ゴジラの訴えるよな怒りの目が印象的なシーンである。

『ゴジラ対ヘドラ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

低予算で作られたこれまでにないゴジラ映画

劇中登場するアニメーション

マルチ画面やアニメーションによる抽象的な社会描写や、監督自身による水中撮影など、全編がゴジラシリーズとしては異色の映像となっている。さらに汚染された海が延々映し出されるシーンは、公害と言う社会問題を訴えている。こうした演出は、プールに本物の魚や各種素材を混ぜ込むことで表現したが、買ってきた魚を腐らせてから撮影を行ったため悪臭がものすごかったという。坂野監督の画作りへのこだわりから予算配分は映像面に集中された。その為俳優は極力少人数となり、主演の矢野博士役を務めた山内明ら以外は出演料の少ない新人を中心に起用した。元々低予算下の製作だった為、本編のセットは「矢野博士の研究室」と「アングラバー」の2つだけに留め、残りはすべてロケ撮影とした。特撮のミニチュアセットもコンパクトなものとなり、港のセットでは『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』のヤーレン号が、工場街のセットでは『妖星ゴラス』の電気機関車などが流用された。製作期間が5週間しかなく、ラストの決戦シーンは監督の板野と特殊技術の中野で驚異的なペースで進行したと言う。

世間を騒がせていた社会問題

汚染され魚の死骸が浮かぶ海

本作品は他のゴジラ作品と比べ、社会問題を扱っており残酷な演出も多い。物語や音楽に至るまで重たい作品になっている。なによりゴジラ自身、研と言う子供と心を通わせる様なシーンがありつつも、美しい自然を破壊している人間たちに怒りの表情をしたのが印象的である。当時の公害問題は大きな社会問題となっていた。四日市や田子の浦の環境汚染が、板野監督に強い印象を残した。「第1作目の『ゴジラ』にあったメッセージ性を取り戻したい」との気持ちも強かった。因みに1作目の『ゴジラ』は、反原水爆や、兵器開発の危険性を訴えるメッセージが込められていた。更に板野監督は「エビのお化けやなんかと闘うとかじゃなく、最もポピュラーな社会悪と闘うという形にしたい」という考えがあったという。1971年当時、大都市圏では光化学スモッグによって児童生徒が集団で倒れる事件も相次いでいた。そういった背景もあり、ヘドラの猛威はリアルさを持ち描かれた。また、坂野は主題歌「かえせ!太陽を」の作詞も手掛けている。この曲の歌詞もまた、非常に強いメッセージ性を感じるものであった。

企画の発端

ヘドラを倒した後も、新たなヘドラが海から出現した

娯楽が多様化しテレビの勢いが高まった事で、邦画の人気は傾いていた。当時の東宝本社は、制作本数の減少と売上の悪化をもたらしていた。更に東宝特撮映画の顔であった特技監督の円谷英二が死去してしまう。そして主要スタッフはほぼ東宝を辞職もしくは異動させられてしまったのである。これらのことで当時の東宝特撮の現場はほぼ崩壊状態にあった。
こうした中、プロデューサーの田中友幸は日本万国博覧会(1970年)の三菱未来館の企画や『日本海大海戦』(1969年、丸山誠治監督)の実景撮影などで円谷組の補佐を務めた、坂野義光に企画を依頼した。坂野は「何でもいい」と言われたので、前年に起きた光化学スモッグ事件(校庭にいた女子高生が集団で倒れた)をきっかけに本作の企画を考えた。「『いま最もポピュラーな悪は公害だから、公害の怪獣でもいいですか』と田中プロデューサーに聞いたら『いいよ』との答えだったので、ここから企画が始まった」と述べている。

ゴジラの飛行

飛行するゴジラ

本作品では飛行しながら逃げるヘドラをゴジラが追う際、放射能火炎を放つ際の反動で後ろ向きに空を飛ぶというシーンが描かれて話題となった。ゴジラの飛行は、坂野監督と特撮班のリーダーである中野がスピード感を出す為提案して採り入れたものである。しかしこの描写を取り入れる事で、撮影スケジュールには支障が生じている。プロデューサーの田中は、ゴジラの飛行については猛反発した。このシーンでの田中と坂野監督による論争や、低予算での制作体制が現場にさまざまな軋轢を生んだ。
こうした最中、田中が体調不良で入院した。その間に板野監督は東宝の重役、宣伝部長、撮影所所長らからゴジラの飛行の許可をとりつけ、劇中に取り入れた。このゴジラの飛行については、賛否両論だったが、アメリカでは大絶賛された。宣伝部長や撮影所所長らも「スピード感が出ていいんじゃないか」と褒めてくれたという。試写でこれを観た田中は「ゴジラの性格を変えてもらっては困る」と立腹し、しばらくは坂野監督と口を聞かなかったそうである。
しかし、こうして産みだされたゴジラ映画は、「変身・怪獣ブーム」を受けてまずまずのヒットを記録した。東宝は「ゴジラが他怪獣とチャンピオンの座を競い合う」というコンセプトのもと、ゴジラ映画を中心とした「東宝チャンピオンまつり」興行を本格化する。また、翌年にはさらにヒーロー化したゴジラにキャラクタライズされた新怪獣ガイガンを加え、『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』を制作することとなる。

『ゴジラ対ヘドラ』の主題歌・挿入歌

主題歌: 麻里圭子 with ハニー・ナイツ & ムーンドロップス「かえせ!太陽を」

冒頭から、汚染された海と共に流れるこの曲は板野監督の作詞した曲である。この作品にぴったりの公害をテーマにした曲である。
この曲を歌っている麻里圭子は、富士宮ミキ役としてこの映画に出演している。当時テレビドラマ『サインはV』の主題歌などで知られる歌手であり、演技についてはこの映画が初となる。

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