斎藤一（るろうに剣心）の徹底解説・考察まとめ

「刀狩りの張」の異名を持つ。志々雄一派の幹部である、十本刀の一人である。大阪を活動拠点にしており、しゃべり口調が関西弁である。刀マニアであり、数本の刀を常に持ち歩いている。特に数多くの殺人鬼剣を作ってきた新井赤空（あらい しゃっくう）の刀には目がなく、彼の生前の最後の一振りである白山神社に奉納されている御神刀を巡って剣心と激突。張は赤空の孫でまだ赤子の伊織を人質に取り、赤空の最後の一振りを自分に渡すよう剣心を脅迫した。
しかし剣心に実力行使で止められ、自身は京都府警によって捕縛された。

張は十本刀であり、危険であるとされているため、足枷手枷に加えて、鉄扉の牢に収監されていた。斎藤としては志々雄が次に何をしてくるかを探っており、張からその情報を尋問しようとしていた。
斎藤は釈放を引き合いに出して、神戸での警官50人の殺害事件と京都襲撃の計画について聞き出そうとしたが、張は話そうとしなかった。その場に居合わせた左之助に、志々雄一派に命を狙われる危険を避けるためにあえて牢獄でおとなしくしているなどと挑発しされたことをきっかけに小競り合いになった。しかし、張が足枷の鉄球で攻撃したところ、左之助は足枷手枷がついている張との戦いはフェアではないとして、二重の極みで張の手枷を破壊した。それがプライドに障ったのか戦意喪失した張は、2つの事件について話し始めた。
張は志々雄に対する忠誠も大事にしているが、志々雄のことや自らの死を恐れているわけではなく、自身にとって面白いかどうかで判断しているという。

志々雄の死後は、斎藤の下で密偵として働き始める。斎藤の人遣いの荒さに、文句をつけているが、斎藤が便宜を図って今の仕事にありついているため、斎藤が反論すれば引き下がるしかない模様。ただ、仕事は雄禄情報を的確に押さえており、密偵としての能力は高いことが窺える。

三島栄次（みしま えいじ）

三島栄次は新月村に住む少年である。
新月村は志々雄の配下である尖角（せんかく）の統治下にあり、逆らうものがあれば見せしめに殺されてきた。栄次の両親は、この村を抜け出そうとしたとして、尖角に殺されてさらには吊し上げられていた。栄次は兄に守られながら、村を抜け出して、剣心と操に出くわした。

新月村はまた、何度も警察を派遣され、尖角らを退けようとしていたが、いずれも返り討ちに会い、全滅させられている。それを繰り返しているうちに、いつしか地図にない、政府に見放された村となっていた。
斎藤は部下から志々雄が新月村に入ったとの報せを受けて、偶然にも剣心と鉢合わせになり、栄次の両親がつるされている現場に遭遇した。
斎藤が言う部下とは密偵として送り込んだ三島栄一郎は栄次の兄であった。

新月村の元凶である尖角を剣心が戦闘不能にしたが、栄次は家族の仇である尖角を自らの手で殺そうとする。剣心と斎藤に制止される。剣心からは人を力で虐げる志々雄一派でも暴力に怯えているだけの村人のようになるのでもなく、栄次の兄のように勇気をもって未来を信じられる人間になるように説いた。
栄次は孤児となってしまったため、斎藤が妻の時尾がいる会津に送って、しばらく生活させることにした。

それから5年後、栄次は時尾の下で立派な青年となり、警察官になった。志々雄一派に家族を奪われたことに対する激しい怒りを持っており、宗次郎に向かって発砲しようとするなど、自身をコントロールできない場面はあるが、基本的には誠実で素直な性格である。
剣心と斎藤に対しては大きな恩義を感じており、先生と呼んでいる。

高木時尾（たかぎ ときお）

高木時尾は斎藤一の妻である。
斎藤は警視庁の所属であり、東京を中心に活動しているが、時尾は会津で斎藤の帰りを待つ。
新月村で両親と兄を失い、孤児となった栄次を預かり、立派に育て上げた。

斎藤が剣心と操に妻の時尾がいることを伝えたときには、斎藤のような不愛想で一匹狼の性格の人物を受け入れられるのだとしたら、菩薩のような人だと想像されていた。
斎藤も時尾のことを「できた女」としており、安心して栄次を預けられる様子である。
『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』の作中では本編から北海道編6巻までの時点で、名前だけの登場であり、その姿は描かれていない。

凍座白也（いてくら びゃくや）

凍座白也は劍客兵器の部大将の一人であり、函館隊を統率して実検戦闘を行う。
函館山で斎藤と対峙した際は、数度にわたり牙突の攻撃を受けるも、人並外れたパワーと動体視力により攻撃を全て受け止めるという驚異的な防御力を見せた。
凍座は人の闘争の本質を闘姿という形で見ることができ、ほとんどの場合は家畜などの闘姿を視るのだが、斎藤に対しては剣を咥えた狼を視た。
この闘姿から相手を評価しており、異形の強い闘姿を見せた斎藤に対しては劍客兵器へ入るように勧誘していた。
斎藤の援護に入った栄次に対しても、異形の闘姿（角を隠した小鬼）を視ており、栄次への興味をもち、より近くで闘姿が育っていくのを見届けるために五稜郭での監禁を受け入れた。

五稜郭で警察側は尋問に掛けようとしているが、凍座はこれには応じず、唯一強者との対戦中だけは質問していいと要求した。
剣心がその対戦に応じ、その間に斎藤が尋問をする。剣心は一度に9撃を加える神速の技である九頭龍閃を喰らわせるが、凍座は倒れることはなく、続けて九頭龍閃3連撃を加えてようやくその場に倒れこんだ。通常では考えられない何らかの力を使っており、異常なタフネスがある。一方剣心は技の反動により左之助の肩を借りないと立てない状態になった。

雹辺双（ひょうべ ふたつ）

劍客兵器、部隊将の一人。札幌で実検戦闘を命じられている。
黒装束の衣装に髑髏の面をつけており、両手には先が鎌のように折れ曲がった刀を持っており、その風貌は死神を模したものとみられる。その素顔は明らかになっていない。
札幌にいる公職者を無差別に殺害するように命じられた雹辺は、早速それを実行に移していく。
雹辺を阻止するため、斎藤と永倉は雹辺に立ち向かう。斎藤の身長は183 cm であり、明治時代としてはかなり高身長であるが、雹辺はその斎藤よりはるかに大きい。また銃火器系は、雹辺の剣閃により全て無効化され、また自身が見えなくなるほどの多くの剣閃で相手を攻撃して、人ひとりに集中攻撃した場合、肉が全てそぎ取られ骨だけになってしまう。その頭蓋骨を紅髑髏と呼び、歓喜していることから作中登場するキャラクターの中でも群を抜いた猟奇性をもっている。
斎藤から牙突四式にて眉間から後頭部にかけて貫かれても何らかの理由で生きており、通常では考えられない生命力をもっている。

斎藤一の名言・名セリフ／名シーン・名場面

「お前のすべてを否定してやる」

斎藤一は神谷薫らに「藤田五郎」と名乗った上で、神谷道場に潜入していた。
斎藤は事前に剣心へ手紙を送っており、決戦を申し入れていたが、決戦の場所にいたのは赤松有人であった。
剣心は赤松を一蹴したのち、神谷道場に戻るとそこに斎藤がいた。

斎藤は剣心がいない間に薫らを「いつでも殺ることができた」と述べ上で、発したセリフである。

居候とはいえ、剣心にとって薫らは家族そのものであるが、その家族を危険に晒してしまった事実を突きつけて、さらには逆刃刀で不殺を貫く姿勢に対し異議を唱えたのである。
幕末から斎藤は幕府側、剣心は維新側の最前線で戦っており因縁があった。互いに実力は拮抗しており、好敵手であることを意識し、いつかは決着をつけること望んでいた。しかし、今の剣心は殺さないことに重きを置いており、幕末の強さは健在ではないと斎藤はいう。

「犬はエサで飼える 人は金で飼える だが壬生の狼を飼うことは何人にも出来ん」

剣心の暗殺依頼人である渋海に「金ならいくらでもある」と言われた後に、斎藤が言ったセリフ。

剣心の暗殺を斎藤に依頼していた渋海であったが、斎藤としては渋海に賛同するために依頼を受けたのではなく、剣心の情報を得るために渋海の依頼を受けた。
斎藤は初めから渋海を粛清するつもりで、利用していた。

渋海にとっては剣心の存在が邪魔であり、以前にも黒笠事件の黒幕となり宇堂靱衛（うどう じんえ）に依頼し、剣心の暗殺を試みていた。
渋海の自分の手を汚さずに私益を肥やすその様は「悪・即・斬」を貫く斎藤にとっては斬る対象であった。

「無論 死ぬまで」

斎藤一の奥の手、「牙突零式」で両断された魚沼宇水に、「悪・即・斬」を貫けるか？という質問に対し、答えたセリフ。

宇水との一戦は、剣士として以上に互いの生き様とそれを支える心の強さを競うような闘いであったが、最後まで自分の信念を崩さずに戦い切ったのは斎藤の方だった。
宇水の信念は、「いつでも志々雄の命を狙える」という特権を持っていることがプライドであったが、これは斎藤との舌戦の中で否定されてしまった。宇水としては信念はおろか、闘いとしても完全な敗北を喫した。

斎藤が信念とする「悪・即・斬」は幕末の新選組時代から続くものであり、戦乱が終わった明治の世で、その信念を貫くのは大変であることが時代背景から読み取れる。
明治では廃刀令が敷かれ、警察ですら帯刀できる者は稀である。加えて、上官の許可なしに、斬ることも許されない世の中となっていたが、斎藤は新選組時代から貫いている生き方を全うする覚悟があった。

「お前らとはくぐった修羅場の数が違うんだよ」