機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ(鉄オル)のネタバレ解説・考察まとめ

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』とは、2015年10月から2016年3月に第1期(第1話~第25話)、2016年10月から2017年4月に第2期(第26話~第50話)が放送されたアニメ作品。「機動戦士ガンダム」シリーズの一作である。
火星の民間警備会社に所属する少年の三日月・オーガスは、ガンダム・バルバトスに乗って戦うことになる。生き抜くために戦いを繰り広げる少年少女たちの成長や挫折といった人間ドラマが濃密に描かれている。

鉄華団の日常生活

緊迫感ある戦闘。そして胸を穿つような悲しみに溢れた死亡シーンが多い今作ではあるが、その合間、合間には鉄華団の日常シーンも描かれている。
戦う以外の選択肢を持たない、与えられてこなかった、そしてまたその選択肢があること自体を知らない彼らの日常は、しかしごくごくありふれた日常である。
そうした日常のシーンひとこまひとこまと、戦いのシーンとの落差も、本作の名シーンのひとつである。

たとえば喧嘩のシーン。
思慮が浅いがプライドが高いユージンと、言葉より先に手が出るシノ。
慣れた様子のオルガ、三日月、ビスケット。
シノに思いを寄せているが故、心配でたまらないと言った様子のヤマギ。
後ろでさりげなく煽っているチャドとダンテ。
そして我関せずの昭弘。
少年たちの個性が感じられるワンシーンである。

三日月とアトラ、そしてクーデリアの関係も良く描かれる。
本来であればアトラとクーデリアは恋敵と言っても良いはずなのだが、そんな様子はみじんも感じさせない。
アトラは三日月のことが好きなように、クーデリアのことも大切に思っている。
そしてまたクーデリアも、三日月のことも、アトラのことも、家族のように大切な存在だと思っているためである。

クーデリアに読み書きを習う三日月。
将来の夢など持っていなかった彼だが、じょじょに農園を経営したいと言う夢を持つようになる。
その役に立てば、と文字の読み書きを習い始めたのだ。

もし、戦いがない世の中であったなら。
三日月たちも、大変ではあるが夢を追い、それを叶え、ごくごく普通の生活を送ることができていたのかもしれない。

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の名言・名セリフ

オルガ・イツカ「あの目に映る俺は、いつだって最高に粋がって、カッコいいオルガ・イツカじゃなきゃいけねぇんだ」

6話のオルガの台詞。

三日月とオルガの関係と言うのは、今作を構成している要素のひとつ、軸とも言うべきものである。
強い強い、兄弟以上の絆で結ばれている二人。
だが自分の意思がないような、オルガの言葉で動く三日月、そしてその重圧に押しつぶされそうになっているオルガの姿には、歪んだ依存関係、危うさを含んだ依存関係のようなものも感じさせる。

その依存関係がどのような結末を迎えるのかは、物語を見ていくと明らかされていく。
だがまだまだ動き始めたばかりの物語の序盤で登場したオルガのこの台詞は、三日月の存在こそがオルガを奮い立たせている理由であると、他ならぬオルガ自身がそれを信じているのだと感じさせる。

昌弘・アルトランド「生まれ変わりがホントか嘘かそれももうすぐ分かるよ…。先に確かめてくるね兄貴…兄ちゃん…」

13話。昭弘の弟、昌弘が死にゆく際に口にした言葉。

戦場で、敵と味方に分かれて再会した兄と弟。
不幸にも生き別れた二人だったが、その後の境遇は対照的だった。

辛苦を強いられながらも、家族のような鉄華団と言う絆を手に入れた兄、昭弘。
辛苦を強いられながら、ただただ搾取され、虐げられるだけの日々をブルワーズで過ごすしかなかった弟、昌弘。

戦場で再開し、そのことを知った昌弘は、一度は昭弘を拒絶する。
しかしやはり、最後は昭弘を庇い、彼に見守られながら命を落としていく。

残酷な再会。その最後に取り戻された兄弟の絆、その悲しさが胸に響く一言である。

三日月・オーガス「オルガ・イツカ。連れていってくれるんだろ?俺は次どうすればいいんだ?」オルガ・イツカ「ああ分かったよ!連れてってやるよ!どうせ後戻りはできねぇんだ、連れてきゃいいんだろ!途中にどんな地獄が待っていようとお前を…お前らを俺が連れてってやるよ!」

22話。ビスケットを失い憔悴するオルガと、それに対する三日月の言葉。

三日月とオルガの危うさをはらんだ依存関係。
それがあらわれたのが、このやり取りである。

ビスケットを失ったことで、オルガは立ち止まりたいと願う。
しかし三日月はそれを許さない。
勘弁してくれ、待ってろ、と猶予を願うオルガを、執拗に追い詰めていく。
そしてそれに耐えきることができなくなったオルガは、ほとんど自棄のような口調で、言葉を返す。

三日月はオルガの言葉なくしては、ほとんど自発的な行動をとらない。あるいは、とることができないのかもしれない。
だから一見すると、オルガの方が、この関係においては上位に位置しているように見える。
しかしこの言葉を聞くと、実はオルガこそが三日月に支配されているのではないか、とも感じることができる。

メリビット・ステープルトン「こんなの間違ってる!ビスケット君だってフミタンさんだってこんなの望んでない!絶対に間違ってる!間違ってるのに…どうしてなの?もう…何も…言えない」

24話。薪苗を送り届けるために戦い続ける鉄華団。その子供たちを前にしたメリビットの言葉。

今作においては大人と子供の関係も、物語を構成する大きな軸となっている。
子供を虐げ、その権利を搾取する大人がいる一方で、子供であっても対等に接し、時に厳しく、時に温かく迎え入れる大人も存在している。

テイワズから派遣されたメリビットは、後者の大人であった。
だから彼女は、オルガをはじめとする鉄華団の子供たちを諭すような言葉を口にする。
しかしそれでも戦いの道を選ぶ鉄華団に対して、じょじょに絶望にも似た思いを抱くようになる。
それは、自分の言葉などきれいごとでしかないのではないか、と言う絶望であり、そんな言葉を口にする以外、大人にできることなど何もないのではないか、と言う絶望である。

そしてその絶望が頂点に達したのが、この言葉である。

アストン・アルトランド「俺はお前に…フウカに… 出会わなければよかった。 ヒューマン・デブリは感情なんて 持ってたら生きていけない。 仲間が殺されても悲しんでたら潰される。 俺たちは自分の心を殺して生きてきたんだ。 なのに…なのに…本当に…お前らに… 出会わなければよかった…だって… 死にたくないって思いながら… 死ななくちゃいけないんだからな… でも…ありがとう………」

32話。マクギリスの攻撃からタカキを庇い絶命していくアストンの言葉。

ブルワーズの一員として、感情を押し殺さなければ耐えられないような生活を強いられてきたアストン。
鉄華団との戦いで生き残った彼は、その後、鉄華団に引き取られた。
その中で出会ったタカキ、そしてタカキの妹、フウカとの交流は、彼にとっては新鮮で、そしてまたとても喜ばしいものだったのだろう。

誰かと交流することで、感情が生まれていく。
それに出会ってしまった後悔と感謝を口にするアストンの思いを、そしてそれを聞くことしかできないタカキの思いが胸に迫る台詞である。

昭弘・アルトランド「生き残ってくれてありがとな」

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