月島基（ゴールデンカムイ）の徹底解説・考察まとめ

日露戦争後、月島は鶴見中尉とともに小樽へと移動し、着実にアイヌの金塊を入手するために奔走していた。
そして、刺青人皮の秘密を知ったアシリパと杉本を追ううちに、上官である「和田大尉」が鶴見中尉の反逆を知り、月島へ鶴見中尉を射殺するように命じたが、月島は逆に和田大尉を口封じのために射殺する。
鶴見中尉はその後、剥製のスペシャリストに刺青人皮の偽物を作らせ、争奪戦に混乱をもたらそうという策を立てる。
その作戦のため、目を付けられたのが夕張で剥製所を営む「江渡貝弥作（えどがい やさく）」という青年だった。

剥製職人・江渡貝弥作

江渡貝は実は死んだ人間を利用して作った服や小物を愛好するという趣味をもっており、自分の作品に理解を示してくれ、死んだ母親からの呪縛から解き放ってくれた鶴見中尉を崇拝し、依頼を受ける。
しかし、江渡貝は腕は確かだが精神的に安定しておらず、このサポート兼見張りとして月島を含む数人の兵士が派遣されることとなる。
芸術肌の江渡貝は冷静な物言いをする月島に反発するが、月島は荒れる江渡貝を意に介さず、真顔で激励し偽物作成を促していく。
その後、なんとか偽物の刺青人皮を作成できた江渡貝だったが、攘夷共和国の再建を目論む「土方歳三（ひじかた としぞう）」側へと寝返った狙撃の名手である「尾形百之助（おがた ひゃくのすけ）」と杉本達に存在がバレてしまい襲撃に合う。
江渡貝は偽物の刺青人皮を守るため逃亡を図り、夕張で発展していた炭鉱へと逃げ込む。
江渡貝が襲撃に合い、逃亡したことを知った月島は、江渡貝の後を追いかける。
一度は追いつき、江渡貝と合流することができたが、炭鉱内に可燃性のメタンガスが充満しており、小さな火花から引火し大爆発が発生する。
爆発と爆発による戻しにより、炭鉱内に取り残され鉱石の下敷きになった江渡貝から偽物の刺青人皮と本物と偽物を見分けるポイントを月島は託された。
有毒のメタンガスが充満する中、民間人である江渡貝を助けようとする月島だったが、足を鉱石に潰された江渡貝を助け出すことはできず、江渡貝の最期を見届けた後、彼が作成した成果を鶴見中尉に持ち帰った。
守るべき民間人である江渡貝を巻き込み、目の前で死なせてしまったという事実は、月島にとって大きな負い目となり、後々まで罪の意識を引きずることとなった。

第七師団の兵士として

その後、同じく27部隊所属の少尉である「鯉登音之進（こいとおとのしん）」が登場してからは、彼と行動を共にすることが多く、鶴見中尉の熱狂的（かなりの）信者である鯉登少尉の通訳係を任されている。
鯉登少尉は「薩摩隼人」として鶴見中尉も一目置く兵士だが、鶴見中尉に心酔するあまりに、面と向かって話すと、興奮のあまり早口の薩摩弁が出てしまう癖がある。
そのため、一度月島を介して鶴見中尉と会話をする通訳のような役割を担っている。
あの冷静な月島もさすがに「面倒くさい」と語っている。

網走監獄の攻防

網走監獄襲撃にも出撃し、鶴見中尉の側近として命令を忠実にこなしていく。
網走監獄にはアシリパの父であろう「のっぺらぼう」が収監されている。
杉本達はアシリパを「のっぺらぼう」に会わせるため、網走監獄への侵入を決意する。
そんな杉本達の行動を予期していた鶴見中尉は、「道東沿岸を北上する飛蝗の大群を駆除するため、青森の大港要港部司令官である鯉登少尉の父「鯉登平二（こいと へいじ）」海軍少将に協力を要請。その途中で網走監獄に囚人が立て籠っているという通報を受け駆け付けた我々が事態を収束させた」という筋書きを用意する。
網走監獄に向けて艦砲射撃後、小舟に乗り込む北填部隊の兵士たち。
鶴見中尉は「蝗害も暴動も中央の人間がこんな地の果てまで確かめに来ることはまず無い。中央なんぞにはいつだって事後報告で十分だ」と、中央を見下すような発言をする。
月島はそんな鶴見中尉へ向か合って「監獄側の人間が誰か一人でも証言すればその報告は成立しませんが…」とバッタ駆除の筋書きに対して指摘をするも、鶴見中尉から返ってきた冷たい目線で、襲撃したことがバレないように看守も囚人も始末する必要があることを悟る。
一方、土方一味であり看守として紛れ込んでいた「門倉利運（かどくらとしゆき）」は侵入してきた北填部隊所属の「宇佐美時重（うさみとくしげ）」に襲撃されるも、火災時に作動させる一斉開房装置を作動させて囚人たちを檻の外へ一斉に開放する。
鶴見中尉の部下は67名に対して囚人の数は700名と大差であったが、鶴見中尉は動じることも無く、「一匹残らず駆除だ」と言い放った。
月島は鶴見中尉の指示で、激しく銃弾の飛び交う中、冷静に着發壷形手榴弾を投下する。
無数の武装した看守、囚人たちと激戦を繰り広げ、鶴見中尉と共に、月島は無事に生還する。
襲撃後は、尾形に瀕死の傷を受けた杉本を第七師団で名医・家永カノに手当をさせ回復させる。
その後、鶴見中尉の命令で杉本、鯉登、谷垣たちと先遣隊として樺太に渡り、アシリパやキロランケを追うことになる。

いざ、樺太へ

網走監獄襲撃後、鶴見中尉の命令で先遣隊として鯉登と共に樺太へと渡るが、これまで対立関係にあった杉本、密かに彼に与していた第七師団の兵士谷垣源次郎（たにがき げんじろう）も共に同行し、金塊を狙うアイヌのキロランケと彼に連れ去られた金塊の秘密を知る少女アシリパを追うことになる。
樺太では鯉登の他に世話が焼ける対象が2名増えてしまい、苦労が倍増している。
更には、谷垣についてきた「チカパシ」と猟犬の「リュウ」まで荷物に紛れ込み同行することになってしまう。
さすがの月島も「これ以上子守をする気はないぞ」と言い放ち、谷垣へ面倒見るようにと言いつける。
樺太へ上陸した月島達はアイヌの娘を見たという情報をもとにアイヌの集落へと急ぐ。
そんな中で樺太アイヌの「エノノカ」と出会う。
エノノカからアシリパの情報を聞くと、グズリに襲われているヒグマと遭遇してしまう。
月島は鯉登へグズリから離れるように促すが、グズリに安易に近づき背中を噛みつかれる鯉登。
直ぐに月島が対処し、事なきを得る。
エノノカの祖父を雇い、犬ぞりでロシア人の村まで移動し、アシリパの情報を得ようとするが、そこで刺青囚人の情報を取得することになる。
ロシア人の村では盗まれた犬ぞりの犬を取り返す事、刺青囚人の情報を得るためにスチェンカの参加を決意する。
スチェンカでは日本人だと馬鹿にされ頭に血が上り全員参加するが、順調に勝ち上がっていく。
最終戦で元囚人の「岩息舞治（がんそくまいはる）」とのスチェンカで「殴られすぎ」たため、意識を失い味方にも殴り掛かる杉本に追われロシア式蒸し風呂「バーニャ」へ逃げ込む。
岩息との殴り合いの末、氷の張った湖へ落下し、覚醒した杉本と共に岩息の刺青の写しと、アシリパの手がかりも入手することが出来た。
その後、置き引きに出会った月島達は置き引き犯が曲馬団の軽業師であることにヒントを得て、杉本は自身が生きている事をアシリパに伝えるためハラキリ芸を行う事となる。
杉本はハラキリ、鯉登は曲芸に、谷垣は少女団と共に真面目に踊りを練習する。
それぞれの行動に、もの言いたげな表情で対応していく月島。
鯉登の曲芸の才能が目立ち、杉本のハラキリが目立たなくては意味がないと考えた月島は、鶴見中尉の写真を使い、鯉登の気を削ぐ方法を思いつくが、裏目に出てしまう。
鯉登がハラキリ用の模造刀と真剣の刀身を入れ替えていた。
真剣でのハラキリに覚悟を決めた杉本の前にロシア政府が乱入し、銃口を突き付けてくる。
直ぐに杉本が対応し、無事に曲芸を終えることが出来た。
曲芸の団長が元陸軍将校であり、ロシアの情報を日本陸軍へ報告していたことを明かされる。
一応、当初の目的である杉本が生きているという証明は新聞に載せることはできた。
その後、なんとか国境を越え、亜港に到着し、アシリパの後を追う。
アシリパを追う途中で灯台守夫婦の家出していた娘を発見した月島は本来の使命から逸脱した行動を取る。
まるで、自身といご草の事を内心後悔しているような、感情をむき出しにした月島。
その後、月島、鯉登、谷垣は先行した杉本と白石を追う途中で、キロランケと遭遇し激しい格闘となる。
谷垣はキロランケを見つけた瞬間に豹変したかのように殴りかかる。
そして、インカラマッのマキリ（小刀）をキロランケの左下腹部に突き立てるが、致命傷には至らなかった。
月島は谷垣の異変に気が付き声を掛ける。
しかし、キロランケの仕掛けた罠が先に作動し、咄嗟に鯉登を庇い左頸部を損傷する。
月島を傷つけられた鯉登は激昂し、月島の静止を聞くことなくキロランケへと向かっていく。
必死に鯉登を呼び止める月島は過去の自分と鯉登を重ねているのだ。
左肩を負傷しながらもキロランケに致命傷を負わせることに成功した鯉登。
世話の焼ける上司が見事に役目を果たしたところを見届けた月島は、口では事務的な対応に終始するものの、表情には安心したようなものが浮かんでいた。
その後は天候が好転し、無事にアシリパと合流していた杉本達と会うことができ、無事に樺太での任務を遂行することができたのである。

樺太の果てに

アシリパの連れ戻しという目的は達成できたものの、射撃の名手である尾形百之助（おがた ひゃくのすけ）の「ボンボンが」というロシア語から過去にあった自身の誘拐事件に鶴見が関与しているのではないか、という疑念を月島は鯉登に投げかけられる。
最初は冷静に否定していた月島だったが、ついに感情のほころびが出る。
「あなたたちは救われたじゃないですか」
この一言に月島の人生の重みを感じる。
「彼について行ってる者たちは救われるんだから…何の文句もないはずだ」
この月島の発言には、鶴見の甘い嘘によって、気持ちが救われた人間、生活自体が救われた人間が多数いることがわかる。
しかし、月島は気持ちも、人生も踏みにじられ唯一救われない人間だと感じているのである。
この、自身が進む先にどのような答えがあるのかを確かめることだけが、現在の月島を突き動かす原動力なのだ。
そのために、「私は鶴見劇場をかぶりつきでみたいんですよ、最後まで」と話す。
そして、そのためであれば鶴見は容赦なく人を殺し、その汚れ仕事を請け負うのは自分であると月島は鯉登へ素直に話す。
どこか、鯉登だけは殺したくないという月島なりの意思表示に取れる部分がある。
そんな討論をしているところを白石に聞かれてしまう。
白石は第七師団の動向に不信感を抱き、アシリパの為に金塊争奪戦から身を引くことを考えている杉本に
「彼女は色んなものをこの島で学んで成長したんだ、もうお前がであった頃のアシリパちゃんじゃねぇんだよ」
「全部覚悟の上でアシリパちゃんがアイヌを背負いたいというなら、背負わせりゃいいだろッ！！」と勝手にアシリパの幸せを決めつけるのではなく、自身に選択させる事、第七師団がアイヌについて本当に考えているのか疑問であることを伝え、杉本の考えを改めさせる。
その後、アシリパは鶴見中尉との謁見にて真意がわからない以上、彼に金塊を委ねることはできないと判断し、杉本はそんなアシリパの考えに賛同し、自立した相棒だと認識したのちに再び月島達と敵対する関係となる。

揺らぐ想い

大泊港で杉本、アシリパ、白石と対立時に負傷した鯉登と共に月島は小樽へ戻り、谷垣の子供を宿しているインカラマッの見張り役として駐在していた。
負傷した鯉登に目もくれず杉本とアシリパを追う鶴見中尉に内心の揺らぎを感じていた。
そんな中、身重のインカラマッと共に逃げるため小樽の病院へ忍び込んだ谷垣を追う事となる。
谷垣との戦闘中成り行きから第七師団に協力していた囚人「家永カノ（いえなが かの）」からの奇襲を受ける。“完璧な美”を追い求める家永は、谷垣の子を宿したインカラマッこそはその体現者だと感じており、彼女を守るために月島を妨害しようとしたのだった。薬品を撃ち込まれ、一時的に意識が朦朧とする中でも反撃して家永を殺害し、自身の職務を全うしようと動き続ける。
谷垣とインカラマッが病院から逃亡する直前に鯉登が対峙するも、2人をわざと逃し、月島が2人を殺すか後を付けていく。
谷垣とインカラマッはフチ（アシリパの祖母）の村になんとか逃げ切るも、すぐ後ろに月島が迫っていた。
月島は谷垣と共にインカラマッも、お腹の子も殺すつもりだったのだが、後を追ってきた鯉登に止められる。
谷垣への報復を鯉登にとめられた月島は、「脅しは実行しなければ意味がない、他の者にも示しがつかない、邪魔をするなら殺すと言ったでしょう」と上官である鯉登へも銃を向ける。
月島の中では裏切者は始末する、それだけが自身の生きている価値を見出せる手段だったのだ。
しかし、鯉登からの返事は反逆でも忠誠でもない「鶴見中尉殿と月島軍曹を最後まで見届ける覚悟でいる」と今までにない返答をされる。
鯉登の返答に戸惑いを隠せない月島。
以前、月島の本音に「彼について行ってる者たちは救われるんだから…」と話していたことを思いながら鯉登は続ける。
「鶴見中尉殿の行く道の途中でみんなが救われるならそれでいいと、私も同意見だ。そのために私や父が利用されていたとしてもそれは構わない」と真っすぐな眼で話す鯉登を月島は見ることが出来ないのであった。
鶴見中尉からの命令で沢山の人を殺し、利用してきた月島は自分はもう遅いと叫ぶ。
利用して死なせてしまった意識の中には、江渡貝の姿もあった。
本当に大切なものを全て諦めてきた月島にとって、与えられた自分だけの仕事を全うすることだけが示す道だった。
捨てたものの大きさ故の厳格さも、鯉登と谷垣、インカラマッにより揺り動かされることとなる。
今まで頑なにインカラマッの占いを拒んできた月島がすがるように、いご草を想い、その安否を問う。
その直後インカラマッが産気づき、お産の手伝いをさせられる月島。
お産中、鯉登からの「私は鶴見中尉殿を前向きに信じる、月島はその私を信じてついて来い」という言葉にどこか信頼を寄せた表情を見せる。
1週間後、谷垣とインカラマッは鶴見中尉から逃げるように村を去る。
インカラマッは去る際に自身の占いで見えたものを月島へ伝えようとするが、それを断る月島はどこかスッキリとした表情だった。

札幌麦酒工場にて

谷垣とインカラマッを逃がし、小樽で鶴見の指示があるまで待機していた。
鯉登とメンコをしながら待機している姿に、今までの重責が薄れて、鯉登への信頼が垣間見える。
鶴見から札幌で待つようにと指示を受け、月島と鯉登、二階堂は札幌へ向かう。
先に札幌へ向かっていた「宇佐美時重（うさみ ときしげ）」と「菊田杢太郎（きくた もくたろう）」と合流する際に月島は鯉登に向かい鶴見中尉と合流するが今まで通りに接することが出来るかと問う。
そんな月島に鯉登はお前こそ、と揺らいでいるであろう月島を真っすぐに見つめ返した。
札幌で菊田と合流した月島達は札幌の連続殺人事件の犯人が刺青脱獄囚だと考え、犯人の確保へと向かう。
犯人が札幌麦酒工場で犯行を行うかもしれないという情報を得た月島達が現場へ向かうと、宇佐美が土方と共に連続殺人事件の犯人を捕らえるために張り込みをしていた柔道の達人で刺青囚人の1人である「牛山辰馬（うしやま たつうま）」と掴み合っているのを発見する。
鯉登が応戦しようとするもうまくいかず、麦酒工場内に逃げ込んだ牛山を追いかけ月島は裏口から侵入する。
侵入した麦酒工場内で杉本とアシリパに遭遇した月島と鯉登だったが戦闘中に牛山の崩した麦酒樽から零れた麦酒を頭から受けてしまう。
月島や鯉登、二階堂は麦酒に酔いながらも杉本と戦うがうまく逃げられてしまう。
その後麦酒工場内で杉本達を捜索していた鯉登がアシリパを奪い抱えた「海賊房太郎（かいぞく ぼうたろう）」と遭遇する。
海賊は金塊の在処を示す刺青を施された囚人の1人で、過去に家族を疱瘡で亡くし、子供時代に味わった孤独感から、「自身の国を作り王様になる」という夢を抱いていた。
そのために独自に金塊を追い、アシリパを連れて逃げようとしていたのである。
すぐにアシリパを奪還するために動く月島と鯉登だったが、海賊との戦闘で麦酒の海となった工場内に鯉登が残される。
月島は鯉登よりもアシリパの確保を優先させようとするが、鯉登の救出へと戻り鯉登を救出する。
鯉登にはアシリパの確保をせずに救出に来たことを叱咤され、月島自身も自分の行動に戸惑うような表情をさせる。
アシリパは偶然に遭遇した二階堂が確保し、鶴見中尉の元へ連れていき麦酒工場からの脱出を終えた月島と鯉登は外で待機していた鶴見中尉と合流する。
これまでの経緯を鶴見中尉へ報告しようと月島が口を開こうとした瞬間、鯉登が報告をはじめる。
今まで鶴見中尉の前では早口の薩摩弁が出てしまっていた鯉登の変貌に、鶴見中尉は問いただすこともなく鯉登の話を聞き、深追いしないようにと指示を出すが、月島の表情は反逆者を見る視線であった。
これまでの鯉登は鶴見への憧れが過ぎたため、彼と話すときはいつも普通には聞き取れないほどの早口の薩摩弁になっていた。
それが普通に話せるようになったということは、“鶴見中尉への憧れが無くなり、忠誠心も薄れている”ということではないかと考えたため、「自分には“鶴見中尉についていく”などと言っておきながら、その鶴見中尉のことを全面的に信じていないというのなら、結局鯉登もいつかは裏切るつもりなのではないか」との疑念に満ちた視線である。

鶴見中尉の目的

札幌麦酒工場でアシリパの確保に成功した鶴見中尉と共に月島達は札幌からの脱出を試みる。
アシリパ奪還のために鶴見中尉を追いかける杉本達や土方達、亜港監獄から追ってきたパルチザンの「ソフィア・ゴールデンハンド」、それぞれに追われる。
このままでは危険だと判断した鶴見は近くの教会にアシリパを連れ込んで隠し、同時にパルチザン達への人質を兼ねて捕らえたソフィアをここに運ばせる。
月島と鯉登は別れた部下の捜索と追跡者の排除を命じられるが、お互いに鶴見がアシリパへ何を伝え、何を問うのかどうしても知りたい気持ちが抑えられず、教会へ待機し勝手口の鍵穴から話を聞こうとかち合う事となった。
鯉登にコソコソと嗅ぎまわる気かと言われた月島は、麦酒工場での鯉登の変化を指摘する。
自身でも気づかぬうちに鶴見中尉を信頼できず心が離れているのでは、という月島に鯉登は何も言い返すことが出来ず黙り込む。
そのまま教会に隠れ忍んだ月島と鯉登は今までのすべての経緯と鶴見中尉の真の目的を聞くこととなる。
ロシア極東部のウラジオストクに、ソフィアを含むパルチザンとのやり取りの中で命を落とした鶴見の妻子の墓がある事が彼の口から明かされた際には、怒りが抑えられず声を荒げる。
鶴見が自身の運命を歪めてまでやろうとしていたことが、個人的な復讐と家族の弔いなのかと思い理不尽さを感じたのだ。
話が真相に進むにつれて、鶴見中尉の私怨である可能性が大きくなり、最後まで愛した妻と娘の骨を捨てられなかった鶴見と、諦めた時にすべて捨てた自分を思い怒りを滲ませる。
しかし、鶴見は「あくまでも日本国の繁栄であり、進むべき道のかたわらに自分の小さな小さな個人的な弔いがあるだけだ」と話す。
そしてはっきりと、個人的な弔いのために道をそらすなどということは断じて無いと言い切る鶴見中尉に、隠れ忍び聞いていた月島は、いままでみたこともない安堵の表情を浮かべていた。
月島は、杉本達との旅や鯉登からの言葉に鶴見への忠誠心が揺らいでいたが、自身の信じていたものが本物であったことに安堵したのだ。

月島基の関連人物・キャラクター

杉本佐一（すぎもと さいち）

『ゴールデンカムイ』の主人公。
顔面をはじめ全身に傷跡のある元・陸軍軍人。
日露戦争では普通助からないような傷を受けても持ち直し、その後鬼神のような活躍から「不死身の杉本」と呼ばれている。
陸軍での所属は第一師団。階級は一等卒。
網走監獄襲撃時に尾形から左前頭葉に銃撃を受けるも持ち直し、樺太へ渡ったアシリパを追いかけるため一時的に月島や鯉登、谷垣と行動を共にする。
月島は杉本の兵士としての能力の高さには一目置いているが、それ以上に彼が理性を失い暴走することを危険視している。樺太で共に行動した際には、はっきりと指摘し、「次に暴走したら撃つ」と告げている。
この言葉を告げられた杉本は特に反論はせず、彼の判断を正当なものだと受け入れていることがうかがえる。

谷垣源次郎（たにがき げんじろう）