インソムニア(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『インソムニア』とは2002年に公開されたアメリカの映画である。監督を務めるのはクリストファー・ノーラン。本作はエーリク・ショルビャルグが手がけた同タイトル映画のリメイク作品。ロス市警のドーマー刑事と相棒のハップは少女の撲殺遺体が発見された白夜の田舎町に派遣される。しかし犯人の捜索中にドーマーは誤ってハップを射殺してしまう。更にその現場を犯人に目撃されたことで弱みを握られ不眠症に陥ったドーマーが、毅然とした刑事の姿を失いながらも殺人犯に立ち向かっていくサスペンス・スリラー。
『インソムニア』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
ノーランが監督として雇われ制作した『インソムニア』
本作はノーランが発起人ではなく、先に脚本家のヒラリー・セイツによるオリジナルシナリオが完成している。ノーランは製作総指揮のジョージ・クルーニーとスティーヴン・ソダーバーグの推薦により監督になることが決定した人物。本作はノーランにとってのメジャー・デビュー作品である。なおジョージとスティーヴンは『メメント』(2000年)に衝撃を受け、ノーランを抜擢したと話している。オリジナルの『インソムニア』をベースにして作られながら、本作ではそこにドーマーの道徳的な葛藤などが盛り込まれている。
異なる撮影スタイルをもつ2人の大物俳優とまだ無名であったノーランの共同制作映画
本作が発表された当時、ノーランはまだ有名ではなかった。そのためノーランよりも出演俳優陣が話題となっての公開だったのである。アル・パチーノ、ヒラリー・スワンク、そしてコミカルな役で人気を獲得してきたロビン・ウィリアムズの悪役が評判となっていた。そしてパチーノとスワンクの制作時のこだわりは正反対のものであった。パチーノは練習と撮影共に何テイクも重ね試行錯誤することを好む。対するスワンクはリハーサルも入念には行うことはなく、撮影も1・2テイクで終えたいタイプ。大物スターに囲まれる経験や、彼らの真逆の考えをどのように撮影に反映させていくべきか。監督の腕が試されるところであるが、パチーノもスワンクもプロ中のプロ。2人はお互いの違いを認め適応し、丁度良いところを探していくことでその課題を解決してみせた。ノーランは彼らの意見に沿って進行するだけで良かった。
『メメント』から14年に亘りノーラン作品の撮影監督を務めたウォーリー・フィスター
ノーランの2作目の長編映画『メメント』(2000年)に続く本作で、彼は撮影監督のウォーリー・フィスターと手を組んでいる。CGも極力減らし、照明よりも自然光を優先的に取り入れた映像は自然の柔らかい光で包まれていた。フィスターは本作から『ダーク・ナイトライジング』(2012年)までノーランの全作品でカメラマンを務める。その後、ノーランが製作総指揮の作品『トランセンデンス』(2014年)にて監督デビューを果たした。
『インソムニア』の主題歌・挿入歌
OP(オープニング):David Julyan「Blood Drips」
イギリスの作曲家、デヴィッド・ジュリアンがスコアを担当している。ノーランが監督を務めた『フォロウィング』(1998年)『メメント』(2000年)に次ぐ、3度目のタッグとなる本作。静けさの中に美しさと不気味さを兼ね備えた楽曲は、聴いている人を悪夢を見ているかのような心地にさせる。
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メメント(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
映画『メメント』は2001年に公開されたアメリカのサスペンス映画である。クリストファー・ノーラン監督が名を知らしめた代表作になっている。主人公レナード・シェルビーは強盗に襲われ、妻を殺害される。その際に頭を負傷し、10分しか記憶が持たない病気になってしまう。復讐のため、写真や自分の体にメモに記憶を刻みながら犯人をさがす。時間を遡りながら物語が進む難解な映画となっている。
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プレステージ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『プレステージ』とは2006年に公開されたアメリカの映画である。監督はクリストファー・ノーラン。主演をヒュー・ジャックマンとクリスチャン・ベールが務める。第79回アカデミー賞において撮影賞と美術賞にノミネートされた。1995年に発売されたクリストファー・プリースト作の小説『奇術師』が原作となっており、2人の奇術師による因縁の戦いが描かれている。彼らのショーの舞台裏で起きていることを観客は知らない。映画には様々な仕掛けが施されており、人知を超えた世界へと誘われていく。
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2012年に公開された、アメリカ・イギリス共同制作の実写アクション映画。監督はクリストファー・ノーラン。 ゴッサム・シティに平和が訪れ、ブルース・ウェインもバットマンを引退していた。しかしベインと名乗るテロリストが現れ、ゴッサムは再び壊滅の危機にさらされる。 バットマンとして復活したブルースが、窮地に陥りながらも、ゴッサムのために命を懸けて戦う姿が描かれる。
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バットマン ビギンズ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『バットマン ビギンズ』とは、2005年にアメリカで制作された実写映画。監督はクリストファー・ノーラン。アメリカンコミック『バットマン』シリーズを原作としている。実業家ブルース・ウェインが、闇の騎士「バットマン」として、世に蔓延る凶悪犯罪者たちと戦う決意をする様を描く。
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ダークナイト(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ダークナイト』とは2008年に公開された、アメリカ・イギリス共作の実写アクション映画。監督はクリストファー・ノーラン。主演をクリスチャン・ベール、ヴィランをヒース・レジャーが演じた。バットマンとして世の犯罪者と戦ってきたブルース・ウェインが、新たに現れた敵・ジョーカーに翻弄されながら、ゴッサム・シティに必要なヒーローとは何かを模索する姿を描いた作品。
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ダンケルク(Dunkirk)のネタバレ解説・考察まとめ
『ダンケルク』とはクリストファー・ノーラン監督・脚本・製作による2017年の戦争映画。第二次世界大戦の「ダンケルクの戦い」における史上最大の救出作戦、通称「ダイナモ作戦」を題材に描かれている。ポーランドを侵攻しそこから北フランスまで勢力を広げたドイツ軍は、英仏連合軍をフランス北部のダンケルクへと追い詰めていく。絶望的な状況の中、若き兵士トミーと仲間たちの命がけの撤退を描いた物語。ノーラン監督にとって初の史実を基にした映画である。
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いまを生きる(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
ニューイングランドの全寮制名門進学校「ウェルトン・アカデミー」を舞台にした1989年のアメリカ映画(日本公開は1990年)。 同校へ型破りな英語教師ジョン・キーティングが赴任してきた事をきっかけに、生徒たちが自主性に目覚め夢を持つようになる物語。 1989年アカデミー賞脚本賞、同年英国アカデミー賞作品賞・作曲賞など数々の賞を受賞。 ニューイングランドの初秋から冬にかけての風景も魅力的。
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インターステラー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『インターステラー』とは鬼才クリストファー・ノーラン監督が世に放った壮大なSF映画である。最新技術と物理学者の協力によって映像化された、物理法則に忠実で当時最も本当の姿に近いといわれたブラックホール、ワームホールが話題となった。何年も雨が降らず、深刻な食糧問題を抱えた、人類滅亡の危機に瀕する近未来。元宇宙飛行士のジョセフ・クーパーは、居住可能な星を探す計画、「ラザロ計画」にスカウトされることになる。クーパーは娘に必ず戻ると約束し、広大な宇宙へと旅立った。果たして彼は人類を救うことができるのか。
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グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』とは、アメリカ合衆国で制作されたヒューマンドラマ映画である。天才的頭脳を持ちながら過去の虐待による心の傷が原因で、仲間とともに非行を繰り返す主人公の少年ウィル・ハンティングと、ウィルに向き合う、愛する妻を失った心理学者ショーン・マグワイアの心と心の交流を描いた作品。アカデミー賞脚本賞、ゴールデングローブ賞脚本賞受賞作であり、マッド・デイモンの出世作。ショーン・マグワイア役のロビン・ウィリアムズもこの作品でアカデミー助演男優賞を受賞している。
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インセプション(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『インセプション』( Inception)とは、2010年7月に公開されたクリストファー・ノーランが監督・脚本を務めるSFアクション映画である。他人の夢からアイデアを盗み出す企業スパイ・コブは、その才能から国際指名手配を受け、さらに妻の殺害容疑もかけられていた。そんなある日、サイトーと名乗る男が、彼に風変わりな依頼を持ちかける。サイトーのライバル会社を潰すため、息子に夢の中で会社を潰すアイディアを植え付ける(インセプション)依頼だった。夢の中ならではの壮絶なアクションが魅力の映画となっている。
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1992年制作。アメリカ映画。監督はマーティン・ブレスト。主演のアル・パチーノは本作でアカデミー主演男優賞を受賞。名門高校に通う苦学生のチャーリーは休暇中のアルバイトで全盲の退役軍人フランクの世話をすることになる。気難しく毒舌なフランクとニューヨークを旅することになったチャーリーは、フランクに振り回されながらも、彼と年齢を超えた友情を育んでいく。
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マン・オブ・スティール(DCEU)のネタバレ解説・考察まとめ
『マン・オブ・スティール』とは、2013年に公開されたアメリカ合衆国のスーパーヒーロー映画。「DCコミックス」の人気アメリカン・コミック『スーパーマン』の実写映画作品である。『スーパーマン』シリーズを含めると、本作は通算第6作目の作品だ。科学や文明が発達して人工生育が常識である、地球から遠く離れた惑星「クリプトン」で、数百年ぶりに自然出産で「カル=エル」という子供が生まれた。のちに「スーパーマン」と呼ばれる彼は、子供のいなかった夫妻に育てられたのち、自分の出自を知るための旅にでる。
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TENET テネット(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『TENET テネット』とはイギリスで公開されたスパイ映画で、時間を逆行する物語。文字通り逆再生で時間が進んでいく。リアルに作り上げていくべく、スタッフや俳優に伝える能力も過去に時系列トリックを駆使した作品を作ってきたノーラン監督ならではの作品。 主人公はCIAの名もなき男。ウクライナのオペラハウスで発生したテロ事件に突入する。任務を終えた後そこで"TENET"というワードを耳にする。テネットというのは謎の組織の名前で主人公は組織の目的を知るために女性科学者のところへ向かうことになる。
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ゴッドファーザー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ゴッドファーザー』とは、イタリア系移民のNYマフィアを描いた三部作「ゴッドファーザー・シリーズ」の第1弾。マリオ・プーゾ脚本、フランシス・フォード・コッポラ監督で送る、マーロン・ブランドやアル・パチーノ出演のアカデミー賞3部門獲得の作品だ。ヴィトー・コルネオーレを中心とした、コルネオーレファミリーを巡る、1940年代のマフィアの「愛」「権力」「金」などを描いている。
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ゴッドファーザー PART II(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ゴッドファーザー PARTⅡ』とは、イタリア系移民のNYマフィアを描いた三部作「ゴッドファーザー・シリーズ」の第2弾。マリオ・プーゾ脚本、フランシス・フォード・コッポラ監督で贈る、アル・パチーノ出演のアカデミー賞6部門獲得の作品だ。コルネオーレファミリーの2代目ボスとなったマイケル・コルネオーレを中心とした、1940年代のマフィアの「愛」「権力」「金」について描いている。
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ゴッドファーザー PART III(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ゴッドファーザー PART III』とは、イタリア系移民のNYマフィアを描いた三部作「ゴッドファーザー・シリーズ」の第3弾。脚本マリオ・プーゾ、監督フランシス・フォード・コッポラ、主演アル・パチーノで贈る、1990年公開の作品だ。2020年には公開30周年を記念し、『ゴッドファーザー〈最終章〉:マイケル・コルレオーネの最期』と改題し、再編集版が公開された。コルネオーレファミリーの2代目ボスとなったマイケル・コルネオーレの最後を描いている。
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目次 - Contents
- 『インソムニア』の概要
- 『インソムニア』のあらすじ・ストーリー
- 相棒のハップを射殺したドーマー
- フィンチとドーマーが手を組んだことで逮捕された無実の少年
- 2つの事件の間で錯乱していったドーマーの精神
- 『インソムニア』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- ウィル・ドーマー(演:アル・パチーノ)
- ウォルター・フィンチ(演:ロビン・ウィリアムズ)
- ロサンゼルス市警察
- ハップ・エクハート(演:マーティン・ドノヴァン)
- ワーフィールド(演:イアン・トレイシー)
- ナイトミュート市警察
- エリー・バー(演:ヒラリー・スワンク)
- フレッド・ダガー(演:ニッキー・カット)
- チャーリー・ニューバック(演:ポール・ドゥーリイ)
- リッチ(演:ローン・カーディナル)
- ファーレル(演:ラリー・ホールデン)
- フランシス(演:ジェイ・ブレイゾー)
- 女性検視官(演:ポーラ・ショー)
- ナイトミュートの住人
- ケイ・コネル(演:ヤン・ケイ・クリスタル・ロウ)
- ランディ・ステッツ(演:ジョナサン・ジャクソン)
- タニヤ・フランケ(演:キャサリン・イザベル)
- ケイの母(演:ターシャ・シムズ)
- レイチェル・クレメント(演:モーラ・ティアニー)
- トリッシュ・エクハート(演:ケリー・サンドミルスキー)
- 『インソムニア』の用語
- 内務調査
- 白夜
- 不眠症
- 『インソムニア』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ウィル・ドーマー「犯人はまばたきもせず最後の一線を越えた。もう後戻りできん。」
- エリー・バー「いい警官は謎解きで眠れず悪い警官は良心が眠らせない。」
- ウィル・ドーマー「道を見失うな。」
- 『インソムニア』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ノーランが監督として雇われ制作した『インソムニア』
- 異なる撮影スタイルをもつ2人の大物俳優とまだ無名であったノーランの共同制作映画
- 『メメント』から14年に亘りノーラン作品の撮影監督を務めたウォーリー・フィスター
- 『インソムニア』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):David Julyan「Blood Drips」