ナイト・オブ・ザ・リビングデッド(ホラー映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』とは、1968年アメリカで公開されたホラー映画。死者が蘇り人を襲い始める事件に直面した主人公たちが一軒家に籠城して内輪で争いながらも、死者からの襲撃をから一夜を生き抜くという内容である。11万ドルの予算で製作され1800万ドルの収入を上げた。
原作はジョン・A・ルッソ、監督はジョージ・A・ロメロ。「ゾンビ」というモンスターは本作品で創作され登場した。人種、社会問題をも作品に反映しており、単なる恐怖映画を超えた名作としてロングランを続けた。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の概要

「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」は1968年にアメリカで製作されたホラー映画。監督はジョージ・A・ロメロ。本作において映画やゲームにおける「ゾンビ」の「知能が4歳程度」「動きがのろい」「人肉を求めて人を襲う」「ゾンビに噛まれると軽傷でも確実に死亡する」「死亡した人間はゾンビになって甦る」といったキャラクター設定が確立され、その後多くの映画・ゲーム・コミックに影響を与えた。監督のジョージ・A・ロメロは学生時代ハリウッドにてヒッチコックなどの映画製作現場でアルバイトをしていたがハリウッドの商業主義に嫌気がさし、故郷のピッツバーグを本拠地にCMや短編映像製作を行う。本作品はロメロ監督初の長編作品である。
本作品は食人、未成年者による親の殺害、黒人が主人公、ハッピーエンドではない、といった反ハリウッド的な作風が特徴的である。
その後1977年に「ゾンビ」1985年に「死霊のえじき」と続編が製作され、これらを「ゾンビ3部作」と呼ばれる場合もある。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のあらすじ・ストーリー

謎の男の出現

1960年代のペンシルベニア州の田園地帯、バーバラとジョニーの兄妹は父の墓地を訪れていた。バーバラは真面目に墓参りをするが、ジョニーは始終面倒くさがり文句ばかり言っている。
人気のない墓地に一人の男が酔っ払いのようにフラフラ歩いてこちらに向かってくる。バーバラは少し不審に思うものの関わりたくないので目をあわせず男の前を通り過ぎようとする。すると男はバーバラに襲い掛かってきた。
慌ててジョニーは男を押さえつけようとするが、もんどり合って転び墓石に頭を打ち動かなくなった。ジョニーから離れゆっくりとバーバラに近づく男。バーバラは恐れおののいて一人で逃げ出し、農地にポツンと佇む一軒家を見つけるとその中へ避難した。

農家での籠城

バーバラは家に入り鍵を閉めて中を探索すると、惨殺された死体を見つけた。驚いて外に出ようとすると、墓場の男だけでなく別の男たちも何処からか現れて家に向かってノロノロと向かってくる。今度は車が家の前に止まった。運転していたのは黒人青年のベンだった。

ベンも男たちから逃げている途中、農家を見つけ避難していた。男たちは知能が4歳程度で、複雑な道具を使うことは出来ないようだ。一人ならば鍵をかければ済むことだが、人数が徐々に増えているため、このままではドアや窓が破られて侵入する危険がある。ベンは、家のドアや窓に板を打ち付けてバリケードを作った。一方、バーバラは事態が把握できず、呆然と立ち尽くすだけであった。バリケード作りが一段落してベンが農家の中を調べると、ライフルやテレビ、ラジオがあった。ベンはラジオからの情報を聞きつつ、自分が先ほど出くわした外の状況をバーバラに話し出した。「ドライブインで休憩していたんだ。すると何処からともなくフラフラと歩く男達現れて店内の客を襲いだしたんだ。『やめろ』と制してもこちらの言葉がわからないようだった。やむを得ず客の一人が防衛のため銃で男たちを撃った。それなのに男達は死ぬことなく立ち上がり客を襲い続けたんだ。」ベンは謎の男達から逃げて車を走らせてバーバラがいた農家に辿り着いたのだった。ラジオからは始終ニュースが流れており、各地で集団殺人事件が起きており死んだ人間が蘇って人を襲っているという。墓地でバーバラを襲った男も蘇った人間、「死者」だった。

他にもいた生存者

突然農家の室内ドアが開いた。そこから出てきたのは中年男性のハリーと青年トム、彼らとハリーの妻ヘレン、娘のカレン、トムの恋人ジュディの5人だった。彼らは「死者」から逃れるためベン達よりも先に農家の地下室に避難して立てこもっていた。カレンは「死者」に噛まれて意識が朦朧としている。ベンは自分たちがバリケードを作っている音が聞こえていた筈なので早く出てきてバリケード作りに協力すべきだった、とハリーを責め早々に二人は険悪なムードとなる。
ハリーは「地下室へのドアは1枚だけなのでそれだけを塞げば「死者」の侵入を食い止められる、その間に警察か軍隊が助けに来るはずだ。」と地下室へ籠ることを主張する。一方、ベンは「地下室のドアが破れたら逃げ場はない、1階ならば外の様子も伺えるし、いざとなれば建物から脱出もできる。」と地下室の籠城を反対する。結局意見はまとまらず、ハリーとベンは口論の末、別行動をとる。
一方、ラジオとテレビから、外部で何が起きているのか徐々に情報が伝えられた。集団殺人事件が各地で起きており、被害者である死者に、病院や大学研究室の死体も生き返って人間に襲い掛かっている、建物内にはいては危険なので避難所へ向かうよう、とのことだった。また騒動の原因は宇宙で人工衛星が爆発し大量の放射線が降り注いだことと因果があるかもしれない、とニュースは伝えた。

脱出作戦

ベンは農家から脱出することを主張する。家の外にはトラックと100メートルほど離れたところに自家用ガソリンタンクがある。火炎瓶を作って炎で「死者」を牽制しベンとトムが農家を出てトラックに乗り込む。ガソリンタンクまで走って給油したら屋敷に戻り全員を乗せて脱出する作戦だ。
クーパーも渋々承諾し協力する。トムが火炎瓶の準備をしていると、恋人のジュディは「危険なことをせずにこのまま農家にいた方がいいのでは。」とトムの身を案じるがトムは行動に移る。作戦が開始された。
農家から飛び出てトラックに近づくベンとトム、その様子を見つめていたジュディはトムと離れることに耐えられず突発的に家を飛び出して二人の後を追いかけた。トラックに乗った3人はガソリンタンクに辿り着き給油を試みるが慌てたトムはガソリンをこぼしてしまい、「死者」を牽制するための松明の炎が引火してしまった。
パニックになったトムとジュディはガソリンタンクが開いて火がついている車に乗って逃げ出した。「危ないから降りろ!」と呼び止めるベン、しかし車は二人を乗せたまま爆発、炎上してしまった。

脱出の失敗

ベンは「死者」の間をすり抜けて走り何とか農家に戻る。「ドアを開けろ!」とハリーに言うが、ハリーは恐怖からドアを開けられずその場から逃げてしまう。ベンはドアを蹴破って農家に入り自分を見殺しにしようとしたハリーに激怒して殴りつける。
一方「死者」達はトラックのトムとジュディの死体を貪り食い始めた。別の脱出方法はないか模索するベン達。テレビではさらなる「死者」の情報を放送していた。「死者」を倒すには燃やし尽くすか頭部を破壊するしかない。それ以外の方法では「死者」を止めることは出来ず人間を襲い続ける。政府は「死者」を人間とは見做さないと決定し、組織的に排除を開始した。

破られたバリケード

大量の「死者」が農家のドアを破ろうと集まってきた。バリケードが徐々に破壊されていく。ベンはバリケードを守る為両手がふさがってしまい、ハリーに協力を求める。しかし、ハリーはベンのライフルを奪うと、ベンに銃口を向けバリケードから離れられないベンを置き去りにして地下へ逃げ込もうとした。
激高したベンはバリケードから離れてハリーと揉み合い、ライフルを奪い返すとハリーに発砲した。ハリーはよろよろと地下室へ降りて寝ている娘のカレンの脇で息絶える。
バリケードは遂に崩壊し、大量の「死者」達が農家に侵入した。「死者」の中にジョニーがいた。恐怖で錯乱したバーバラは、変わり果てた弟が自分に襲い掛かるにもかかわらずジョニーに抱き着きそのまま「死者」達の群れに消えてしまった。

ハリー婦人が地下室へ逃げると、寝ている筈のカレンがハリーの腹部をえぐり取り内臓を食べていた。カレンは「死者」になっていた。事態が理解できず呆然とするハリー婦人を、カレンはスコップで殺害する。一方、「死者」達の前に後ずさりするベン。背後からカレンが襲い掛かるが、突き飛ばしてベンは地下へ逃げ込んだ。そこには殺害されたハリー夫妻の無残な姿があった。夫妻も蘇ってベンに襲い掛かる。ベンは2人を射殺するが、疲れ切ってしまい何も考えられず階段に座り込んでしまう。

夜明け

夜が明けた。外部では警察や民間のハンターにより大掛かりな「死者」の駆除が進み混乱は収まりつつあった。
地下で眠りこけていたベンは外の物音に目を覚まして慎重に地下から出て外の様子を伺う。ハンターが農家の中にいるベンを見つけたが「死者」と勘違いし射殺してしまう。ハンター達は人間だったとは知らずにベンの死体を淡々と「死者」置き場に運ぶのだった。

『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の登場人物・キャラクター

ベン(演:デュアン・ジョーンズ)

本作品の主人公。黒人の青年で適切な判断力と行動力を持ち、農家に籠城した生存者たちをリーダーとして牽引するが感情的な面もある。ハリーとの衝突でそれは如実に表れ、ハリーと言い争い、殴り合い、最後には発砲する。「死者」に囲われながらも一晩耐えて生き延びたが遠方より視認した保安官が彼を「死者」と誤認して射殺してしまう。本作品公開当時に黒人が主人公の映画は画期的だった。

バーバラ(演:ジュディス・オーディア)

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