逆転のトライアングル(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『逆転のトライアングル』とは、2022年に公開されたスウェーデン・イギリス・フランス・ドイツのブラックコメディ映画。
人気モデルのヤヤとその恋人であるカールは、ある豪華客船のクルーズに招待される。船にはあらゆるセレブたちが集いそれぞれバケーションを満喫していたが、ある夜船が嵐の影響で難破してしまい、ヤヤとカールを含む数人が無人島に流されてしまった。流れ着いた彼らが生き残りを賭け、サバイバル生活をする様子が描かれている。船内と無人島でヒエラルキーが逆転する様が見所の作品。
『逆転のトライアングル』の概要
『逆転のトライアングル』(原題:Triangle of Sadness)とは、2022年に製作されたスウェーデン・イギリス・フランス・ドイツのブラックコメディ映画で、日本では2023年2月23日に劇場公開された。第75回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞し、第95回アカデミー賞では作品賞・監督賞・脚本賞にノミネートされた作品である。
本作の監督を務めたのはスウェーデン出身のリューベン・オストルンド。主な監督作品に、『フレンチアルプスで起きたこと』(2014年)、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』(2017年)などがある。『フレンチアルプスで起きたこと』は第67回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞し、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』は第70回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞している。リューベンは1990年代に監督を始め、その後プロデューサーのエリク・ヘンメンドルフと共にプラットフォーム・プロダクションという製作会社を設立した。
本作の主人公は人気モデルでインフルエンサーとしても活躍するヤヤと、同じくモデルのカール。2人はカップルで、ある日豪華客船のクルーズ旅に招待される。船には各国から様々なセレブたちが集まってバケーションを満喫しており、客室乗務員たちはチップのために乗客のセレブたちに笑顔を振りまいていた。そしてある夜、船が嵐の影響で難破して海賊たちに襲撃されてしまい、その後無人島に流れついたヤヤたちは救助が来るまで生き残りを賭けたサバイバル生活を始めることになる。やがて資本主義が通用しない無人島で人々の間にヒエラルキーが生まれるが、この場を支配したのはサバイバル能力に長けたトイレ清掃係のアビゲイルだった。社会階層がサバイバル生活によって逆転する様子が見所の作品。
『逆転のトライアングル』のあらすじ・ストーリー
レストランでの喧嘩
ファッションモデルとして働くカールは2年前に香水のモデルをして以降、大きな仕事が出来ずにいた。一方、カールの恋人であるヤヤはインフルエンサーとしても活動している人気モデルで、カールの何倍もの給与を貰っている。
そんなカップルのカールとヤヤはある日の夜レストランを訪れた。食事を終え、会計になった際に「ごちそうさま」とヤヤが言う。カールは奢ってもらうつもりのヤヤの態度を注意して「昨日は君が払うって言ってたのに」と言うと、ヤヤは「お金の話はクールじゃない」と言い捨てた。仕方なくカールが会計を済ませた後、「なんだか利用されている気がする」とエレベーター内で呟くカールに対し、ヤヤは「よく言うわよ。私はあなたにシャツをあげて、食事に誘い、ホテルに泊めてあげているじゃない」と反論した。だがカールが「君は食事代を払っていない」としつこく言い出したため、あきれた様子のヤヤが50ユーロ札をカールのジャケットに突っ込もうとする。ヤヤの行動にバカにされたように感じたカールは「調子に乗るなよ」と激怒してエレベーターを降りるのだった。
豪華客船にいるセレブたち
レストランでの食事の数日後、ヤヤがインフルエンサーとして豪華客船に招待され、カールと共にクルージングに参加した。その船には各国から様々なセレブたちが乗り込んでおり、客室乗務員のリーダーを務めるポーラは「お金持ちは神様」と言って、乗客の要望は何でも応えるようにと他の客室乗務員たちに指示をする。高額なチップが貰えることを期待し、客室乗務員たちは盛り上がっていた。
ヤヤとカールが食堂に行くと、ロシアの新興財閥の男ディミトリと出会った。ディミトリは有機肥料で財を築いたといい、自分を「クソの帝王」だと言って笑う。一方、ディミトリの妻であるベラは女性乗務員を呼びつけて一緒にプールに入ることを強要していた。「あなたにも優雅な気分を味あわせてあげる」とベラが言うので乗務員は仕方なくプールに入るのだった。さらにベラは「クルー全員を泳がせたい」と言い出して清掃員や厨房のスタッフ、夜間勤務で休憩中の従業員を呼び出し、スライダーで海へダイブさせた。
そしてバーで飲んでいた富豪のヤルモは、女性客に話しかけて一緒に写真を撮った。するとヤルモは上機嫌になり「お礼にロレックスを買ってあげる」と女性客に言う。会社を売却したことで有り余るほどお金があるとヤルモは女性客に説明していた。
イギリス人のウィンストンとその妻クレメンティンは、脳梗塞の後遺症で足が不自由で話すことができない女性のテレサに自己紹介をし始める。ウィンストン夫妻は武器製造会社で富を築いたといい、「国連で地雷が禁止されていた時は売上が落ちたけど夫婦愛で乗り切ったのよ」とテレサに話した。
そして客室乗務員のポーラは、船長のトーマス・スミスが部屋から全く出てこないことに悩んでいた。ポーラが部屋のドアを叩くものの、トーマスは「気分が悪い」と言って出てくる様子はない。さらにトーマスが乗客が船長と共に食事をするキャプテンズ・ディナーを木曜日に開催するようにと指示したため、ポーラは「木曜日は記録的な低気圧が迫っている」と言って別日にするように提案をした。しかしトーマスは頑なに木曜日を指定したため、キャプテンズ・ディナーは木曜日に開催されることになった。
嵐とパニック
クルージングが始まって数日後の夜、乗客が船長と共に食事をするキャプテンズ・ディナーが始まろうとしていた。時間になり船長のトーマスが食堂に登場したが、トーマスはアルコール依存症でずっと部屋にこもって酒を飲んでいたため、すでに酔った状態だった。
ヤヤとカール、そして他の乗客たちも着席してディナーが始まる。しかし嵐の影響で船が次第に揺れ始め、乗客たちが酔って次々と嘔吐し始めてしまう。さらにトイレから逆流した汚物が流れて船内はパニックに陥った。そして乗客たちが次々と自室に戻る中、トーマスと新興財閥の男ディミトリだけは食堂で酒を飲み続けているのだった。その後酔った2人は船長室に行き、ディミトリは資本主義を批判、トーマスは富裕層を批判し始めた。トーマスは船長室のマイクを通して批判を続けていたため声が船外にも響き渡っており、それを聞きつけた海賊が船を襲撃した。海賊は手榴弾を投げつけて近くにいたウィンストン夫妻が吹っ飛び、船も大破してしまった。
無人島でのサバイバル
船が沈んでから数時間が経った。ヤヤとカールたちはゴムボートで逃げ出すことに成功し、近くにある島に流れ着く。ヤヤとカールの他に客室乗務員のリーダーであるポーラ、機関士のネルソン、新興財閥のディミトリ、富豪のヤルモ、脳梗塞を患ったテレサが生き残って島に漂着する。その後砂浜に密閉型の救命艇が流れ着き、中からトイレ清掃係のアビゲイルが出てきた。アビゲイルは救命艇の中からポテトチップスと水を取り出して他のみんなに手渡すと、海に潜り込んでタコを捕獲して自ら火を起こして調理をした。出来上がったタコを当然のように貰おうとする者たちに対してアビゲイルは、「船ではトイレ係でも、ここでは私がキャプテン」と言ってこの場を支配した。食にありつけないと困る他の者たちはアビゲイルに従い、タコをほんの少しわけてもらう。
その夜、カールとネルソンは火の見張りに加えてテレサの世話をアビゲイルから頼まれた。アビゲイルと他の者たちは救命艇を寝床にして就寝する。カールとネルソンは火の近くにあったアビゲイルのリュックを漁るとお菓子を大量に見つけたため、2人で一袋食べきってしまった。翌朝、お菓子が無くなったことに気がついたアビゲイルは、犯人であるカールとネルソンに食事抜きの罰を与えた。
カールとアビゲイルの関係
島で過ごしてから数日、この環境にも慣れ始めた一同は狩りなどを行って過ごしていた。ある夜、カールはアビゲイルが1人で過ごしている救命艇に入って共に夜を過ごした。そして引き換えにお菓子を貰ったカールはそれをヤヤにも分け与えるが、ヤヤは2人の関係に嫉妬する。カールとアビゲイルの関係を察したディミトリはカールを冷やかした。
その後テレサがゴムボートに1人で過ごしていると、遠くに土産物を持った男がいるのを発見した。しかし言葉を話せないテレサは男を引き留めることが出来ず、男は森の中に消えてしまうのだった。
サバイバル生活の終わり
カールとアビゲイルが関係を持った翌朝、ヤヤがこの島を反対側まで探索することを決意すると、アビゲイルも付いてくることになった。そしてヤヤが足早に進み始めて島の反対側に出ると、そこでエレベーターを見つける。漂着した島が無人島ではなくリゾート地だったことを知り、エレベーターに乗り込もうとするヤヤをアビゲイルは必死で止める。
ヤヤは「元の生活に戻ったら私の付き人として雇ってあげる」とアビゲイルに言い始めたが、アビゲイルは大きな石を持ってヤヤの背後に立ち、石を振りかぶった。
その時カールは全速力で山の中を駆けているのだった。
『逆転のトライアングル』の登場人物・キャラクター
主要人物
カール(演:ハリス・ディキンソン)
本作の主人公でモデルとして働いているが、一度香水のモデルをして以来大きな仕事ができていない。ヤヤと交際しており、レストランで彼女と食事をした際に支払いのことで揉めて喧嘩になった。ヤヤと一緒に豪華客船のクルーズ旅に参加するが、船が難破して無人島に漂着してしまう。食料を貰うためにアビゲイルのいる救命艇の中に入り、そこで彼女と一夜を過ごす。
ヤヤ(演:チャールビ・ディーン)
本作の主人公で、人気モデルかつインフルエンサーとして働いている。恋人のカールより給与が高いが、食事の支払いは男が払うという価値観を持っているため、そのことが原因でカールと喧嘩する。インフルエンサーとして豪華客船に招待され、恋人のカールと共にクルーズ旅に参加する。だが船が難破して無人島に漂着し、サバイバル生活を余儀なくされた。無人島で過ごしてから数日後に、島でエレベーターを発見した。
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目次 - Contents
- 『逆転のトライアングル』の概要
- 『逆転のトライアングル』のあらすじ・ストーリー
- レストランでの喧嘩
- 豪華客船にいるセレブたち
- 嵐とパニック
- 無人島でのサバイバル
- カールとアビゲイルの関係
- サバイバル生活の終わり
- 『逆転のトライアングル』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- カール(演:ハリス・ディキンソン)
- ヤヤ(演:チャールビ・ディーン)
- 船の関係者
- トーマス・スミス(演:ウディ・ハレルソン)
- ダリウス(演:アルヴィン・カナニアン)
- ポーラ(演:ヴィッキ・ベルリン)
- ネルソン(演:ジャン=クリストフ・フォリー)
- アビゲイル(演:ドリー・デ・レオン)
- セレブたち
- ディミトリ(演:ズラッコ・ブリッチ)
- ベラ(演:ズニー・メレス)
- ルドミラ(演:キャロライナ・ギリング)
- ヤルモ(演:ヘンリク・ドルシン)
- ウィンストン(演:オリヴァー・フォード・デイヴィス)
- クレメンティン(演:アマンダ・ウォーカー)
- テレサ(演:イリス・ベルベン)
- 『逆転のトライアングル』の用語
- 豪華客船
- 船酔い
- 救命艇
- 『逆転のトライアングル』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 手榴弾で絶命するウィンストンとクレメンティン
- アビゲイル「船ではトイレ係でも、ここでは私がキャプテン」
- 石でヤヤを殺そうとするアビゲイル
- 『逆転のトライアングル』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 現場でコロナウイルス感染判定テストを計1016回行う
- 本作が遺作となったチャールビ・ディーン
- 監督の実体験から生まれたカールとヤヤの痴話喧嘩シーン
- 『逆転のトライアングル』の主題歌・挿入歌
- 挿入歌:M.I.A.『Born Free』
- 挿入曲:Linnea Olson『The Ocean』
- 挿入曲:Asle『Thank You(Asle Disco Bias Remix)』
- 挿入曲:Luigi Boccherini『弦楽五重奏曲 ホ長調 作品11-5 G. 275』
- 挿入歌:Des’ree『Life』
- 挿入曲:Refused『New Noise』
- 挿入曲:Fred Again『Marea (We’ve Lost Dancing)』