アメリカン・スナイパー(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『アメリカン・スナイパー』とは、2014年公開のアメリカ映画である。イラク戦争に従軍した実在の狙撃兵クリス・カイルの自伝的原作を、巨匠クリント・イーストウッド監督が実写映画化。主演はブラッドリー・クーパーが務める。クリスは海軍史上最強と言われる伝説的スナイパー。だが過酷な任務に心を蝕まれ、彼と家族はその影響に苦しむ。残酷な戦場と虚しい戦争の実像を、過剰な演出を排除した構成で淡々と描く。ミリタリー・アクションとしての鑑賞にも十分堪えるが、極めてメッセージ性の強い反戦映画である。
当初、監督はスティーブン・スピルバーグを予定
出典: theriver.jp
事の発端は、本作主演俳優のブラッドリー・クーパーがクリス・カイルの原作に惚れ込み、スピルバーグに企画を持ち込んだことから始まる。スピルバーグの方でも乗り気になり『アメリカン・スナイパー』映画化の話がスタートした。だが、スピルバーグは手当たり次第に様々な題材に唾を付け、本命を絞り込むとあっさり他人に譲り渡してしまう癖があるという。例えば『インターステラー』(2014年公開)もそのひとつで、後輩とも言えるクリストファー・ノーラン監督に譲渡している。そんなスピルバーグは今作『アメリカン・スナイパー』でも早々に降板を決め、クリント・イーストウッド監督に任せているのだ。米ハリウッド・レポーター誌によると、スピルバーグと映画製作会社ワーナー・ブラザース・エンターテイメント間で予算の合意が得られなかったとのことで、監督交代劇の真相はこの辺りの事情と思われる。
スピルバーグとイーストウッドは付かず離れず、良好な関係を保っているという。イーストウッド監督作品『マディソン郡の橋』(1995年公開)でも、当初はスピルバーグが監督するはずだったし、硫黄島二部作を共同でプロデュースするなどしている。だが「イラク戦争映画」は本作以外にも多く発表されており、やや既視感は否めない部分がある。そのため当初この企画は、イーストウッド監督の経歴にマイナスになるのではとの危惧が囁かれていた。しかしいざ公開されてみると、本作は異例の成功を収めイーストウッドはそうした危惧の声を払拭する。ある意味、本作を投げ出したスピルバーグの期待を裏切る結果だった。
70年代初めに監督デビューを果たしたふたりの巨匠。映画評論家の中には、先鋭的なスピルバーグ映画のエッセンスを最も継承したのはイーストウッド監督であるとの声もあり、これらの経緯は映画ファンにとっても非常に興味深いものと言える。
ブラッドリー・クーパーの壮絶な役作り
出典: www.pinterest.jp
本作が公開された2014年当時、すでにクリス・カイルの風貌は多くの人々に知られており、主演のブラッドリー・クーパーが彼に非常に似ている事が話題となる。だが、そのブラッドリーは米ピープル誌「最もセクシーな男性」に選出されたほどの、スラリとしたイケメン俳優だった。なんと彼は壮絶ともいえる役作りを敢行し、クリス本人になり切るためのあらゆる努力を惜しまなかったという。
ブラッドリーは撮影が始まる前、本物のネイビー・シールズと共に実弾での射撃訓練や実戦さながらのシミュレーションを行った。さらに、過酷なウェイトトレーニングを実施したうえ、約18キロもの体重の増量に成功している。成人男性1日の平均摂取カロリーの約4倍近い8,000キロカロリーの食事を摂り続け、数か月間に渡り毎日約4時間のトレーニングを実施。1日5食もの食事、さらにパワーバーやサプリメント飲料などを摂り入れていたという。
「クリスは筋肉質なうえ、体重は105キロもあった。当時の僕は84キロ。3か月間、いつも食べては運動していたよ。あれはキツかったな」と、ブラッドリーは当時を振り返り「まるでポンプで膨らましたようで、危うく喜劇になるとこだった」と、インタビューでユーモラスに語っている。
その成果は、本作が公開されるとすぐに表れた。クリス・カイルの人となりを知る人々は、映画の鑑賞後「まるでクリスが生きて戻って来たようだ」などと口々に賞賛し、涙を流していたという。また、ブラッドリー自身も撮影中にクリスの存在を感じていたらしく「彼がそばで見守ってくれた」と語っている。それほどまで役作りに没頭したということだろう。
モロッコで行われた大規模なロケ
当初はイラクのバグダッドでの撮影も検討されていたが、情勢的に危険と判断され中止となった。そのため、いくつかの候補地の中から最もイラクの街並みに似ていたモロッコが選ばれた。ほとんどの撮影はアメリカのカルフォルニア州で行われ、モロッコでは6日間ずつ2度に渡っての大規模なロケが敢行される。上空からの街並みの様子や、後半の山場でアルカイダ兵に包囲される建物や爆破シーンなど、中東らしい風景はおおむねモロッコの景色である。
本人役での出演やカメオ出演したスタッフがいた
本作では、ドーバーの愛称で登場する「ケヴィン・ラーチ」役として本人が出演している。当初、主演のブラッドリー・クーパーや他のシールズ役の俳優たちに、ケヴィンは軍事指導を行っていた。ある時、ブラッドリーが「映画の出演に興味あるかい?」と声をかけたのが始まりで、やがて真剣に取り組むようになったという。「顔もイケてるし、何より本物のシールズだからね。迫力が違うよ」と、ブラッドリーはインタビューで話している。
また、クリスがシールズに入隊する前、恋人サラの浮気現場に出くわし相手の男を家から追い出すシーンがある。この情けない浮気相手の男役として、脚本を手掛けたジェイソン・ホールがカメオ出演している。面白いのは、元アクション俳優だったクリント・イーストウッド監督が、老人役でカメオ出演しているとの話がネット上にある。本作の冒頭で、クリス少年が聖書を盗むシーンに登場するとの事だが、バージョンによってはカットされている可能性があり、定かではない。
『アメリカン・スナイパー』の主題歌・挿入歌
主題歌:Van Morrison『Someone Like You』
挿入歌:Ennio Morricone『The Funeral』
挿入歌:Clint Eastwood『Taya's Theme』
soundcloud
soundcloud.com
挿入歌:Dean Valentine『Main Theme』
『アメリカン・スナイパー』の予告編
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目次 - Contents
- 『アメリカン・スナイパー』の概要
- 『アメリカン・スナイパー』のあらすじ・ストーリー
- クリス・カイルの生い立ち
- 運命の出会い
- 第一回派遣
- 第二回派遣
- 第三回派遣
- 第四回派遣
- その後のクリス
- 『アメリカン・スナイパー』の登場人物・キャラクター
- 主人公
- クリス・カイル(演:ブラッドリー・クーパー)
- 少年時代のクリス(演:コール・コニス)
- 主人公の家族
- タヤ・カイル(演:シエナ・ミラー)
- コルトン・カイル(演:マックス・チャールズ)
- ウェイン・カイル(演:ベン・リード)
- デビー・カイル(演:エリース・ロバートソン)
- ジェフ・カイル(演:キーア・オドネル)
- 少年時代のジェフ(演:ルーク・サンシャイン)
- 主人公の元恋人
- サラ(演:マーネット・パターソン)
- アメリカ軍の上司・同僚
- マーク・リー(演:ルーク・グライムス)
- ビグルス/ライアン・ジョブ(演:ジェイク・マクドーマン)
- ドーバー/ケヴィン・ラーチ(演:ケヴィン・ラーチ)
- ゴート/ウィンストン(演:カイル・ガルナー)
- D(ディー)/ ダンドリッジ(演:コリー・ハードリクト)
- リス(Squirrel)/ケイス(演:エリック・ラディーン)
- トニー(演:レイ・ガイエゴス)
- マーテンス中佐(演:サム・ジェーガー)
- スニードDIA捜査官(演:エリック・クローズ)
- ギレスピー大尉(演:ブライアン・ハリセイ)
- イラクの住民
- オボーディ師(演:ナヴィド・ネガーバン)
- アルカイダの人物
- ムスタファ(演:サミー・シーク)
- 虐殺者(ブッチャー)(演:ミド・ハマダ)
- 『アメリカン・スナイパー』の用語
- イラク周辺地図
- アメリカ大使館爆破事件
- アメリカ同時多発テロ事件
- イラク戦争
- 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
- 海軍特殊部隊シールズ(Navy SEALs)
- アメリカ国防情報局(略称DIA)
- 『アメリカン・スナイパー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ウェイン「人間には3つの生き方がある」
- クリス「そうじゃない。君からバーを救い出したんだ」
- 『アメリカン・スナイパー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 当初、監督はスティーブン・スピルバーグを予定
- ブラッドリー・クーパーの壮絶な役作り
- モロッコで行われた大規模なロケ
- 本人役での出演やカメオ出演したスタッフがいた
- 『アメリカン・スナイパー』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:Van Morrison『Someone Like You』
- 挿入歌:Ennio Morricone『The Funeral』
- 挿入歌:Clint Eastwood『Taya's Theme』
- 挿入歌:Dean Valentine『Main Theme』
- 『アメリカン・スナイパー』の予告編