グラン・トリノ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『グラン・トリノ』とは、2008年にクリント・イーストウッドが監督、プロデューサー、主演を務めたアメリカのヒューマンドラマ映画である。
ミシガン州を舞台に、頑固な元軍人ウォルトと、モン族の隣人、少年タオとの心の交流を描く。一度は、ギャングにそそのかされ、ウォルトの愛車を盗もうとしたタオであったが、ウォルトに仕事を世話してもらい、真面目に働く。一方で、ギャングの、タオへの嫌がらせはエスカレートしていく。タオやタオの家族を守る為、ウォルトは命を賭けて、ギャングを刑務所送りにする。
『グラン・トリノ』の概要
『グラン・トリノ』(Gran Torino)とは、2008年に、クリント・イーストウッドが、監督、プロデューサーおよび主演を務めたアメリカのヒューマンドラマ映画である。2008年12月12日に北米で限定公開され、2009年1月9日に拡大公開された。日本では2009年4月25日に公開された。興行収入2.7億動ドル、国内外でも評判が高く受賞歴としては、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞オリジナル脚本賞、男優賞(2008年)、外国映画賞(2009年)、日本アカデミー賞最優秀外国作品賞(2010年)、セザール賞外国語映画賞(2010年)などがある。
タイトルでもある、グラン・トリノとは、フォード社の車種で、フォードトリノの内1972年~1976年に生産された車の事である。
クリント・イーストウッドは『グラン・トリノ』を俳優最後の仕事と位置づけていた。公開時のインタビューでは「ここ何年も監督業に専念し、俳優を引退しようと思っていたがこの『グラン・トリノ』の役に魅かれた」と言っていた。また、脚本を手掛けたニック・シェンクは、映画脚本デビュー作となる。
内容はミシガン州デトロイトを舞台に、朝鮮戦争の従軍を経験した、孤独で頑固なウォルト(クリント・イーストウッド)は、妻にも先立たれ、二人の息子とその家族とも疎遠になっている寂しい老人である。かつて経験した朝鮮戦争での、罪悪感から逃れられない日々を過ごしていた。そんな中、隣にアジア系移民のモン族一家が越してくるが、住宅街に外国人が増えた事をよく思っていないウォルトは、あからさまに嫌な態度をとる。しかし、隣のモン族の少年タオをひょんなことで救ってからモン族と交流が始まる。タオやタオの姉スーの優しさに触れながら、過ごすうちにウォルトは徐々に心を許していく。
しかし、同じモン族のギャングから執拗なまでに嫌がらせを受けるタオた、タオの姉を救おうとした事でより大きな事件に発展する。復讐は新たな復讐しか生まなかったのである。ウォルトは自分の命を賭けて戦いにのぞむのであった。
見どころは、偏屈で頑固なウォルトとモン族の少年タオの年代や人種、偏見を超えた友情と、ウォルトなりの人生の落とし前(決着)をつけるところにある。
ウォルトは朝鮮戦争で深い傷を負っている。その苦しみから逃れることが出来ないのである。しかもかれの記憶に残るのは、戦争中に惨たらしく子供を殺したという記憶である。ウォルトはあの時と同じ年位のタオと出会い、何度もタオを救うのは友情にも似た思いからなのは勿論だが、それ以外にも過去への懺悔からの気持ちもあったからである。嘗て少年の未来を奪った自分が、次はタオの未来を作ってやろうという思いからなのである。銃や暴力ではなく最後にウォルトが戦うための武器に選んだのは友情や愛情であったところが、最大の魅力だと思う。
『グラン・トリノ』のあらすじ・ストーリー
ウォルトと家族
ウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)の妻ドロシーの葬儀が教会で行われていた。参列した孫たちは、へそ出しルックにへそピアスや、アメフトのジャージなど非常識な恰好で現れたり、ふざけた祈りを捧げて笑い合ったりしてウォルトをイラつかせる。ウォルトの頑固で気難しい性格も災いして、二人の息子やその家族ともうまくいっていなく、会話もギクシャクしている。年老い、一人残ったウォルトの今後を考えただけで頭の痛い息子たちであった。
教会での葬儀も終わり、ウォルトの家にドロシーを偲んで沢山の人が集まるも、息子や息子の妻、孫たちは居心地が悪そうであった。暇を持て余していた孫は、地下室で「伝説の英雄」と書かれたトランクに入っているウォルトの朝鮮戦争の時の写真と勲章を見つける。ウォルトは戦争にてもらった勲章や写真を、家に飾るどころか地下のトランクにいれたままなのである。人を殺して貰った勲章を、名誉に思った事は無くずっとウォルトを苦しめている。
その日、隣にはアジア系移民のモン族一家が越して来ていた。ウォルトの住む町は、嘗て車工場で働く労働者の住む街であった。ウォルトはフォード社の組立工を50年も務め、その時代の古き良きアメリカを愛していた。しかし日本製自動車の普及で、工場が閉鎖されてからは多くの人が街を去り、代わりに移民が増えて行った事を良く思っていないウォルトであった。移民たちを見て「ネズミどもが何匹集まるんだ」と言いながら唾を吐くウォルトだった。
暫くして隣のモン族家族の一人である少年タオ・ロー(ビー・ヴァン)が、車のジャンプケーブルを借りにやって来る。だがウォルトは、「喪中だ!」と言い冷たい態度でタオを追い返す。一人になったウォルトを心配して声をかけてきた若い神父ヤノビッチ(クリストファー・カーリー)は、ウォルトの妻ドロシーに生前、朝鮮戦争で心に傷を負っているウォルトの懺悔を聞いてあげて欲しいと頼まれたという。だが、若い神父を子ども扱いして冷たくあしらうのだった。
気難しい態度しかとらないウォルトに、居心地の悪い思いをする息子ミッチの家族は耐えられず、いそいそとウォルトの家を後にする。ミッチの車(ランドクルーザー)を見て、「国産車を買うとバチが当たるのか」(吹き替え版では「アメリカの車は買えんのか」)と走り去る車を見ながら嫌味を言うウォルトだった。ウォルトは、日本車のセールスをして日本車に乗っている長男のミッチ(ブライアン・ヘイリー)が気に食わない様子であった。
ウォルトとモン族一家
タオは同じモン族でいとこのフォン(ドゥア・モーア)に、自分がリーダーをやっているギャングの仲間に入る様に言うが、ギャングの仲間になりたくないタオは無視をする。それでもしつこくギャングたちはタオを誘い、無理矢理仲間に引き入れてウォルトの愛車72年型グラン・トリノを盗みに入らせようとする。
夜、バーでウォルトは友人たちと酒を飲んでいると、ヤノビッチ神父がウォルトに声をかけ二人は生と死について話をする。ウォルトは「朝鮮戦争での3年間で、10代の子供を銃で撃ち銃剣で突き刺し、シャベルで殴り殺したことは死ぬまで忘れないし、その事を背負って生きて行く」とヤノビッチ神父に語る。死については詳しく話せるウォルトだったが生について語る事は少なかった。それはウォルトが戦争体験をずっと引きずって生きてきたからだった。
その夜、目が覚めたウォルトは部屋の窓から自宅の車庫で不審な光が揺れているのを見て、銃を持って車庫に向かう。車庫にはタオがおり、ウォルトはタオに銃口を向けるものの何かに躓き転倒した。
翌日車庫の窓に金網を取り付けているウォルトの元に長男ミッチから電話があるが、転倒した挙句犯人を逃がしたとは言えず、昨夜のグラン・トリノ盗難未遂の件は言わずにいた。
その後自らステアリングを取り付けた72年型グラン・トリノを丁寧に磨き、愛車を見つめながら煙草を吸い、ビールを飲むウォルトは満足げであった。グラン・トリノはウォルトの誇りなのであった。
その夜ギャングたちがタオを訪ねてきて、仲間にしようと無理矢理タオを連れて行こうとする。タオを守ろうとタオ家族とギャングたちがもみ合いになる中、ウォルトが銃を持って現れギャングたちを撃退する。結果、ウォルトがタオを助けた形となり、翌日からモン族一家をギャングから救った英雄とされ、近所の住人達からお礼の品が次々玄関先に置かれる。ウォルトが困惑する中、タオと姉のスー、タオとスーの母がやってきて昨晩のお礼をいい、タオはグラン・トリノを盗もうとした事を謝る。暫くして、昨夜のギャングとの事を心配したヤノビッチ神父がウォルトの元を訪ねてきた。そこで、ウォルトと生と死について語った夜からずっと考えていたヤノビッチ神父は、戦争で命じられ自分や仲間を守るために行った行為を懺悔し重荷を下ろすように言った。しかしウォルトが苦しんでいるのは命じられてしたことではなく、自らの意思でやった事であった。
昼間ウォルトは床屋に行った帰りの車内から、隣人のスーが黒人のゴロツキたちに絡まれてる所を目撃する。ウォルトは車でスーの元へ行くと車をおりた。ウォルトはゴロツキたちを前に、胸元に手を入れたかと思うと銃の形をさせた指を向けた。スーに車に乗る様に言うがゴロツキがスーの腕をつかんで離さない為、ウォルトは本物の銃を向けてスーを車に乗せた。車内でスーとウォルトは和やかに会話をし、スー一家が移り住んできたのは、ベトナム戦争の時アメリカに協力した為だと知る。共産主義勢力の報復を恐れてアメリカに来たのである。
スーを助けた日は、ウォルトの誕生日であった。祝いに来た身勝手な長男のミッチ夫婦にうんざりしたウォルトは二人を追い出し、一人寂しく庭でビールを飲んでいた。
そこにスーがやって来てウォルトをバーベキューに誘い、ウォルトはバーベキューに参加することにした。しかしモン族の文化を知らないウォルトは、モン族にとって失礼な行動を次々としてしまい、あからさまに嫌な顔をされる。挙句、その場に居たシャーマンに、自分の過去や現在を言い当てられる。居心地が余り良くない中で、体調が悪くなり洗面所で血を吐く。ウォルトは鏡の中の自分に寂し気に「happy birthday」と言った。
一方、楽し気な若者たちが地下で話をしている中、タオだけ一人ぼっちで浮かない顔をしている。気になる女の子がいるが、その輪の中に入る勇気がないのである。ウォルトはタオを見つけて「トロ助」と呼び、気になる女の子にさえ声をかけられずにいるタオに悪態をついた。
ウォルトとタオの交流
ある日、タオが車を盗もうとした償いをさせて欲しいとタオと姉のスー、タオとスーの母親がウォルトの元にやって来る。償いとしてタオにウォルトのところで手伝いをさせてほしいと言うのを一度は断ったものの、強引なスーと母親におされて、仕方なく翌日から来るようにいう。
翌日、タオは償いの為ウォルトの家を訪れる。しかし自分の事は自分で出来るウォルトは、タオに手伝ってもらいたい事などなかった。自分に自信もなく、得意なことさえわからないタオに情けなさを感じながらも、タオにご近所さんの家を直させる事を提案したウォルトだった。丁寧で真面目なタオの働きを目にしたウォルトは、タオに好感を持ち始める。そんな矢先、体調を悪くし再び吐血したウォルトは病院に行く。しかし結果は深刻なものだった。長男のミッチに電話をするも、病気の事は言い出せず電話を切るウォルトだった。
翌日、水道を直してほしいとウォルトを訪ねてくるタオ。その後二人は工具が置いて有る車庫で話をした。タオに対して徐々に好感を持ちつつあったウォルトは、嘗て自分が働いて買い集めた工具の話をして自分の工具をタオに貸す。その後、ウォルトは使わなくなった家のフリーザーを地下から持って上がるのをタオに手伝わせる。フリーザーを運ぶには地下の急な階段をのぼらなければならない。ウォルトは上から自分が引っ張り上げるから、タオに下から押すように言う。上を持つ方が重たいからと言う理由であったが、タオは年齢的な事や吐血したウォルトを車庫で見てしまっていたこともあり、ウォルトの体を気遣って「自分が上から引っ張る」と言う。しかし年寄り扱いされたと思ったウォルトは「自分が上を引っ張る」と言う事を聞こうとしないが、タオはウォルトを一喝するなど男らしい一面を見せる。
その後も、タオはウォルトの体を心配して煙草を辞める様に言うがウォルトは聞く耳を持たない。51年から持っている第一騎兵師団の紋章の入ったライターで、煙草に火を着けるのだった。
タオは、ウォルトの庭で土をいじりながら、学校に行きたいが誰も雇ってくれないとこぼす。ウォルトはフォード社で働いてたことや、自分の愛車のステアリングを自分で組み立てた事などをタオに話した。ステアリングとはかじを取る装置である。そんなタオに建築の仕事なら紹介できるが、「まずは男らしくなってからだ」と言って、馴染みの床屋に連れて行く。床屋の店主のマーティン(ジョン・キャロル・リンチ)と、いつものように悪態をつきながら会話をしている所をタオに見せ、男らしい会話のレクチャーをする。その後、ウォルトは建築の仕事をしている知り合いの所にタオを連れて行き、無事雇ってもらえることになる。ウォルトはステアリングを組み立てるようにタオが道を間違えないように、正しい道へ導こうとしていたのだ。
暴力は更なる暴力を生む
タオは、仕事の帰りにギャングたちに捕まり、暴力を受け工具も壊される。おまけに火のついた煙草で顔を焼かれる。
仕事を紹介して以来、久しぶりに会ったタオの様子を見てウォルトは、異変に気が付く。タオから事情を聞いたウォルトは怒りを露わにするが、報復を恐れるタオから何もしないで欲しいと言われる。しかしウォルトは単身ギャングの元へ行き、ギャングが家に一人になるのを見計らってギャングの一人を殴り続けた。おまけにギャングに銃を向けてタオには近づかない様に忠告したのだった。
その夜、ギャングたちはタオの家に向かって銃を乱射させる。幸い家族は無事であったが、これがギャングの報復だと分かっているウォルトは、おばさんの家へ行って家に居ないスーの身を心配して、タオに電話をかけさせる。程なくして、スーは帰って来るが顔が変形するほどの激しい暴力と、性的乱暴まで受けていた。嘆き悲しむ一家を後に、家に帰ったウォルトは一人涙を流す。こうなる事は予想がついたはずなのに、怒りに身を任せた自分が許せなかったのだ。そこへヤノビッチ神父がやって来て、スーを病院に連れていった事や、今夜の出来事について警察が来てもモン族の人たちは何も話さないことを伝えた。ヤノビッチ神父は、タオが外からずっとこっちを見ていることを伝えた。タオはウォルトが一緒に復讐しようと言ってくれるのを待っているのだ。いつもは穏やかなヤノビッチ神父も、ウォルトの前で怒りを露わにした。そして、今後自分たちが取るべき行動について酒を飲みながら話すのだった。ウォルトは、今までヤノビッチ神父にウォルトと呼ばれるのを嫌いコワルスキーと呼ばせていたが初めて「ウォルトと呼べ」と言い、ヤノビッチ神父にも心を開くのであった。
翌朝、復讐心で冷静さをなくしたタオがウォルトの元へやって来るが、ウォルトは落ち着くようにタオを説得し、4時に来るように言った。ウォルトは庭の芝生を刈り、馴染みの床屋で髪を切り、いつもはしない髭剃りを頼む。その後スーツを新調し、ヤノビッチのいる教会に懺悔に行く。ウォルトの懺悔は、戦争での事でも、これからやろうとしている復讐の事でもなかった。
妻のいる身で、他の女性とキスしてしまった事、ボートを売って儲けたが税金を払っていない事、二人の息子との付き合い方がわからなかった事などだった。ウォルトは身の回りを整えたのである。これから行う事は自分の人生の幕引きだとわかっていたからである。
ウォルトの決着
約束通り、4時にウォルトの元にやってきたタオを地下に連れて行くと、嘗て貰った勲章をタオの胸につけてやり、タオを地下へ閉じ込める。ウォルトは、タオのこの先の人生を考えて一人で決着をつけると言い残し、家を後にする。ウォルトは全ての重荷を背負って、友人であるタオにはまっとうな人生を歩ませたかったのである。覚悟を決めたウォルトは愛犬を隣人のばあさんにたくし、スーに電話をかけて地下にタオがいる事を伝えた。
一方ギャングの家の前では、ギャングの元に乗り込んでしまうかもしれないウォルトを心配したヤノビッチ神父が警察官と見張っていた。しかし何も起こらない事を理由に警察官はヤノビッチ神父を無理矢理車に乗せて去って行く。
ウォルトから連絡をうけたスーは、タオが閉じ込められている、地下の扉を開ける。タオは慌ててウォルトの後を追う。
ギャングの家に到着したウォルトは、銃を構えたギャングに挑発する様な言葉をはき続け、指で銃の形を作ってギャングたちを撃つ真似をする。やがて煙草を咥えると、自分で煙草に火をつけるか…と言いながら胸元に手を入れると、「聖なるマリアよ」と言い銃を抜く振りをした。銃だと思ったギャングはウォルトに向けて一斉に発砲した。多くの目撃者の中、ウォルトは倒れた。手にはライターが握られていた。
程なくしてギャングの家にかけつけたタオとスーだった。止まっているパトカーに取り乱すタオは、警官に制止される。そこで、ウォルトがライターを出しかけて撃たれた事や、目撃者がいる事、ギャングたちは長期刑になる事を知った。タオはウォルトの遺体が運ばれて行くのを茫然と見ている事しかできなかった。
後日、ウォルトの葬儀にタオとスーが出席していた。ヤノビッチ神父はウォルトを偲び、「私はウォルトに会うまで生と死について何も知りませんでした。彼に教えられました」と言葉を残した。
ウォルトは自らの死をもって、友人タオの未来を切り開いたのである。銃や暴力では大切なものは守れないことを悟ったウォルトは、友情や愛情を武器にして大切な人を守ったのである。
その後、弁護士によって集められたウォルトの家族たちの中に、タオの姿があった。弁護士は、ウォルトらしい口汚い言葉が並ぶ遺言書を読む。そこには、愛車であるグラン・トリノは友人のタオに譲ると書かれていたのだ。ただし三つの約束が守れるならと、条件が書いてあった。その条件とは、
1.豆食いメキシコ人のように車のルーフを切らずー
2.クズ白人のようにペンキで車体に炎など描かぬこと
3.また後部にカマっぽいスポイラーなど付けぬこと
という条件であったが、ウォルトらしい言葉に思わず笑みがこぼれるタオであった。
海岸沿いのまっすぐ伸びた道に一台の車が走っている。それは72年型グラン・トリノを運転しているタオであった。タオの未来の様に何処までも道は続いているのであった。
『グラン・トリノ』の登場人物・キャラクター
ウォルト・コワルスキー(演:クリント・イーストウッド)
頑固で偏屈な元軍人である孤独な老人。
朝鮮戦争を経験し、今だにその時の傷が癒えず、苦しんでいる。
最愛の妻にも先立たれ、二人の息子や孫たちともうまくいっていない。
フォード社で50年もの長きにわたり、組立工をやっていた事を誇りに思っていて、今でもフォード社の72年型グラン・トリノを大切にし、手入れも欠かさない。
自宅前にはアメリカ国旗を掲げ、古き良きアメリカを愛している。
愛犬デイジーを可愛がり、庭先でビールを飲むのが日課であり彼の安らぎでもある。
自分の身の回りの事は全て自分でこなし家も綺麗にしてある。庭の手入れを欠かさない。
自分の町にどんどん異文化が入って来る事を好ましく思っておらず、元々の口の悪さもあって口汚く罵ったり嫌な態度をとるが、決して悪い人間ではない。
タオ・ロー(演:ビー・ヴァン)
ウォルトの隣に住んでいるモン族一家の少年である。
おとなしくて優しく、働き者であるが内向的で弱弱しい為、ウォルトからは「トロ助」というあだ名をつけられる。
皿洗いや庭仕事を手伝うため、おなじモン族からも女呼ばわりされ馬鹿にされている。
頼りなく見えるが、姉スーの為なら男らしい一面もみせる。
いとこがリーダーをしているモン族のギャングにやたらと誘われ絡まれるが、本人は働いてお金をため、学校に行きたがっている。
スー・ロー(演:アーニー・ハー)
ウォルトの隣に住むモン族一家の少女で、タオの姉である。
気が強く、ギャングをも恐れない性格であるが弟想いで優しい所もある。
頭もよく、物怖じすることなく頑固なウォルトの心にすっと入って来る。
ウォルトの優しさに初めから気が付いており、交流を持とうとする。
弟の手本になる大人だと思い、タオとも交流を持たせる。
ヤノビッチ神父(演:クリストファー・カーリー)
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目次 - Contents
- 『グラン・トリノ』の概要
- 『グラン・トリノ』のあらすじ・ストーリー
- ウォルトと家族
- ウォルトとモン族一家
- ウォルトとタオの交流
- 暴力は更なる暴力を生む
- ウォルトの決着
- 『グラン・トリノ』の登場人物・キャラクター
- ウォルト・コワルスキー(演:クリント・イーストウッド)
- タオ・ロー(演:ビー・ヴァン)
- スー・ロー(演:アーニー・ハー)
- ヤノビッチ神父(演:クリストファー・カーリー)
- スパイダー/フォン (演:ドゥア・モーア)
- ミッチ・コワルスキー(演:ブライアン・ヘイリー)
- スティーブ・コワルスキー(演:ブライアン・ホウ)
- カレン・コワルスキー(演:ジェラルディン・ヒューズ)
- アシュリー・コワルスキー(演:ドリーマ・ウォーカー)
- マーティン(ジョン・キャロル・リンチ)
- トレイ(演:スコット・リーヴス)
- デューク(演:コリー・ハードリクト)
- 『グラン・トリノ』の用語
- グラン・トリノ
- モン族
- 第一騎兵師団
- 『グラン・トリノ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ウォルト「朝鮮で3年、銃で撃ち銃剣で突き刺し、まだ10代の子供をシャベルで殴り殺した。そのことは死ぬまで忘れないさ。酷いことだよ。だが背負って生きて行く」
- ウォルトの遺言書
- 『グラン・トリノ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 初映画脚本で大作を作った男
- 音楽はイーストウッドの息子が担当
- 『グラン・トリノ』の主題歌・挿入歌
- ED(エンディング)Jamie Cullum :『Gran Torino』