女王陛下のお気に入り(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『女王陛下のお気に入り』とは、18世紀を舞台に、宮廷で女王の寵愛を奪い合う女性2人の攻防を描いた実話に基づく歴史コメディ映画である。本作は『ロブスター』で鬼才な才能を持つ、ヨルゴス・ランティモスが監督を務めた。第91回アカデミー賞では最多9部門10ノミネートを獲得し、オリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞している。気まぐれな女王アンに代わって絶対的権力を握る側近のサラと、貴族の地位に返り咲く陰謀を企てるアビゲイルの、愛憎に満ちた人間ドラマが繰り広げられる。

『女王陛下のお気に入り』の概要

『女王陛下のお気に入り』とは、18世紀のイングランドを舞台に、宮廷で女王の寵愛を奪い合う女性2人の攻防を描いた事実に基づく歴史コメディ映画である。また本作はイギリス・アイルランド・アメリカ合作の歴史コメディ映画となっており、監督はヨルゴス・ランティモス、脚本はデボラ・デイヴィスとトニー・マクナマラである。本作は2018年8月30日の第75回ヴェネツィア国際映画祭で世界初上映され、審査員大賞と女優賞(オリヴィア・コールマン)を受賞した。一館あたりの平均オープニング興収は10万5603ドルとなり、その年最高の平均オープニング興収を叩き出した。さらに、批評家からも絶賛を受け、特に脚本と演出、撮影、衣装デザイン、音楽、そして、主演3人(オリヴィア・コールマン、エマ・ストーン、レイチェル・ワイズ)の演技が絶賛された。第91回アカデミー賞では『ROMA/ローマ』と並び最多9部門10ノミネートを獲得し、オリヴィア・コールマンが主演女優賞を受賞している。
18世紀のグレートブリテン王国(現イギリス)はフランスと戦争の渦中だった。その為、戦争による増税が懸念されていた。しかし女王のアンは政治に関心がなく気まぐれな性格だった。そして持病の痛風に悩まされており、体調が思わしくなかった。アン女王は、親友であり側近のマールバラ公爵夫人サラに全てのことを任せており、サラがアン女王の意志決定を半ば代行し、宮廷を公私にわたり取り仕切っていたのだった。また2人は同性愛関係にあり、サラはアン女王のお気に入りだった。
しかしある時、サラの従妹であり没落貴族のアビゲイル・メイシャムが宮廷へやってくると、サラが握っているアン女王のお気に入りの座が危うくなり始める。アビゲイルはアン女王のお気に入りになることで再び貴族に返り咲く策略を企て、ついにはアン女王と同性愛関係になるのだった。アン女王は次第にサラを疎ましく思うようになる。また増税の阻止を提唱する、政治家のロバート・ハーレーとアビゲイルが手を組んだことにより、サラはついに宮廷から追放されてしまうのだった。
気まぐれな女王アンに代わって絶対的権力を握る側近のサラと、貴族の地位に返り咲く陰謀を企てるアビゲイルの、愛憎に満ちた人間ドラマが繰り広げられる。

『女王陛下のお気に入り』のあらすじ・ストーリー

プロローグ

18世紀のイングランド王国(現イギリス)はフランスとの戦争の渦中にあった。王であったウィリアム3世の死後、妻であるメアリーの妹アンが王の座を継承をした。しかしアン女王は気まぐれで、政治に関心がない。国のことよりもマールバラ公爵夫人サラとの時間を大切に思っていたのだった。

宮廷を訪れたアビゲイル

没落貴族のアビゲイル・メイシャムは、複数の男女が乗り合わせる馬車に揺られていた。宮廷前で馬車が停まり降りようと立ち上がった時、目の前に座っていた男に外へ押し出され、汚物まみれの泥の中に転落した。

アビゲイルは全身に泥をつけ、異臭を放った状態で宮廷を訪れた。扉を叩き、中から顔を出した女中に、持っていた手紙を渡した。手紙は伯母からのもので、「従妹であるサラを頼るように」と書かれていた。
女中は手紙を読み終えると中に通し、「汚れを落とすように」と伝えた。次に引き継いだ女中に案内され、「扉の向こうで体を洗ってきて」と言われ従ったが、扉の奥にいたのはサラだった。

アビゲイルはサラの従妹であることを告げ、伯母からの手紙に宮廷を尋ねるように書かれていたことを伝えた。サラはアビゲイルに「望みはなに?」と尋ねた。アビゲイルは「ここで雇ってください。」とお願いするのだった。

アン女王とサラの関係性

宮廷には戦争反対派の政治家ロバート・ハーレーや、サラの夫のジョン、イングランド首相のシドニー・ゴドルフィンの姿もあった。
颯爽と現れたサラをハーレーは睨みつけ勢いよく近づくと、声を荒げた。ハーレーが声を荒げたのは、戦争に勝利した褒美としてアン女王が宮殿を建設しているということを知った為だった。
国が財政難であるのになぜそのような贅沢をするのか分からなかったのだ。しかもアン女王はサラの話にしか耳を傾けず、サラの耳打ちによって野党との関わりを絶っていたのだった。

女中の嫌がらせ

ある日、女中の1人がアビゲイルに床磨きを頼み、液体の入った桶を持ってきた。桶には灰汁が入っていたが、それを知らないアビゲイルは躊躇なく右手を桶の中に入れた。そして床を磨き始めた瞬間、右手に激痛が走った。
アビゲイルが叫び声をあげると、床磨きを頼んだ女中は嬉しそうに「手袋しないと。灰汁は危険よ」と言うのだった。アビゲイルは急いで右手を水につける。
美しいアビゲイルは女中たちに疎まれていたのだった。

侍女への昇格

ある晩、アン女王は痛風でうなされる。アビゲイルはアン女王の寝室でサラに従い看病をした。
翌朝アビゲイルはアン女王の為に薬草を摘みに外へ出た。宮廷に戻って早速薬草をすりつぶすと、アン女王の寝室へ急いだ。
寝室に侵入し、眠っているアン女王の脚に薬草を丁寧に塗りつけた。そこへサラがやってきて、アビゲイルに「勝手に入らないで」と言うと、従僕を呼んでアビゲイルへのムチ打ちを命じた。

目を覚ましたアン女王は脚の痛みが良くなっていることに気付き、「脚が良くなったわ。何を塗ったの?」とサラに尋ねる。アン女王の言葉にサラは視線を泳がせた。
サラはアビゲイルの行いを認めて「侍女」に任命した。

アビゲイルの覚醒

アン女王を乗せた車椅子が目の前にさしかかったところで、アビゲイルが大きく咳きこんだ為、従僕は車椅子の動きを止めた。
アビゲイルは「失礼を、陛下」と一礼し、「薬草を摘み風邪をひきました」と伝える。アン女王は「あなたね」と笑いかけ、アビゲイルは自分の名を伝えた。

アビゲイルは次にサミュエルとの接近を試みた。目の前を歩くサミュエルの後を追いかけては、サミュエルが振り返ると踵を返して反対方向に歩き出す。サミュエルは「僕をつけているのか?」とアビゲイルに言うが、「つけているのはあなたです。私はあなたの前を歩いています」と言い返される。
アビゲイルが去っていった後、ハーレーが現れ「モノにする気か?」と尋ねると、サミュエルは「僕をその気にさせる」と答えた。アビゲイルはサミュエルの気を引くことに成功したのだった。

アン女王とサラの関係

宮廷で舞踏会が開かれダンスが始まると、サラはサミュエルを指名し2人は部屋の中心で踊り始める。
アン女王はその様子を楽しんで見ていたが、やがて自分がダンスに参加できない悔しさと、2人の楽しそうな様子に嫉妬し、音楽を中止させた。驚いたサラは急いでアン女王の元に駆け寄ると、アン女王は自分を部屋に連れて帰るように伝えた。

すぐに打ち解け合った2人は、笑い声を上げながらサラの部屋へ入った。その部屋では、アビゲイルが蠟燭の灯りで本を読んでいたが、突然入ってきた2人の姿に驚き息をひそめる。アビゲイルの存在に気付いていないアン女王とサラはキスをした。
2人が同性愛関係にあることに驚き、アビゲイルは忍び足でサラの部屋から退室した。

ハーレーの接近

サラの部屋から出たアビゲイルの前にハーレーが現れる。ハーレーは「少し散歩しよう」とアビゲイルを外に誘い出した。
内通者が欲しいハーレーは、サラとゴドルフィン、そしてアン女王の話をしてほしいとアビゲイルに催促した。断られたハーレーはアビゲイルを脅し、宮廷の歪んだ現状を変えたいという野望を伝えた。しかしアビゲイルは再度拒んだ。

ハーレーは足を止め「見ろ、ミソサザイだ。可愛いな」と言って、気をそらしたアビゲイルを坂下へと突き落としたのだった。

アビゲイルとサラの対立

アン女王は戦争を終わらせるべきではないかと悩んでいた。しかしサラは「やはり増税する」と強気に出る。
アビゲイルは静かに2人の会話を聞いていたが、険悪な空気を感じて部屋を出た。アン女王は虫の居所が悪くなり、「部屋へ戻る」と足置きを蹴った。
サラは車椅子をひいて部屋へ連れて行くと、「議会で増税を発表して。日程は私が」とだけ言って部屋を去った。アン女王はサラの冷たい態度と、自分の置かれている立場に虚しさを感じ呆然としたのだった。

アン女王とサラの広がる距離

ある日、アン女王は自室の窓から身を投げ出そうとした。従僕が公務中のサラに耳打ちし、サラは急いでアン女王の部屋へ向かった。アン女王は部屋に入ってきたサラに目配せをし、サラが止めてくれると期待した。
しかしサラがアン女王に言った言葉は、「敷石を狙って。芝生だと死ねない」という期待外れの言葉だった。

サミュエルの接近

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