ギルバート・グレイプ（映画）のネタバレ解説・考察まとめ

ギルバートの懺悔

「殴った。あいつを本気で。あいつを殴るなんて」ギルバートはベッキーに懺悔する。
涙を流すギルバートをそっと抱きしめるベッキーに対し、ギルバートは「帰らなきゃ。僕は行けない。ママの食費を稼がなきゃ」と初めて感情を露わにした。
「あなたのせい？」とベッキーは訊く。
「ママは何年もショック状態だった。親父が突然さよならも言わずに消えた。昔はとても美人だったんだ」とギルバートは答えた。
「じゃあ、お父さんのせい？」とベッキーは重ねて訊く。
「いいや」とギルバートは首を振り、「親父は何を考えてたのか、感情を表したことがない。笑ったり嬉しそうな顔もせず、怒りもせず。最初から死んでるようだった」と答えた。
「そう言う人、知ってるわ」とベッキーが微笑むと、ギルバートも少しだけ笑った。

そのまま二人で夜を明かし、ギルバートは「アーニーの誕生日だ。帰らなきゃ」と言って、家に帰った。

アーニーの誕生日パーティー

誕生日パーティーはたくさんの人でにぎわっていた。
気まずい様子でアーニーのことを探すギルバート。
近所の子供と楽しく遊んでいたアーニーだったが、ギルバートの姿を認めると姿を隠してしまった。

ギルバートはエイミーにアーニーがどこにいるかを尋ねた。
ケガは大丈夫だったか、アーニーの身を案じた。
エイミーは木の上にアーニーがいることに気づくと「知らないわ」とわざと答えた。
それを面白がったアーニーの笑い声でギルバートはアーニーの居場所に気づき、わざと「アーニーはどこだ？アーニーを見なかったか？」と大声で探した。
アーニーは木の上からギルバートの前に降りてきた。
ギルバートはアーニーを抱きしめ、「驚かせるな」と言う。
アーニーはギルバートを倒し、二人でじゃれ合うのだった。

エイミーに「ママのところへ」と言われ、ボニーの部屋へ向かうギルバート。
ボニーは先日好奇の目にさらされたことがきっかけで人目を恐れる様になり、パーティーにも姿を見せず、窓から様子を覗き見るだけで済ませていた。
ボニーは昨日のギルバートの行動を叱責した後、「家を出て行ったのかと、この上お前まで。でも戻ってきてくれた。どうして？なぜ戻ったの？」と質問した。
「わからない。でも戻った」と答えたギルバート。
ボニーは「あんたたちには本当につらい思いを、こんな重荷の母親を。こんな風になるつもりなんてなかったの。人の笑いものになるなんて」と後悔の念を打ち明ける。
ギルバートは「笑いものなんかじゃない」と繰り返し言った。
ボニーはギルバートに抱きつき、「黙って姿を消さないで」と嗚咽した。

アーニーの誕生日パーティーにベッキーがやってきた。
ギルバートは今まで頑なにベッキーとボニーを会わせようとしなかったが、ベッキーにボニーに会ってほしいと頼む。
ギルバートがボニーにベッキーを紹介しようとすると、ボニーは拒否した。
しかし、ギルバートが「彼女は笑わないよ。僕は二度とママを傷つけたりしない」と説得し、ようやくボニーはベッキーに会うことを承諾した。
握手を交わし、ボニーが「昔からこんなじゃなかった」と言うと、ベッキーは「私も昔からこんなでは…」と返した。

ベッキーの旅立ち

トレーラーハウスが無事に直ったベッキーとその祖母は、また旅に出ようとしていた。
ベッキーが「本当に楽しかった」と言うと、ギルバートは寂しさを隠せず「何て言えばいい？」と言った。
それを見ていたアーニーが「ありがとうって言えばいいんだよ」と言うと、ギルバートはベッキーを抱きしめて「ありがとう」と言った。

ボニーの死

ボニーは何年も二階にある自室ではなく、リビングのソファで眠っていた。
ボニーの「打ち上げられたクジラのよう」な体型では、二階に上がるのも困難だからである。

アーニーの誕生日、ベッキーと話したボニーは突然二階で眠ると言い始める。
エイミーたちに介助されながらなんとか二階に上がるとそのままベッドで眠りについた。

しばらく後、アーニーがボニーを起こしに来たが、ボニーが目を覚ますことはなかった。
アーニーは理解できないなりに違和感を覚え、興奮状態に陥ってしまう。
アーニーの異変から、ギルバートたちはボニーの死に気づくのだった。

ボニーの遺体を前に、「クレーンが必要かもな」とうそぶくギルバート。
「大勢が面白がって見に来る」と涙を流すエレン。
ギルバートは、「笑い物にはさせない。させてたまるか」と、ある決心をしたのだった。

炎上するギルバート邸

ギルバートたちはボニーを残して家の中の物を全て外に持ち出した。
ボニーの尊厳を守るために、新しい出発のために、そして父親の呪縛から解放されるために、ギルバートは家に火をつけた。
生まれてから今まで暮らしてきた自宅が燃える様子を、4人は静かに見守っていた。

19歳の誕生日

時は過ぎ、アーニーの19歳の誕生日が近づいてきた。
ギルバートとアーニーは、ベッキーの乗ったトレーラーハウスがエンドーラに来るのを楽しみに待っていた。

エイミーは町のパン屋に就職し、エレンはそれについていく形で転校した。
アーニーはギルバートに尋ねた。
「僕らはどこへいくの？」
ギルバートは答えた。
「どこへでも」

ベッキーの乗ったトレーラーハウスは、もうすぐそこに迫っていた。

『ギルバート・グレイプ』の登場人物・キャラクター

ギルバート・グレイプ （演：ジョニー・デップ）

本作の主人公。弟のアーニーの面倒をいつも見ている。
食料品店で働き、近所の人妻、ベティと関係を持つ。退屈な毎日の唯一の刺激だった。
父親が亡くなり、家族の為に働いている。その事自体に不満はないようだが、アーニーの事、過食になり引きこもってしまった母親を思うと、自分はこれからもずっと、どこにも行けないんだと時折思い知らされる。
自分の感情を抑え込みがちで心を開けるような相手が居なかったが、ベッキーと出会い、心の拠り所となっていくうちに徐々に変化が生まれる。

アーニー・グレイプ（演：レオナルド・ディカプリオ）

ギルバートの弟。知的障害がある。10歳までもたないと医者に言われていたが、映画のラストでは19歳間近まで成長している。
天真爛漫で、大きな木や鉄塔など高い所へ登るのが好き。特に木の上に登り、ギルバートが自分を探している様子を見るのが大好きだ。
人懐っこく、ベッキーともすぐに仲良くなる。

ベッキー（演：ジュリエット・ルイス）

祖母と一緒にトレーラーハウスで世界中を旅している。
幼い頃両親が離婚し、父と母の間を行ったり来たりしながら育てられる。
自分の世界観、価値観を確立している、とても聡明な女性。
トレーラーのエンジントラブルで、ギルバートの町に一時滞在する事となり、ギルバートに出会う。
アーニーが給水塔に登り、ギルバートが説得する様子を微笑ましそうに見ていた。
ギルバート、アーニーの事を案じていて、二人にとっても大きな存在となる。

ボニー・グレイプ（演：ダーレン・ケイツ）