死霊館 エンフィールド事件（ホラー映画）のネタバレ解説・考察まとめ

『死霊館 エンフィールド事件』の概要

『死霊館 エンフィールド事件』とは2016年に公開されたアメリカのホラー映画である。アメリカの公開は2016年6月10日。日本では2016年7月9日に公開された。「死霊館ユニバース」の1作目である『死霊館』（2013年）の続編であり、シリーズの3作目にあたる。監督を務めるのは「ソウシリーズ」（2004年〜）、「インシディアスシリーズ」（2010年〜）などホラーのヒット作を生み出しているジェームズ・ワン。彼は1作目の『死霊館』でも監督を務めている。スタッフも『死霊館』のメンバーが再び集結した。『死霊館』は実在するアメリカの有名な心霊研究家であるロレイン・ウォーレンとエド・ウォーレンの夫妻を主人公にしたストーリーとなっている。本作では1977年にイギリス・ロンドンの北部にあるエンフィールドで実際に起きた事件を題材にしており、史上最長期間続いたポルターガイスト現象として知られている「エンフィールド事件」が取り上げられた。全世界での興行収入は350億円を超える大ヒットを記録。オリジナルホラー映画において『エクソシスト』（1973年）に次ぐ史上2位の記録を達成したホラー映画となった。ロレイン役を務めるのは『マイレージ、マイライフ』（2009年）でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたヴェラ・ファーミガ。エドを演じるのは「インシディアスシリーズ」にも出演しているパトリック・ウィルソンである。

1976年、心霊研究家のロレイン・ウォーレンとエド・ウォーレンの夫妻は、アミティビルの事件の調査にあたったことでメディアの注目を浴びるようになった。しかしテレビに出演すれば心霊現象に懐疑的な人にとっての格好の的となっていく。それから1年後の1977年、イギリスのエンフィールドで暮らすホジソン一家を怪奇現象が襲う。一家はシングルマザーのペギー・ホジソン、長女のマーガレット・ホジソン、次女ジャネット・ホジソン、長男ジョニー・ホジソン、末っ子ビリー・ホジソンの5人家族であった。ジャネットが友人と作ったというヴィジャボードで遊んだ夜、彼女の周囲でおかしな現象が起こり始めていく。子供部屋のベッドで寝たはずが、気付くとリビングのソファの前に横たわっていたのである。一方のマーガレットが寝ていた子供部屋では誰もいないはずの廊下からドアが叩かれ、彼女が目を覚ましていた。それから霊がジャネットの周囲を始め、家の至る所で悪さをするようになっていく。やがて霊は姿をジャネットに見せ、一家全員が怪奇現象に遭遇するようになっていった。とうとう耐えきれず、向かいのノッティンガム家に駆け込んだペギーたち。その後、怪奇現象をかぎつけたテレビ局が取材に訪れた。取材の際に、ジャネットの体を通して霊が自ら自身をこの家で死亡したビル・ウィルキンスであると名乗る。この取材テープを入手した教会はエドとロレインに、事件の調査にあたるよう指示を出した。期限は3日。デタラメであればすぐに引くようにと、教会側も完全には信じていなかった。アミティビルの事件以降、エドの死を予兆する夢を見たため不安が拭えないロレインであったが、2人はエンフィールドへと向かうのであった。

『死霊館 エンフィールド事件』のあらすじ・ストーリー

複数の場所で起きていた修道女の悪魔の関わる事件

1976年、心霊研究家のロレイン・ウォーレンとエド・ウォーレンの夫妻は、ニューヨーク州アミティビルで起きた事件の調査で世間の注目を集めた。霊能力のある妻のロレインが霊視したものは男に撃ち殺された一家の霊と、修道女の悪魔。しかし2人の調査は霊的現象に懐疑的な層の格好の的となった。そして後の1977年にイギリスのエンフィールドにて、イギリス版のアミティビル事件とも呼ばれる事件が起きる。

ペギー・ホジソンの一家は長女のマーガレット・ホジソン、次女ジャネット・ホジソン、長男のジョニー・ホジソンと末っ子ビリー・ホジソンの5人家族であった。ある日、学校で友人とヴィジャボードを作ったジャネットは家で早速試すが、反応はない。しかしそれからホジソン家で奇妙なことが起きていく。夜中に突然、一人二役のようにして会話を始めたジャネット。ビリーと遊びたがる相手を彼女は止めようとしていた。またジャネットが守ろうとしたビリーであるが、彼も恐怖に襲われていた。廊下にあるビリーのテントの中からおもちゃの消防車が走って出てきたのだ。誰もいないはずのテントを彼が覗くと中から男の叫び声がし、ビリーはペギーに助けを求めた。

その頃、ウォーレン夫妻はエドが夢の中で修道女の悪魔に遭遇し、その姿を絵に描くことにする。悪魔はアミティビル事件でロレインの視た悪魔であり、その後彼女も接触することとなった。自宅の中を修道女が歩いていたところを娘のジュディ・ウォーレンが見つけ、一緒にいたロレインは後を追う。するとそこは絵の飾られた部屋であり、中に入ると音楽が鳴り出した。ドアは閉ざされ、絵の裏から白い指が伸び出す。やがて絵が壁から離れ、ロレインに向かい襲いかかってきた。接触したと思った時にはエドのいる別の空間になっていた。そして彼の体を石のようなものが貫き、彼女は元いた部屋で持っていた聖書に何かを書き殴りながら目を覚ました。

教会の指示でエンフィールド事件の調査にあたったウォーレン夫妻

ホジソン家の状況は悪化していく一方である。遂にはペギーも怪奇現象を目撃し、一家は向かいに住むノッティンガム家に助けを求める。ペギーと同名の隣人女性であるペギー・ノッティンガムの夫、ビック・ノッティンガムや警官と共にペギーが家を調べると椅子が勝手に動き出し、全員が恐怖した。自身の手に負えないと悟った警察は知人の神父に連絡をとることにする。後日、ホジソン家の状況を知ったテレビ局が取材に訪れた。中には技術コンサルタントのモーリス・グロスの姿もあった。モーリスらを中心に取材は進行。するとジャネットは男の声で話し始め、自身をビル・ウィルキンスと名乗った。72歳のビルはリビングの椅子で死亡していたのだ。取材後もノッティンガム家で寝泊まりしていたペギーたち。家を出れば安心と思っていたが、そうではなかった。ビリーのテントにあるへそ曲がり男のフェナキストスコープの霊に憑依されたジャネットが家具を飛ばし、ペギーたちはパニックに陥る。ジャネットは泡を吹いて倒れた。

教会はエドとロレインにエンフィールド事件の真偽を確かめるよう通達する。現場で調査を開始した夫妻はビルを呼び出した。ビルは呼びかけに応じ、話しながら謎かけのような言葉を残す。夫妻は家で寝泊まりしながら様子を見るが、僅かな間で家具がめちゃくちゃになる異常事態が発生。その際にまたビルは意味不明な言葉を残した。しかし怪奇現象に否定的な超心理学者アニタ・グレゴリーがジャネットのイタズラである証拠を掴む。監視カメラにはジャネットが自作自演をする様子が映っていたのだ。映像を見た夫妻は調査を打ち切る。帰りの電車でビルの言葉を録音したテープを再生してみたエド。するとビルが2回発した意味不明な言葉は、それぞれの録音したテープを同時に再生することで1つの文章になっており、ビルを操っていたのが修道女の悪魔であることが判明する。

既に悪魔の名前を知っていたロレイン

すぐさま引き返した夫妻。現場ではジャネットが暴走し、彼女以外の一家は家を閉め出されていた。エドは引き止めるロレインを残し、単身で家に潜入。彼が入った途端ドアが閉まり、ロレインは外に残されてしまった。悪魔は高温の蒸気をエドの目に浴びせ視界を奪う。そしてへそ曲がり男を召喚しエドを追い込んでいる隙に、ジャネットを自殺させようとしていた。その間にロレインは以前悪魔と遭遇し際に、既にその名前を手に入れていたことに気付く。彼女は夢で遭遇しながら悪魔の名前を聖書に書き殴っていたのだ。そこで聖書を探し出し、完全に名前を思い出したロレイン。ビックが施錠されたドアを破壊し、家に入り込んだ彼女は悪魔と接触する。彼女は「ヴァラク」の名前を叫び、悪魔祓いを成功させた。こうしてエンフィールド事件は最も信憑性が高い心霊現象と認められることとなる。晩年まで家に住み続けたペギーは、2003年にビルが死亡した椅子で息を引き取った。

『死霊館 エンフィールド事件』の登場人物・キャラクター

心霊研究家

ロレイン・ウォーレン（演：ヴェラ・ファーミガ）

吹替：小林さやか
エドの妻。エドと共に心霊研究家をしている。彼女の霊視能力は事件の解決において重要な役割を果たす。ロレインはジャネットと打ち解けるために自身の過去を初対面で明かした。霊能力があることはロレインを孤独にしたという。ロレインにとってエドは彼女に奇跡をもたらした存在であり、彼女はエドと結婚に至った。しかしエドが死ぬ予知夢を見たことから、彼をエンフィールド事件の調査で失うのではないかという不安がロレインを支配していた。唯一の理解者を失うことは、ロレインにとって非常に恐ろしいものであった。

エド・ウォーレン（演：パトリック・ウィルソン）

吹替：咲野俊介
ロレインの夫。カトリック教会公認の非聖職者である悪魔研究家。ロレインのように霊視能力はないが、現実面での霊に対する策を講じることに長けている。重要な選択を強いられる場面や、調査を打ち切る場面からも、エドが決断力や行動力のある人物であることが窺える。霊視能力の高いロレインと、現実的な面を大きく動かす力を持つエドの相性は非常に良い。自身が死ぬかもしれない場面でも後悔をしたくないという思いから、彼は危険な方を選択した。

ホジソン一家

ペギー・ホジソン（演：フランセス・オコナー）

吹替：湯屋敦子
ホジソン一家を支える母親。夫とは離婚しており、連絡が取れない状態。事件の起きた家は元夫が家具付きで買った物件であった。夫はその後、近所の女性との間に双子ができたという。3ヶ月分の養育費の支払いが滞っており、事件の前から既に彼女は疲弊していた。働きながら4人を育てなければならず、目が行き届かない。またジャネットが学校で煙草を吸っていたという連絡が入り、彼女がお父さん子であったことから、父親がいない家庭環境に責任を感じていた。

ジャネット・ホジソン（演：マディソン・ウルフ）

吹替：近藤唯
11歳の次女。学校で友人とヴィジャボードを作ったジャネット。ヴィジャボードを家でやった後から、一家が怪奇現象に襲われるようになった。霊に取り憑かれるようになったジャネット。以降、メディアの注目を集めてしまったこともあり、学校では居場所が無くなっていった。肉体も精神も限界が近いところにきていたジャネットの支えになっていたのは家族の存在であった。ビルはジャネットに取り憑きながらも、ヴァラクがジャネットを支配しようとしていることに気付いていたため、ロレインに悪魔祓いのヒントを教えようとする。