エスター(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『エスター』とは2009年に公開されたアメリカ合衆国の世間を恐怖のどん底に落とした異色のサイコホラー映画。監督は、『フライト・ゲーム』などを手がけた、ジャウム・コレット=セラ。養子として引き取った美少女エスターによって巻き起こる悲劇を描いている。エスターは発育不全を患っており、実年齢は33歳である。見た目はお姫様のような服に身を包み、可愛らしい少女だが、裏では親の目を盗みながら、目的のために殺しもいとわない凶暴な本性を隠している。その二面性が世間を驚かせた。2020年には続編の製作が発表された。

『エスター』の概要

『エスター』とはアメリカ映画で、物静かな少女が徐々に恐ろしく豹変し惨劇を招いていくさまを子役イザベル・ファーマンが怪演するサイコホラーである。製作会社はダーク・キャッスル・エンターテインメント、配給はワーナー・ブラザースが行っている。北米では2009年7月24日に公開され、日本では2009年10月10日に公開された。
Rotten Tomatoesの評価では、153件の評論のうち、56%にあたる85件が高く評価しており、平均して10点満点中5.49点を得ている。

2009年アメリカ。かつて3人目の子供を死産してしまったケイトは、そのことがトラウマとなり悪夢に悩まされていた。その苦しみを癒すため、養子として孤児院からエスターという9歳の少女を引き取ることとなる。彼女はとても聡明で、難聴を患う義妹のために手話を教えられるとすぐに覚えた。礼儀も正しく、とても落ち着いている。しかし、彼女は常に手首や首にリボンを着けていたり、入浴の際は必ず入り口を施錠したりと次第に奇妙な行動を見せるようになり、それから徐々に彼女の恐ろしい本性が明らかになっていく。

次第に露になる本性にケイトは気づき始め、ケイトが夫のジョンに医者に診せるように言ったが、理解してもらえずにいた。そんな時、エスターのことで相談していたシスター・アビゲイルが突然亡くなったり、長男のダニエルが大怪我をしたりと、周りで事件が起き始める。精神的にも追い詰められたケイトは、エスターのことを周りに訴えるが、信用されずケイトが精神的に病んでしまったと入院させられるのであった。しかし、ひょんなことからエスターの正体を知ったケイトは、家族を守るためエスターに立ち向かっていく。

『エスター』のあらすじ・ストーリー

エスターとの出会い

コールマン夫妻は3人目の子供を死産し、そのトラウマから悪夢をみる妻ケイト。その苦しみを見ていた夫のジョンは孤児院へ行こうと提案する。ケイトも些細なことで死産した子供のことを考えてふさぎこんでしまう自分が嫌になり、夫が勧めるとおり孤児院で養女をもらうことを決意する。孤児院にきた二人は各部屋で遊んでいる子供のほかに、教室の奥で一人で絵を描く少女エスターに出会う。とても礼儀正しく、聡明なエスターに二人は惹かれていき、彼女の話す「母ライオンが子ライオンと出会う話」が夫婦の間で彼女を養女として迎え入れる決断をさせた。しかし、既にここからエスターの計略は始まっていた。彼女は孤児を貰いにくる人たちにとっての理想の子供像を演じ「母ライオンが子ライオンと出会う話」も子供を死産し苦しんでいる夫婦にとって運命論と結びつけやすい物語であり、エスターの思惑通り、ケイトたちは自分の境遇と重ね、彼女との絆を感じてしまうのだった。

コールマン家にきたエスターは、二人の子供ダニエルとマックスに出会う。長女のマックスは生まれつき難聴で、普段は手話で会話をするが、エスターは家にむかう間の車中で教わった手話を使いマックスに挨拶をする。そこで家族から好印象を受け、エスターがみんなの注目の的となったことに対して、長男ダニエルは不満をもっていた。ある時、エスターはピアノに興味を示し、もともとピアノ教師の仕事をしていたケイトはエスターにピアノを教える。その光景がまるで親子のようでケイトは幸せだった。しかし、翌日エスターはピアノを流暢に演奏していた。昨日はわざと下手な振りをしていたことに対してケイトが尋ねると「あなたが教えたがっていたから」と言う。このことがきっかけとなり、エスターはケイトと二人きりになると、挑発的な態度をとるのだった。

学校へ行く初日、エスターは古風なドレスを着ていた。このことをダニエルはからかい、ジョンとケイトも別の服を勧めた。しかし、エスターはドレスを着ていくことを主張し、クラスで馬鹿にされることとなる。

この頃、ケイトはジョンにエスターの自分に対する態度を相談していた。だが、ジョンの前では理想的な態度でいるため理解してもらえず諦める。そして、エスターの情報を知るため、エスターがいた孤児院にいるシスター・アビゲイルに連絡を取る。シスター・アビゲイルはエスターの周りで怪我や事故が多く起こっていることは知っていたが、孤児院に来る前のことはわからなかった。

本性を現していくエスター

エスターの奇妙な行動は徐々にエスカレートしていく。ダニエルが空き缶を空気銃で打って遊んでいるとき、鳩を見つけ試し打ちのつもりで当ててしまった。鳩は動けなくなりその場に倒れこんだ。そこへエスターとマックスがやってくる。事情を知ったエスターは苦しんでいる鳩を見て、ダニエルにとどめを刺すように言う。ダニエルがおびえてる中、彼女は顔色一つ変えずにとどめを刺した。そんな彼女をダニエルはさらに避けるようになる。一方マックスには鳩を殺したことを内緒にすることを命じ、共犯者として手伝わせるようになる。

ある日、様子を見に来たシスター・アビゲイルはジョンとケイトにエスターに関する情報を伝える。アビゲイルはケイトから連絡がきたあと、不信に思い自ら調査をしていた。そして、前にエスターが引き取られた家庭でも事件があった時には必ずエスターがおり、彼女が事件に深く関わっているのではないかと指摘した。このことを盗み聞きしていたエスターはアビゲイルの存在が目障りに思う。
そして、エスターは、「シスター・アビゲイルを脅して、もう二度と来ないようにする」とマックスに手話で告げた。アビゲイルの帰宅を狙い、二人は橋へと向かう。橋にアビゲイルの車が来たら、マックスは手を振って止めるように指示されていた。ところが、エスターはマックスを車の前へ突き飛ばし、それをみたアビゲイルは驚き、車がスリップして停車した。急いでアビゲイルがマックスの無事を確かめに来たところを、背後からハンマーで何度も殴り殺した。死体を隠すのをマックスに手伝わせたエスターはダニエルの秘密基地であるツリーハウスに凶器を隠し、「手伝ったあなたも刑務所行きよ」と脅した。
二人がツリーハウスからでたころ、ダニエルが二人を目撃する。ダニエルは咄嗟に隠れたが、エスターはダニエルの存在に気付いていた。その夜、エスターはダニエルの寝室へ行き、カッターナイフを首にあて、脅した。そして失禁したダニエルをみて高らかに笑った。

アビゲイルの遺体が発見され、警察からケイトに連絡がきた。事情聴取を受けるなかでケイトはエスターを疑っていた。エスターは病気だと考えたケイトは、ネットで「人を殺す子ども」と検索し、出てきた「情緒障害の子ども」という記事をジョンに見せた。だが、ジョンはいい子のふりをするエスターに気づかず、相手にしなかった。ケイトは納得がいかず、自ら孤児院に来る前のエスターの情報を調べるため、以前エスターがロシアに住んでいたと聞かされていたシスター・アビゲイルからの情報をもとにロシアの孤児院へ連絡を取る。しかし、記録は一切残っていなかった。

ケイトはダニエルとマックスにエスターが怖くないかと尋ねる。脅されていた二人は否定することしかできずにいた。ケイトが精神的に不安定な中、エスターが花をもってきた。
しかし、その花はケイトが死産した子供の遺骨を撒いたところに育てたケイトにとって大切な花だった。このことに、怒りがこみ上げたケイトはエスターの腕をひねりあげてしまう。
その後、エスターはジョンに左腕の痛みを訴える。すると左腕は腫れあがっており、すぐに救急病院へ連れていった。骨折と診断されたことに対してジョンがケイトを突き詰め、ケイトは骨折するほど強く握ってないと反論するが信じてもらえなかった。ジョンの信用を失い、ケイトは過去にアルコール依存症だったこともあり、悲しみのあまりワインを買いに出かける。家に戻り、ワインを飲もうとグラスを口に当てたが直前で思いとどまった。

ある朝、マックスを乗せダニエルとエスターを学校へ送るがダニエルが車内に忘れ物をしたのに気づく。ケイトは慌ててサイドブレーキを引いてダニエルに届けに行くが、それに気づいたエスターは運転席に乗り込みサイドブレーキを解除する。車内にマックスが残されたまま車は後退していき、そのまま雪山へと突っ込んでしまった。幸いにもマックスは無傷だったが、この出来事でさらにジョンの信用を失ってしまう。
そして、さらに悪いことに酒の空き瓶をジョンが見つけ、過去にアルコール依存症で飲酒運転をしたことから、また酒を飲んでマックスを危険な目に合わせたと口論になってしまった。これをみていたマックスはケイトに事実を話そうと考えるが、エスターはマックスに「言えばママを殺すわ」と囁いた。

エスターに不信感を抱きつづけいてるダニエルはひょんなことから、ツリーハウスに隠されていた凶器を見つけてしまう。それにいち早く気づいたエスターはダニエルもろともツリーハウスを燃やそうと木に火をつける。ダニエルは近くの木に飛び移ろうとするが転落し、そこへエスターがやってきてとどめを刺そうとするがマックスが止め、ダニエルは一命を取りとめたものの、すぐさま病院へ搬送された。
一家は病院へ行き、ダニエルの無事を祈っていた。病院に一緒にきていたエスターはジュースを買いに行くといい、みんなの元から離れた。しかし、向かった先はダニエルの処置室だった。そして、眠っているダニエルの吸入器を外し、警告音が鳴らないよう装置は自分の指に挟み、顔に枕を押し付けて窒息させた。エスターは心肺停止になったのを確認し吸入器を元に戻して何事もなかったかのように部屋を出て行く。心停止のアラームでようやく医師が気づき慌ててダニエルのもとへ駆けつける。ケイトはダニエルの心停止もエスターの仕業じゃないかと疑い、半狂乱になり平手打ちをした。しかし、ケイトの精神状態や元アルコール中毒患者であることが災いし、暴れるケイトに鎮静剤が打たれそのまま入院させられる。ダニエルは蘇生に成功し、一命をとりとめる。

ジョンはマックスとエスターを連れ帰宅した。ジョンも精神的に堪えてワインを一本空け、そのままソファで眠りについた。その夜、エスターは化粧をしケイトの露出が多い服を着てジョンに色仕掛けをした。それをジョンは拒んだがそのことでエスターは泣きわめき暴れまわるのだった。

エスターの正体

病室で目を覚ましたケイトのもとに一本の電話がかかってきた。電話の主はヴァラヴァという医師で、「エスターが話の聞こえる場所にいないか」と確認したうえで、エスターを一刻も早く家族から遠ざけるように言った。そして、エスターは下垂体性機能不全という珍しいホルモン異常の病気で実は33歳であること、男を誘惑するが失敗すれば殺害し、知る限りで最低7人は殺害しているという事実を告げられる。そして慌てて自宅へと車を走らせた。

その頃ジョンはエスターの部屋に行きブラックライトで映る壁の絵に気づき、絵には火事で苦しむ様子や、何気ない絵には男女が激しく絡み合う姿が描かれていた。この不可解な絵やエスターの行動に正気でないと感じたとき、ケイトから電話がかかってきた。しかし、ジョンが電話に出ようとしたとき停電がおこる。ジョンが地下室へ配線を見に行くとケーブルがエスターによって壊されていた。

ケイトはジョンに電話が繋がらず、警察に電話をしようやく家に着いた。しかしその頃にはもうジョンは殺されていた。ケイトはガラス張りの温室の中でマックスを見つけたケイトは天井から手話で「そこに隠れていて」と告げる。マックスに気づいたエスターはジョンの銃を使いマックスを撃とうとするが、その発砲でガラスは粉々となりケイトは天井から温室へ落下した。その時エスターはケイトの下敷きになり、その隙にケイトは銃を奪いマックスとともに外へ逃げる。ところがナイフを持ってエスターが追ってきて湖面でケイトとエスターはもみ合いになりケイトは銃を落としてしまう。マックスが銃を拾い発砲すると湖面の氷にひびが入り、ケイトとエスターは湖に落ちた。そしてさらに攻撃しようとしてくるエスターに肘鉄をしケイトは氷の上にでた。そしてケイトの足首につかまり「ママ」というエスターに「私はあんたのママじゃない!」と言って振り落とした。エスターは湖の底へ沈んでいった。

『エスター』の登場人物・キャラクター

ケイト・コールマン(演:ヴェラ・ファーミガ)

吹き替え:八十川真由野

三人目の子供を死産しその過去に苦しめられていた。その思いからエスターを養子として引き取る。
しかし、徐々にエスターへ不信感を抱き始め、彼女の情報を集めようとする。
エスターからもジョンとは違い、挑発的な態度をとられ、次第に情緒不安定になる。
元アルコール依存症のこともあり、一度はお酒の誘惑に負けそうになるが、子供のたちのことを考え何とか思いとどまる。
そして、エスターの素性を知ったケイトは家族を守るためにエスターに立ち向かう。

エスター(演:イザベル・ファーマン)

吹き替え:矢島晶子

ロシア出身の9歳の女の子。身寄りがいないため孤児院で暮らしていたが、コールマン夫妻に養子として引き取られる。
とても聡明で話し方も年の割にどこか落ち着いている。
音楽や絵を描くことが得意。首と両手首には常にリボンを巻き、それを外そうとすると大声で叫んだり、歯医者を嫌ったり、不思議な一面をもつ。

ジョン・コールマン(演: ピーター・サースガード)

吹き替え:佐久田修

ケイトの夫。3人目の子供を流産させてしまい悩んでいるケイトを心配し、養子を引き取ることを提案する。
ケイトにエスターの本性について聞かされるが、信じられずにいる。
そのこともあり、ケイトとの仲は次第に悪くなり、喧嘩も多くなっていく。

ダニエル・コールマン(演:ジミー・ベネット)

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