ジパング(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジパング』とは2000年よりかわぐちかいじが『モーニング』で連載していた漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。西暦200X年の6月、日本海上自衛隊の最新型イージス艦みらいはミッドウェー沖合にて落雷を受ける。それをきっかけに、彼等はイージス艦ごとミッドウェー海戦直前の1942年6月4日の太平洋上にタイムスリップした。オーバーテクノロジーを保有する形となった彼等は、戦前の人々や歴史の流れの中で葛藤し、各々の思想の違いによって対立していく。そして彼等の存在は、歴史を大きく変えて行くのであった。

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「これを放つのは…決して外れることのない神の弓である」

歴史を知る「みらい」はガダルカナル島の戦いを阻止すべく、草加を通して撤退を促させようとする。だが草加は大本営を動かさず、結果的にガダルカナル島の戦いが勃発してしまった。梅津率いる「みらい」は、事前に準備していた「サジタリウス作戦」を決行する。「みらい」から米軍の食糧へ的確にミサイルを撃ち込み、米軍の撤退を促そうとした。

作戦は途中までは成功し、米軍の食糧へ不発のミサイルを撃ち込む。そして米軍陣営へ、「これを放つのは…決して外れることのない神の弓である」という撤退を促す文書を打電する。この荘厳な文書により、米軍内部で混乱が起きた。結果的にこの作戦で米軍は撤退せず、作戦は失敗に終わる。だがこの時撃ち込んだミサイルはアメリカ軍に解析され、「みらい」の脅威を裏付けていく事となる。

草加拓海「艦から降りてもあなたにはこの舞台を降りないでいただきたい」

梅津が負傷により退艦し、角松が艦長代理を務める事となる。だが自衛隊の倫理規範である専守防衛を貫いた結果、部下が亡くなってしまう。更に「みらい」の活躍は誰からも評価されず、乗務員達は戦う理由が分からなくなった。そんな折に菊池が、草加に扇動されてクーデターを引き起こす。艦内は大勢の菊池派と少数の角松派に割れた。そして両陣営は衝突し、遂に流血沙汰となってしまう。角松はこれ以上の内乱を防ぐ為、自ら艦を降りた。

陸に上がった角松の前に草加が姿を現す。一触即発の空気の中、草加は角松にこう言う。「艦から降りてもあなたにはこの舞台を降りないでいただきたい」。草加は自分の作ろうとするジパングを、対立する角松に見せたがっていたのである。

単純な敵味方を超え、複雑な2人の関係を現す名言である。

角松洋介「俺がそいつをぶっ壊してやる!!」

「みらい」を降りた角松は早期講和を実現させるべく奔走する。だがその動きを特高警察に見つかり、不穏分子として部下の篠原と共に囚われてしまった。篠原は嬲り殺しにされ、水からも苛烈な拷問に苦しむ。

「みらい」から降り、部下を目の前で殺された角松は認識を改めた。それまでの彼は、この世界を自分の来た世界とは別の世界だと考えていた。それ故に大日本帝国を他国と考え、自衛隊の倫理にしがみついていたのである。だが現実はこの大日本帝国は自分の祖国であり、自分は当事者である事を認めたのだ。そして戦争を渇望し、平和を求める同じ日本人を嬲り殺す様な社会体制に対し、角松は強い憤りを抱く。「俺がそいつをぶっ壊してやる!!」。角松は己の祖国である大日本帝国を見限り、新しい未来を切り開く事を決意した。

「みらい」を追われた角松が、己の進むべき道を見出し、再び艦へ戻る事を決意した瞬間である。この後米内によって救われた彼は、「みらい」へ戻り再び戦いへ身を投じていく。

草加拓海「生き延びよ。そして…」

緊迫した駆け引きの末、大和は「みらい」の砲撃により撃沈する。草加は角松をゴムボートに乗せ、自身もボートに掴まった。だがボートは大和沈没による渦に巻き込まれそうになり、両者は絶体絶命の危機を迎える。

大和退艦の際、草加は頭をぶつけて致命傷を負っていた。死を悟った彼は、死闘を繰り広げてきた角松へ自身の理想であるジパング思想の全容を話し、全てを托す。更に無条件降伏をした戦後日本を知る角松に、生き延びてその経験を生かすように告げた。「生き延びよ。そして…」。角松は草加の最期の言葉を聞く。この直後、草加は自らの意思でボートから手を離し、大和と共に海中へ沈む。草加に命を救われた角松は、彼の理想を受け継いでジパングを作るべく行動していった。

「みらい」撃沈シーン

「みらい」は、原子爆弾を大和ごと撃沈し、多くのアメリカ艦隊の命を救った。だがアメリカ艦隊は「みらい」撃沈の功を求め、砲撃をしてしまう。その一発が「みらい」を上から貫き、海底で爆発。「みらい」の竜骨は折れ、一瞬にして沈没してしまった。これにより「みらい」の搭乗員達は海底へ沈んでしまう。

激戦を潜り抜けてきた「みらい」が沈没してしまう衝撃的なシーン。その最期はたった一発の砲弾で沈没するという呆気ないものであった。「みらい」はそもそも先制攻撃により、敵を一方的に撃破するという設計思想で作られたイージス艦である。その為、防御力は皆無であった。その攻撃特化型の艦を、自衛隊は制度上の縛りから専守防衛を優先して操船せざるを得ない。この矛盾が生んだのは、圧倒的な性能を誇る「みらい」の沈没という結果であった。自衛隊のシステムと、「みらい」開発を行なっているアメリカの根底思想の矛盾が生み出した、皮肉的な名シーンでもある。

角松が「みらい」を見送るシーン

「みらい」沈没から数十年後、この世界に新しく「みらい」が建造される。そして前の世界と同様、「みらい」の乗務員達も新しく生を受け、搭乗した。だが彼等は自衛隊としてではなく、国防軍として搭乗している。また唯一、彼等の中に角松の姿は無かった。

「みらい」はハワイ真珠湾へ向け、処女航海を行う。その門出は華やかであり、前の世界の「みらい」出航時とは対照的であった。歓声の中乗務員達は全員、「誰か1人足りない」と説明出来ない違和感を覚える。そんな晴々しい出航を、港で1人の老人が見送る。それは唯一生存し、年老いた角松であった。角松は新しい「みらい」とその乗務員達を見送り、物語は終わる。

『ジパング』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

史実の戦争

史実のミッドウェー海戦

ミッドウェー海戦の最中の写真

ミッドウェー海戦は実在する戦いである。ミッドウェー海戦は太平洋戦争における局地海戦で、1942年6月5日から6月7日にかけて中部太平洋ミッドウェー島周辺で行われた。日本海軍とアメリカ海軍による海戦で、日米戦の大きな転換点と言われている。

大日本帝国軍は、アメリカ軍基地となっていたハワイ諸島北西のミッドウェー諸島攻略計画を立案する。一方のアメリカはこの計画を傍受し、迎撃作戦を展開した。両者はミッドウェー沖で死闘を繰り広げ、両陣営に多大な犠牲を出す。結果的に兵力で劣る日本が敗北し、取り返しのつかない大打撃を受けた。この戦い以降、戦争の主導権はアメリカが握り、日本は敗戦まで苦闘する事となる。

史実のガダルカナル島の戦い

Hua18257
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