ジパング(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ジパング』とは2000年よりかわぐちかいじが『モーニング』で連載していた漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。西暦200X年の6月、日本海上自衛隊の最新型イージス艦みらいはミッドウェー沖合にて落雷を受ける。それをきっかけに、彼等はイージス艦ごとミッドウェー海戦直前の1942年6月4日の太平洋上にタイムスリップした。オーバーテクノロジーを保有する形となった彼等は、戦前の人々や歴史の流れの中で葛藤し、各々の思想の違いによって対立していく。そして彼等の存在は、歴史を大きく変えて行くのであった。

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長安丸

民間の輸送船として製造されたが、太平洋戦争に伴い、軍に徴用された。

1943年1月頃、トラック諸島夏島から出航する。これは史実より約1年早い為、歴史改変の影響を受けている。連合艦隊の支配するトラック諸島からパラオ、マリアナへの移動を目的としている。だが航海の途上、通商破壊を目的とした米ガトー級潜水艦の浮上攻撃を受けて大破し、沈没した。乗船していた多くの民間人と軍人に死傷者を出し、悲惨な事件となる。尚、この事件は軍機密により公表されていない。

ルイス・フロイス号

中立国であるポルトガルの工船だが、草加の息が掛かっている。南京の下関河港に停泊中、密かに倉田と吉村が原子爆弾を製造しようとした。製造に当たっては「みらい」から得たマンハッタン計画の情報を利用し、アメリカを凌駕するスピードで原子爆弾が作られる。だが、その途上で原子爆弾の製造を阻止すべく梅津が乗り込んだ。

当局の手の出せない中立国船であることを隠れ蓑としており、公に軍が手を出せない様になっている。

製造途中前みらい艦長・梅津は倉田を人質として船長室に立て篭もった。吉村からの通報を受けた原爆製造指揮者の支那派遣軍参謀長石原莞爾陸軍中将は「船内に抗日組織が立て篭もっている」という名目で埠頭に歩兵中隊を配置し突入の機会を窺う。これに対して上海陸戦隊特務機関員・如月海軍特務中尉は砲艦「伏見」により「船内に囚われた邦人を保護する」という名目で臨検を行うことで梅津と原爆の確保を図るが、奪取を阻止するために石原はルイス・フロイス号を自沈させる。最も重要なウランは無傷で回収されたが多くの部品や製造機材を失った結果、その後完成した原爆は航空機に搭載不可能なまでに大型化することとなった。渦中、梅津はウランの投棄を図る中で狙撃され落命に至った。

作戦

オペレーション「サジタリウス」

別名「射手座作戦」でガダルカナル島にて実施された。ウォッチタワー作戦で上陸した米海兵隊の第一海兵師団(司令官ヴァンデグリフト少将)を対象にしている。ウォッチタワー作戦はアメリカの作戦で、ガダルカナル島に飛行場を建設していた日本軍を襲撃する作戦であった。史実では作戦は成功し、アメリカ軍が飛行基地を占領する結果となっている。しかし後に日本軍は反攻作戦を決行し、多くの戦死者を出す発端となっていた。

作戦目的は、高精度の威嚇攻撃を行い、アメリカ第一海兵師団をガダルカナルから撤退させる事であった。これにより飛行場建設に当たっている大日本帝国海軍設営隊と米海兵隊の戦闘を回避し、人命を救助する事を画策している。

作戦には、この時代には存在しないハープーンミサイル(無弾頭のもの)を使用している。レーザーにより最終誘導を行い、補給物資である小麦粉を威嚇攻撃した。尚、イージス艦「みらい」が最初に歴史に介入することとなった軍事行動でもある。

ハープーンミサイル攻撃は成功し米海兵隊は混乱したが、引き下がらなかった。更に草加の手引きでガダルカナル沖に戦艦大和を中心とした連合艦隊が出撃し、射手座作戦は失敗に終わる。その後大和は艦砲射撃で第一海兵師団を攻撃したが「みらい」はスタンダードミサイルで大和の全砲弾を迎撃し、その圧倒的な能力を日本海軍に見せ付けた。結局、日本海軍設営隊2500名中、185名が撤退し、米海兵隊第一海兵師団はガダルカナル島を実質占領する。

「みらい」が使用したハープーンミサイルは米軍によって回収され、航空諮問委員会により解析が試みられた。だが、その結論の描写はされていない。

YZ作戦

日本海軍の立案したインド洋侵攻作戦。セイロン島イギリス軍基地を壊滅させる事が目的である。これにより制海権及び制空権の奪取、ベンガル湾方面からの援蒋ルートの壊滅、ボンベイでの日本軍からイギリス軍への示威攻撃による反英独立運動の煽動を意図していた。この作戦には菊池率いる「みらい」のも参加している。

だが軍上層部は戦力を分散した作戦を立案。これにより敵攻撃が不十分となり、敵の反撃を許してしまう。こうして英印度空軍による爆撃により、日本は軽空母龍驤を撃沈され、多数の航空機及び熟練パイロットを喪失した。また「みらい」もダメージを負っている。攻撃は完遂出来なかったものの、イギリスに一定のダメージと日本の脅威を印象付けた。これによりドイツとイタリアに精一杯なイギリスは、アメリカへ援助要請を実施。戦力再建途上のアメリカ太平洋艦隊をマリアナ方面に引き摺り出す成果を上げた。こうしてアメリカは不十分な状態で日本海軍とマリアナ海戦を戦う事となる。

組織

セクションS

圧倒的な戦力を持つ「みらい」に対抗すべく設立されたアメリカの特務機関。大富豪ハワード・ヒューズの目に留まり、彼の好奇心から莫大な出資金を得ている。「みらい」と交戦したガトー級潜水艦「ガードフィッシュ」、第一海兵師団空母「ワスプ」、戦艦「ノースカロライナ」の生存者達が配属され、「みらい」との因縁が深い。

「みらい」を倒す好機を伺い、ニューギニアでの日本軍撤退の際に暗躍。ダンピール海峡を越えようとする「みらい」を、一部の陸軍航空隊機により攻撃した。後1歩で「みらい」を撃沈させる所であったが、艦載垂直離着陸機「海鳥」の捨て身の防戦及びCIWSの迎撃により失敗に終わる。この戦いで主要メンバーを失い、面子も潰れてしまう。また、構成員の1人であるテイラーが角松と会い、「みらい」側にその存在が知られることになった。

その後作戦失敗の責任問題でセクションSは事実上凍結し休止状態となる。だが構成員は諦める事なく独断で暗躍を続けた。その甲斐もあり、「みらい」の情報はルーズベルト大統領に伝わる。だが、独断行動に対する責を問われ、これを帳消しにする引き換えとして、セクションSは大統領直属機関となった。その後、マリアナ海戦で暗躍し「大和」に搭載された原爆の回収、それを追う「みらい」の拿捕を大統領命令により試みる。だが、両艦の撃沈により失敗した。

国防軍

大日本帝国はアメリカと早期講和した事により、無条件降伏のポツダム宣言を受諾する事なく軍隊が存続した。こうして陸軍と海軍は近代化の波を受け縮小し改編される。階級は旧海軍と同じものを使用しているが、制服は海上自衛隊と同じものを使用している。

その他

キューザック

大戦末期に海中から飛来し、アメリカ政府と取引して戦争を終結させたとされる宇宙人。所謂オカルト話の一種である。1969年頃に米国で出版されたオカルト雑誌にて紹介された。キューザックは草加が変じたものと推測される。

『ジパング』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

角松が草加を助けるシーン

突然のタイムスリップに混乱する「みらい」乗務員達。その最中、目の前で戦闘機が海中に墜落する。だが歴史改変を恐れ、乗務員達は救助を躊躇った。そんな中真っ先に角松は海中へ飛び込み、溺れていた草加の命を救う。彼は人命を何よりも優先したのだ。角松の人柄がよく表されているシーンである。

この時助けた草加が、後にジパング創立の為、歴史改変へ乗り出していく。角松とは対立関係となり、皮肉にもこの時宿敵を救い出した事となる。2人の因縁が始まった象徴的なシーンである。

Hua18257
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@Hua18257

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