太陽の黙示録(かわぐちかいじ)のネタバレ解説・考察まとめ

『太陽の黙示録』とは2002年よりかわぐちかいじが『ビッグコミック』で連載していた漫画、およびそれを原作としたアニメ作品。西暦2002年の8月、マグニチュード8.8の大地震が日本を襲う。大地は東西に分裂し壊滅的な打撃を受けた日本は、やむなくアメリカと中国の南北分断統治を受け入れる。それから15年後、南北に分裂した日本は、それぞれの国の下で復興をしていた。だが、アメリカと中国の影響力が強く、かつての日本は失われてしまう。その中で日本人は様々な問題に苦悩しながらも、日本再興の為に力を尽くしていく。

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『太陽の黙示録』の概要

『太陽の黙示録』とは『ビッグコミック』にて連載された、かわぐちかいじの漫画である。2002年から2010年まで連載した。単行本は第一部「群雄編」全17巻、第二部「建国編」が全9巻。またWOWOW開局15周年記念番組の一つとして、原作第1〜4巻を描いた前後編アニメが2006年に放送された。また本作は2005年(平成17年)度の第51回小学館漫画賞一般向け部門、2006年(平成18年)度の第10回文化庁メディア芸術祭マンガ部門大賞を受賞している。

2002年8月10日、M8.8の大地震が日本を襲う。これを皮切りに、日本の主要都市付近で超巨大地震が連続して起こった。これにより東京を中心とした首都圏は水没し、日本の大地は東西に分裂する。自力での復興が困難となった日本は、やむを得ず米中の全面支援を受け入れる。これにより北は中国、南はアメリカが実質的な統治を行う事となった。それから15年後、日本は米中の思惑と対立により東西分裂状態となる。更に海外に一時的に避難していた日本人は放置され、差別と貧困に苦しんでいた。こうした状況下で、様々な登場人物が日本を復興させようと、時に手を取り合い、時に対立しながら、それぞれが独自に奮闘していく。

本作は古代中国の群雄物語『三国志』をベースにしており、複数人の英傑達が互いに凌ぎを削りながら、それぞれの国家を興していく物語となっている。また本作のテーマとして、現実で想定されている首都直下型大地震が描かれている。「実際に首都圏を直撃する大地震に見舞われたらどうなるのか?」という現実問題に対し、読者に起こり得る政治的問題や復興支援問題を投げ掛けてくる作品である。

『太陽の黙示録』のあらすじ・ストーリー

日本大震災発生

2002年8月10日午前10時20分、マグニチュード8.8の大地震が日本を襲った。首都は水没し、日本の大地は東西に裂かれてしまう。この事態に際し、中国とアメリカから支援の申し出が来る。日本の与党である民自党の幹事長を務める柳拓磨(りゅう たくま)は日本の主権が侵されることを懸念しながらも、復興を最優先に考えてこれを受け入れる決断を下す。こうして西日本(作中では南日本と呼称)はアメリカの統治下に入り、東日本(作中では北日本と呼称)は中国の統治下に入る事となった。日本は2つに分かれ、それぞれの大国の影響下で復興の道を歩んでいく。

避難民問題

震災から15年後、日本は未だアメリカと中国の影響力下で復興を行なっていた。また被災者は国内だけでは養えなかった為、一部は海外へ避難民として移住を余儀なくされてしまう。避難民の援助はその国の税金によって賄われた為、次第に各国で日本人に対する差別意識が芽生えてしまう。一方の日本人は、差別される境遇の中で愛国心が生まれ、一部では避難先の国へのテロを目論む過激派も生まれていた。こうした状況下で、遂に台湾の避難先にて日本人と台湾人の抗争が起きてしまう。死者が出る緊迫した状況下で、拓磨の孫であり本作の主人公の1人である柳舷一郎(りゅう げんいちろう)は日本人と台湾人の間に入り、事態を収める活躍をした。その後、舷一郎は日本の閉塞した状況を打開すべく、日本へと戻る決断をした。

独立を望む南日本

南日本はアメリカの支援と影響の下で復興を果たした。だがアメリカ式資本主義体制が導入されていた為、貧富の格差が浮き彫りになってしまう。こうした状況下で、宗方操(むなかた みさお)という青年が第2代行政長官に就任した。宗方はかつて町工場を経営していた父親の借金を肩代わりし、妹を守る為に必死に働いていた人物である。理不尽な世間を恨んでいたが、大震災により借金から解放され、官僚になるチャンスを掴んでいた。

宗方はアメリカの影響下から脱却し、新しい日本を作ろうと画策する。そして日本に眠っていた新たな地下資源であるM資源(メタンハイドレート)を武器に、アメリカと交渉していった。こうして南日本は新しい国家として、独立への道筋を開いていく。

動乱の北日本

北日本は中国の支援と影響の下で復興を果たしていた。拓磨は初代首相として北日本を治め、一応の均衡は保たれている。だが中国式共産主義体制が導入されており、国民は肉体に電子チップを埋め込まれて管理され、物資の流通も上層部の徹底した統制が行われてしまう。また支援物資が横流しにされて一部の権力者が私腹を肥やす汚職が蔓延し、民衆は貧しさに苦しんでいた。そうした中、血塗られた権力闘争を制し、拓磨の元腹心である董藤卓也(とうどう たくや)が第3代首相に就任する。董藤は中国残留孤児の血を引く野心家の男性である。董藤は、拓磨を裏切り、監禁して権力を奪った後に殺してしまう。そして自らを皇帝と名乗り、南日本を武力で無理矢理統合しようと目論んだ。

緊迫する日本

宗方率いる南日本と、董藤率いる北日本は、南日本の独立を契機に会談の場を持つ。目的は分裂した日本を再統一する事であったが、緊迫した会談は平行線のままで終わった。その後、宗方は董藤と2人きりで密談を行う。宗方は秘匿していたM資源の話を持ち出し、董藤へ日本再統一を働き掛ける。だが董藤はこの話を利用し、自身の野望の材料にしようと画策した。

董藤は宗方を人目の付かない場所へ誘い出し、そこへ北日本の自衛隊を動かし、ミサイルを撃ち込んでしまう。幸い、奇襲を想定していた為、宗方は生還を果たした。だが北日本の武力行使により、両者の関係は戦争寸前まで緊迫したものとなってしまう。

董藤の死と孫市の台頭

宗方は日本が内戦状態になる事を懸念し、直接的な軍事報復を避けた。その一方で宗方は、北日本自衛隊を指揮する勝呂奉一(すぐろ ぶいち)と接触をする。勝呂は、董藤の「分裂した自衛隊と日本の統一」に賛同し、彼と共に軍事クーデターに協力していた。宗方はその強い愛国心に目を付け、董藤が日本を武力で統一しようとしている事を話す。勝呂は日本統一を望んでいたものの、日本の内戦は望んでいなかった。この為、勝呂は董藤を殺害し、北日本は再び大混乱に陥る。

混迷する北日本であったが、北日本に多大な影響力を持つ孫市ホールディングスの御曹司である孫市権作(まごいち けんさく)の暗躍により再び統治される。孫市は理知的な青年だが、その正体は董藤派閥である七星会を打倒すべく活動していたテロ組織「海峡同盟」の首領であった。彼は中国の交易品を全て北日本を介して流通させる事により、中国の経済力を掌握しようと画策する。

孫市は民衆の支持の厚い舷一郎と手を組む。だが、中国の経済権掌握を優先して日本の主権や避難民受け入れに消極的な孫市に、舷一郎は反発した。最終的に両者は袂を分かち、舷一郎は政治犯として指名手配されてしまう。

第3の国

北日本を追われた舷一郎は、経済的に成功している韓国の避難民キャンプを訪れる。そこで避難民キャンプの聡明なリーダーである葛城亮(かつらぎ りょう)と出会う。舷一郎は、彼を仲間に引き入れ、日本復活の為の頭脳役を任せた。葛城は独自に開発した、火山灰に覆われた首都圏を耕作地として復活させるバクテリア「フェニックス」を用いて新しい第3の国グレイ・シティを興す計画を立てる。舷一郎達はこの計画に賛同し、海外避難民達を受け入れていく。途中、北日本や南日本の妨害があったものの、舷一郎達はグレイ・シティを作り上げていった。そして遂にグレイ・シティを国連に認めさせ事実上の第3の国の建国に成功する。この国のリーダーとなった舷一郎は非暴力、不服従を標榜し軍隊を持たずに農耕、牧畜、養殖漁業に専念した。その結果、グレイ・シティは豊かな農耕地として栄えていく。

動乱と再統一

グレイ・シティ建国から5年後、世界は冷害による食糧危機に見舞われる。南日本は、第一次産業を犠牲にして経済を優先していた為、食糧危機に見舞われた。更にアメリカとは反目していた為、食糧支援を得られずに困窮していく。この事態に宗方は舷一郎暗殺計画とグレイ・シティへの侵攻を決行する。結果的に暗殺計画は失敗に終わり、この動きを察知した北日本はグレイ・シティ防衛の名目で軍隊を動員した。その裏ではアメリカと中国が手を組んでおり、北日本を操ってグレイ・シティを分割統治しようと目論んでいた。また米中両国はこれにより南日本を食糧難にして暴動を起こし、南日本の崩壊も狙う。

窮地に立たされた南日本とグレイ・シティ。この両国のトップの舷一郎と宗方は手を組まざるを得ない状況に追い込まれた。だが信念の違いから、両者は歩み寄らない。その時、北日本国民達が立ち上がる。彼等は当局に逮捕されて殺される可能性も顧みず、日本の再統一の為に大規模なデモを起こした。この流れにより、舷一郎と宗方は手を組む事となる。また北日本も国連の前で民意を無視する事は出来ず、結果的に中国の傀儡政府は瓦解した。こうして日本は再統一され、新しい日本として歩み始めていく。

『太陽の黙示録』の登場人物・キャラクター

主人公

柳舷一郎(りゅう げんいちろう)

CV:松田洋治 / 少年時代:大久保祥太郎
本作メインストーリーの主人公。実直で誠実な人柄で、多くの人々を惹きつける才能を持つ。震災時は11歳で子供であった。日本政界の名門である柳家の跡取りであり、祖父は政権与党である民自党の柳拓磨である。生まれながらのカリスマ性をもっており、家族からはその将来を期待されていた。だが箱根の別荘へ遊びに行っている時に被災し、日本が壊滅する瞬間を目の当たりにする。それでも被災している他の人を助ける事に尽力し、リーダーの器を見せつけた。尚、両親はこの地震に巻き込まれて死亡し、肉親は祖父のみとなる。その後、日本海峡で遭難して記憶を失い、来日していた台湾人夫婦の養子として台湾へ渡った。そこで台湾人として大人になり、屋台を営みながら生計を立てて生活していく。

日本人難民と台湾人が険悪な雰囲気になった際、仲裁に入る。それがきっかけで日本人難民に協力し、台湾社会へのテロを目論む黒藤達強硬派日本人と対峙していった。その圧倒的なカリスマ性により、日本人難民は彼を慕って平和的なデモ行進を敢行する。また銃を持つ黒藤達強硬派テロ集団に臆する事なく説得を試み、機密情報の入手に成功した。こうした活躍により、舷一郎は台湾政府を動かして日本人難民への迫害を解消する事に成功する。そして事を成し遂げた彼は、仲間の張、羽田達と共に日本へと渡り、日本人難民を母国日本へ帰還させるべく行動していった。

南日本では宗方と対峙し、北日本では董藤と渡り合い、後任の孫市と緊迫した駆け引きを演じた。それは命懸けの道のりであり、この経験が彼を成長させていく。次第に舷一郎は、南北日本を統一し世界に散らばる日本人難民を全員帰国させようとしていった。だが舷一郎の志とは裏腹に、ライバル達は権謀術数で彼を追い落としていく。こうした挫折を味わった末に、舷一郎は自分の力で国を作る事を決意する。そして韓国に「伝説のリーダー」と呼ばれていた亮と出会い、彼を参謀に迎え入れた。その後、亮の提案により火山灰と地殻変動によって不毛の土地となった関東周辺地域に、南北日本に次ぐ新しい第3の国「グレイ・シティ」の建国を決定する。

舷一郎達は、亮がかつて開発した「フェニックス」という特殊なバクテリアを用いて火山灰に侵された土地と海を蘇らせていった。そして南北日本の妨害を乗り越えて、海外に散った日本人避難民を受け入れていく。こうしてグレイ・シティは建国され、自給自足の食糧豊富な新天地となった。舷一郎はグレイ・シティの元首として、人々を導いていく。その後、対立を乗り越えて彼は宗方と手を組む事を決断した。これにより南日本との統一が果たされ、これに呼応する形で北日本も瓦解し、日本は再統一をされる。

名前の由来は『三国志』の劉備である。

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