天使なんかじゃない(天ない)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『天使なんかじゃない』とは、1991年から1994年まで集英社『りぼん』にて連載された矢沢あいによる学園ラブストーリー漫画。単行本は全8巻、完全版は全4巻、文庫版が全6巻発行されている。高校生の冴島翠を中心とした生徒会役員の仲間たちの恋愛や葛藤を経験する様子が描かれた作品。作者・矢沢により登場人物たちの心情が丁寧に描かれ、恋愛や青春の切なさを感じさせる名セリフも多く、連載終了後も多くのファンに愛されている。

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生徒会の面々は、翠の18歳の誕生日に向けてサプライズパーティーを計画していた。晃に連れられ、いざ会場に入った翠は感動のあまり泣き出してしまう。それを晃にすかさず「やっぱり泣いたー」といじられながらも、感極まってしまった彼女の涙は止まることはなかった。ただの学校内組織というだけでなく、ひとりひとりが生徒会の仲間として強い絆を育んできたことがわかる名場面だ。

「みんな… みんな… みんな大好き!」

自身の卒業式で答辞を読むことになった翠。たくさんのことがあった三年間の高校生活を振り返り、感極まった翠はどうしてもそれを読むことができない。そんな彼女の様子を見て立ち上がった晃が檄を飛ばすと、翠は何とか、学校が大好きだったことや関わってくれた人への感謝の言葉を絞り出した。
そして、立ったまま自分を見守ってくれていた晃へ駆け寄っていき、心の中で「みんな… みんな… みんな大好き!」と、自身の高校生活を愛おしむのであった。ずっと彼女たちを見てきた読者も共に卒業するような気持ちで見守った、物語のクライマックスを飾った名場面。

須藤晃の名言・名セリフ/名シーン・名場面

「うるせえ!! いつまでもうれしがってんじゃねえよ あんな色気のねぇケツに!」

第一回生徒会役員選挙の時、須藤晃が騒がしい全校生徒に向かって一喝したシーン。
立会演説を終え、舞台裏に帰ろうとした冴島翠は、マイクコードに足を引っかけ、派手に転倒。おまけにパンツを全校生徒に見られ、下着が赤のチェックだとはやし立てられてしまう。
動揺して体育館から逃げ出そうとする翠だったが、体育館の出入り口は舞台の反対。
舞台裏のドアから飛び出せば、全校生徒のさらし者になってしまう絶体絶命の状況だ。
そんな翠に晃は「ゆっくり3数えたらドアを開けろ」と声をかける。
意味を理解できない翠だったが、晃の言われるまま3つ数え、勢いよくドアを開ける。
と同時に、耳をつんざくでかい声と「いつまでもうれしがってんじゃねえよ あんな色気のねぇケツに!」と、翠は聞き捨てならない暴言を聞くことになる。
怒っていいのか感謝していいのか図りかねる翠だったが、最後に晃が自身の名前を紹介したのを聞き、やっと名前を聞くことができたと嬉しい気持ちになった。
晃は翠の片思いの相手だったのだ。

「スドーザウルス」をめぐった第一期生徒会メンバーのやりとり

「スドーザウルス」というキャラクターのモデルにされ、笑いものになってしまった須藤晃が元凶の冴島翠に激怒するシーン。
第一期生徒会発足直後、会長の晃は初仕事として文化祭というビッグイベントを企画した。
翠はそのアイデア募集のために、得意な絵でポスターを描いてきたのだった。
それが、晃と怪獣を掛け合わせた「スドーザウルス」と、瀧川秀一とウルトラマンを掛け合わせた「タキガワマン」とが戦っているイラストだった。
そのポスターの周りにいた生徒たちは爆笑の渦。
怒った晃は翠を見つけるや怒鳴りつけ、翠が助けを求めた瀧川は思わず「シュワッチ☆」とノッてくれて、生徒会一同爆笑するのだった。

「いいかてめえら つまり 校長先生は こうおっしゃった 互いに協力し合い しのごの言わずにやるときゃやれよ!」

第一回聖祭の開幕を、会長の須藤晃が宣言したシーン。聖祭の開幕を控え、全校生徒は校庭に勢ぞろいしていた。満を持して聖学園校長の話が始まったが、生徒たちは早く学祭を楽しみたくて話の内容は右から左。
それどころか、私語を始める者、野次を飛ばす者まで現れる始末。
生徒が騒ぎ始めたことに少々機嫌を損ねる校長だったが、それを制したのは晃だった。
笑顔で懐から拳銃を取り出した晃に、校長は肝を冷やす。
晃の登場に生徒たちから歓声があがるが、それを怒鳴って黙らせた晃は、上記のセリフを発して生徒たちの興奮を加速させた。
「(ワシの言いたかったことと)ちょっとちがう…」と苦笑した校長の目の前で、晃は拳銃、もといスターターピストルを打ち鳴らし、堂々と聖祭の開幕となった。

「翠、おれコーヒー専門なんだ 覚えといて」

生徒会室で晃に冷たくされてしまった翠は、怒って飲み物を買いに行こうと部屋を出る。瀧川に諭された晃は飲み物を買っている翠の元へやってきて、後ろから自動販売機のボタンを押しながら「翠、おれコーヒー専門なんだ 覚えといて」と言う。
晃が初めて翠のことを名字ではなく名前で呼んだ、2人の恋愛のはじまりを感じさせる名場面である。

「さすが『エンジェル冴島』だよな」

晃と、彼がかつて恋心を抱いていた牧の関係に心を痛める翠。牧の恋人である将志が帰ってくるのを一緒に待ってあげたい、と考えていた晃は、「それが翠を苦しめるのであれば終わりにしよう」と別れの言葉を告げるのであった。いい加減な気持ちで一緒にいたわけじゃないと言う晃に翠は友達やろうね、と笑顔で伝え、晃は「さすが『エンジェル冴島』だよな」と笑うのであった。本心を飲み込んで笑顔を見せた翠と、それを知ってか知らずかこのセリフを告げる晃。美しくはあるが、とても残酷だった一場面である。

「おれがおれの手で幸せにしたいのはお前だけだ」

中学の頃から晃を支えてくれていた異母兄・将志と将志の彼女・博子。将志がいなくなっても気丈に振る舞っていた博子だが、晃は博子を大切に思うあまりに翠より博子を優先してしまうことがあった。そのことで翠をずっと不安にさせ続けたため、晃は一時は翠との別れを選ぶ。そして将志が戻り博子と無事結婚式を挙げた後、晃は翠に向かって「俺が俺の手で幸せにしたいのはお前だけだ」と言うのだった。

翠が泣いたことを知って、生徒会室に呼び出すシーン

晃に片思いをする翠は、彼のカバンに「HIROKO」という女性への誕生日プレゼントが入っていたことに動揺し、頭がいっぱいになる。その後の生徒総会はなんとか終わらせた翠だったが、調理実習では上の空で天ぷらの油をはねさせクラスメイトのカヨに軽い火傷を負わせてしまう。自分を責めた翠は、美術の写生中、担当教師の博子に「何かあった?今日は天気がいいのに、空が泣き出しそうな色」と声をかけられ、思わず泣き出してしまうのだった。
夕方、帰宅しようとした翠は、下駄箱で生徒会室に寄るように書かれた晃からのメモを見つけ急いで向かう。すると晃は「これ明日までにコピーとっとけ20枚」と雑用を命じる。「用事ってこれだけ?」と気抜けする翠に晃は「ところでなんで泣いたんだ?」と問う。翠が授業中に泣いたことは学校中の噂になっていたのだ。「朝から変だったし、無理したんだろ総会ん時は。なんだよ、言ってみろよ」と晃に言われ、コピーを口実に呼び出されたことに気づいた翠は、涙を隠しながら笑い「なんだっけな、もう忘れちゃった」と言う。そして「…そうかよ」と帰ろうとする晃に「ありがとう晃」と声をかける。翠は「HIROKO」がたとえ晃の彼女でも、自分は負けないくらい幸せで、この学校で手に入れたスペシャルな毎日がめそめそしていたらもったいないと前を向く。
晃の優しさと翠のポジティブさが表現された名場面である。

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