LILI-MEN(リリーメン)のネタバレ解説・考察まとめ

『LILI-MEN』とは2022年より連載が開始された、渡嘉敷拓馬によるダークファンタジー作品。人類を苗床に繁殖する「サキュバス」と呼ばれる種族と、彼らを根絶しようとする人類との壮絶な戦いを描く。彼らとのバトルに焦点を当てつつ、重厚なストーリーとダークな雰囲気が特徴。戦闘描写やキャラクターの成長を通じて、深い世界観が描かれている。

『LILI-MEN』の概要

『LILI-MEN』(リリーメン)とは2022年より週刊ヤングマガジンで連載が開始された、渡嘉敷拓馬によるダークファンタジー作品。人間を苗床として繁殖する異形の存在「サキュバス」と、それに立ち向かう人類との壮絶な戦いを描く。サキュバスの恐怖や彼らが引き起こす絶望を軸に、サキュバスに対抗する公安殖魔対策局と呼ばれる組織の活動が中心であり、主人公は、彼らとの戦いを通じて、自身の力や使命に目覚め、サキュバスとの最終的な決着を図ることになる。
敵であるサキュバスはただのモンスターではなく、複雑な社会構造や進化を持ち、異なる派閥や能力を持つ多様なキャラクターとして描かれている。サキュバスには男性型と女性型が存在し、それぞれが異なる役割を担いながらも、同じ目的のために動いている。また、サキュバスの能力を解析し、人間がそれを戦闘に利用する血戦術という特殊な戦闘方法が作中で登場し、作品にさらに深みを与えている。
ダークで重厚なストーリーに加え、CGを活用したキャラクターデザインやビジュアル表現が特徴で、特に解剖学的に正確なデザインが話題となっている。壮絶な戦闘描写とキャラクターの成長を軸にした物語は、ファンタジー作品の枠を超え、異色のダークヒーローバトルとして多くの読者に支持されている。

『LILI-MEN』のあらすじ・ストーリー

物語の始まり

人間社会を脅かす「殖魔(サキュバス)」と呼ばれる異形の存在との壮絶な戦いを描いている。物語の中心となるのは、公安殖魔対策局(通称マルサ)と呼ばれる組織。この組織は、殖魔から人類を守るために設立され、殖魔を根絶することを目的としている。
殖魔は、人間を「苗床」として卵を植え付け、繁殖する恐ろしい存在である。彼らは驚異的な再生能力を持ち、強大な力で人間を襲うが、人間側も彼らに対抗するための手段を持っている。それが、「血戦術」と呼ばれる特殊な戦闘技術である。この技術は、殖魔の力を解析し、人間が血液を使って武器に転用する方法で、対サキュバス戦において重要な役割を果たす。

収容施設

主人公のニトは、物心ついたころからとある収容施設に暮らしていたが、この施設は、実は殖魔が人間を苗床として選別するための機関だった。
ニトの友人たちはすべて苗床にされてしまい、真相に気づいてしまったニトは殖魔に襲われ、致命傷を負ってしまう。そこで施設の奥にあった繭の中に入ったことで力を取り込み、人間とも殖魔ともつかない存在へと変貌する。
命かながら生きたニトは施設に隠れていた謎の女性ヒイロの手を借りて、施設を脱出する。そして自分と友人たちの夢を少しずつ叶えていこうとする。

VS着付屋

収容施設から脱出したニトは、ヒイロに部屋に拘束されていたが脱走。
初めての外の世界に感動したも束の間、交通事故に遭ってしまう。しかし事故の状況から、周りの人に殖魔ではないかと疑いをかけられ、その場から逃げてしまう。
逃げた先で服飾デザイナーを夢見ていたある男と出会い、自分の服を直してもらい、自宅に連れて行ってくれた。
しかし、苗床を見た反応で男は殖魔ではないと判断し、ニトを抹殺することを決意。その直後ヒイロが駆け付け、出会った男は「着付屋」でここ一帯で一番凶暴な殖魔だと告げられる。
ヒイロとニトは着付屋と戦闘。二人で連携して勝利する。マルサが現場に到着後、着付屋はとどめを刺され、ニトは死刑になったと通達後、拘束。ニトは死刑を回避してもらう対価に、マルサに協力すると宣言した。

VS彫刻家

ある工場で人間を殖魔へ売り捌く犯罪組織がいるとの情報をもとに、ニトは拘束された状態で黒鉄班として同行していた。そこには人間を生きたままアート作品のように組み替えている能力を持つ「彫刻家」が鎮座していた。
黒鉄班は犯罪組織と戦闘を開始したが、ニトがアート作品に擬態していた敵に捕縛され、首輪型の爆弾が爆発し死んでしまう。
通常、殖魔は脳を破壊すると再生しないが、ニトは頭部が再生し始め、暴走を始めた。対峙した盃ウツハは終局まで使用したが、命を落としてしまう。
そのころヒイロは彫刻家と対峙。彫刻家はヒイロに「殖魔の王が産まれた」と告げ、「マルサを抜けてオレのもとに来い」と誘うが、断られ、マルサを皆殺しにすることを決意。
その時、暴走したニトが乱入し、戦闘。ニトの潜在能力に苦戦し、最後はヒイロの一撃により敗北。最終的にはヒイロに殺されたように見せかけて自害した。
直後にマルサが介入し、ニトは殺害され、捕獲された。

苗床団地での戦い

ニトはヒイロ・鳥ミチル・トッコー隊長の山田アイと共に団地一棟の住人がすべて失踪した事件を調査していた。調査すると、団地には住人と見られる妊婦がおり、年齢も言語も違っていた。このことから山田は、今回の事件は殖魔による犯行でこの団地は「苗床団地」と断定した。
その後ニト達はビッグダディと見られる敵と対峙する。彼は死体人形の筋肉を変形させる能力でニトとヒイロを捕縛したが、ヒイロが脱出に成功。ヒイロの「特血」にて瞬く間に彼を攻撃したが、とどめを刺す直前に力尽きてしまい、逆に追い詰められてしまう。万事休すのところで鳥が駆け付けたおかげで形勢逆転。倒したかに見えたが、敵が死体人形を吸収・肥大化。また敵の発言から敵がビッグダディではなく、ビッグダディの子供であると判明する。
肥大化した敵にニト達は成すすべなく倒され、ニトの心臓の動きを止められ死亡する。しかし鳥の機転と生きることへの執着を諦めなかったニトによって倒すことに成功する。
その直後、殖魔の軍団が現れ、倒した敵が「ジョクト」であることが判明する。殖魔の軍団は疲弊したニト達に襲い掛かるが、そこに山田が加勢し、殖魔の軍団を次々と倒していく。
その軍団で山田の破局ではびくともしない、肉の派閥の副将「ラセツ」が現れる。ラセツはニトの引き渡しを要求するが、山田はこれを拒否し、戦闘を開始する。
ラセツのダイアモンドのような頑強さと、不死身ともいえる戦いぶりで彼女を追い詰めるが、終局を2度発動した山田の猛攻に対して、ラセツはやられる前に山田を倒そうとするが耐えきれず、最後は骨となって死亡した。

殖魔の学園でのビッグダディ・チルドレンとの戦い

マルサ本局局長の阿光アマネは苗床団地での戦いでいた殖魔から得た情報を元に、肉の派閥の自治区へ潜入してビッグダディ・チルドレンの各個撃破を決行した。
自治区内の学園にて、春日と黒鉄はビッグダディ・チルドレンの次男でこの学園の校長であるウキョウと対峙。生徒の殖魔と戦闘するがこれを撃破。ウキョウは前もって自身の肉をあらかじめ他者に食わせ、他者に触れることなく「マッスルメモリー」を発動させ、肉体を意のままに操作し、学園の生徒たちを次々と武器の道具にしながら春日と黒鉄に応戦していく。
その途中で人間の学校に通っているビッグダディ・チルドレンの三男であるフキが春日と黒鉄に向けて攻撃を仕掛ける。春日は自身の破局で生成された血人形がフキを向いたことで「最優先はフキ」だと判断して、ウキョウの足止めを黒鉄に任せ、フキのもとへと向かう。ウキョウの足止めを任された黒鉄に春日は援軍として守山が駆け付けさせた。ウキョウは自分より劣っていると思っていたフキを優先したことに怒り、異形なものに変身する。
ウキョウの足止めを任せた春日はフキと対峙。自身の副隊長である如月がフキに殺されたことの怒りでフキを殺すことを決意する。
戦闘中に驚異的な成長をするフキに苦戦するも、死ぬ直前まで追い詰めるも能力が覚醒したフキに終局を使おうとしたその時、突如現れたビッグダディ・チルドレンの次女チフンの手によって、フキを逃がしてしまう。
そのころ、黒鉄と援軍に来た守山は変身したウキョウに苦戦し、校舎内のお化け屋敷に隠れるも見つかってしまう。状況打開の一手として、黒鉄の血を守山に輸血することで守山の破局を強化することを提案・実行した。ウキョウは自身の生徒を使って応戦するも、フキとの戦いで砕かれた春日の血人形を操作した黒鉄の一撃により身体を粉砕されて敗北。
最後は、自治区の殖魔と自身の肉体に仕込んでおいた自爆装置を作動させて死亡。その爆発に森山が巻き込まれてしまった。

マルサ本局でのビッグダディとビッグダディ・チルドレンとの戦い

マルサ本局内の食堂にて泡渕ミズキと遭遇。食事中に泡渕からかつて収容施設で一緒に生活していたムサシ達が生きていて、殖魔研究所に関係があるのではないかという情報を告げられる。ニトは泡渕の協力を得て、殖魔研究所に向かった。そこで謎のゴーレムのようなものと対峙する。
ゴーレムの驚異の防御力に苦戦するも、ゴーレムの鎧に穴を空け、中から汗だくの女性がいた。彼女がここで警備をしていた理由は、初任務で、殖魔との戦いで怯えて、戦いが終わるまでずっと鋼血人形の中に引きこもっていた。戦闘が終わり、あとから駆け付けた局員が彼女が殖魔を殲滅した張本人と勘違い。その功績で自分を持て囃してくれる周囲の評価を断り切れず、噂が独り歩きをしているうちに隊長になってしまった。現在の地位を保つために、この場所の警備を阿光アマネに申し出たのである。彼女はニトにこの場から去ってほしいと懇願した。
ニトとゴーレムが対峙している頃、食堂内で肉の派閥自治区内で爆破があったことが通達された。その時、天井からスライム状の何かが局員を飲み込み溶けてしまい、局内でマルサ本局が殖魔に侵攻されたとアナウンスされた。アナウンスされた後、ニトは彼女を置いてその場を去った。
マルサ本局正面にてマルサの防御を担当する血壁隊を容易く打ち破った者が堂々と闊歩していた。肉の派閥将軍、ビッグダディである。ビッグダディはビッグダディ・チルドレンの長男ハカと長女ホロウと共にいた。ビッグダディは打ち破ったマルサ局員達を泥団子のように丸めて、平然と投げた。その様に局員はまったく動けなかったが、猪名寺のおかげで回避する。
阿光アマネと猪名寺はビッグダディ達と対峙する。阿光と猪名寺はビッグダディとビッグダディ・チルドレンとを分離させるのに成功。その際、長男ハカは阿光の攻撃にやられてしまう。阿光はビッグダディ、猪名寺は長女ホロウと戦闘することになり、血壁隊の終局によってビッグダディの隔離が成功した。
その頃、ヒイロはニトを探しに奔走。途中で泡渕と遭遇し、ともに上を目指していた。鳥もかつての仲間の小町と共に上に向かっていた。ヒイロと泡渕は最上階についたが、殖魔どころか職員がいないこと疑問に思い、泡渕の特血で調査していない箇所を調査した。その結果、床下にスライムを生み出していた犯人が判明したが、その時床下から大量のスライムがフロアの窓の外まであふれ出した。その時鳥と小町が乗ろうとしたエレベーターからも大量のスライムがあふれ出し、外に出てしまう。鳥の破局のおかげで落ちなかったが、鳥は「屋上が気になると」言い、小町を置いて屋上に向かっていった。
スライムの波から生還したヒイロと泡渕だったが、スライムの波が襲い掛かろうとしていた。その時屋上に向かっていた鳥のおかげで窮地を脱した。その後、スライムを生み出した真犯人がビッグダディ・チルドレンの三女シュシュであることが判明。ヒイロが「紅王・血装束」を発動したことにより、シュシュは致命傷を負い、逃亡を図るが、ヒイロの攻撃によって発生した熱により蒸発して消滅した。
ヒイロ達がシュシュと戦闘していた頃、ニトはエレベーターに乗った。そのエレベーターに阿光の攻撃から復活したハカが乗り合わせた。ハカからスライムを生み出した者について語られ、自身の仲間にさせようと握手を求められるが、これはニトは拒否。その瞬間ハカは、エレベーターを止め戦闘を開始する。攻撃してもハカの驚異的な回復力に圧倒されるが、トッコー隊長の山田との特訓で得た破局で勝利した。
ビッグダディの隔離が成功後、猪名寺と長女ホロウの戦闘が始まった。ホロウは肉の派閥の強者が使用した武器や強者自身の肉体を使い、猪名寺を追い詰めていくが、猪名寺の破局によりホロウの脳は破壊された。しかし自身の過去に脳に植え付けた肉の派閥の歴史の中でも特に優れた達人であるオウリュウ体組織が目覚めたことで形勢が逆転。猪名寺に重傷を負わせることに成功したが、猪名寺が発動した終局には敵わず、オウリュウに覚醒して差し違えを狙うも、最後の最後でオウリュウになれきれなかったことが仇となり死亡する。
その頃、ビッグダディと阿光アマネは戦っていた。ビッグダディは自身の子の筋肉ですらも利用して、攻撃を行うも、阿光アマネの破局によりビッグダディの攻撃を軽々と避け、阿光の攻撃をくらう。ビッグダディは阿光の破局に対して超人的な速度の攻撃で対抗し、追い詰めるが、阿光の顔は自信に満ちた笑顔だった。

『LILI-MEN』の登場人物・キャラクター

主要人物

ニト

本作の主人公。ニトは幼少期から施設で育ってきた。周囲に比べて常人程度の身体能力しか持っていなかったことから、周囲からは落ちこぼれ扱いされていたが、見返りを求めない他者を思いやる心を持った青年であり、仲間にも恵まれていた。特に生命に対する尊厳は、殖魔と彼の苗床と化した人間との間に出来た子供の命を殺そうとした黒鉄に激高する程で、並々ならぬものがある。
施設から脱出後に着付屋との戦いを経て人間と殖魔について理解するも、殖魔として生まれ変わった自分が外の世界で普通に生きていくため、そして人間と殖魔が互いに歩み寄る世界を作るため、阿光アマネに直談判し、マルサの一人として殖魔と関わっていくことになる。なお、阿光からは殖魔としての強さだとカテゴリーAクラスだと言われている。

ヒイロ

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