ハレンチ学園(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハレンチ学園』とは、永井豪によるギャグ・学園漫画。『週刊少年ジャンプ』誌上にて1968年から1972年まで連載された。漫画を基にした実写テレビドラマ版・実写映画版・OVA版などがある。連載当時としては過激な性描写と破天荒なストーリーで人気と話題を博し、永井豪の初期の代表作品であるとともに草創期の『週刊少年ジャンプ』を支えた作品として知られた。日本一ハレンチな学校「聖ハレンチ学園」を舞台に、そこに集った常識外れの生徒たちと教師たちが巻き起こす騒動を描いたギャグ・学園・セクシー漫画である。

『ハレンチ学園』の概要

『ハレンチ学園』とは、永井豪によるギャグ・学園漫画。また、セクシー・エロの要素を多分に含んだ作品である。『週刊少年ジャンプ』誌上にて、1968年11号から1972年41号まで連載された。同作品のコミックスは、「ジャンプコミックス版」全13巻、「集英社漫画文庫版」全12巻、「講談社KCスペシャル版」全7巻、「徳間コミックス文庫版」全7巻、「劇画キングシリーズ版」全6巻、「50周年記念愛蔵版」全6巻など様々なバージョンが刊行されているが、電子書籍版で読むことはできない。『ハレンチ学園』の掲載誌だった『週刊少年ジャンプ』は週刊少年漫画誌の中でも後発で、創刊当時の1968年は『週刊少年マガジン』や『週刊少年サンデー』に発行部数で大きく水をあけられていた。そのような状況下で同誌は本宮ひろ志作『男一匹ガキ大将』や貝塚ひろし作『父の魂』、そして『ハレンチ学園』を看板作品にすることで懸命な追い上げを見せることになる。特に『ハレンチ学園』は永井豪の独特の絵柄による可愛らしい女性キャラクターと、連載当時としては過激なギャグ・性描写が満載だったことで大ヒットを記録し、実写テレビドラマ版や実写映画版、さらには連載終了後にOVA化されるなどのメディアミックスが展開された。熱狂的な人気を獲得した裏では、教師批判や性描写を良しとしない教育委員会やPTAなどから苦情が寄せられることも多く、地域によっては有害図書に指定せんとする動きも見られた。そのため、原作者永井豪自身も批判の矢面に立たされたことが、後年のインタビューや自伝的漫画『激マン!』などで語られている。永井豪はデビュー当時はギャグ漫画家として認知されていたが、『ハレンチ学園』の1エピソード『ハレンチ大戦争』辺りからストーリー漫画家としての開花を見せており、文字通り同作品がキャリア初期の代表作品となった。また、元々は「恥知らず・厚顔無恥」という意味だった「破廉恥(ハレンチ)」という単語に、「エッチ・スケベ」という新たな意味合いをもたらしたことでも、社会的影響の強い漫画であったことが窺える。なお、永井豪は2018年に『ハレンチ学園』を含む全作品にて、『第47回日本漫画家協会賞文部科学大臣賞』を受賞した。

異形でハレンチな教師たちが多数在籍する「聖ハレンチ学園」に入学した主人公の山岸八十八(やまぎしやそはち)が、相棒でガールフレンドの十兵衛(じゅうべえ)こと柳生みつ子(やぎゅうみつこ)やクラスメイトたちと共に破天荒な学園生活を送る物語が描かれたギャグ・学園漫画であり、男性教師と男子生徒たちが度を越したスケベであるためエッチな描写もふんだんに描かれた作品である。

『ハレンチ学園』のあらすじ・ストーリー

第1部

『ハレンチ学園』の主人公山岸八十八(やまぎしやそはち)は、日本一ハレンチな教師たちが集うことで知られる「聖ハレンチ学園(せんとハレンチがくえん)」の小学部に入学した。暴れん坊な性格の山岸は、あっという間にクラスの中でガキ大将的な地位に上り詰める。そのため、「ヒゲゴジラ」こと吉永さゆり(よしながさゆり)をはじめとする教師陣から目をつけられるようになるが、喧嘩の強さで返り討ちにしていた。山岸のクラスメイトには、柳生みつ子(やぎゅうみつこ)という可愛い女の子がいる。みつ子の正体は忍者一族の末裔で、幼くして柳生流免許皆伝であることから彼女は「十兵衛(じゅうべえ)」と呼ばれるようになる。十兵衛のことが好きになった山岸は、子分の「イキドマリ」こと袋小路(ふくろこうじ)や十兵衛の友達「アユちゃん」こと鮎原あゆ子(あゆはらあゆこ)の4人でいることが多くなった。一方、ヒゲゴジラや「丸ゴシ先生(まるゴシせんせい)」こと荒木又五郎(あらきまたごろう)をはじめとするハレンチ学園教師陣は、常にいかにして女子生徒にエッチなことをするために行動しており、十兵衛やアユちゃんたちが何度も危難に陥る。そこへ、自分自身もスケベだけれども曲がったことが大嫌いな山岸が立ち向かっていくことで、学園内では常に騒動が巻き起こることとなった。

ハレンチ大戦争

山岸と十兵衛たちはあっという間に小学校高学年となり、泥棒をしながら行う修学旅行や真冬に開催された賞金100万円争奪の運動会など、およそ他の学校では見られない学校行事を乗り越えて、自由な学園生活を謳歌していた。ヒゲゴジラたち教師陣もまた、ハレンチな問題行動ばかり起こして山岸と十兵衛に倒されながらも楽しんでいる様子だった。しかしながら、そのようなハレンチ学園の乱れた状況が外部に知られると、たちまち問題視されることになる。ハレンチ学園の日常風景の動画を観た大日本教育センター所長(だいにほんきょういくセンターしょちょう)は、ハレンチ学園に対して戦車や爆撃機を率いて武力行使に及んだ。これに対して普段は対立している学園の生徒と教師陣も一時的に手を結び、徹底抗戦の構えを見せる。ここに「ハレンチ大戦争」の火蓋が切られた。死神重工社長(しにがみじゅうこうしゃちょう)から武器を与えられて一時は優勢になったハレンチ学園勢だったが、教育センター側の圧倒的な戦力の前に次第に疲弊していき、多くの生徒と先生が戦死していく。そして、イキドマリとアユちゃんが悲惨な最期を迎えたことに激高した山岸と十兵衛は、ありったけの武器を携えて前線に特攻していった。「ハレンチ大戦争」が終結して多くの屍が転がっている戦場を、深手を負ったヒゲゴジラが生き延びようとして去っていくところで『ハレンチ学園』の第1部は終わるのだった。

第2部

「ハレンチ大戦争」から3年後、山岸八十八は激闘をくぐり抜けて生きていた。しかし、相棒であり想い人でもある十兵衛は未だ生死不明であり、山岸はふさぎ込む日々を送っていた。それでも妹の山岸ユリ(やまぎしユリ)の励ましなどもあって立ち直った彼は、兄妹で「聖ハレヤカ学園(せんとハレヤカがくえん)」に入学する。山岸はそこでなんと15歳にして大学を卒業して教師になった十兵衛と再会を果たした。しかし、十兵衛は「ハレンチ大戦争」の影響で、「この世からハレンチなことを撲滅する」という熱血思想の女性に変貌していたのだ。また、「ハレンチ大戦争」を生き延びたヒゲゴジラが、ハレヤカ学園を乗っ取ろうとして校内に乱入して学園の看板にウンコをなすりつけるなどの暴挙を働く。十兵衛はヒゲゴジラがハレヤカ学園内を荒らした罪を着せられて学園を追い出されてしまい、新たに「聖ハレンチ女学園」に教師として赴任した。山岸とユリも十兵衛との関係性を復活させるために彼女に続いてハレンチ女学園に入学するも、そこはハレンチ学園に負けず劣らずの問題教師たちが跋扈する学校だった。山岸は持ち前の喧嘩強さと根性で学園生活を乗り切り、第2部最終回で十兵衛にプロポーズした。十兵衛も熱血女性から第1部のような少女に戻って、『ハレンチ学園』の第2部は終了した。

第3部

『ハレンチ学園』の第2部ラストで山岸八十八は、十兵衛(柳生みつ子)にプロポーズした。十兵衛が受け入れたことで2人は夫婦となる。しかしながら、まだ中学生の山岸と十兵衛の結婚生活は子供っぽいもので、しかも山岸はスケベだけれども奥手なのでなかなか進展しなかった。そんな中、山岸はハレンチ学園中学部に入学を果たす。中学部には「ハレンチ大戦争」で死亡した小学部の教師マカロニ・キッドの恋人スパゲッティ・ジェーンや宮本美蔵(みやもとみさし)などの教師陣がいて、山岸は三度騒動を巻き起こすこととなる。『ハレンチ学園』の第3部は、ヒゲゴジラと「ハレンチ大戦争」を生き抜いたにも拘らず監禁事件を起こした丸ゴシ先生の過去から現在に至るまでの様子が描かれて完結したのだった。

『ハレンチ学園』の登場人物・キャラクター

レギュラーキャラクター

山岸八十八/親分(やまぎしやそはち/おやぶん/演:小林文彦〈テレビドラマ版〉、雷門ケン坊〈映画版第1作〉、小宅まさひろ〈映画版第2作〉、千葉裕〈映画版第3~4作〉)

『ハレンチ学園』の主人公。第1部から第3部全てに登場している。第1話時点で小学1年生、その後小学5年生と小学6年生までが第1部で描かれた後、第2部と第3部では15歳の中学3年生になっていた。肉屋に生まれており、両親からは徹底して暴力的に育てられている。その影響で、ガキ大将の気質を有していて喧嘩にはめっぽう強い。また、「モーレツごっこ(スカートめくり)」や身体検査のぞきをするなど度を越してスケベな性格である一方で奥手でもあり、想い人の柳生みつ子(やぎゅうみつこ)がハレンチ学園の教師に襲われそうになると身を挺して庇っていた。暴力的ではあるが弱い者いじめが大嫌いで真っ直ぐな性格の持ち主でもあり、袋小路(ふくろこうじ)や思井(おもい)などの子分にも優しさを見せて接している。そのため、「親分」と呼ばれて慕われている。

柳生みつ子/十兵衛(やぎゅうみつこ/じゅうべえ/演:児島美ゆき〈テレビドラマ版、映画版第1~3作〉、渡辺やよい〈映画版第4作〉)

『ハレンチ学園』の全編通してのメインヒロインで、もう1人の主人公ともいえるキャラクター。年齢は山岸八十八と同じであり、ハレンチ学園小学部ではクラスメイトだった。黒髪ロングヘアが印象的で普段はおしとやかな美少女だが家族は柳生一族の末裔であり、柳生流の免許皆伝。剣を使わせれば山岸よりも強く、「十兵衛(じゅうべえ)」というあだ名を付けられる。柳生家は徳川幕府の再興を名目に泥棒行為をしており、十兵衛も手を染めていた。第1部では山岸やハレンチ学園教師陣のエッチぶりに手を焼きながらも、山岸とは力を合わせて立ち向かっていた。「ハレンチ大戦争」で親友の鮎原あゆ子(あゆはらあゆこ)を亡くしたことで心境に変化が起き、第2部では15歳ながらも飛び級で大学を卒業して教師となり、ハレンチ行為の撲滅に邁進する。第3部では山岸と結婚しており、彼を助ける立場となった。

吉永さゆり/ヒゲゴジラ(よしながさゆり/演:大辻伺郎〈テレビドラマ版〉、藤村俊二〈映画版第1作〉、高松しげお〈映画版第2、4作〉、牧伸二〈映画版第3作〉)

CV:富山敬

『ハレンチ学園』の教師陣の中では唯一全ての部に登場したキャラクターであり、ある意味山岸や十兵衛以上に同作品を代表するキャラクターといえる。モジャモジャのヘアスタイルに泥棒ヒゲ、素肌に原始人のような虎柄の衣装を纏っている。常にオネエ言葉を話すのが大きな特徴。「ゴジラ一族」と呼ばれる家系の出で、家族や親戚もヒゲゴジラと似た風貌や衣装を着ている。第1部時点で妻がおり、愛人がいることも判明した。棍棒を持ち歩いていて、生徒を脅したり叩いたりしている。教師になった理由は、「子供の頃に女の子にいじめられた恨みを晴らすため」というもの。そのため性格は極めて悪く、自分が良ければ他人がどうなっても構わないという自分勝手な思想の持ち主。金にも執着しており、山岸たち生徒の影響で給料を下げられると校内で闇カジノを運営するなど非合法な手段で金儲けをしていた。「ハレンチ大戦争」では重傷を負ったものの生き残り、いくつかの学校を転々としながらも教職に在った。しかし、最後には結局山岸や十兵衛に倒されてしまうので、最後まで彼らに勝つことはできなかった。なお、ヒゲゴジラは永井豪作品『ちびっこ怪獣ヤダモン』にて初登場しており、『ハレンチ学園』にはスピンオフの形で出演した。

炎天家冷奴(えんてんかひややっこ)

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