バイオレンスジャック(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

『バイオレンスジャック』とは、永井豪とダイナミックプロによるポスト・アポカリプス漫画。『週刊少年マガジン』にて1973年から1974年まで、『月刊少年マガジン』にて1977年から1978年まで、『週刊漫画ゴラク』にて1983年から1990年まで連載された。約17年間に渡る連載期間は永井豪作品最長であり、多くの永井キャラクターが共演したことでも知られる。巨大地震で分断された無法地帯関東で逞しく生きる少年たちと、彼らを見守る謎の存在バイオレンスジャックとその敵スラムキングとの戦いを描いた作品である。

『バイオレンスジャック』の概要

『バイオレンスジャック』とは、永井豪とダイナミックプロによるポスト・アポカリプス漫画。バトルやSFの要素も多分に含まれている。同作品は『週刊少年マガジン』1973年7月22日号から1974年9月30日号まで連載された後、『月刊少年マガジン』1977年1月号から1978年12月号まで、そして『週刊漫画ゴラク』1983年8月5日号から1990年3月23日号まで連載され完結した。足かけ17年に及ぶ連載期間は、永井豪作品内最長である。『バイオレンスジャック』のコミックスは、「週刊少年マガジン版」と「月刊少年マガジン版」を併せたものが「講談社コミックス版」全7巻、「KCスペシャルワイド版」全6巻、「講談社コミックス豪華愛蔵版」全7巻、「KCデラックス連載再現版」全5巻が刊行され、「週刊漫画ゴラク版」は「GORAKU COMICS/NICHIBUN COMICS版」全31巻が発売された。「マガジン版」と「ゴラク版」を1つの物語としてまとめて再構築した「完全版」もあり、そちらは中央公論社より「ワイド版」全10巻と「文庫版」全18巻が刊行された。「完全版」を電子書籍で読むことができる。未曾有の大地震で壊滅した関東を舞台にして、その地で生き残った少年たちを中心とした人々の生活と、謎の存在バイオレンスジャックと関東を牛耳らんとするスラムキングとの抗争を軸に描いたポスト・アポカリプス作品として高い評価を受けていると同時に、『マジンガーZ』や『キューティーハニー』など多くの永井豪作品キャラクターが共演することでも知られている。また、主人公バイオレンスジャックのキャラクターも序盤は無慈悲そうに見えて実は弱い者の味方という存在であったが、連載が進むにつれてヒーロー然としたキャラクターに変貌していった。さらに、「マガジン版」がポスト・アポカリプスやサバイバルバトル中心の作風だったのに対して、「ゴラク版」は青年誌だったこともありグロテスク描写と過激な性描写が顕著である。『バイオレンスジャック』はOVA化されており、永井豪自身による本編のパラレルワールド漫画『戦国魔人伝』と『新バイオレンスジャック』が描かれた。

なお、この後の「あらすじ・ストーリー」については、「完全版」に基づいて取り上げていく。

巨大地震によって壊滅的な被害を受けた関東は、地殻変動を起こして他の地域と断絶されてしまった。その結果、関東は無法地帯となり暴力が全てを支配する世界となり果てている。そのような環境下で、逞馬竜(たくまりゅう)をはじめとする少年たちはグループを組んで何とかその日を生き延びていた。そこへ、「バイオレンスジャック」と名乗る大男が現れ、関東を支配せんとするスラムキングと対峙するとともに、関東の底辺でもがく逞馬竜たちを陽の当たる舞台へと導いていくのであった。

『バイオレンスジャック』のあらすじ・ストーリー

「東京滅亡・関東スラム街」編

19××年(連載当初は197×年)9月1日13時30分、関東地方はマグニチュード8.9の巨大地震に見舞われた。この「関東地獄地震」によって関東地方は壊滅した。さらに、地震による地殻変動で関東南部は日本列島から分断され孤立化し、国は遷都を余儀なくされる。無法地帯関東では暴力が何よりの支配力とステータスを生み出していた。以前は気の弱い小学生だった逞馬竜(たくまりゅう)は、孤児となりグループを率いてその日暮らしをしている。ある日、逞馬たちが食料を大人たちに奪われそうになった時、突然身長2メートルを超す巨人が現れ少年たちに加勢した。「バイオレンスジャック」と名乗る男に親近感を持つ逞馬だったが、ジャックは彼をスラムキングの経営する店へ連れて行き大暴れした。スラムキングは関東を恐怖と暴力で支配する存在であり、彼に歯向かう者には死が待っている。逞馬は、これから起こるであろう惨劇に恐怖した。

「地獄の風(ヘルスウインド)」編

「関東地獄地震」発生の半年前、は恋人の鉄也(てつや)を暴走族「地獄の風(ヘルスウインド)」に殺害された炎ジュン(ほのおジュン)は、地震から1年後に彼らへ復讐しようとするも逆に囚われの身となってしまう。また、地震を生き延びた少年天馬三郎(てんまさぶろう)の恩師である立花恵子(たちばなけいこ)も「地獄の風」に攫われており、そこにバイオレンスジャックが忽然と姿を現し、2人の救出へと向かう。

「激闘!門土」編

学生ゲリラの早乙女門土(さおとめもんど)と身堂竜馬(みどうたつま)は、逮捕されて死刑囚となった。刑務所内で「関東地獄地震」を知った2人は、関東こそ自分たちが生きていける最高の土地だと考え、脱走して関東へと向かう。しかし、バイオレンスジャックが「関東地獄地震」の光景を2人に見せつけ、「関東で生きる資格なし」の烙印を押した。追い出された門土と竜馬は、それでも進入することを止めず関東に足を踏み入れることに成功する。

「ドラゴンの砦」編

村野誠と咲子夫婦は、関東から脱出するために咲子がストリッパーと売春でその費用を貯めていた。ある日、2人のもとにバイオレンスジャックが少女を伴って訪れてきた。少女は襲われていたところをジャックに助けられており、「彼女に着るものを貸してやってほしい」とジャックは村の夫婦に頼んだ。少女がスラムキングの対抗勢力朱紗一族(すさいちぞく)の娘朱紗真弓(すさまゆみ)だと知った夫妻は、脱出費用を稼ぐために彼女をスラムキングに売ろうとする。

「黄金都市(エルドラド)」編

早乙女門土と身堂竜馬は、かつて池袋だった薄汚い街へと辿り着いた。銀行跡には大量の金塊が眠っており、現在は「黄金都市(エルドラド)」と呼ばれている。そこには、地震後も狂った状態で金塊を守り続ける自衛隊と、金塊を狙うヤクザ組織、そしてスラムキングたちの部下たちが三竦みの睨み合いを続けていた。門土と竜馬は、錦織つばさ(にしきおりつばさ)率いる「関東羅刹組(かんとうらせつぐみ)」と手を組んで金塊奪取へと動き出す。一方、バイオレンスジャックは金塊を様々な騒動の火種になりかねないと危険視していた。

「関東地獄街」編

「関東地獄地震」で八重洲地下街に閉じ込められてしまった人々は、その場で何とか生き延びていた。しかし、極限状態が人々を狂わせてしまい、全員が力を合わせることは不可能だった。そのため、一般男性たちが陣を取るA地区、ならず者たちが占拠するB地区、アイラ武藤(あいらむとう)中心の女性だけのグループがC地区で暮らしている。ある日、地下から脱出するべく壁を掘っていたA地区のメンバーたちがバイオレンスジャックと出くわした。

「疾風ドラゴン」編

スラムキングの配下の軍隊として絶大な強さを誇る「ドラゴン二天疾風隊」は、とある街を演習目的で襲撃しようとしていた。そこへバイオレンスジャックが通りかかり、ドラゴンと激闘を繰り広げる。ドラゴンをジャックに倒されたスラムキングは、遂に自らがジャックを倒すことを決意して彼の前に現れた。

「関東鬼相撲」編

震災孤児の海堂猛志(かいどうたけし)は、他の孤児たちのリーダー的な存在だった。しかし、海堂たちは鬼川部屋の元関取たちに奴隷のように扱われている。鬼畜と化した元関取たちは、海堂の仲間の少年を惨殺した。怒りが頂点に達した海堂は、遂に元関取たちに反抗する。そして、自らの命をバイオレンスジャックに差し出そうとする。

「死神警察」編

「関東死神警察」が支配する土地を訪れた早乙女門土と身堂竜馬は、冤罪で死神警察に捕まった。一方で、女性の姿をしたバイオレンスジャックが現れ、住民たちに決起を煽る。ほどなくして、この土地をドラゴンが襲撃して死神警察との戦いが始まった。戦いが膠着状態に達した時、住民たちが本格的に決起する。

「野獣王」編

「関東地獄地震」以後の関東では、ジャングルを彷彿させる「緑の魔境」が出現していた。そこへ、響真吾(ひびきしんご)という中性的な容姿の少年が彷徨ってきた。「緑の魔境」には、地下街を脱出したアイラ武藤が「アイラ・ムー」を名乗り、「ムーの国」を創って平和に暮らしていた。真吾もアイラに住人として認められる。ところが、同地には悪人化した動物園の飼育係たちがいて「ムーの国」を脅かさんとしていたのだ。

「ハイパーグラップル」編

az1680
az1680
@az1680

Related Articles関連記事

ゲッターロボ アーク(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

ゲッターロボ アーク(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『ゲッターロボ アーク』とは、石川賢が手がけたSF巨大ロボットバトル漫画であり『ゲッターロボ』シリーズの叙事『ゲッターロボ・サーガ』最終作。 正義のロボットだったはずのゲッターロボが、未来ではゲッターエンペラーとして宇宙を侵略する悪魔のようになってしまう予知があった。 なぜ、そのような未来が創られたのか。初代ゲッターパイロット流竜馬の子、流拓馬が現代での最新ゲッター「アーク」を駆って、その謎を解き明かす予定だったが、作者急逝により謎のまま未完となった。 2021年夏アニメ化。

Read Article

キューティーハニー(CUTIE HONEY)のネタバレ解説・考察まとめ

キューティーハニー(CUTIE HONEY)のネタバレ解説・考察まとめ

『キューティーハニー』は、漫画、テレビアニメ、オリジナルビデオアニメ、数回にわたる実写映画など、様々な媒体で製作されている、永井豪の代表作の一つである。セクシーシーンと臨場感あふれるアクションシーンが満載の、キューティーハニーと悪の組織・パンサークローとの戦いは、少年少女のみならず、幅広いファンを獲得した。

Read Article

プロレスの星 アステカイザー(円谷プロ)のネタバレ解説・考察まとめ

プロレスの星 アステカイザー(円谷プロ)のネタバレ解説・考察まとめ

『プロレスの星 アステカイザー』とは、1976年(昭和51年)10月から1977年(昭和52年)3月まで全26話が放送されていた永井豪・石川賢原作、円谷プロダクション制作による特撮ドラマである。プロレスを含む全格闘技界を征服しようとする格闘軍団ブラック・ミストと戦うアステカイザーの活躍を描いている。戦闘シーンでは、実写からからセル画のアニメーションに代わる通称「ドラマメーション」が用いられていた。実写では表現が難しい戦闘シーンが表現可能となり、特撮番組の新たな世界が展開されていた。

Read Article

デビルマン(漫画版DEVILMAN)のネタバレ解説・考察まとめ

デビルマン(漫画版DEVILMAN)のネタバレ解説・考察まとめ

『デビルマン』(漫画版DEVILMAN)とは、永井豪が『週刊少年マガジン』に連載した漫画である。デーモンとの戦いを通して人間の弱さや邪悪さが露呈し、その過程で本当に守るべきものは何か、本物の悪魔とは何かを問う作品となっている。おとなしい高校生の不動明は友人飛鳥了の提案により、200万年の眠りから目覚めたデーモン軍団から人間を守るためにデビルマンとなり戦うことを決断する。デビルマンとなった明はデーモンから人間を守りたいと戦うが、追い詰められた人間が見せる剥き出しの残虐さに絶望していく。

Read Article

ハレンチ学園(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

ハレンチ学園(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハレンチ学園』とは、永井豪によるギャグ・学園漫画。『週刊少年ジャンプ』誌上にて1968年から1972年まで連載された。漫画を基にした実写テレビドラマ版・実写映画版・OVA版などがある。連載当時としては過激な性描写と破天荒なストーリーで人気と話題を博し、永井豪の初期の代表作品であるとともに草創期の『週刊少年ジャンプ』を支えた作品として知られた。日本一ハレンチな学校「聖ハレンチ学園」を舞台に、そこに集った常識外れの生徒たちと教師たちが巻き起こす騒動を描いたギャグ・学園・セクシー漫画である。

Read Article

鋼鉄神ジーグ(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

鋼鉄神ジーグ(アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『鋼鉄神ジーグ』(こうてつしんジーグ)とは、2007年に放送されたロボットアニメ。1975年に放送された『鋼鉄ジーグ』の続編ではあるが、設定や世界観は手を加えられている。前作の原作を担当した永井豪らしいお色気シーン、往年のロボットアニメに見られた熱血的な演出や特訓シーンなど、古き良き作品の魅力をブラッシュアップした演出が好評を博した。 初代鋼鉄ジーグと邪魔大王国の決戦から50年。結界に覆われたままの九州から出現した新たな敵を倒すため、高校生の草薙剣児は鋼鉄神ジーグの操縦者となって戦い始める。

Read Article

マジンガーZ(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

マジンガーZ(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

『マジンガーZ』とは、永井豪とダイナミックプロ原作の漫画やテレビアニメなどのメディアミックス作品。漫画版は1972年から1974年まで『週刊少年ジャンプ』及び『テレビマガジン』にて連載され、アニメ版は1972年から1974年まで放映された。続編に『グレートマジンガー』と『UFOロボ グレンダイザー』がある。主人公が人型巨大ロボットを操縦して敵と戦うスーパーロボットものの代表的作品であり、多くのフォロワーを生み出した。主人公が、スーパーロボットに乗り込み悪の科学者と戦う様を描く。

Read Article

グレンダイザーU(Grendizer U)のネタバレ解説・考察まとめ

グレンダイザーU(Grendizer U)のネタバレ解説・考察まとめ

『グレンダイザーU』とは、世界的に高い人気を誇るロボットアニメ『UFOロボ グレンダイザー』のリブート作品。総監督に福田己津央、キャラクターデザインに貞本義行、脚本に大河内一楼、音楽に田中公平と豪華絢爛なスタッフで話題となった。キャッチコピーは「宙と大地よ、思い出せというのか?」。2024年放送予定。 故郷フリード星を滅ぼされ、地球へと逃げ延びたデューク・フリード。その地球に仇敵たるベガ星連合軍が迫っていることを知ったデュークは、フリード星の守護神グレンダイザーに乗ってこれを迎え撃つ。

Read Article

マガジンの歴代ヒロインまとめ

マガジンの歴代ヒロインまとめ

『少年マガジン』は、日本でもっとも長く続いている週刊の少年漫画誌の1つである。その長い歴史の中で幾多の傑作を生み出し、日本の漫画文化を支えていった。「少年漫画」という縛りがあるため主人公の多くは少年だが、その活躍を支えるヒロインたちもまた物語に欠かせない存在として魅力たっぷりに描かれている。 幼馴染に学生、人外や異世界人と設定も様々なら、その関係性も恋人から友人、ライバルまで多種使用である。ここでは、マガジン作品を彩ったヒロインたちを紹介する。

Read Article

デビルマン(DEVILMAN)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

デビルマン(DEVILMAN)の名言・名セリフ/名シーン・名場面まとめ

『デビルマン』とは、70年代にアニメの企画と並行して誕生した漫画作品で、原作者である永井豪の会心作の一つである。 悪魔を主人公にした斬新な設定と、ハードなアクション、そして後半のヨハネ黙示録を元にした終末観溢れるストーリーが話題を呼び、いくつもの派生作品が生まれた。 人、悪魔、そして神とは一体何か、本作の登場人物の言葉にその秘密が隠されている。

Read Article

【ガラダK7】徹底解説!マジンガーZに登場する機械獣一覧!【ダブラスM2】

【ガラダK7】徹底解説!マジンガーZに登場する機械獣一覧!【ダブラスM2】

スーパーロボットアニメの元祖として語り継がれる伝説的名作『マジンガーZ』。作中で主役ロボットマジンガーZが戦うのが、世界征服を目指すDr.ヘルに率いられた“機械獣”である。そのデザインは千差万別にして自由奔放、狙撃兵を模したようなものから機械に人体風のパーツがついたようなものまで様々である。 ここでは、『マジンガーZ』に登場した機械獣たちを紹介する。

Read Article

目次 - Contents