不滅のあなたへ(漫画・アニメ)のネタバレ解説・考察まとめ

『不滅のあなたへ』とは、講談社の週刊少年マガジンにて連載中の、大今良時による漫画作品。
謎の存在によって地上に投げ込まれた球体、それが本作の主人公である。球体は地上のあらゆるものを記録するため、様々な存在の姿を獲得して変化を繰り返す。石からコケ、オオカミを経て、人間の姿を得た球体は、同時に形の無い「心」をも手に入れる。記録すべき情報を求めて旅を続ける中、球体は様々な人の生き様とその最期に立ち会うこととなる。

『不滅のあなたへ』の概要

『不滅のあなたへ』とは、大今良時による漫画作品。講談社の『週刊少年マガジン』2016年第50号から連載が始まった。
世界の全てを記録するために生みだされた存在フシ。彼は不死身であり、万物の姿を写しとり変化することができる。長い年月をかけて、多くの人との出会いと別れを繰り返した結果、フシは人間の生に特別な価値を見出していく。しかしそんな彼の前に人間の生を苦しみだと考え、人を殺そうとする存在ノッカーが現れ、両者は敵対するようになる。本作はそんな生と死のテーマを扱うファンタジー作品である。
少年漫画らしい迫力あるアクションシーンに見ごたえがあり、生と死を見つめる登場人物たちの、繊細かつ客観性のある心理描写も魅力。
不死という設定上、物語の時間経過が早く、1巻で0歳だったフシは10巻の時点で200歳をゆうに超えている。
著者である大今良時は話題作『聲の形』の執筆でも有名である。第43回講談社漫画賞少年部門受賞作。

『不滅のあなたへ』のあらすじ・ストーリー

誕生編

オオカミの飼い主である少年(右)の姿を映しとった球(左)

舞台は地球ではないどこか、文明は現代よりも旧時代的な場所から始まる。
万物を保存するのためのシステムとしてつくりだされた人外の存在、それが本作の主人公である。
後に観察者と呼ばれる存在によって初めは球として、氷に覆われた大地に落とされる。
球は石にぶつかると石の姿へと変化し、次はそこに生えていたコケになり、偶然そのコケの上で息絶えたオオカミの姿を得たことで自分で歩けるようになった。
その後、ある集落の最後の一人となった少年の元に行き、ともに旅をするが少年がケガで死んでしまう。
少年が死んだあと、球は狼からその少年の姿へと変化し、旅に出た。
体を変化させる条件は、その対象物から強い刺激を受けること。物理的な痛みでも精神的な痛みでも獲得することができる。
人間の場合は対象が死んでいないと変化ができないが、無機物ならばすぐに変化することができる。
主人公がこれらの特性を知るのは大分後になる。

ニナンナ編

少年の姿となった球は、旅をしている内に何度も肉体が死んだ。
記憶は獲得できないため、生存に必要な寝食、衛生管理、ケガへの対処法といった知識はないからだ。
しかし肉体が死ぬことがあっても再生するため不死である。
球はニナンナ国に入り、そこでオニグマと呼ばれ神聖視されている獣への生贄にされる少女マーチと出会う。
マーチは球が不死なことを知り、不死だからフシという名で呼ぶことにした。
その後、マーチを生贄の儀から助けようとしている女性パロナや、生贄の儀を取り仕切るヤノメ国の女性ハヤセとも出会う。
ハヤセはオニグマに襲われたフシが再生する様を目撃してフシに興味を持ち、マーチとパロナ、フシに反撃された重傷を負ったオニグマとともにヤノメ国へと連れ帰った。
ヤノメでマーチはオニグマを怖がらないという理由からオニグマの世話をさせられたが、もともと弱っていたオニグマはマーチの世話に感謝して死んだ。
パロナはマーチとフシと一緒にヤノメからの脱出を図るが、追ってきたハヤセが放った矢によってマーチは死んでしまう。
フシはオニグマへと変化し、ハヤセに重傷を負わせて引き下がらせた。
その後、パロナによってマーチの亡骸と両親に当てた手紙はニナンナに届けられ、フシはヤノメで出会った老婆ピオランとともにタクハナに向かった。

その後、数百年を生きた結果、伝説の不死者のフシとして広く人々に知られるようになった。
人としての意識を持ち、人と関わるようになってからは自我が芽生え、人間と同じように喜怒哀楽を感じるようになる。
フシをつくり出した存在である通称観察者に導かれつつも、自らの意思でも旅をして多くの仲間を作っていく。
しかしフシの存在をよく思わない敵も現れる。魂や精霊とも呼ばれるファイの集合体ノッカーである。
ノッカーの狙いは一つでも多くのファイを肉体から自由にすることと、万物を保存することで生物のファイを肉体に閉じ込めようとするフシと観察者の計画を阻止することである。
ファイを自由にするとはすなわち肉体を殺すことを意味し、ノッカーによってフシは何度も仲間を失ってしまう。
数百年を生きる中でフシは、人は死ぬときに納得して死ななければ不幸だと考えるようになり、人間の命を守るためノッカーと戦っている。
始めは意思の疎通はできなかったが、カハクの左手に寄生したノッカーは意思疎通ができるため、ノッカーの狙いなどはそこからわかるようになった。
レンリルという巨大都市を襲うという予告も左手のノッカーよりもたらされた。
全てのノッカーがレンリルに集結する中、フシや仲間たちは生きるため戦う。

タクハナ編

ピオランと旅をする中でフシはたくさんの言葉を教わり、多少の意思疎通ができるようになった。
森で野宿をしているときに初めて敵に襲われる。
その敵は木の枝のようなものでフシの体を貫いたあと、木の枝でフシが持っていた少年の姿を模した。
フシは少年の姿から狼の姿へと変わってしまったため、少年の姿を奪われたことを知る。
さらにピオランには見えない観察者が現れて、フシにあれは敵だと教えて戦うよう指示する。
フシが敵の核と呼ばれる部分を引きちぎって倒すと、奪われた少年のことを思い出しまたその姿になることができた。
フシは観察者に何者かと尋ねると、観察者はフシの生みの親で、世界を保存するためにフシを作ったと言って消えた。
ピオランの目的としていた場所は自身の恋人がいるタクハナ国。
タクハナでフシは、ピオランの恋人で変人の発明家・酒爺とその手伝いをしている少年・グーグーに出会う。
数年もの間、酒爺とグーグー、ピオラン、フシは一緒に暮らし、一度だけ前回とは別の個体だが同じ種類の敵に襲われるが、グーグーと協力して倒すことでグーグーとフシは兄弟のように仲良くなった。
ある日、グーグーが憧れている富豪の一人娘・リーンの誕生会に招待され、その誕生会中にフシを狙う敵が大規模な攻撃をしかけてきた。
敵の攻撃で崩れ落ちる建物からリーンをかばったグーグー。

『不滅のあなたへ』の登場人物・キャラクター

主要人物

フシ

本作の主人公。観察者によって生み出された存在。肉体は死ぬことがあっても再生するため不死身。元は球体だったが、強い刺激を受けた対象の姿を写しとることができ、この能力を使って様々な生物に変身(あるいは部分的に変化)することができる。その刺激は物理的な刺激と精神的な刺激の両方が対象になるのではないか、と旅の途中で出会った友人グーグーと話している。
初めは球体で登場し、石、コケ、オオカミ(名は「ジョアン」)に変化し、オオカミの姿で少年(名は不明)に出会う。
その少年は雪と氷で覆われた大地に、仲間に取り残され一人で住んでいた。
少年は仲間が向かったはずの豊かな土地を目指すが、旅の途中に足を負傷してしまったこと、仲間が残したと思われる目印が途絶えたことによって旅を断念し一度家に戻ることにした。
しかし、そのケガは治らず、再び旅にでることなく命を落としてしまう。
最後にオオカミの姿をしたフシに、自分のことを覚えておいてほしいと言って息を引き取った。
フシは再び旅に出たがっていたその少年の気持ちを知ってか知らずか、その少年の姿へと変化して旅にでた。
その後、ニナンナと呼ばれる土地で生贄にされる少女マーチと出会い、フシという名前を付けられた。
人の姿をしている内に意識が生まれ、ニナンナからヤノメ国に連行され、そこから出るころには自我が芽生えてきている。
タクナハという国でグーグーやピオランと家族同然の暮らしをすることで、喜怒哀楽の表現も豊かになった。
ノッカーという敵が存在し、度々ノッカーに仲間を殺されている。
敵と戦うときは今まで獲得した姿になり、なった姿の得意技(人であれば弓や火炎放射、モグラなら噛み千切る等)で応戦。
ノッカーの攻撃によって肉体が死ぬと、その隙に獲得した姿を奪われてしまう。奪われてしまうと記憶もなくなってしまうが、敵を倒すと戻ってくる。
例えば、フシがマーチの姿をしているときにノッカーに殺されるとマーチの姿が奪われる。姿が奪われたフシは別の姿に変化し、マーチのことを忘れ誰の姿を奪われたか分からない、といった事態になる。
物語が進むごとに多くの姿を獲得していき、レンリル王国を訪れたときには都市ごとつくり出し、意識を共有させることによって数キロに渡り自在に操れるようになった。
生み出された理由は万物の保存のためで、その役目が終わったら自由を与えられることになっている。

観察者

フシを生み出した存在。作中で自らが名乗ったわけではなく、単行本4巻冒頭の登場人物紹介ページで観察者と記されるようになった。
フシに万物を保存させ、自分の代わりをさせると言っていることから、何かしら世界の役目を担う人外の存在だと予測されるが、真相は明かされていない。
フシの体を強制的に変化させたり、ノッカーの位置や数なども把握したりすることができるが、精神は操ることができない。
危険を知らせる場合もあるが、フシの成長に有効だと判断した場合は伝えずにいる。
普通の人間には姿を見ることができないが、必要がある場合は姿を見せることが可能。
物語の初期はナレーションとして分かりにくいフシの構造などを説明して補完していたが、フシが自分の意思を持つようになってからの登場回数は少ない。
フシのことを気にかけていた老婆ピオランが死ぬ間際、観察者にフシの役に立つものに生まれ変わらせろと言い、観察者は承諾した。
常に黒のローブを羽織っており、表情や感情がなく無機質な話し方をしている。一人称は「私」で性別も不明。
作中では「ミスターブラック」、「黒いの」と呼ばれることがある。

ノッカー

ハヤセに寄生するノッカー

フシと観察者を敵視する存在。その正体は魂や精霊と呼ばれるファイの集まり。
苦しみのある生から解放させることで幸せにするという名目のもと、多くの人を殺害している。
フシや観察者によって生が永遠のものとなってしまうのを恐れ、二人の活動を阻止しようと、フシが獲得した大切な仲間の姿を度々盗む。
姿を盗まれるとフシはその姿に関する記憶をも失うが、姿を取り戻すと記憶も元に戻る。
フシが自分の体を変化させるのと逆で、ノッカーは種のようなものを人や物に寄生させ、体を乗っ取り攻撃をしかける。
具体的な数は不明だが、レンリルを襲っている際、観察者によってすべてのノッカーがレンリルに集まってきていると明かされた。

少年

フシが始めて出会った人間。楽園を目指して旅立った大人たちに取り残され、海沿いの集落でたった一人で暮らしていた。
それがフシの変化した姿とも気付かずジョアンが戻ってきたことを喜んでいたが、やがて自身も楽園を目指すことを考えるようになり、ついにジョアンと共に旅立つ。しかしその途中で負傷したことが原因で命を落としてしまう。
死に際、ジョアンに「自分のことを忘れないでほしい」と言い残す。最後まで名前はわからずじまいだった。

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