ハレンチ学園(永井豪)のネタバレ解説・考察まとめ

『ハレンチ学園』とは、永井豪によるギャグ・学園漫画。『週刊少年ジャンプ』誌上にて1968年から1972年まで連載された。漫画を基にした実写テレビドラマ版・実写映画版・OVA版などがある。連載当時としては過激な性描写と破天荒なストーリーで人気と話題を博し、永井豪の初期の代表作品であるとともに草創期の『週刊少年ジャンプ』を支えた作品として知られた。日本一ハレンチな学校「聖ハレンチ学園」を舞台に、そこに集った常識外れの生徒たちと教師たちが巻き起こす騒動を描いたギャグ・学園・セクシー漫画である。

『ハレンチ学園』第1部のクライマックスとなった事件。聖ハレンチ学園のハレンチな日常風景を知った大日本教育センター所長が、嫉妬と自らの殺人欲のために起こした戦争でもある。聖ハレンチ学園側が徹底抗戦の構えを見せたことと、死神重工が暗躍したことで本格的な戦争の様相を呈しており、双方の陣営だけではなく一般市民も巻き込まれた。死神重工の武器を得た聖ハレンチ学園側が優位に立っていたものの、次第に形勢が逆転していき聖ハレンチ学園側のほとんどのキャラクターが死亡している。また、大日本教育センター所長も丸ゴシ先生に殺害されたことで、結果的に「ハレンチ大戦争」は痛み分けに終わった。「ハレンチ大戦争」を生き延びたキャラクターは山岸、十兵衛、ヒゲゴジラ、そして丸ゴシの4人。

『ハレンチ学園』の名言・名セリフ/名シーン・名場面

実の息子に殺害された山岸八十八の両親

自分が両親を殺害したことを知らない山岸八十八(右)と彼を見つめる袋小路(左)

「ハレンチ大戦争」によって一般人にも多くの犠牲が出たことは先述したが、山岸八十八の両親も亡くなっている。しかも、2人は実の息子に殺害されてしまった。もっとも、山岸は夜間に動いていた人影を射撃しており、撃ったのが両親だとは最後まで気がついていなかった。また、山岸は両親は戦争の犠牲者の遺体から売り物となる精肉を得ようとしており、決して褒められた行動をしていたわけではない。それでも、暴力的でありながら家族の絆も感じられた山岸親子の突然で不条理な別れは、多くの読者に衝撃を与えたと評されている。

鮎原あゆ子(アユちゃん)「自由に!自由に生きようとしただけなのに!」

爆死する直前の鮎原あゆ子(アユちゃん)

「ハレンチ大戦争」は、『ハレンチ学園』の第1部キャラクターがほとんど死亡した凄まじい戦争だった。その中で最も悲劇的な最期を迎えたのが、鮎原あゆ子(アユちゃん)である。山岸や十兵衛たちと行動を共にして生き延びていたアユちゃんは、敵方の攻撃の爆風でパンティを飛ばされてしまった。恥ずかしさでいっぱいの彼女は、十兵衛の制止も聞かずパンティを拾いに行き敵方のさらなる攻撃に晒されてしまう。その時、ふと我に返ったアユちゃんが言ったセリフが、「自由に!自由に生きようとしただけなのに!」である。ただ聖ハレンチ学園の中で自由奔放に生きていたにも拘らず、理不尽な戦争に巻き込まれて散ったアユちゃんに多くのファンが同情と悲しみの念を表したと言われている。

山岸八十八「いくぜ!山岸・十兵衛のなぐりこみだ!」

敵に特攻をかける山岸八十八(右)と柳生みつ子(左)

「ハレンチ大戦争」最大のクライマックスは、山岸と十兵衛の特攻シーンである。イキドマリとアユちゃんを失った十兵衛は、ありったけの武器を携えて敵方への特攻を決意した。すると、山岸もそれに応えたのだ。そして、山岸は「いくぜ!山岸・十兵衛のなぐりこみだ!」と高らかに宣言し、十兵衛も「オウ!クライマックスだはでにいこうぜ!」と叫んだ。2人は戦いの最前線へと殴り込み、十兵衛は涙を流しながら敵を倒していった。この山岸のセリフには、当時『ハレンチ学園』に対して猛烈なバッシングを受けていた永井豪の心の叫びが込められていたことが後のインタビューなどで示唆されており、同作品屈指の名言として知られている。

山岸八十八と柳生みつ子(十兵衛)の結婚

『ハレンチ学園』50周年記念愛蔵版5巻表紙

『ハレンチ学園』は、「ハレンチ大戦争」で終焉を迎えたかに見えた。実際に永井豪は「ハレンチ大戦争」を最終回のつもりで描いていたことを、インタビューや『激マン!』で明かしている。しかし、『ハレンチ学園』の人気が衰えることはなく、結局物語は第3部まで続いた。連載期間の長期化と共に山岸と十兵衛の関係性にも変化が生じており、紆余曲折を経て2人は第3部で中学生同士にも拘らず結婚を果たす。結婚後は、それまで十兵衛を守っていた山岸が今度は妻に支えられるようになり、物語や世界観に広がりが出来たと評されている。

『ハレンチ学園』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話

問題視されたモーレツごっこ

スカートめくりされた柳生みつ子(十兵衛)

『ハレンチ学園』で描かれた「モーレツごっこ」とはスカートめくりのことである。そのような名前になった理由は、同作品連載当時に流されていたテレビCM「丸善石油100ダッシュ」の影響とされている。同CMは、人気モデルだった小川ローザのスカートが自動車の通過した風力でめくれ上がり、彼女が「Oh!モーレツ」と言う内容で、当時の視聴者に大きなインパクトを与えた。永井豪はスカートめくりにこのCMを絡めて、「モーレツごっこ」と呼称したのだ。「モーレツごっこ」は『ハレンチ学園』の大ヒットもあり、瞬く間に実社会で話題と注目を集める。そして、スカートめくりを実践する人間が増えたことで社会問題にもなった。スカートめくりは迷惑防止条例違反にあたることがあり、規制・撲滅する流れになっている。

「ハレンチ大戦争」で終了するはずだった『ハレンチ学園』

『ハレンチ学園』ジャンプコミックス版5巻扉絵

『ハレンチ学園』は、永井豪にとって初の大ヒット作品であり自身の出世作ともなった記念すべき漫画である。ところが、連載当時の世相に照らし合わせると相当に過激な性描写、さらに教師批判とも受け取れるシーンなどが多く、地域によっては有害図書に指定しようとする動きが見られた。その結果、永井豪自身も教育委員会やPTAなどからバッシングを受けることになる。こうした世の中の動きは同作品のストーリー展開にも影響を及ぼすこととなり、永井豪は「ハレンチ大戦争」を描いて『ハレンチ学園』を終了させようとした。「ハレンチ大戦争」の衝撃は相当なもので、同エピソードを最終回だと勘違いしているファンや読者も少なくない。また、1話完結を得意とするギャグ漫画家として認知されていた永井豪が、ストーリー漫画家の高評価を得たのも「ハレンチ大戦争」が最初であり、彼はこの後『デビルマン』や『マジンガーZ』などの本格的なストーリー漫画を描いていくこととなる。

大ヒットした実写版『ハレンチ学園』

実写映画版『ハレンチ学園』DVDジャケット

原作漫画が大ヒットした『ハレンチ学園』は、早々にメディアミックスが展開された。実写映画版第1作が1970年5月に公開されてヒットを収めると、実写テレビドラマ版は1970年から1971年にかけて全27話が放映され、こちらも人気作となっている。特に十兵衛役を演じた児島美ゆきにとっては、彼女の人気と知名度を一躍全国区にした作品である。また、映画版第1作でヒゲゴジラ役を演じた藤村俊二は、多くのファンの間で「はまり役」と高く評価された。マカロニ・キッド役を宍戸錠(映画版)と郷鍈治(テレビドラマ版)兄弟が演じたことでも知られている。『ハレンチ学園』の実写版はDVD化されており、有料動画配信サービスにて視聴することも可能である。

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