宮崎駿や高畑勲が綴っていた「ジブリ日誌」が興味深い!制作裏話から日常の出来事まで盛りだくさん
本記事では世界的に有名なアニメ制作会社「スタジオジブリ」の中心人物である、鈴木敏夫、宮崎駿、高畑勲などが綴っていた「ジブリ日誌」の内容について、まとめて紹介している。書かれている内容は映画の制作に関する裏話の他、日常の出来事やイラストなど非常に多岐にわたる。かなりのボリュームがあるのでぜひコーヒー片手にじっくりと楽しんでみてほしい。
2月29日(火)
昨日中に居村Jrが生まれる。母子ともに健康とのこと。しかし居村氏は子供が産まれた瞬間、なんと病院近くのコンビニで買い物中だったらしく、「コンビニ出産」と会社中の非難を浴びている。
ところでジブリでは、宮崎監督を先頭に居村氏の机の飾り付けで大騒ぎ。あっという間にとても仕事ができる机ではなくなってしまう。「たんなる嫌がらせでは」との噂も…。
パソコンのデスクトップや、机の引き出しにも数々の仕掛けが施されているのだ。
因に命名正子となっているが、これは宮崎監督が勝手に書いたもので、居村氏はまったく承知していない…しかも「まさこ」は居村氏の母親の名前らしい。
出典: www.ghibli.jp
コンビニ出産w
3月29日(水)
何故かカル・アーツの学生達を案内して演出家の望月智充氏が来社。いろいろと用事もあったようなのだが、気がつくとチョコエッグの交換会へと場は変更。亜細亜堂でも流行っているらしい。
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4月14日(金)
「千と千尋の神隠し」のポスターを作監安藤氏に依頼する。乗り気でない安藤氏を説得する石井君。それをみた宮崎監督は「石井君が女装してずっと後ろにたってればいいんだよ。気になって、そのうちかくから」とアドバイス。
「むうっ」とうなった石井君は、その夜鈴木プロデューサーに、「どんな女装をすればいいいか」をメールで連絡。当然ながら返事はこなかったようだ。
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4月26日(水)
制作斉藤君が、「春のパン祭り」に参加。白いお皿を9枚集めるも、作画米林氏は11枚を既に手にしていることが判明。斉藤氏は、なぜかひどくショックをうけた模様。
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4月27日(木)
新人研修の一環として、宮崎監督の講演会が行われる。その中でのサン・テグジュペリを引用した作品を作る志の話。
「誰もが心にモーツアルトを持っている。園丁師がいれば美しいバラを育てることが出来るのだが、目の前の少年にはそういう存在がいないが為に、他愛のない流行歌を聴き、彼らの中のモーツアルトは虐殺され続けている。誰もがこの少年と同じ存在である。みんなの虐殺されたモーツァルトを救う作品を志して欲しい」
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5月10日(水)
5月4日に放映されたNHKの特番をみた視聴者から、原画の松尾さん、田村氏宛にファンレターが届く。喜ぶ二人を前に、同じようにクローズアップされた原画米林氏は複雑な表情。
「大丈夫。制作には、マロ様(米林氏のあだ名)ファンクラブがありますから。男ばかりだけど」との制作からの熱いエールも、今の米林氏には届かないようだ。
5月11日(木)
作画米林氏に、待望のファンレター(?)が手渡される。差出人は、元ジブリのある先輩アニメーター。
先日のNHKの放映にたいし、米林氏だけファンレターが来なかったときき、急遽書いてくれたらしい。「あいかわらず原画の中枚数が足りないので、絵を見て一目であなたとわかりました」との痛烈な一言から始まり、「いつもあなたをみています。あなたのファンより」で締めくくられていた。
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待望のファンレター
5月22日(月)
制作田中氏が久々に買ってきたお弁当(焼き肉、フライとかなりヘビー)をネタに、宮崎監督と鈴木プロデューサーが「奥さんに濃い味の物を食べさせてもらってないに違いない」などと、本人が打ち合わせでいなくなったことをいいことに好き勝手に盛り上がる。
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7月7日(金)
午前中姿が見当たらなかった制作・神村氏はなんとダウンしていて午後出社。昨日「妖怪大戦争」の話で大いに盛り上がった時の元気な姿は何だったのか。
大塚塾第2回目が行われる。講義の教材として10年以上昔のテレコム研修生の作品を上映。
その中の見覚えある名前が…。「本人には内緒ね」と大塚氏は言ったものの、案の定本人にばれてしまい「まさかもう見せることはないと思っていたのに!
それにしても大塚さんは物持ちがよすぎる!」と怒り出す。しかし当の大塚氏はすでに帰ってしまった後。怒りのオーラを感じた宮崎監督は「俺なんか前回、若かりしころの写真を教材に使われて…」となだめていた。
「明日は電車等の状況を見て、各自の判断で出社して下さい。がんばって出社してもほめませんし、休むことを止めもしません」という非常ならぬ非情な社内放送が全館に流される。
原稿を書いたのは、台風前のわくわく感を押さえきれなかった宮崎監督。笑いながら総務・石迫氏に朗読の指示を出していた。
出典: www.ghibli.jp
7月13日(木)
某銀行から突然電話が入る。「そちらの社員とおっしゃる方が、支払いの手続きに来られたのですが、あの…本人は一村と名乗ってらっしゃるのですが、本当にこの方でよろしいのでしょうか?」となんとも不可解な問い合わせ。
どうも一村氏の「ポロシャツと裸足につっかけ」という普段と変わらぬ姿と、扱う金額とのギャップに、銀行員が不審に思ったらしい。こちらとしては笑える話なのだが、電話をかけた銀行員の態度はかなり深刻だった。
無事疑いが晴れた一村氏は「まったく失礼な」と憤慨していた。しかし社内では「その格好じゃあ疑われてもしょうがない」という意見がもっぱら。特に「裸足につっかけ」がまずかったか。
出典: www.ghibli.jp
7月21日(金)
昨日の休みも返上して、自宅でコンテ作業をしていた宮崎監督。
早朝に起きた地震で「ついに関東大震災か。これで映画が全部おじゃんに…」と、不謹慎にもつかの間の喜びに浸ったらしいのだが、そう調子よく行くはずもなく、かえってその後に苦しみが倍増してしまい、朝までまんじりともしなかったとか。監督が天災に救いを求めるのは毎度のことだが、産みの苦しみはいつもにも増してはげしい。
出典: www.ghibli.jp
7月22日(土)
宮崎監督が朝から針治療に出発。頭の先から足の裏まで、針千本のように針を打ちまくられたらしい。「電気も通すから、カエルの実験のときみたいに体がビクビクって動くんだよ。
でも怖くなるくらい良く効く。体の限界を越えて持ちこたえさせてるんだね。あと5回やったら死ぬな」と縁起でもないことをさらりと言って、涼しい顔。
しかし制作は、監督の元気が回復したのをいいことに「コンテあげて下さいね」と微笑みながら冷徹にお願いする。
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7月27日(木)
宮崎監督の使用していたストップウォッチが壊れる。秒針が突然止まったかと思うと逆戻りをはじめたりするらしい。会社に買い置きしてあった一周6秒のストップウォッチを使ってもらうことに。
一周60秒のストップウォッチをずっと使っていた監督は、その秒針の回転する速さに目を回していた。
一方、壊れたストップウォッチは「形見だからできるだけ直して」と監督。ストップウォッチの裏を見ると近藤喜文さんの名前が。これって形見というより、近藤さんのを勝手に使っているだけなのでは…。監督は「近ちゃんのタタリだ」とも。
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8月3日(木)
つまらないことに三好氏が自動車教習所卒業検定合格。もう一回ぐらいすべって笑わせてくれるかと期待してたのに残念。しかし、次には府中試験場での筆記が待っている。仮免では学科で滑るというパフォーマンスを見せてくれただけに期待したいところ。
8月4日(金)
ますますつまらないことに三好氏が一発で学科試験に合格。無事免許証が交付される。制作ルームには宮崎監督も交じり猛烈なブーイングが巻き起こっていた。
出典: www.ghibli.jp
8月7日(月)
ロシアの巨匠、ユーリ・ノルシュテェイン氏が3度目の来社。未完の「外套」の制作費を得るために作った(実際には赤字だったそうだが…)TV番組「おやすみなさいこどもたち」のオープニング・エンディングをたずさえての来日だ。
2分15秒で1年半かけたという新作の上映に、試写室は満員。来日3日前に上がったばかりのラッシュ・フィルムで、音はまだ入ってないのだが、キャラクター、動き、色等々、どれをとっても本当に素晴らしい作品。試写室のあちこちからため息がもれていた。
上映に先立って宮崎監督は、ノルシュテイン氏と社内を案内しながらにこやかに歓談。厳しいスケジュールのカット表を見せながら「地震よ、来い」と、いつもの天災に救いを求める発言をしていた。これにはノルシュテイン氏も同感の様子。作家の生みの苦しみは世界共通。
出典: www.ghibli.jp
「地震よ、来い」
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目次 - Contents
- ◆ スタジオジブリ日誌 1994年8月ー1998年7月までのスタジオジブリの毎日の出来事を掲載しています
- ◆ 制作日誌 1994年8月~95年5月
- ◆ スタジオジブリ日誌 1996年
- ◆ スタジオジブリ日誌 1997年
- ◆ 8月3日「ツール・ド・信州」当日である
- ◆ スタジオジブリ日誌 1998年
- ◆ スタジオジブリ日誌 1999年
- ◆「いつものジブリ日誌」1999年9月1日ー2011年9月2日まで。「いつものジブリ日誌」の更新は終了しています。
- ◆ スタジオジブリ日誌 2000年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2001年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2002年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2003年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2004年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2005年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2006年 ◇ 2005/12-2006/6「ゲド戦記」制作日誌
- ◆ スタジオジブリ日誌 2007年
- ◆ スタジオジブリ日誌 2008年