イチケイのカラス(漫画・ドラマ・映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『イチケイのカラス』とは、浅見理都(あさみりと)による裁判官を主人公とした日本のリーガル漫画。『モーニング』で2018年から連載された。主人公・坂間は、武蔵野地方裁判所第一刑事部、通称「イチケイ」に配属される。そこで型破りな判事・入間みちおに出会う。入間は「ただ裁判官は判決を下すのみ」と思っている坂間とは違い、実際の事件現場を訪れたり、気になることは徹底的に検証したりするタイプだった。被告人の人生まで考える入間と関わるうちに、坂間も裁判官として、そして人として成長していくヒューマンリーガル作品。

事件関係者

田端 紀道(たばた のりみち)

世界的な作家である田端。

世界的な賞であるノーボル文学賞を受賞するほどの世界的な作家。強制わいせつの事件の被告人。

作品の締め切りに追われていた田端は、気分転換に夜の外に出た。嵐が丘公園を通りがかった時、若い女性が公園のトイレに入るところを見た。締め切りのストレスを紛らわせたいと、田端は衝動的に犯行を思いつく。
女性がトイレに入ったところで、田端も女子トイレに入る。電気を消して後ろから女性の胸を触った。そこで女性が大声を上げたため、慌ててトイレから逃走した。
しかし、女性が振り返った際に田端を見ており後日、田端は逮捕された。

第一回公判が始まり、駒沢から黙秘権の説明を受ける田端。そして駒沢が田端に「やっていないのなら、やっていないと言ってください」と言われた田端は「自分はやっていません…!」と発言した。このことと、田端が世界的に有名な作家だったことから世論は「田端は冤罪で捕まった」「被害者のでっち上げで逮捕された可哀想な作家」と思うようになった。
田端が犯行を否認したことと、被害者の女性が「真っ暗なトイレの中でも田端の顔をはっきり見た。しかし、田端の服装は覚えていない」と言ったことから、田端の無罪を主張していた弁護人は「現場検証をお願いします」と坂間たちに請求。坂間たちは実際の現場である公園のトイレに行き、犯行時と同じように検証を重ねた。
まず坂間がトイレに入り、真っ暗になったところで田畑に似たスタッフが背後に立つ。坂間が振り返った時に、そのスタッフの顔がはっきり分かるかどうかというものだ。
そして、「概ね振り返って、相手の顔を確認できる」という結果になった。また被害者が田端と面識がなかったこと、嘘をついて田端を陥れる理由がないことも踏まえて田端には有罪判決が下った。
それでも世論は「田端は冤罪だ」「検察と裁判官はグルだ」と騒いでいた。一方、田端はこの判決を受け入れ控訴しなかった。それは本当に罪を犯したからなのか、裁判所には何を言っても変わらないと諦めたからなのかまでは描かれていないため、真相は不明のままである。

大木 義晴(おおき よしはる)

妻を亡くし人生に絶望している大木。

ホームレスの高齢男性。地元の中学校を卒業後、大工に弟子入りした。長く働いていたが、23年前に病気が原因で働けなくなり、妻と共に日雇い労働で生計を立てている。河川敷の高架下に簡易的な家を建て、そこで暮らしている。なお、前科持ちで執行猶予中。

ある日、妻が胸の痛みを訴えたため田口総合病院に連れて行く。そこで医師が診断したが「問題なし」とされ、帰宅した。しかし数日後、妻が急死。
妻がつけていた日記を発見した大木は、そこに「病院に行った数日後からまた胸が痛み出した」という記述を見つける。そのため、大木は「ホームレスだから医者は適当に診断したんだ。そのせいで妻は死んだ」と感じる。
妻は亡くなる直前、料理をしていたため妻の肩身として包丁をタオルで包み、田口総合病院へと持って行った。大木は病院の事務員に「あの時の医者を出せ」と怒鳴りつける。事務員が取り合わなかったため「痛い目見せるぞ!」とタオルを床に叩きつけた。そこから包丁が出てきたことから警察を呼ばれ、危害を加えるつもりはなかったために警察が来るまで大人しく椅子に座って待っていた。

裁判を迎えた大木は、妻が亡くなったことからの無力感や執行猶予中の犯行で実刑は免れないことを悟り入間に対し「こんな老いぼれに時間割いてないで、さっさと有罪にしてください」と発言した。しかし、入間から「あなたの中で奥さんはもう少し長生きさせてもいいんじゃないですか?」と言われたことで、心の中にはまだ妻が生きていると感じて涙をこぼした。
その後、入間は下した判決は罰金20万だった。また勾留日数を1日5千円とし、大木が勾留されていた日にち分ですでに20万円に達しているため、大木がこれから支払う分はなかった。
判決後、警察官から「罰金刑でよかったね、きっと亡くなった奥さんが入間裁判官と巡り合わせてくれたんだよ、社会復帰頑張りなよ」と言われる。その時はピンときていなかった大木だったが、更生支援施設に入り桃農園で働けるまで社会復帰を遂げた。
物語の最後、大木は入間に感謝の手紙を送っている。手紙には「亡き妻が入間裁判官様と巡りあわせてくれたのだと思います。どうしようもないほど弱い人間ですが、生きていることをよしとしてくださってありがとうございます」と綴られていた。

潮川 恵子(しおかわ けいこ/演:真凛)

義母から罵倒され涙を流す恵子。

30代の専業主婦。万引きによる窃盗で執行猶予中だった。
1人での育児や、寝たきりの義母の介護、その義母からの暴言に耐えきれず軽いうつ病を発症。また、「物を取るまでの緊張感やスリル感、万引き出来た時の爽快感」でストレスを紛らわせるようになり、クレプトマニアも発症する。
夫もいるが単身赴任中で心配をかけたくないと、「家のことは大丈夫」と強がっていた。しかし、その無理がストレスとなり万引きを繰り返していた。

ある日、近所のスーパー「コーピーマート」で万引き。その様子を万引きを取り締まる保安員に見られており、店を出たところで声をかけられる。
慌てて逃走しようとしたため、保安員が恵子を捕まえる。恵子はパニックになり、保安員の腕を噛んで逃げようとしたが逮捕された。執行猶予中の万引きの再犯と暴行罪で起訴された。再び万引きする可能性や、ほたるを姉に預けて逃亡する可能性があると坂間は勾留を検討していたが、堤の説得により家に帰ることが出来た。
堤からネットスーパーを利用するように言われていたが、家に帰宅しても変わらない日常や拓馬から「裁判後に離婚しよう」と言われたことが苦しくなり、再び万引きしたい衝動に駆られる。店に行って万引きをしようとしたところで、偶然堤に見つかり止められる。万引きしてしまうことや、迷惑をかけてしまっていることを自覚しているため「こんな母親ですみません…迷惑かけてすみません…」と泣きながら堤に謝った。

前回の万引きした際の裁判でも、今回の裁判でもクレプトマニアに対して「治療していきたい」と口では言っていた。しかし、うつ病があることと、1人きりの家事や育児、介護に追われ治療どころではなかったため、恵子自身も再犯しない自信がなかった。
そんな時、公判中にほたるが1人で裁判にやってきた。ほたるは傍聴席から「ママ!ほたるがいるから大丈夫だよ!」と励まされたことで、「娘にこんな思いをさせていたんだ」と自分のしてしまったことを心から反省する。裁判の帰り、拓馬に「私もう1人じゃ無理」と初めて弱音を吐いた。拓馬も恵子の気持ちをようやく理解し、共に支え合い治療に専念する意思を固めた。
最後の公判、坂間から「娘さんが裁判所に来たことについてどう思いますか?」と聞かれる。恵子は「それほどまでに娘を心配させていたのかと胸が痛くなりました。これからは夫や周囲にサポートを頼んで、必ずクレプトマニアの治療をします」と誓った。坂間はそんな恵子の姿を見て、恵子を信じ再度執行猶予付きの判決を出した。
裁判を終えた後、裁判所の外で待っていたほたると手を取り喜んでいた。

潮川 ほたる(しおかわ ほたる/演:寺田藍月)

小学校低学年の娘・ほたる。

小学校低学年の女の子。恵子のことが大好き。

拓馬が恵子のクレプトマニアを理解できず、拓馬は「裁判後に離婚しよう。ほたるは俺が引き取る」と恵子に言っていた。その会話をこっそり聞いており、子供ながらに「ママと離れ離れになる」ことを感じていた。
恵子の裁判の日、お腹が痛いと言って学校をズル休みする。拓馬が恵子の裁判に行ったところで、ほたるもこっそり家を出た。近所の顔馴染みの店に行き、裁判所の行き方を聞く。
1人でバスに乗り、裁判所に着いたところで裁判を傍聴しに来ていた松田(まつだ)と出会う。恵子の裁判まで案内してもらい、公判開始当初は静かに座って聞いていた。
しかし、検察が恵子に「今後クレプトマニアの治療を頑張ると言っていますが、前回もそう言ってまた万引きしていますよね?娘さんにも申し訳ないと思わないんですか?」と責め立てるように質問している場面に耐えられず、傍聴席から「ママー!」と恵子に叫ぶ。驚いている恵子に「ほたるここまで1人で来れたよ!買い物だってほたる行けるもん!ママは大丈夫だもん!」と恵子を擁護した。
ほたるが騒いだことには変わりないので、坂間は「審理の途中ですので…」とほたるに退室を命じる。弁護士の蕨と共に退室し、その後は廊下の椅子で恵子を待っていた。
裁判後は疲れたのか眠ってしまい、拓馬におんぶされながら家に帰宅。このほたるの衝動的な行動は、坂間の目には「子供が母親を守ろうとしている姿」という風に印象が残り、恵子に対して再度執行猶予の判決を下す材料の一つとなった。

潮川 拓馬(しおかわ たくま/演:森岡龍)

恵子の万引きに悩んでいる拓馬。

ドイツに単身赴任している恵子の夫。

定期的に恵子に対して育児のことや介護のことに対して「大丈夫か?」と聞いていた。恵子が「大丈夫」と答えるため家のことを任せていたが、度重なる恵子の万引きに頭を悩ませていた。
また恵子が万引きしてしまう気持ちを理解できず、「クレプトマニアは一生付き合っていく病気になるかもしれない」と堤から聞いたときには「一生、妻は万引きするのか…」と戸惑っていた。どうしてもクレプトマニアを患っている恵子を理解できず、依存症に悩む家族の会にも参加していなかった。ほたるのことを考え、裁判後は離婚しようと恵子に申し出る。
しかし、ほたるが裁判所まで来て恵子を守ろうとした姿に心を打たれる。裁判後、恵子から「私本当はもう辛いの。育児も介護も…助けて欲しい」と本音で助けを求められたことで、恵子の病気に向き合おうと気持ちを固める。そして恵子に「俺が恵子に大丈夫って言わせてたんだよな、ごめん」と謝罪。
これからは家のことや、育児や介護、恵子の病気をサポートする意志を見せた。このこともあり、坂間は恵子の環境の改善が期待出来ると執行猶予付きの判決を出した。

拓馬の母(たくまのはは/演:勝倉けい子)

自宅で寝たきりの介護を受けている拓馬の母。

恵子とほたると共に暮らしている、寝たきりの高齢女性。
認知症も患っているのか、同じことを繰り返し聞いたり恵子に対して暴言を吐いたりしている。拓馬の母からの「拓馬はどこ?」「あんたが作ったゴミみたいな飯は食べたくない」という言葉によって、恵子は追い詰められていた。

小木島 修二(おぎじま しゅうじ)

露井を殴って死亡させた疑いがある小木島。

高卒で就職し、課長で定年を迎えた。娘と孫がいる。定年後はゴミ拾いのボランティアに夫婦で参加している。

小木島は健康のために週2回ほど月の森グラウンドに通い、妻と一緒に散歩などをしていた。その道中、寄った先のコンビニで露井と出会う。
露井が車の窓から煙草のポイ捨てをしていた。ゴミ拾いのボランティアをしていた小木島は、露井に近づき「ポイ捨てはいけない」と注意した。しかし露井は反省する素振りなく「うるせぇ!」と反論してきたため、口論になると思い小木島はその場を立ち去る。
再び車に乗り、月の森グラウンドに向かった。月の森グラウンドの駐車場に着いたところで、隣に車が停まってきた。露井の車だ。露井は先ほど小木島に注意されたことに腹を立て、コンビニからここまで追いかけてきたのである。
露井は車を降りて「お前と喧嘩しにきた」と言ってきた。露井はガタイが良く、このまま喧嘩をすれば負けることは間違いないと小木島は感じた。また、妻を巻き込むわけにはいかないことと、小木島は怪我をしても平気なように「向こうの原っぱに行こう」と露井に提案した。露井の前を歩きながら、「後ろから殴られるかもしれない」と恐怖を感じる小木島。
原っぱに着くと、危ないからと小木島は自分のメガネを外した。そしてガードするように両腕を顔の前に持ってきた。露井が小木島に殴りかかる。そのうちの一発が小木島の目に当たった。このとき眼底出血を起こすほど目を損傷すると同時に、小木島は「このままではやられる」と感じた。小木島は下を向いたまま無我夢中で殴り返す。小木島の一発が露井の顔面にヒットした。
露井はよろけて地面に倒れる。小木島は露井を心配したが、露井が「あっち行け」というような手振りをしたのでその場を去った。その後、妻の元に戻り散歩をして車に戻ろうとしたところで、露井の周りに警察や救急車が集まっていることに気づく。警察から「露井さんと喧嘩した人を知りませんか?」と聞かれて名乗り出たところ、そのまま逮捕された。

裁判結果、小木島への判決は無罪。わざと露井を死なせたと確固たる証拠がないため、無罪という判決に至った。
裁判後は夫婦仲良く旅行に行ったりと、人生を謳歌している。

露井 清(つゆい きよし)

ファイティングポーズをとる露井。

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