イチケイのカラス(漫画・ドラマ・映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『イチケイのカラス』とは、浅見理都(あさみりと)による裁判官を主人公とした日本のリーガル漫画。『モーニング』で2018年から連載された。主人公・坂間は、武蔵野地方裁判所第一刑事部、通称「イチケイ」に配属される。そこで型破りな判事・入間みちおに出会う。入間は「ただ裁判官は判決を下すのみ」と思っている坂間とは違い、実際の事件現場を訪れたり、気になることは徹底的に検証したりするタイプだった。被告人の人生まで考える入間と関わるうちに、坂間も裁判官として、そして人として成長していくヒューマンリーガル作品。

弁護士(べんごし)

被告人から依頼を受けて、法律に定められた中で基本的人権を守り、社会的正義を全うする職。
弁護士の仕事は多岐に渡り、民事裁判における訴訟代理人としての仕事や、刑事裁判における被告人の弁護人としての活動から、法律の相談を受けたり依頼人と面会したりと様々である。作中では、入間の元職業であったり、堤や蕨が該当する。

被告人(ひこくにん)

まず、「被疑者(ひぎしゃ)」とは、その犯罪に関わった容疑がある者のこと。警察が調査し、疑いがある場合や逮捕された場合に被疑者と呼ばれる。
この被疑者に対する疑いが固まり、犯罪に関わっていると確定し検察に起訴された者を被告人と呼ぶ。起訴されれば裁判となるので、裁判所では被疑者ではなく被告人と呼ばれる。

被害者(ひがいしゃ)

事件や事故、犯罪や人災によって害を受けたものや、被害を受けたものを指す。

執行猶予(しっこうゆうよ)

有罪になった被告人に対して、刑の執行を猶予する制度のこと。この制度ができた理由としては、被告人が社会復帰出来る機会を奪わないためである。また執行猶予の期間は1年から5年程度が妥当とされている。

被告人が十分反省し、更生の余地があることや刑法で定められている条件から有罪になっても執行猶予がつく場合がある。
例えば「被告人を有罪とし、懲役2年に処す。執行猶予は4年である」という判決が出た場合、すぐに刑務所に行くわけではない。刑が執行されるまで4年間猶予があるということになる。
一方で執行猶予がない場合を「実刑(じっけい)」といい、「懲役2年の実刑」となった場合はすぐに刑務所行きになる。
そして執行猶予つきでも実刑でも前科がつくことに変わりはない。

また、執行猶予にも「全部執行猶予(ぜんぶしっこうゆうよ)」と「一部執行猶予(いちぶしっこうゆうよ)」がある。
先ほどの「懲役2年、執行猶予4年」で例えると、全部執行猶予では4年間犯罪を犯さなければ懲役2年全てが免除されるというものである。
これが一部執行猶予になると、例えば「懲役2年、その刑の一部である懲役1年の執行を3年間猶予する」のようになる。この場合は1年間刑務所で過ごし、懲役の残りの1年は執行猶予が3年ついたまま社会復帰となる。多くの場合、一部執行猶予を受けた被告人は社会復帰後、保護観察が付けられている。

冤罪事件(えんざいじけん)

日本の冤罪事件として有名な袴田事件。

無罪の人間が有罪とされ、身に覚えのない罪の罰を受けてしまうこと。
無罪の人間は何も悪いことをしていないのに、犯人だと決めつけられ家族や社会的信用、そして刑務所行きになれば人生の時間まで奪われしまう。また真犯人を取り逃してしまっているので、悪いことをした人間が正しく裁かれないことになる。

控訴(こくそ)

控訴と上告の流れ。

第一裁判所である地方裁判所や、簡易裁判所で出た判決に対して不服がある場合、第一裁判所よりも上の裁判所である高等裁判所に再度違った判決を求める手続きのこと。ちなみに高等裁判所でも下された判決が不服だった場合は、最後の砦である最高裁判所に再度違った判決を求める手続きのことを「上告(じょうこく)」という。

本作で例えるなら、坂間たちは武蔵野地方裁判所の裁判官である。なので坂間たちが出した判決に不服がある場合、被告人は控訴し次の高等裁判所で再度裁判を行うことになる。

黙秘権(もくひけん)

被疑者や被告人に認められている、憲法で定められた権利の一つ。憲法38条第1項及び刑事訴訟法198条第2項と311条第1項に記載されている。
裁判や取り調べなどで、話したくないことは話さなくても良いという内容のもの。

勾留(こうりゅう)

被疑者や被告人が、裁判の前に警察や拘留所で拘束されること。
被疑者は逮捕された後、警察や検察の元で事件の事実確認をされる。その後、被疑者が逃走する可能性があったり証拠を隠蔽する可能性があったりする場合には、検察が裁判官へ拘留請求を行う。これが認められた場合には、被疑者が警察や拘留所で拘束され、一定期間自宅に帰ることはできない。
一方で被疑者が反省し、逃亡や隠蔽の可能性がない場合は勾留が却下される場合もある。

本作では恵子が万引きを犯し、捕まった後恵子の担当弁護士である堤が「ほたると恵子が離れ離れになってしまう」と勾留を取り下げるよう坂間に訴えかけにきている。
坂間は「恵子が姉にほたるを預けて逃亡する恐れもある」と指摘した上で、恵子が反省している状況を鑑み勾留はなしとしている。

ちなみに同じ読み方で「拘留(こうりゅう)」という用語もあるが、こちらは有罪が決まった後の被告人を拘束するという意味である。

判決書(はんけつがき)

判決を下す際に裁判官が読み上げるもので、判決を下した理由や、判決に至るまでの経緯などが書かれた物。
入間は、「例え有罪だとしても何も調べずに有罪と判決書を書くのと、きっちりと証拠や証言を調べて有罪の判決書を書くのとじゃ被告人に伝わる思いが違う」としている。また駒沢は「判決書にはその人が見えてしまうから」と坂間に心を込めて書くように指導していた。

正当防衛(せいとうぼうえい)

刑法36条1項に定められており、不正な攻撃に対するやむを得ない反撃のこと。
しかし、不正な攻撃が予期される場合の反撃は正当防衛ではない。例えば決闘など、お互いが殴り合いになると分かっている状況で「殴られたから殴り返した」は正当防衛にならない。
実際にこの「正当防衛であるかどうか」の線引きは難しい。例えば、相手に恨まれており「相手は自分に暴力を振るってくるかもしれない」と予期していた。それでも自分は話し合いで解決しようとしていたところ、相手がいきなり刃物で攻撃してきた場合の反撃は正当防衛とされる。

作中では小木島と露井の刑事事件に登場し、一番の争点となった。
検察は「小木島が露井から殴られることを予期し、さらにその場に乗じて露井に怪我をさせようと思っていた」と主張し、弁護側は「小木島はあくまでも話し合いで露井を説得しようとしており、露井から攻撃を受けるまでは露井を殴るつもりではなかったため正当防衛である」と主張していた。

忌避申し立て(きひもうしたて)

裁判の公平さを欠けさせるような者を、その者の職務から外すことが出来ること。
実写ドラマ版では、度々真相を暴こうとする入間に対し、隠蔽しようとした検察などが忌避申し立てを行なっている。なお、裁判官以外にも書記官なども忌避申し立てをされれば、職務から外されることになる。

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