YAIBA（ヤイバ）のネタバレ解説・考察まとめ

『YAIBA』の概要

『YAIBA』とは、青山剛昌によるサムライ冒険漫画である。青山剛昌は、本作のインスピレーションの元になった作品として1981年の映画『魔界転生』を挙げている。1988年から1993年まで『週刊少年サンデー』で連載されていた。現代の日本を舞台に、天下一のサムライを目指す少年・刃と剣の魔力で鬼になった鬼丸との戦いを描いている。戦いを通して刃や仲間たちが成長していく様もこの漫画のおもしろさのひとつである。宮本武蔵や佐々木小次郎や柳生十兵衛といった実在した剣豪をモデルとしたキャラクターや、カエル男やクモ男など動物や虫を擬人化したキャラクターが数多く登場する。主人公の刃が、父親と剣の修行をしていたジャングルから日本に帰国したことにより、父親のライバルの娘・さやかたちとの冒険が始まる。 さやかの通う中学の先輩である鬼丸が、彼の家に眠っていた風神の剣の目覚めにより鬼となった。それ以降は伝説の魔剣や魔力により動物が変身させられた魔物の登場等によって、現代的な冒険ファンタジー風に物語が展開されていく。 1993年、第38回小学館漫画賞児童部門受賞。また、1993年には『剣勇伝説YAIBA』としてテレビアニメ化され、2024年にも物語の最初から再アニメ化される。同タイトルでゲーム化もされている。単行本は全24巻のほかワイド版、文庫版、新装版が発売された。

『YAIBA』のあらすじ・ストーリー

始まり

主人公の鉄刃（くろがねやいば）は、父・剣十郎（けんじゅうろう）とジャングルで暮らしていた。
ある日、彼らは日本に帰国し、父・剣十郎のライバル峰雷蔵とその娘さやかの家に居候をすることになった。さやかと同じ中学に通うことになった刃の前に、ライバルとなる鬼丸が現れる。

彼は、実家の道場の地下にある先祖から伝わる風神剣（ふうじんけん）を手にし、その力に飲み込まれ鬼と化してしまう。鬼丸は、鬼となり邪悪な心に支配され、強大な力を得た。
刃は、鬼丸（おにまる）の風神剣と対となる雷神剣（らいじんけん）を持つ老人・宮本武蔵のところへ向かい、厳しい修行を開始する。刃は、雷神剣を狙って次から次へと襲ってくる鬼丸の刺客・八鬼を倒していく。

必殺「かみなり斬り」をひっさげて、ついに鬼丸城に攻撃を仕掛ける刃たちは、鬼丸四天王を倒し鬼丸と一騎打ちとなった。しかし刃は戦いの最中、剣にはまっていた「雷神の玉」を鬼丸に奪われてしまう。
一方、鬼丸も戦いで風神剣が折れてしまい、勝負はつかないまま逃げられてしまう。

偶然にさやかの家から日本全国にちらばる伝説の玉の地図をみつけた刃は、空中を自由自在に飛び回れるという伝説の「龍神の玉」を求め、武蔵たち仲間と冒険の旅に出た。

龍神の玉編

龍神の玉探しの旅に出た刃たちに対し、鬼丸は過去の剣士を蘇らせ、妨害しようとする。

琵琶湖にて水の玉を探し当てた刃たちの前に、鬼丸の配下であるクモ男と三好清海入道が現れたが、刃に倒される。そのいざこざの最中、クモ男に龍の玉のことを知られてしまい、鬼丸にも伝わってしまった。
続いて四国では変身できる金の玉、阿蘇山では火を使える赤龍の玉を手に入れる。

天下の大泥棒、石川五右衛門が刺客として現れ、刃たちの玉の地図を盗む。地図を取り返すため、大阪城に潜入した刃たちは、ひょんなことから石川五右衛門と奈良にある玉を探しに行くことになる。
その先で、玉が額にはまっている巨大な大仏と闘うことになった。戦いの結果、大仏の額から玉が外れる。それは巨大化できる大仏の玉だった。

一行は残りの玉を探しに新潟へと向かった。その道中で、鬼丸の手によって蘇った柳生十兵衛と出会った。しかし彼は鬼丸の命をすっかり忘れているようで、刃たちと行動を共にするようになる。
刃たちは、玉を打っているお店にたどり着くが、先回りして玉を手に入れていた石川五右衛門と戦いになる。
刃は、仲間の助けや、今まで手に入れた玉を駆使して勝利する。そこで手に入れた玉は、夢や希望を持った人を吸い込む闇の玉だった。剣に玉をはめた刃は、十兵衛と一緒に玉に吸い込まれてしまった。
玉の中で、ケロ介という巨大河童の守る滝の裏に出口があるということが判明する。ケロ介は強敵だったが、新技「風車（かざぐるま）」を編み出し、十兵衛と力を合わせて勝利する。

刃たちが玉の中にいる間に、さやかたちは、次の玉を探して北海道にきていた。そこには、鬼丸の命でひたすら玉を集める弁慶がいた。彼の集める多数の玉の中から目当ての玉を発見する。
弁慶とさやかたちが戦っているところに、闇の玉からの脱出に成功した刃と十兵衛が現れた。刃が、弁慶が持っていた氷の玉を使って彼を倒すことに成功した。

7つのうち6つの玉を手に入れた刃たちは、いよいよ次は龍神の玉だろうと意気揚々と青森に向かった。
旅をしていると、玉がたくさんある寺へと案内してくれる親切な老人と出会った。彼の正体は、鬼丸の刺客の松尾芭蕉だった。
刃たちが複数の玉の中から狙いの玉を見つけると、本性を現し玉を奪おうとしてきた。刃たちは苦戦を強いられるが、最終的には芭蕉を闇の玉へ封じ込めることができた。
そしていよいよ玉を剣にはめてみると「大当たり～」と玉がしゃべりだしたのである。その玉は、刃たちに他の6つの玉のことや龍神の玉の在処などを教えてくれた。

当たりの玉によって龍神の玉は、富士山の火口にあるということがわかったので、富士山へと向かうことにした。
その頃、鬼丸も城を富士山の火口へと着陸させていた。刃たちはなんとか鬼丸城に潜入して、ダストシュートから火口へと降りて行った。そこには、龍の玉へと続く扉があったのだが、今まで集めたすべての玉を扉にはめないと開かない仕掛けになっていた。
刃は意を決して全ての玉を置いていき、扉の向こうへと進んだ。

中に入ると龍神からの数々の難題が課せられた。仲間のおかげもあり、刃はなんとか最終ステージまでたどり着くことができた。
龍神からの最後の問いは、「仲間」か「龍神の玉」か、どちらを選ぶか決めろというものであった。彼は、「仲間」を選んだ。その瞬間、龍神の玉は砕け散ったように見えたが、刃の雷神剣にはまっていたのだ。
龍神は、刃の「正義の心」を試したのである。龍神に認められた刃は、無事に龍神の玉を手に入れることができた。

かぐや編

龍神の剣の復活と共に、刃の新たな敵となるかぐやという敵が現れた。彼女は、千年前に龍神によって倒された月星人の女帝。龍神のパワーを感知してまた地球を乗っ取ろうと出現したのである。
刃はかぐやに戦いを挑んだが全く歯が立たなかった。かぐやが刃にとどめを刺そうとした瞬間、彼女は苦しみ徐々に老いていった。そのすきを見て刃は退却した。
かぐやは、24時間毎に若い女性の精気（エキス）を取り込まないと老婆になってしまう弱点があった。刃は、龍神のパワーを120%出せる体力をつける為に武蔵の指導のもと修行に励んでいた。

今から千年前、月から地球を乗っ取ろうと襲来したかぐや。それに対し、都の人々は古来から日本に伝わる3つの宝（絶対に燃えない火の衣、金を実につける銀の樹、空を自由に舞える龍神の玉）をあげるかわりに、月へ帰ってくれないかと提案する。
興味をしめしたかぐやは、数日宝が揃うのを待つことにした。一人の男が龍神の玉を探し出し持ってきたが、かぐやは偽物ではないかと疑い、本物であるという証拠をみせてみろと主張した。
その言葉が仇となり、玉を持ってきた男は龍神の玉のパワーを使ってかぐやを日本から追い出したのである。その男が初代龍神である。そのことを根に持っているかぐやは、龍神の玉を引き継いだ刃を倒すことに必死になった。

鬼丸とかぐやが激突する。鬼丸が、戦いの最中に女性のエキスが切れたかぐやの隙をついてとどめを刺そうとする。しかしそこで月星人たちが開発したカーボンフリーズ砲によって、鬼丸はカーボンの板の中に閉じ込められてしまった。
そこに現れた刃が、鬼丸を奪い取り峰家へ持ち帰った。かぐやは、部下のマンゲツやハンゲツを刃の元へ送り込むが負けてしまう。部下たちが倒される中かぐやたちは、さやかをさらうことには成功していた。

さやかのエキスを吸おうとしてかぐやは、さやかが龍の巫女の血を引く娘だと気付く。龍の巫女の血を引く娘のエキスを吸うことで、かぐやは強大な力を秘めた元の姿に戻れるのだ。元の姿に戻りかけた時に、刃が現われさやかを連れ去ってしまったが、かぐやは入念に作戦を練り直すために母船へ帰還した。

千年前、かぐやが戯れで合体した女性が、龍王に仕える龍の巫女の身体だったのだ。また龍神は、月星人が合体中に耳を切られると元の姿に戻れなくなることに気付いていた。
龍神によって耳を切られた彼女を元の姿に戻せるのは、千年後に現われる龍の巫女の末裔だけなのだ。かぐやは、耳を切られた影響でエキスを取らないと生きながらえられない身体になってしまったのである。

エキスを取りながら千年生き延びたかぐやは、さやかを捕らえて本来の姿に戻ろうとする。そのためにかぐやは、月を乗っ取ろうと反乱を起こし牢屋に入れられていたツキカゲの兄弟でもあるゲッコーを開放することにした。
ゲッコーもまた千年前に龍神に右目を奪われ彼に恨みをもっていたので、龍神の後継者である刃を倒して、さやかを奪ってくることを了承した。

ゲッコーは、峰家を襲撃したが刃との戦いで苦戦した。彼は、刃に勝つために邪悪な魔王剣（まおうけん）を復活させた。魔王剣は、月を死の星に変えた魔剣なのだ。
刃たちは、魔王剣を持って再び現われたゲッコーとの戦いに敗れてしまった。ゲッコーが、刃にとどめを刺そうとした時、さやかが刃の前に立ちふさがり一緒にかぐやの元へ行くから仲間にはこれ以上手を出さないで欲しいとお願いした。
そしてゲッコーは、さやかをかぐやの元へと連れていった。

刃一人の力では勝てないと判断して、カーボンの板を破壊し、鬼丸を復活させる。刃から状況を聞いた鬼丸は魔王剣の存在を知り、その剣を手に入れる為、刃たちに協力することにした。

かぐやたちは、鬼丸と協力した刃に再びさやかを奪われてしまう。しかしツキカゲによってまたもさやかを連れ去られてしまい、今度はかぐやにさやかのエキスを吸われてしまった。
かぐやは本来の強大な姿になり、さやかは100歳の老婆になってしまったのだ。さやかは、その姿を刃に見られたくなかったが、彼は「これからもずーっとずーっと、大好きだからな」と言う。そしてまた刃は鬼丸とともにかぐやと戦い始めた。

鬼丸との合わせ技である風雷波を繰り出すも、その衝撃で刃の雷神剣が手から抜け落ちてしまった。そしてその隙にかぐやが雷神剣をのみ込んでしまった。刃の手元には龍神の玉しか残っていない。
すると鬼丸が、風神剣を刃に投げ渡した。刃は風神剣に龍神の玉をはめてかぐやに挑んだ。その間、鬼丸はゲッコーから魔王剣を奪っていた。刃は、7つの玉のパワーを合わせてとどめの一撃を出すも、かぐやの一撃と互角になる。

鬼丸も魔王半月剣で加勢するが、かぐやは倒れなかった。なんとしても龍神である刃を倒したいかぐやは、全月星人たちと一緒に地球と合体し始めたのである。さらに巨大になったかぐやに、刃は死ぬ気の一発を放った。
かぐやが地球と合体していた為その一撃で地球が爆発すると思われたが、全衝撃をかぐやが吸収し彼女の愛する美しい地球を守ったのだ。また刃の一撃によってかぐやを地球に封じ込めることができた。

しかし人類がまたむやみに地球を荒らせば再びかぐやは目を覚ますかもしれない。そこに突然雨が降ってきた。それはかぐやが女性たちから吸ったエキスだったのだ。
その結果、さやかをはじめエキスを吸われて老婆になっていた女性たちが若さを取り戻すことができた。

鬼丸は、傷が治ったら刃の命を魔王剣でもらいにくるからなと言い残し去って行った。

ピラミッド編

日本各地で、大型の地震と陥没事故が相次いだ。そんなある日、刃の前に剣がまったくきかない堅い身体をした岩のような岩石戦士が現われた。敗北した刃は再戦で勝利するため、修行をする。地震が続く中、関東平野にピラミッドが出現した。それは先日の岩石戦士たちの戦略であった。

再び現われた岩石戦士に対し、修行で新技「十文字切り」を身に着けた刃はその技で相手の身体を砕く。そこで岩石戦士から「日本を沈めるための装置はすでに作動している」という衝撃の事実が判明する。そして岩石戦士が刃とともに自爆しようとした時、エメラルドという少女が現われ刃を救う。
エメラルドは装置を止める為に刃に力を貸してほしいと頼んできた。そして傷を負っている刃を抱きしめた。すると彼女のパワーで刃の傷が治ったのである。刃は、彼女と一緒に装置を止めに行くことを決意した。

ピラミッドで数々の戦士と戦い勝ち進んだ刃たちは、日本を沈める装置がある部屋のひとつ手前の部屋まで辿り着く。そこに待ち受けていたのは、エメラルドにそっくりな3人の少女たちだった。彼女たちの説明によると、エメラルドはボスに記憶を消され刃の案内役を演じていたということであった。しかしまだ記憶が戻らないエメラルドは、そのことがわからない様子だった。そして刃と3人の戦士たちの戦いが始まった。

力の戦士ルビー、技の戦士サファイヤ、頭脳の戦士ダイヤモンドの3人は強敵だった。しかし苦戦しながらもルビーとサファイヤを倒す刃。残るダイヤモンドは無敵の戦士を名乗る程の強さがあった。エメラルドがダイヤモンドからの攻撃を受けてしまう。
そして切り口から彼女が機械だということを知った。またエメラルドはダイヤモンドからの攻撃による衝撃で、記憶をとり戻して刃の敵になった。エメラルドは、防御の戦士だったのである。

攻撃や動きを読むダイヤモンドに対抗するため、風神の剣と雷神の剣に宿る鬼たちにわざと自分の身体を乗っ取らせる刃。鬼に乗っ取られた刃の動きを分析できず苦戦したダイヤモンドとエメラルドは、意識を取り戻していたサファイアとルビーと4人で同化し、パーフェクト戦士ジュエルに変身した。

ジュエルとの戦いに苦戦する刃は体力を使い果たしかけていた。ジュエルにとどめをさされそうになった時、雷神剣と風神剣が一本の剣になったのだ。
二本の剣が一本になったことによって、二本の剣の力を同時に使えるようになったことによってパワーアップした。そしてジュエルを倒し同化していた4人が分離した。
防御の戦士であるエメラルドは、他の3人よりも防御能力が高いので生き残っていた。刃からの攻撃により記憶が混乱しているエメラルドは、再び刃の傷を回復させて、装置のある部屋へと案内してくれた。

ピラミッドの最上階には、日本を海底深く沈める超重力装置があった。装置につけられた防御装置により、エメラルドが破壊されてしまう。
刃は、彼女を守れなかった悔しさで一心不乱に剣を振って、超重力装置を壊すことに成功した。

地底世界編

今度は、世界中に黒いピラミッドが出現した。ピラミッドは知の民によって作られたものである。刃たちは、地上に出てきていた地の民を捕まえて、地底に潜入することに成功した。
地の民は、侵入した刃たちにゴールドーとシルバーという二体の巨大な一つ目の敵を出してきた。刃は弱点の目を破壊することでシルバーを倒す。しかしゴールドは全身に攻撃が効かず、攻めあぐねる。
そして倒したと思っていたシルバーまで復活してきたのである。

地上の環境破壊の影響を地の民は受けていた。地の民の長はその恨みと怒りを叫び、ゴールドとシルバーを奮い立たせる。しかし知能はあまりよくない彼らが急に喧嘩を始め、ゴールドがシルバーを切ってしまった。
その時、地の民の長の横にいた黒頭巾の男がゴールド剣を向けた。それは、鬼丸が持っている魔王剣だった。ゴールドの主人は、鬼丸だったのだ。
彼は、自身が天下を治めるために地の民の強大な科学力を利用しようとして手を組んだふりをしていた。そして彼はゴールドに魔王剣の魔力を注入し、邪悪な鬼に変化させて、地底国を闇に葬りさせようと企んだ。

地の民に、エメラルドのような悲しい戦士をもう作らせたくない刃は、地の民の為にゴールドを倒すことを決心した。
刃は、ゴールドがゴムのような身体をしていることを利用しての攻略をひらめく。彼はゴールドから離れた所で剣を地面に刺し、それに掴まってからわざとゴールドの伸ばした手に握らせた。それから剣を抜き、ゴールドの伸ばした腕が身体へと戻る勢いを利用して渾身の一撃を放ったのだ。

敵視していた刃に助けられた地の民の長が、「きさまら人間どもにもう一度チャンスをあたえる」と言い、世界中の黒いピラミッドを地上から消した。そして彼は、刃たちを地上へと戻した。刃たちを見て、人間が変わる可能性にかけてみたくなったのである。

ヤマタノオロチ編

地底から戻った刃とさやかは、久しぶりに中学校に登校した。学校の屋上で鬼丸の刺客の水の鬼神レインに襲われる。刃は何とかレインを倒すが、続いて峰家で炎の鬼神バーナーと戦うことになる。そして3人目の鬼神、闇の鬼神ダークより「関ケ原で会おう」と告げられる。

関ケ原へと向った刃たちは、倒れている僧侶と出会った。彼から、鬼丸が「封印の書」を手に入れ、全部で8つある「封じの岩」を砕いて回っていることを教えられる。
鬼丸は、昔ヤマタノオロチを日本列島に封印するために神々が八か所に分けて突き立てた剣を狙っていたのだ。その封印を解いてヤマタノオロチを復活させようと企んでいたのである。

関ケ原には「封印の書」が封印されている「封じの岩」があった。刃がその岩を切ろうとすると「我が血をひきし少年よ、さあふれるがよい、その自らの手で未来を切りひらくのだ」という声が、聞こえてきたのである。
刃が、岩に手を触れてみると真っ二つに割れて「封印の書」が出てきた。なんと彼は、スサノオの血を引いていて、声はスサノオのものであった。

刃たちは最後の剣が封印されている北海道へと急いだ。そこには氷に封印された剣があった。そこに鬼丸たちも到着する。闇の鬼神ダークのダークゾーンにのみ込まれ窮地に陥った刃に、初代龍神からの声が聞こえてきた。
彼は刃に、自分の力と覇王剣（はおうけん）の力を信じろと言った。

覇王剣とは、かつてスサノオがヤマタノオロチを封印するために天照大神から授かった剣である。二本に分かれていた雷神剣と風神剣が合体した剣が本来の形だったのだ。覇王剣と一体となった刃の一撃が、ダークのダークゾーンを消し去った。するとダークが最後の切り札であるデルタゾーンを出してきた。
それは二度と帰れない異空間への入口で、そこに入った者は誰も抜け出すことはできないのである。ダークが刃に向かってデルタゾーンを出した瞬間、龍神の亡霊が刃を助けに現われた。彼は、デルタゾーンに囚われていたさやかを救いだした。
最後の切り札を龍神に壊されたダークは、超デルタゾーンという技を出して、そこに龍神を閉じ込めた。龍神は、力を振り絞り超デルタゾーンごとダークへぶつかり彼を道連れに異空間へと姿を消した。

龍神を失いショックを受けている刃に小次郎が襲い掛かった。それは鬼丸の最後の鬼神である光の鬼神プラズマが、彼に化けていたのだ。刃たちはなんとかプラズマを倒すが、その衝撃で最後の剣の封印が解けてしまう。
鬼丸がその最後の剣を抜き、ヤマタノオロチが復活する。

鬼丸が刃に向けて魔王剣を振り、絶体絶命に陥るが、その瞬間に地の民が刃たちを地底へと移動させてくれた。そして地底の長は、刃の傷を癒してくれた。
また刃の持っている覇王剣で魔物の角を断ち封印した勇者の話をしてくれた。ヤマタノオロチは、角を断てば倒せるということが判明した時、かぐやが復活する。

かぐやは、刃や鬼丸たちの度重なる攻撃で大地が傷つき地球のバランスが崩れ息を吹き返したのだ。刃はすぐにでもヤマタノオロチの角を切りに向かいたいが、近づくことすらできない。
その時、さやかが自分の中にかぐやを封じ込めてヤマタノオロチに近づく案を出した。刃は反対するがさやかの一緒に戦いたいという気持ちを尊重することにした。
さやかは、地の民の科学力をかりて、かぐやの生命エネルギーを自身に封じ込めることができた。
かぐやは、刃たちのことも恨んでいたが、まずは彼女の愛する地球を傷つけている鬼丸を倒すために彼らに協力することにした。

さやかの身体をかりたかぐやと刃は、ヤマタノオロチの鼻先を目掛けて飛び出す。しかし頭が8つもあるヤマタノオロチになかなか近づくことができなかった。
そこでかぐやがわざと飲み込まれ、内側からヤマタノオロチの心臓を一時的に止めてみせた。しかしさやかの体では長時間は止められない。時間制限のある中、刃と鬼丸の戦いが始まった。

魔王剣と一体になった鬼丸は、月をも破壊する究極の魔剣「魔王満月剣」で一撃を放ってきた。刃はそれを覇王剣で受け止める。攻撃を凌いだものの、覇王剣に亀裂が入る。そして次の満月剣を受けた瞬間、覇王剣が砕け散ってしまった。しかし砕けた刀身の代わりに光の刃が現れる。それこそが覇王剣の真の姿だった。
それに対し、鬼丸も魔王剣を闇の刃に変える。激突する刃と鬼丸。刃は鬼丸の動きを見切り、彼の角を切る。しかしそこでかぐやが限界に達する。
ヤマタノオロチが動き出す直前、刃はヤマタノオロチの角を断つことに成功した。

ヤマタノオロチは、もがきながら元の日本列島の姿へ戻っていった。ヤマタノオロチが二度と蘇ることがないように、刃は覇王剣を大地に刺す。ずっと共にしていた愛剣と別れる刃。
一方、角を切られた鬼丸は、人間に戻り鬼になっていた時の記憶を失くしていた。そしてかぐやは、ヤマタノオロチの中で自分のことを叱咤激励し続けてくれたさやかの力を認め、地球征服をするのをやめた。
そして、かぐやたち月星人たちは、母星を人間がうらやむような緑の星に変えるために月へと帰って行った。

織田信長御前試合編

幾度もの戦いを乗り越え、元の生活に戻った刃。元の姿に戻った鬼丸は、3年間のイギリス留学に出ていた。
刃は、日本剣道選手権大会で優勝も果たし、日本一のサムライになった。刃たちは大会終了後、鉄グループという大企業の令嬢である諸羽（もろは）という少女と出会う。そこで彼女から聞いた話によると、彼女の父親は鉄剣十郎と言う名だが亡くなっていて、今その名を名乗っている男が父親を殺した人物だというのである。さらに彼女は刃の実の妹だった。

刃は、自分の父親が人を殺すような人には思えずその話を信じることができなかった。そこで諸羽から父親の敵であるその男と戦って、実の父親の敵を取ってくれないかと依頼される。刃は、受け入れることができず父親に会って本当のことを確かめると言ったが、放浪中の剣十郎の居場所がわからなかった。
すると諸羽が、探す必要はないと言った。もうすぐ開催される織田信御前試合という賭博（とばく）試合があり、そこに剣十郎が現われるので、諸羽が刃の出場を登録していた。ちなみにその大会の第一回優勝者は、宮本武蔵であった。

話し合いをしていると諸羽の母親が入ってきて、刃と再会したのである。しかし刃は、父親から母親はライオンに食べられて死んだと聞かされていたので受け入れることができなかった。
諸羽と刃が、織田信長御前試合に向おうとしていることを知った母親は、刃の身を案じて反対した。刃は屋敷を抜け出す前に母親にどうしても大会に参加してくると伝えにいくと、父親の木刀を差し出された。
それを持って真実を確かめてきなさいと送り出してくれた。

刃は大会を勝ち進み、決勝戦へ辿りつく。試合会場は、信長最期の地である本能寺を模した会場だった。そこに父である剣十郎が現われた。しかし戦う相手は彼ではなく、留学に行っているはずの鬼丸であった。
一刻も早く刃と決着をつけたい彼は留学をやめて、剣十郎を探し出し修行をしていたのだ。剣十郎から真実を知りたければ鬼丸を倒してこいと言われた刃と、彼を倒したい鬼丸との戦いが始まった。

鬼丸は、剣十郎から自分に欠けていたものを見出し、さらに強くなっていた。彼は剣十郎から「憎しみからは何も生まれない」と言われ、刃に対する憎しみを消すことができたのだ。

鬼丸に対抗するために刃はこれまでの戦いで会得しつつあった技、闘刃（とうじん）を使おうとするが、なんと鬼丸も同じ技を出してきたのである。心技体の全てを兼ね備えた鬼丸は強敵だった。
刃は鬼丸に勝てないかもしれないという気持ちから、戦うことへの恐怖に襲われてしまう。そんな刃の耳にさやかの声援が聞こえてきた。
その声をきいた刃は、さやかを守らなくてはいけないという気持ちで、恐怖から立ち直ることができたのである。
刃は、鬼丸に背を向けて集中し、闘刃を一つにまとめてとびきりの一撃を放った。これにより、刃は勝利し、優勝を果たす。

そして剣十郎から家族についての真実を知らされたのだ。母親がライオンに食われて死んだというのは嘘で、諸羽の母親が刃の本当の母親であった。
また母親も夫と息子を失った怒りや憎しみから、娘に嘘をついていたのである。刃たち家族は、それぞれ真実を知り誤解が解けてまた家族ひとつになれた。

侍たちの未来

御前試合を制した後、刃は武蔵たちと共に再び旅に出立。何か思うところあってか、さやかは置いていかれることとなった。
そして3年。小次郎はチャンバラを得意とするアクション俳優としてデビューし、十兵衛は1人修行の旅を続ける。いつか再び刃と勝負して今度こそ勝利するため、鬼丸もまたひたすら剣の修行に明け暮れていた。学生として普通に過ごしていたさやかは、ある時かつて刃たちと共に繰り広げた大冒険に思い馳せ、「どうして自分は置いていかれたのか」と涙を流す。

そんな時、教室の窓をぶち破って刃が登場。彼は「とんでもない敵と戦いになって、武蔵たちが捕まってしまった」と大騒ぎし、さやかに一緒に来てほしいと言い出す。事情がさっぱり飲み込めないまま、それでも「刃が迎えに来てくれた」、「コイツはやっぱり自分がいないとダメなんだ」と喜んださやかは刃の手を取り、彼と共に新たな冒険へと繰り出す。
刃が沖縄の海の中から見つけたという魔剣クサナギに乗って、2人は天高く飛び出していく。「どこに行くのか」と問うさやかに、刃はあっけらかんと「火星」と答え、その途方もないスケールに彼女を絶句させるのだった。

『YAIBA』の登場人物・キャラクター

主要人物

鉄 刃（くろがね やいば）