ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』とは2011年のアメリカのドラマ映画。監督はスティーブン・ダルドリー。原作はジョナサン・サフラン・フォアの同名小説。9.11のアメリカ同時多発テロで父親を失ったアスペルガー症候群の傾向を持つ10歳の少年オスカーの葛藤と成長を描いたストーリー。オスカーと母が家族の理不尽な死と向き合い、愛情によって親子関係を修復し、絆を強めていく。映画評論家の反応は賛否両論であり、アメリカの有名な賞にノミネートこそしたが、ほとんど受賞を逃した。
評価がわかれた本作であるが、つまらないと感じた多くの人がラストで母・リンダが先回りしてブラックさん宅にオスカーが訪問することを伝えておいたことをオスカーに伝える点がよくなかったとしている。
映画では原作にはない母親のネタ晴らしを作品の山場を作るために盛り込んだが、リンダが最後に全部見守っていたことをオスカーに告げるシーンは、オスカーのプライドを傷つけるとして非常に評判が悪かった。
このネタ晴らしを不快だと感じる人がいる一方でこんな意見もある。
オスカーは10歳という難しい年齢である。思春期の前、親にまだまだ甘えたい、頼りたいと思う半面、だんだん親が疎ましくなる両方の気持ちを併せ持ち、人生経験の少なさからその気持ちをどう処理していいか自分でもわからないというような矛盾を抱えている年齢である。
その年代の子供というのは“冒険→確認→安心→反抗→冒険→確認”を繰り返しながら成長していく。
なので母親がいつも見守ってくれていたということでオスカーは安心感を感じ、また次の冒険へ向かっていけるようになるのだ。
この映画の焦点が「オスカーが大好きな父の死を乗り越える過程と、彼を取り巻く周りの人の愛情(とりわけ家族の愛情)」に焦点が絞られているため、オスカーが母親が常に見守っていてくれたこと知り、愛情を感じては母と和解するところを盛り込むために母親のネタ晴らしは必要不可欠である。
議論を呼んだ映画の長いタイトルとその意味
「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」という長いタイトルが話題になった本作であるが、これはオスカーが鍵の調査の記録用のノートのタイトルである。
このタイトルの意味が何を示しているかも議論を呼んだ。
オスカーから見たトーマスとリンダのこと
父・トーマスは亡くなってからもオスカーの記憶の中で雄弁に語り続ける。記憶から薄れていくことはない。母・リンダにしてもオスカーが出かけるたびにいつももの言いたげな目で見つめてくることを鬱陶しく思う。
トーマスは亡くなってからもブランコにメモを残してくれたし、リンダはブラックさん探しの際にいつも見守っていてくれた。
二人ともありえないほど近くに寄り添っている。
そんな両親を多少げんなりした思いも含めて、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」とした。
鍵探しをしたオスカーの感想
「ものすごくうるさくて」というのはオスカーをパニックにさせる街の騒音のこと。
「ありえないほど近い」というのは鍵の持ち主のこと。
400件以上のブラック家を訪ねたのに、鍵の持ち主は1件目の家の人物だったから。
人の温かさを揶揄した表現
オスカーにとって街やそこにいる人と言うのは、とてもうるさくて苦手なものだったが、本当は自分と同じように9.11のテロ事件でみんな大切な何かをなくし、悲しんでいた温かい人たちだった。オスカーが会ったどのブラックさん達も温かく、オスカーに寄り添ってくれた。その人の思いやりを揶揄した表現である。
テロ事件そのもののこと
父が亡くなってからオスカーを襲い続ける、悲しみや後悔や不安という騒音のようなもの。
父の留守番電話のメッセージの声や、イライラさせる街の喧騒、人と接するのが苦手なのに対話したブラックさんたちの声などがオスカーの頭でなり響いていた。
オスカーの頭の中で響いていた音
飛行機が突っ込む音、救急車のサイレンの音、ビルが崩れる音など騒音、騒動がかなり身近なところで起こったということ。
オスカーのマンションはマンハッタンのブロードウェイ
シェル家のマンションの住所は 215 West 98th Street and Broadway, Manhattan.
オスカーが意を決して、タンバリンを鳴らしながら走る様子が撮られた場所はマンハッタンブリッジ
オスカーがタンバリンを鳴らしながら心を落ち着けて走る姿が映し出された印象的なシーンが撮られた場所。
勇気をだして恐怖を克服した大事な場所である。
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の主題歌・挿入歌
主題歌:アレクサンドル・デスプラ『Extremely Loud And Incredibly Close』
予告編でのみ使われた主題歌:U2『Where The Streets Have No Name』
『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の関連映像
予告編1
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目次 - Contents
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の概要
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』のあらすじ・ストーリー
- 「調査探検」と父の死
- 鍵の発見と手がかり
- 「ブラック」と謎の鍵
- 祖父母と最後のヒント
- 鍵の秘密と「調査探検」の結末
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の主な登場人物・キャラクター
- オスカー・シェル (演: トーマス・ホーン)
- トーマス・シェル(演:トム・ハンクス)
- リンダ・シェル(演: サンドラ・ブロック)
- 間借り人(演:マックス・フォン・シドー)
- オスカーの祖母 (演:ゾーイ・コールドウェル)
- スタン(演:ジョン・グッドマン)
- 鍵屋 (演:スティーヴン・ヘンダーソン)
- アビー・ブラック (演: ヴィオラ・デイヴィス)
- ウィリアム・ブラック(演: ジェフリー・ライト)
- ハゼル・ブラック(演: ヘイゼル・グッドマン)
- バーテンダー(演:ウィリアム・ユーマンズ)
- 先生(演:スティーヴン・クンケン)
- 警備員 (演:エヴァ・カミンスキー)
- 少女(演:ベイリー・グレイ)
- 馬屋の少女(演:クロエ・ローイ)
- アストリッド・ブラック (演: ブルック・ブルーム)
- 牧師(演:デニス・ハーン)
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の用語
- アスペルガー症候群
- 調査探検
- 幻の第6区
- セントラルパーク
- アメリカ同時多発テロ事件
- ワールドトレードセンター
- キング牧師の日
- コミコン
- 矛盾語法
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- トーマス「簡単だと、見つけ出す価値がない」
- オスカー(ナレーション)「もしも太陽が爆発しても、僕たちが爆発に気づくのは8分後だ。光が地球に届くには時間がかかるからだ。8分間の間、世界は明るく、暖かさを感じている。パパが死んでから1年がたった。パパとの8分間が消えていくのを感じる」
- オスカー「よく言われると思うけど、もし辞書で“信じられないくらい美しい”という項目を引いたら、あなたの写真が載ってるでしょうね」
- リンダ「どんなに努力してもわからないのよ。なぜなら、それは…理屈じゃ分からないことだからよ!」
- オスカー(手紙)「お知らせします。あの鍵は僕にとって重要なものではなく、ウィリアム・ブラックさんにとって重要なものでした。とても失望しました。でも、本来の持ち主に返せて本当によかったです。そして、何も得られないよりも、失望を得られた方がよかったと思っています」
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- つまらないという評価の原因は母親のネタ晴らし
- 議論を呼んだ映画の長いタイトルとその意味
- オスカーから見たトーマスとリンダのこと
- 鍵探しをしたオスカーの感想
- 人の温かさを揶揄した表現
- テロ事件そのもののこと
- オスカーの頭の中で響いていた音
- オスカーのマンションはマンハッタンのブロードウェイ
- オスカーが意を決して、タンバリンを鳴らしながら走る様子が撮られた場所はマンハッタンブリッジ
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:アレクサンドル・デスプラ『Extremely Loud And Incredibly Close』
- 予告編でのみ使われた主題歌:U2『Where The Streets Have No Name』
- 『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』の関連映像
- 予告編1
- 予告編2