パターソン(映画)とは【ネタバレ解説・考察まとめ】

『パターソン』とは、2016年に公開されたアメリカ映画。詩を書くことを趣味としているバスの運転手の日常を描いたヒューマン・ドラマである。ニュージャージー州に住むパターソンは毎朝、隣で眠る妻のローラにキスをしてから仕事に向かう。そしてひらめいた言葉や浮かんだ思いを、勤務中に人知れずノートに書き留めていく。帰宅して妻と夕食を共にし、愛犬の散歩中バーに立ち寄り一杯だけ飲んで自宅に帰る。平凡で変わりのない日常の中で、思いがけない出会いや交流を描いた7日間の物語。

『パターソン』の概要

『パターソン』とは2016年にアメリカで公開された、何気ない日常を描いたハートフルなヒューマン・ドラマである。
バスの運転手のパターソンは、ニュージャージー州のパターソン市に住んでいる。パターソンという名前はニックネームではなく彼の本名だ。
パターソンの一日の始まりは、隣で眠る妻のローラにキスをすること。それから朝食をとり仕事に出かける。
バスの運転席に乗り込んだパターソンは、いつものルートを走り出して行く。パターソンの趣味は詩を書くことだった。バスの運転中、乗客の何気ない会話から着想を得て、心に浮かんだ言葉などをノートに書き留めていた。
仕事を終えたパターソンは自宅に帰り、ローラと夕食を共にする。その後は愛犬マーヴィンの散歩に出かけ、途中立ち寄ったバーでビールを一杯だけ飲み帰宅する。
何の変哲もない平凡な毎日を好んで過ごしているパターソン。
そんな変わり映えのない暮らしの中で、一癖ある人々との交流や思いがけない出会いを描いた物語である。

一見するとありふれた日常だが、パターソンはそんな日常の中にこそ輝きがあることを知っている。見過ごしてしまいそうなものや出来事に、感性を研ぎ澄ませられる術を持っているパターソン。
些細なことでも美しい詩に昇華させることが出来る彼にとって、毎日は奇跡に溢れているのだ。

パターソンを『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のアダム・ドライバー、妻のローラを『彼女が消えた浜辺』のゴルシフテ・ファラハニが演じている。
監督を担当したジム・ジャームッシュが4年ぶりに手掛けた長編映画である。

パターソンを演じたアダム・ドライバーは、第20回トロント映画批評家協会賞と第21回ロサンゼルス映画批評家協会賞で、最優秀男優賞を受賞している。

『パターソン』のあらすじ・ストーリー

パターソンの一日

月曜日

ニュージャージー州パターソン市に住むパターソンは、バスの運転手をしている。パターソンというのはニックネームではなく本名だ。
パターソンは毎朝6時15分頃、決まった時間に起きて、隣で眠る妻のローラにキスをする。ローラは寝ぼけ眼で「素敵な夢を見た。私たち子供が2人いるの。双子よ」と言った。

パターソンはベッドから出てキッチンに向かい、朝食をとる。そしてテーブルに置いてあったマッチ箱を手に取り眺めていた。
まだ眠っているローラを起こさないようにそっと玄関のドアを閉め、仕事へ向かう。
バスの運転席に座り、今朝見たマッチ箱のパッケージについて詩をノートに書き留めた。パターソンは、パッケージの文字がメガホンのようなデザインになっている所がとても美しくて気に入っているという。 パターソンは、インスピレーションを受けたり心に芽生えた感情などをいつも詩にしている。
朝ローラに言われたからか、やたらと双子を見かけるような気がしていた。

仕事を終え帰宅するパターソン。淡々としているパターソンとは正反対の妻のローラは、カーテンを作ったり絵を描いたりと好奇心旺盛な性格だった。ローラは、詩を書くパターソンに「あなたの詩を世に出すべきよ」と強く勧める。
クリエイティブな2人ではあるが、何かを作り出し外に発信するローラに対し内省的なパターソンは、詩を発表する気はないようだった。

夕食の後、パターソンは愛犬マーヴィンの散歩に出かける。そして行きつけのバーに立ち寄り、オーナーのドクと雑談を交わす。ビールを一杯だけ飲み自宅へ帰って行った。

火曜日

いつもの時間に起きたパターソンはベッドから起き上がり、ローラにキスをして布団をかけ直してやる。ローラは「古代ペルシャにいる夢を見たわ」と言った。
パターソンは朝食のシリアルを食べて仕事へ向かう。運転席に座り、出発前にノートに詩を綴る。運転中パターソンは、乗客達の会話を聞くともなく聞きながらひっそりと笑ったり、険しい顔になったりしていた。

自宅に帰ったパターソンが地下にある部屋で詩を書いていると、ローラから呼び出される。2つ話があると言ったローラはパターソンに「お願い。詩のコピーを取って。あなたの詩は素晴らしい。自分でもいつか発表したくなるかも」と懇願する。1年間頼み続けているようだったが、パターソンは渋り続けていたのだ。パターソンは断り切れなくなり、「週末にコピーを取るよ」と言って、とうとう承諾した。
「もう1つの話は?」と聞くパターソンにローラは、シンガーを目指すからギターを買いたいと言った。「君ならなれそうだ」とパターソンは微笑む。

マーヴィンの散歩に出かけるパターソンは、いつものバーに立ち寄る。そこで、仲がこじれた恋人同士の痴話喧嘩に遭遇する。パターソンは黙ってことの成り行きを見守っていた。

水曜日

いつもの時間にいつものように起きてパターソンが朝食をとっていると、ローラが起きて来た。「起きるの?」と聞くパターソンにローラはキスをして、寝ぼけたまま寝室に戻って行った。

パターソンが仕事を終えて家に帰ると、ローラが部屋の柱やドアをペイントしていた。そして「詩は書けた?」とパターソンに聞く。パターソンは「少しね。君への詩だよ」と答え、「マッチ箱に触発されたんだ」と話す。するとローラが「メガホン型の文字のことは?」と尋ねた。「ああ。入ってる」とパターソンは答えたが、着眼点が同じであることに一瞬驚きのような表情を見せた。
ローラは「なんて素敵なの。読むのが待ち遠しい」とうっとりしていた。

マーヴィンの散歩中、パターソンはコインランドリーでラップをしている男に出会う。
「物事がなければ観念はない」と男が口にしたリリックに思わず立ち止まり、聞き入るパターソン。男のラップに興味を持ったようだった。
男に気付かれたパターソンは顔を出し、「失礼。君の詩が面白いからつい」と立ち聞きを詫びた。そして「君のスタジオ?」と、コインランドリーを見渡しながら尋ねる。ラッパーの男は「詩の浮かんだ所がスタジオさ」と答えた。
それからパターソンはいつものバーに寄ってビールを一杯飲んだ。

木曜日

目を覚ましたパターソンが枕元に置いてある腕時計を確認すると、6時半になろうとしていた。ローラはまだ眠りの中にいるような顔で「夜帰って来た時のあなたの匂いが好きよ」と言った。

いつもどおり仕事に向かうパターソン。
パターソンが運転するバスに、市民に銃を向けたイタリア国王について話す学生が乗り込んできた。パターソンは学生たちの会話に耳を傾けていた。

仕事を終えたパターソンは1人の少女と出会う。少女はノートに詩を書いていた。パターソンが興味を示すと、少女は自作の詩を一つ読み上げる。
「水が落ちる。明るい宙から長い髪のように。少女の肩にかかりながら。水が落ちる。アスファルトの水たまりは汚れた鏡。雲やビルディングを映す。水は私の家にも母にも私の髪にも落ちる。人はそれを雨と呼ぶ」。
パターソンは黙って聞いていた。そして「素晴らしい。とても美しいよ」と少女の詩を称えた。
少女の母親と姉が迎えにやって来て、別れの挨拶を交わす。少女が去った後パターソンは「水が落ちる。明るい宙から」と呟いた。

帰宅してローラと夕食を共にし、マーヴィンの散歩中にいつものようにバーに立ち寄るパターソン。オーナーのドクと楽しく会話をしていると、ドクの妻がバーにやって来た。貯めていたへそくりをドクが盗んだことに対し、妻は憤怒している。パターソンは気まずそうに2人を見つめていた。

金曜日

パターソンが目を覚ますと、隣にローラの姿がなかった。ローラは早起きして、バザーで販売するカップケーキを作っていた。

この日、パターソンが運転するバスが故障し途中で止まってしまう。携帯電話を持っていないパターソンは乗客から借りて、会社に報告を入れる。代替えのバスを呼んで事なきを得るのだった。

疲れた様子でパターソンが帰宅すると、ローラがギターを持って練習していた。そしてパターソンに歌を披露する。ローラが弾き終えると、パターソンは笑顔で拍手を送る。
ローラが「なんだか疲れた顔ね」と心配そうに声をかけると、「バスが故障したんだ。電気系統のトラブルらしい」とパターソンが話す。「無事でよかった」と安心した表情を見せるローラは、「緊急時のためにスマホを持ったら?」と提案する。しかしパターソンは「要らないよ。昔はなくても支障なかった」と断った。

マーヴィンの散歩に出かけたパターソンは、ドクのバーに寄る。パターソンがビールを飲んでいると、以前恋人とケンカをしていたマリーがやって来た。マリーはすでに関係を終わらせたつもりだったが、彼氏のエヴェレットの方はそのつもりがないようでいつまでも付きまとっていた。
エヴェレットがバーにやって来て「話がある」とマリーに持ちかけるが、マリーは聞く耳を持たない。するとエヴェレットがジャケットの裏から拳銃を取り出し自分の頭に突きつける。その瞬間、パターソンがエヴェレットに飛びかかった。そして手から落ちた拳銃をドクが拾い上げ、エヴェレットに向かって撃ち放つ。「バカもんが。客を帰しやがって」と吐き捨てるドク。それはおもちゃの拳銃だった。ドクに見透かされていたエヴェレットは力なく立ち上がり、「愛を失って生きる理由があるか?」と言い残し去って行った。
マリーは「ありがとうパターソン。勇敢なヒーローよ」とお礼を言う。
拳銃がおもちゃであるとは思っていなかったパターソンは、しばらく狼狽していた。

新しい日

土曜日

パターソンより早く目覚めたローラは、パターソンを起こす。帰りが遅かったパターソンを心配するローラに「バーで事件があったんだ」と、昨夜の出来事を話す。ローラは青ざめるが、「勇敢だったのね」とパターソンの行動を称賛した。

今日は市場でカップケーキを販売する日だった。たくさんのカップケーキを車に詰め込み、ローラは市場へ向かう。
休みだったパターソンは、部屋で詩を書いていた。
「僕のかわいい君。僕もたまには他の女性のことを考えてみたい。でも正直に言うと、もし君が僕の元を去ったら、僕はこの心をずたずたに裂いて二度と元に戻さないだろう。君のような人は他にいない。恥ずかしいけど」と書いている途中に、ローラが帰って来た。
カップケーキの売れ行きが好調だったようで、嬉しそうにパターソンに報告する。そしてそのお金で、ディナーに出かけて映画を観に行こうとローラは提案する。
パターソンは、ソファーにノートを置いたまま出かけて行った。

デートを楽しんだ2人が自宅へ戻ると、パターソンのノートが粉々に破れ散らばっている。マーヴィンの仕業だった。パターソンはただ呆然としてしまう。

日曜日

パターソンは、詩を書き溜めていたノートを粉々に噛み千切られたショックから立ち直れずにいた。パターソンはマーヴィンを見つめ、思わず「お前なんか嫌いだ」と呟く。
ローラは罰としてマーヴィンをガレージに閉じ込めた。落ち込むパターソンを気遣うローラ。パターソンは「いいんだ。ただの言葉さ。いつかは消える」と話す。
「もし独りになりたいなら私出かけるわ」と言うローラに「そんなこといいよ。僕が出かける。散歩してくるよ」と言って、パターソンは家を出た。

パターソンはただただ歩き続けた。すると、エヴェレットに偶然出くわす。エヴェレットは、「この前はすまなかった。完全に正気を失っていたよ」と言ってパターソンに詫びた。「もう落ち着いたか?」とパターソンが尋ねる。浮かない表情のパターソンに気付いたエヴェレットは「どうした?元気ないな」と言った。「大丈夫だ」と答えるパターソンにエヴェレットは「昔から言うぞ。”何があっても日は昇りまた沈む” ”毎日が新しい日”」と言って元気付けた。

パターソンは、街の名所であるグレートホールズが見渡せる公園を訪れた。そこでパターソンは、1人の日本人男性に会う。
パターソンの座るベンチに腰掛けたその男性は、パターソンが敬愛する詩人、ウィリアム・カーロス・ウィリアムズの詩集を開いていた。この詩人がパターソン出身だったことから、男性が隣にいるパターソンに「あなたもパターソンの詩人ですか?」と尋ねた。「僕はバスの運転手だ」とパターソンが答える。それを聞いた男性が「とても詩的です。ウィリアムズが詩に書いたかも」と言うと、パターソンは笑顔を見せた。
男性は「詩は私のすべてです」と言い、自作もしていると言った。そして、「日本語で書いて翻訳はしません。詩の翻訳はレインコートを着てシャワーを浴びるようなもの」と話す。
パターソンは、その通りだと言わんばかりに楽しそうに笑い、「分かるよ」と言った。
「なぜパターソンへ?」とパターソンが男性に問うと、「興味深い詩人、ウィリアムズの街が見たかったんです。ここで暮らし、詩作に励んだんですよね?」と男性が言う。パターソンは「ああ。医師でもあった」と答えた。
「明日発ちます。会えてよかった」と男性が言う。パターソンは「僕も会えてよかった。いい旅を」と言って握手を交わした。男性の指には絆創膏が貼られてあった。
すると男性が、「贈り物です」と言って、一冊のノートをパターソンに渡す。そして「白紙のページに広がる可能性もある」と言った。
パターソンはまっさらなノートに視線を落とした後「ありがとう」と礼を言った。
パターソンはポケットからボールペンを取り出し、ノートの1ページ目に新しい言葉を綴っていく。

『パターソン』の登場人物・キャラクター

主な登場人物

パターソン(演:アダム・ドライバー)

ニュージャージー州パターソン市に住む、バスの運転手。
日々のルーティンを好み、淡々とした日々を過ごす。趣味は詩を書くこと。詩人は全員好きだが、特に好きな詩人はウィリアム・カーロス・ウィリアムズ。
毎日の些細な出来事からインスピレーションを受けて詩を書き綴っている。
妻のローラから詩の作品を発表した方がいいと言われるが、誰にも読ませたことはない。

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