ゼロ・グラビティ(映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『ゼロ・グラビティ』とは、鬼才アルフォンソ・キュアロン監督によって2013年に公開されたアメリカ映画。主演はサンドラ・ブロックとジョージ・クルーニーが務めた。宇宙で極限状況下に置かれた者たちのドラマを、VFXを駆使した3D映像でリアルな宇宙空間の臨場感を再現したSF・ヒューマン・サスペンス。スペースシャトルで船外活動中に予期せぬ事故によって宇宙空間へ放り出され、無重力の世界の中、救助も期待できない絶望的状況で漂い続ける2人の宇宙飛行士の運命を描く。
『ゼロ・グラビティ』の概要
『ゼロ・グラビティ』とは、2013年に製作されたアメリカ映画。宇宙という無重力(ゼロ・グラビティ)の世界の中、スペースシャトルで船外活動中に予期せぬ事故によって宇宙空間へ放り出され、救助も期待できない絶望的状況で漂い続ける2人の宇宙飛行士の運命を描いたSF・ヒューマン・サスペンスドラマ。VFXを駆使した3D映像でリアルな宇宙空間の臨場感を再現した。2013年8月27日より第70回ヴェネツィア国際映画祭のオープニング作品で先行上映された。アメリカ公開はワーナー・ブラザースの配給で同年10月4日、日本公開は同年12月13日。
製作は「ハリー・ポッター」シリーズのヘイデイ・フィルムス。監督・脚本はメキシコ出身で 「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」「トゥモロー・ワールド」を手掛けた鬼才アルフォンソ・キュアロン。撮影は「トゥモロー・ワールド」や本作を含めアカデミー賞を7度受賞しているエマニュエル・ルベツキが担当している。
主演は出演当時49歳と52歳の熟年コンビ。『スピード』で一躍有名になり、『あなたが寝てる間に…』『デンジャラス・ビューティー』の女優サンドラ・ブロックと、TVドラマ『ER緊急救命室』でブレイクし、『オー・ブラザー!』『オーシャンズ11』のジョージ・クルーニー。他の出演者はいずれも声だけの出演となっている。
第86回アカデミー賞では、9部門にノミネート。アルフォンソ・キュアロンの監督賞やエマニュエル・ルベツキの撮影賞など7部門で受賞した。
『ゼロ・グラビティ』のあらすじ・ストーリー
「地球の上空600km。温度は摂氏125度からマイナス100度の間で変動する。音を伝えるものは、何もない。気圧もない。酸素もない。宇宙で生命は存続できない。(オープニングナレーションより)」
自ら開発した医学用品がNASAに抜擢され、スペシャリストとしてスペースミッションに初めて参加した女性医療技師ライアン・ストーン博士は、ミッションの指揮を務めるベテランの宇宙飛行士マット・コワルスキーと若い宇宙飛行士のシャリフと共に、ゼロ・グラビティ(重力ゼロ)の宇宙空間でスペースシャトル『エクスプローラー号』の船外活動を行っていた。その最中、ヒューストンの管制から緊急の連絡が入る。それは、「ロシアが自国の人口衛星をミサイルで破壊し、その破片が別の衛星に次々に衝突したことで発生した新たな破片が猛烈な速さで『エクスプローラー』号に向かっている。すぐに船内に避難するように」というものだった。
3人は作業を中断して退避の準備を始めていると2個の衛星の破片がものすごいスピードで『エクスプローラー』号の脇をすり抜けて行った。ヒューストンからの連絡が途絶え始め、慌てて船内に戻ろうとしていたその時、大量の細かい破片が飛んで来て『エクスプローラー』号を直撃。シャリフは頭部を破片が貫通して即死。ライアンとマットは2人とも宇宙空間に投げ出されてしまった。ライアンはくるくると回転しながら宇宙空間に投げ出されたため現在位置が特定出来ず、パニックによる過呼吸で酸素の残量が10%になってしまう。孤独で絶望的になっていたライアンだったが、暫くするとマットから通信が入った。マットはライアンにライトを点灯させて位置を確認するとライアンの救助にやって来た。そして自分の身体と彼女をロープで繋ぎ止め、ライアンを牽引しながら『エクスプローラー』号へと帰還するのだった。
『エクスプローラー号』はコックピットや居住区画が大破し船内に酸素は無く、宇宙服をつけていなかった他の乗組員たちは全滅していた。通信衛星も破壊されているため、ヒューストンに連絡しようとしても応答がない。マットは『エクスプローラー号』を諦め、ISS(国際宇宙ステーション)に行って、ソユーズ(使い捨てロケット)で大気圏に突入して地球に帰還する方法を考える。そして噴射装置を使いながらマットはライアンをワイヤーで引っ張りながらISSを目指すのだった。ライアンの宇宙服の酸素が引き続き減っていく中、マットはライアンを励ますために家族の話を聞いた。彼女は、自分には娘がいたが4歳の時に幼稚園で事故死したという話をする。励ますつもりが気まずい雰囲気になってしまい戸惑うマット。やがて2人はISSに接近する。だがISSも破損しており、地球へ帰還するための2機のソユーズは1機が離脱済みで、残る1機も損傷でパラシュートが開いてしまっていた。マットはその残ったソユーズを利用して中国の宇宙ステーション『天宮』へ向かう旨をライアンに提案する。マットはライアンを引っ張ったままISSに取り付こうとするが、マットの宇宙服に装着された船外活動ユニットが燃料切れを起こし、殆ど減速できずに2人ともISSへ衝突し、その反動で宇宙空間に放り出されてしまう。ライアンは辛うじてパラシュートのワイヤーに引っかかり、マットに繋がっているロープを掴めた。しかしワイヤーが切れてしまうことを恐れたマットは、ライアンを助けるため彼女にロープを離すよう指示。反対するライアンを押し切ってマットは自らロープのフックを外してしまう。マットは宇宙空間の深遠に漂流する間、通信が途切れるまでライアンに語りかけるのだった。
やがてマットとの通信も完全に途絶え、酸素不足で朦朧としてきたライアンは1人でISSの中に入った。ISSの居住空間を酸素で満たしてからヘルメットを外し、ライアンは少しの間、胎児のように丸くなって休憩する。ひと息ついたライアンは、通信システムを探しヒューストンへ一方的に通信する。その時、電気系統のショートが原因でISS内で火災が発生した。ライアンは消火器で鎮火しようとするが火の手が激しく、危険を感じたライアンは咄嗟にソユーズに避難する。そしてソユーズを切り離そうとマニュアル本を手に操作するのだがパラシュートが絡まって離れない。仕方なく船外に出てパラシュートを外そうとするライアン。そこへ再び膨大な量の宇宙ゴミが高速で接近。ライアンはなんとかパラシュートを外すが、ISSは宇宙ゴミに衝突され大破してしまう。どうにか船内に戻ったライアンは、中国ステーション『天宮』に向かうため、マニュアルを見ながら狙いを定めるのだがソユーズが発進しない。ソユーズは燃料切れを起こしていた。ライアンは救助を求めようとAM周波数で中国ステーションに連絡を取ろうとするが、応答はない。代わりに地球の電波を拾い、アニンガという女性と繋がる。そこで飼い犬の声や赤ちゃんの泣き声を聞いたライアンは、死別した娘を思い出し、彼女がいるであろう死後の世界に思いを馳せ、死を覚悟して船内の酸素供給を止め、目を閉じた。
ソユーズの窓を外からノックする音が聞こえ、ライアンは目を覚ました。何と窓外にいたのはマットだった。彼は扉を開けて船内に入ってきた。そして自分が隠していたかのように見つけたウォッカを飲みながら、「中国ステーションまであと約1.6kmだ」と言い、希望を捨てないようライアンを諭す。さらにソユーズの着陸船にある逆噴射装置を利用してソユーズを『天宮』までの推進力とするよう助言した。
ライアンはふと目を開けた。だが船内にマットはいなかった。彼の姿は朦朧としていた彼女の幻覚だったのだ。
ライアンは自分を鼓舞して、マットのように前向きな考え方をしようと決意。すぐに酸素量を元に戻すと、マットの助言どおり逆噴射にトライしようと思いつく。ソユーズから着陸船を分離、逆噴射エンジンを作動させると着陸船を『天宮』に向かわせた。
衛星の破片が散乱する中、『天宮』に近づいたライアンは宇宙服で着陸船から外に出ると、火災の時に使った消火器の逆噴射を利用して『天宮』に乗り込んだ。だが船内の表示は中国語だらけであり、ライアンには全く理解できない。それでもISSの英語表記と同じ操作だろうと考え、苦労しながらも『天宮』の着陸船である『神舟』の起動に成功する。
ライアンは『神舟』に乗り、『天宮』を切り離して地球に向かうつもりだったのだが、なかなか切り離すことが出来ない。そのまま『天宮』はどんどんと高度を落とし始める。焦るライアンをよそに『天宮』はやがて大気圏に突入し、もの凄い振動と灼熱地獄がライアンを襲った。すると大気圏突入時の摩擦熱によって『天宮』はバラバラになりながら切り離され、ライアンの乗った『神舟』は無事に大気圏を突破した。やがて地球上空に現れた『神舟』はパラシュートが無事に開きどこかの湖に着水。大気圏突入時の衝撃で船内のコンソールから出火したことに焦ったライアンは急いでハッチを開けて水中へ脱出する。そして『神舟』は浸水して湖に沈没した。
ライアンは水中で重い宇宙服を脱ぎ捨てながら湖面を目指した。そして意外に近かった陸地に必死に辿り着いたライアンはそのまま倒れこんだ。久々の重力(グラビティ)を感じ、生きている実感を噛みしめたライアン。やがて立ち上がったライアンは、疲れ切った足取りでさらに歩き続けるのだった。
『ゼロ・グラビティ』の主な登場人物・キャラクター
ライアン・ストーン(演:サンドラ・ブロック)
スペースシャトル『エクスプローラー号』の乗員で本作のヒロイン。
アメリカのイリノイ州レイクズーリック在住。娘のサラがいたが、4歳の時に鬼ごっこの最中に頭を打ったことが原因で亡くなっており、心の傷となっている。
女性医療技師であり、自ら開発した医学用品がNASAに抜擢され、スペース・ミッションにスペシャリストとして初めて参加。『エクスプローラー号』の船外活動中に、ロシアの衛星の破壊によって発生した大量の破片に襲われ宇宙へと投げ出されてしまうが、同乗のベテラン宇宙飛行士・マットによって救出される。『エクスプローラー号』は破壊され危機的な状況に陥ってしまった。何とか地球へ帰還する方法を考えるマットに引っ張られる形で、国際宇宙ステーション(ISS)に向かうが、ISSに接近した際にマットが宇宙に放り出されてしまい音信不通となったため、広大な宇宙空間にたった一人取り残されてしまう。一時は死を覚悟するが、マットの幻影から希望を捨てないよう諭され、中国の宇宙ステーション『天宮』のソユーズ「神舟」で地球に戻るよう助言されると、決意を新たに地球への帰還を試みる。
マット・コワルスキー(演:ジョージ・クルーニー)
スペースシャトル『エクスプローラー号』の乗員。
ベテランの宇宙飛行士で、今回のスペース・ミッションを最後に宇宙飛行士を退任することが決まっている。
ライアンと共に『エクスプローラー号』の船外活動の最中に、宇宙へと投げ出されたライアンを救出。『エクスプローラー号』が破壊された危機的な状況の中、ベテラン宇宙飛行士であるが故の豊富な知識を活用し、何とか地球へ帰還する方法を考える。ライアンをワイヤーで引っ張ってISSに向かうが、接近した際に勢い余って宇宙空間に投げ出されそうになる。かろうじてライアンに掴まえて貰うが、このままでは2人とも宇宙空間に投げ出されると判断し、自らワイヤーをはずして宇宙の彼方へ飛ばされていく。その後、酸素の供給を減らして自殺を決意し朦朧とするライアンの前に幻覚として現れ、ライアンを励まし地球への帰還方法を助言する。
おしゃべりでジョーク好き。どんなに危機的な状況でもジョークを話し、冷静に対応する姿を見せる。
シャリフ(演:ファルダット・シャーマ)
スペースシャトル『エクスプローラー号』の乗員。
マットによるとハーバード大卒らしい。
ライアン、マットとともに、『エクスプローラー号』の船外活動をしていたが、宇宙ゴミが襲来した時に顔面に破片が直撃して死亡する。
破壊された『エクスプローラー号』に戻ったライアンが、顔に穴の開いた死体とともに、家族の写真を見つけた。
ミッション・コントロール(声:エド・ハリス)
ヒューストンから『エクスプローラー号』に指令を送るNASAの管制官。
冒頭の『エクスプローラー号』船外活動のシーンで、マット、ライアン、シャリフとそれぞれ通信をする。通信中、最もおしゃべりなマットの話を聞きながら、「その話は前にも聞いた」と冗談半分に話していた。その直後にロシアの人工衛星が破壊されたことが原因で、大量の宇宙ゴミがエクスプローラーを襲うことがわかり、地球への帰還を命じる。
アニンガ(声:オルト・イグナチウッセン)
ライアンが『天宮』に乗り込み、AM電波で地球に救助を求める交信を試みた際に応答する女性。
必死に語りかけるライアンの言葉が通じないためにライアンが誰なのかを理解できなかった。近くで犬の吠える声や赤ん坊の泣き声が聞こえ、それを聞いたライアンが地球に戻れない絶望感に苛まれた。
シャトル船長(声:エイミー・ウォレン)
冒頭の『エクスプローラー号』船外活動のシーンで、ヒューストンからロシアの人工衛星が破壊された旨の連絡を受けていた。その後に飛んできた衛星の破片に襲われた『エクスプローラー号』の船内で死亡する。
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目次 - Contents
- 『ゼロ・グラビティ』の概要
- 『ゼロ・グラビティ』のあらすじ・ストーリー
- 『ゼロ・グラビティ』の主な登場人物・キャラクター
- ライアン・ストーン(演:サンドラ・ブロック)
- マット・コワルスキー(演:ジョージ・クルーニー)
- シャリフ(演:ファルダット・シャーマ)
- ミッション・コントロール(声:エド・ハリス)
- アニンガ(声:オルト・イグナチウッセン)
- シャトル船長(声:エイミー・ウォレン)
- ISS船長(声:バシャール・サヴェージ)
- 『ゼロ・グラビティ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- マット「宇宙の何が一番好きだ?」ライアン「静けさよ」
- 「諦めることも学べ!」
- 「宇宙なんて大嫌い!」
- 「もう逃げない。地球に帰るわよ」
- 『ゼロ・グラビティ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- ハリウッドでは異例の”2人だけ”の出演
- 特殊装置によって全編の宇宙空間を再現
- 『ゼロ・グラビティ』の受賞歴
- 『ゼロ・グラビティ』の主題歌・挿入歌
- エンディングテーマ曲:Steven Price「Gravity」
- 挿入曲:Steven Price「Don't Let Go」
- 挿入歌:Hank Williams Jr.「Angeles are Hard to Find」
- 『ゼロ・グラビティ』の関連映像
- 予告編映像(英語版オリジナル予告編)
- 予告編映像(日本公開ティザーバージョン)
- 予告編映像(日本公開直前バージョン)
- メイキング映像