しあわせの隠れ場所(映画)のネタバレ解説・考察まとめ

『しあわせの隠れ場所』とは、マイケル・ルイス著「ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇跡」をワーナー・ブラザーズ映画が映画化したハートフル作品だ。貧しい家庭に生まれホームレス同然の生活を送っていたマイケル・オアーがとある家族に迎え入れられ、全米アメリカンフットボールのプロ選手への道を駆け上っていくまでの実話を基に作られた。北米では2009年11月に公開され興行収入2億ドルを超す大ヒットとなり、日本でも2010年2月に上映されたのち2009年度の興行成績8位にランクインした。

『しあわせの隠れ場所』の概要

『しあわせの隠れ場所』とは、貧しいスラム街で生まれ育ち、学校や住む場所も転々としていた黒人青年マイケル・オアーが、裕福な白人一家のリー・アン・テューイと出会い、家族になり、そしてアメリカンフットボールのプロ選手になるまでの半生を描いているハートフル作品。2006年に描かれた原作のマイケル・ルイス著「ブラインド・サイド アメフトがもたらした奇跡」はマイケル視点で描かれているが、本作はリー・アン視点で描かれた。リー・アンを演じるサンドラ・ブロックは、本作で2010年の第82回アカデミー賞で主演女優賞を受賞した。
今日明日の食べ物や寝る場所さえも心配しなくてはならない生活を送っていたマイケル・オアー。雨の中一人夜道を歩いているマイケルを心配したリー・アン・テューイは家へ連れて帰り、家族として受け入れることにした。マイケルの大きな体を何かに生かせないかとリー・アンはマイケルにアメリカンフットボールを勧め、マイケルはその才能を開花させる。しかし、奨学金をもらいながらアメリカンフットボールをするため大学入学を目指すも学力が圧倒的に足りなかった。学校の教師たちほぼ全員が進学は絶望的だと口を揃える中、マイケルは字の読み書きからスタートしたにも関わらず、学力を劇的に向上させ見事ミシシッピ大学への入学を果たした。
原題『The Blind side』とは、アメリカンフットボールでボールを運ぶクォーターバックの選手の死角のエリアを指す。そのクォーターバックの選手を守るのがマイケル・オアーのオフェンスポジションの役目だ。ボールに触れることがないため花形とされることはないが、クォーターバックの選手を守るために高い能力が求められる。また、相手チームからのタックルにひたすら耐え、守りに徹するオフェンスは、人情味の厚い選手が多い。本作では、まともな教育を受けてこられなかった青年マイケルが、アメリカンフットボールを始め、オフェンスという高い能力が求められるポジションにつき、アメリカンフットボールを学んでいくと共に人として成長していく様も描かれている。

『しあわせの隠れ場所』のあらすじ・ストーリー

テューイ一家との出会い

本作の主人公はアメリカ合衆国ミシシッピ州メンフィスの、貧しいスラム街で生まれ育ったマイケル・オアー。父親は生まれながらに知らず、母親はアルコールとコカイン中毒だった為、学校も住む場所も転々としている少年だった。マイケルは身体が大きいが、スポーツをすればその見た目とは裏腹に俊敏で軽やかに動き回れる身体能力を持っていた。

その身体能力の高さから、高校に推薦入学できたもののマイケルは勉強が全く出来ず帰る家もない生活を送っていた。ほとんどホームレス状態だったマイケルはある夜、体を震わせながら雨が降る寒い夜道を歩いていると、リー・アン・テューイに声をかけてもらい一日だけ家に泊めてもらうことになったのだった。

リー・アンは自身が声をかけてマイケルを自宅に泊めたが、自分たちが寝ている最中に何か盗まれているのではないかと不安がっていた。リー・アンの夫ショーン・テューイはリー・アンを落ち着かせ2人は眠りにつく。

朝になるとリー・アンは恐る恐るマイケルが眠っていた居間を覗くと、そこには綺麗に畳まれた毛布だけが残されていた。それを見たリー・アンは慌ててマイケルを追いかけ、食事を提供しテューイ家とマイケルは共に楽しい時間を過ごす。

その後もリー・アンはマイケルに部屋やベッド、服などを提供してテューイ家に居場所を作っていく。マイケルの緊急連絡先もテューイ家に変えていた為、改めてリー・アンはマイケルの学力や適性を知ることとなる。

マイケルは勉強はもちろん、その他の空間認知機能などほとんど全ての項目が、最低ラインにあることをリー・アンは教師から伝えられた。しかしマイケルはずば抜けた適性を1つだけ持っており、それが保護本能だった。

それを知ったリー・アンはマイケルの優れた身体能力と保護能力を活かす為、アメリカンフットボール部に入部することを勧める。入部には入部テストに合格し無ければならず、その為にマイケルは勉強に励むようになる。その結果、マイケルは無事アメリカンフットボール部に入部することができたのだった。

マイケルの2人の母

マイケルはアメリカンフットボール部で練習を始めるが、マイケルはアメリカンフットボールのルールを知らなかった。その為、マイケルはタックルをせず相手を担いでしまったり、チームの足手まといになる行動ばかりとってしまうのだった。

元々身体能力に期待されていた分、秋までに上達しなければ退部だと宣告されてしまう。それを知ったテューイ家の長男でありマイケルを兄のように慕うショーン・ジュニア・テューイが、マイケルの指導役をかって出る。ショーンは練習メニューを独自に考え、マイケルもその練習を毎日行った。

一方リー・アンはマイケルから運転免許を取りたいが、正式な戸籍と身分証がないと免許が取れないと相談を受けていた。リー・アンはマイケルに正式な戸籍を取得する為、必要書類を集めていた。

現状でマイケルは7歳から母親から引き離されていた為、親権は実母ではなくすでに州の保護下にあった。その為実母からのサインがなくともマイケルの後継人になることは可能だったが、リー・アンはそのきっちりとした性格からマイケルの実母の元に向かった。

リー・アンはマイケルの実母であるデニーズ・オアーと対面し、マイケルの後継人になりたいとデニーズに伝える。デニーズはマイケルを含めた12人の子供達や、その父親についての記憶もあやふやなものだった。もちろんデニーズはマイケルの出生証明書も持っていなかった。デニーズは今さらマイケルに合わせる顔もないからと、改めてリー・アンにマイケルを託すのだった。

改めてマイケルは書類上でも関係上でもテューイ家に迎え入れられ、マイケルも笑みを見せたのだった。そしてマイケルは無事運転免許の取得も叶い、ある日ジュニアを車に乗せ買い物に向かった。車内ではマイケルもジュニアも音楽を聞きながらノリノリでドライブを楽しんでいたが、マイケルがよそ見をした瞬間飛び出した車と衝突してしまう。

ジュニアは幸いにも軽傷で済み、落ち込むマイケルを励ませるほど元気が残ったまま病院へと搬送された。事故の状況を聞いたリー・アンはジュニアの怪我が軽傷で済んだのは、マイケルが咄嗟にジュニアを庇ってくれたからだと気づく。マイケルの保護能力の高さを改めて実感したリー・アンはマイケルに、フットボールのチームを「家族だと思って守りなさい」と伝える。
そのアドバイスを聞いたマイケルのプレイは、飛躍的に向上するのだった。

功績が認められたマイケルは試合に出ることになるが、マイケルは黒人で更に大きな体からか相手チームに目を付けられる。暴言はもちろん明らかに暴力行為が行われていたが、審判も見て見ぬふりを決め込みマイケルのチームのコーチも声を荒げた。

そんなコーチを抑制し、マイケルは「コーチは僕が守ります」と言い切り試合に戻った。それからマイケルはチームを守る一心で大きな体で相手選手を次々と止め、結果6対0だった試合はマイケルの功績により7対34という圧勝に終わったのだった。

大学への進学

その試合をビデオに録画していたジュニアは映像をDVDに焼き増しし、アメリカンフットボールで有名な大学に送りつけていった。各大学のコーチはマイケルを一目見ようと、遠方からでもはるばるチームの練習に駆け付ける事態となった。

もちろん高校だけではなく、テューイ家にもマイケルへのオファーが多数寄せられてきていた。しかしマイケルの学力ではどの大学でも、フットボール奨学金をもらいながら大学に行くのは困難な評価だった。
それでもリー・アンはマイケルならプロになれると確信していた為、マイケルに家庭教師をつけマイケルも猛勉強の日々が始まったのだった。

マイケルは昼間、学校の勉強にチームの練習、そして大学のコーチとの交渉に追われていた。夜テューイ家に戻れば家庭教師と家族での追加での勉強を毎日繰り返していった。そしてマイケルは、テューイ夫妻の母校でもあるミシシッピ大学への進学を決意する。マイケルの猛勉強の成果もあり、無事高校を卒業しフットボール奨学金も得られることとなったのだった。

しかし大学の入学を準備するテューイ家に、全米大学体育協会がマイケルに調査が入ることとなる。そこでマイケルに調査員が、テューイ夫妻は自分の母校に優秀な選手を引き入れる為に貴方を育てているのだと告げたのだった。

マイケルはその話を信じていなかったが、日に日に不安が増していっていた。不安がつのっていったマイケルはある日リー・アンに、自分を思い通りにさせたかったのではないかと詰め寄った。マイケルに詰め寄られたリー・アンは、改めてマイケルを自分の想いだけでミシシッピ大学に推薦してしまったのではないかと思い始める。

リー・アンがテネシー大学を嫌っているのは本当だった為、リー・アンはマイケルの意思を無視していたのではないかと後悔する。マイケルはリー・アンに詰め寄った後家を飛び出してしまい、その日の夜は帰ってこなかったのだった。

テューイ家を飛び出したマイケルは、実母のデニースに会おうとスラム街を訪れていた。その道中マイケルに、スラム街を牛耳っているチンピラ達が絡んでくる。チンピラ達はテューイ家の人達を馬鹿にしてきたため、マイケルはそれに怒り暴力沙汰になってしまった。

翌日リー・アンはマイケルを探しにスラム街へ来ていた。そこで昨日マイケルに絡んでいたチンピラはリー・アンにも絡みに行く。しかし強気なリー・アンはライフル協会の会員であると男を脅し、その場を後にする。車に乗り込むとリー・アンの元にマイケルから電話がかかってきて、マイケルの居場所を聞きリー・アンはその場所に向かった。

マイケルはコインランドリーで待っており、2人はコインランドリーの外で改めて話をする。リー・アンはテネシー大学を嫌ってはいるが、マイケルがテネシー大学を選んでも応援には必ず行くと約束する。そしてリー・アンはマイケルにテネシー大学へ進学することを勧める。リー・アンの話を聞いたマイケルは改めて考え、やはりミシシッピ大学へ進学することを自分の意思で決めたのだった。

そして、マイケルは無事ミシシッピ大学に入学することができた。ミシシッピ大学に入学する為マイケルだけ大学近くへ引っ越すこととなった。テューイ家の人達とは離れることとなったが、家庭教師の夫人はマイケルについていくことになっていた。

リー・アンはマイケルに涙を見せないようにあえて優しい言葉はかけず、足早にその場を去ろうとした。しかしマイケルがリー・アンを追いかけ、優しくそして強くハグをしてマイケルはミシシッピ大学へと向かった。

物語はマイケルがミシシッピ大学へ旅立って終幕となるが、エンディングの最後では実際にマイケルがプロで活躍している写真が映し出され映画の幕を下ろす。

『しあわせの隠れ場所』の登場人物

テューイ一家

リー・アン・テューイ(演:サンドラ・ブロック)

吹き替え:佐々木優子
テューイ家の母で、ミシシッピ大学でチアリーディングをしていた。アメリカンフットボールでもミシシッピ大学を応援している。とてもしっかり者で、インテリアコーディネーターとして働きながらいつも一家を引っ張っている反面、せっかちではっきりとした物言いから少しきつい印象も受ける。しかし、根は優しく常に人のためを思い行動している。

マイケル・オアー(演:クィントン・アーロン)

吹き替え:かぬか光明
寡黙で争いを好まない優しい性格で、恵まれたその体格から”ビッグ・マイク”と呼ばれていた。貧しいスラム街で育ち、リー・アン一家と出会うまでは教育はおろか、まともな生活を送っていなかった。7歳の時にコカイン中毒の母親と引き離されてからは学校や施設を転々する生活を送っていた。そのため字の読み書きもろくにできず、成績は最低ライン。しかし、保護本能がずば抜けて高いことや、大きな体格で軽やかに動ける身体能力からアメリカンフットボールのオフェンスに抜擢され、その能力を開花させる。リー・アン一家と出会ってからは、人間的にも成長し、相変わらず寡黙ながらもアメリカンジョークを言う程のコミュニケーションをとるまでにもなった。

ショーン・テューイ(演:ティム・マッグロウ)

画像右がショーン

吹き替え:押切英希
テューイ家の父。リー・アンと同じくミシシッピ大学出身でバスケットをやっていた。飲食店をいくつも経営している。せかせかとしているリー・アンとは対照的に、いつもリー・アンを支え優しく包み込むようにおおらかである。

コリンズ・テューイ(演:リリー・コリンズ)

吹き替え:武田華
テューイ家の長女。本作ではあまり口数の多い方ではないが、マイケルを温かく家族として迎え入れる。高校卒業後は両親やマイケルと同じミシシッピ大学へ進み、チアリーダーとなった。

ショーン・ジュニア・テューイ(演:ジェイ・ヘッド)

kyk_wednesday6
kyk_wednesday6
@kyk_wednesday6

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