ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破(ヱヴァ:破)のネタバレ解説・考察まとめ
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』とは、社会現象をも巻き起こしたTVアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』を、同作監督を務めた庵野秀明自らが再構成したアニメ映画作品。「新劇場版」シリーズの二作目である。
謎の巨大生物・使徒により、「セカンド・インパクト」という大災害が発生してから15年。14歳の少年碇シンジは、父ゲンドウの命令で汎用ヒト型決戦兵器エヴァンゲリオンに乗り込み、使徒と戦うことを強いられる。同じくパイロットに選ばれた少女たちと交流しながら、シンジは世界の謎を巡る奇怪な陰謀に翻弄されていく。
二機のエヴァンゲリオンを撃破され、NERV本部はほぼ全ての戦闘能力を喪失。もはや第10の使徒に蹂躙されるのみとなった本部を駆け抜け、シンジはなんとか初号機を起動させようとするゲンドウの前に立つ。
「なぜここにいる」
ゲンドウにそう問われ、シンジが吼えるように返したのが、見出しのセリフである。
「二度とエヴァンゲリオンには乗らない」、そう言って全てに背を向けて第3新東京市を後にしようとしていたシンジ。自分の乗る初号機がアスカを殺しかけたことも、そうさせたゲンドウのことも許せなかった。許すわけにはいかなかった。だが今、新たな友人たちと数か月を過ごした街は壊滅の危機にあり、大切な仲間が失われようとしている。
自分がエヴァンゲリオンに乗れば、それをなんとかできるかもしれない。
常に誰かに命じられて動き、「逃げちゃダメだ」と言いながら目の前に突き付けられた問題の根幹からは逃げ続けたシンジが、初めて明確に、明瞭に、力強く「誰かのために戦う」ことを宣言した名シーン。TV版でも同じセリフを口にしているが、本作ではさらに力の入れられた演出が為されている。
ミサト「行きなさい、シンジくん!」
疑似シン化を果たし、あれほど苦戦していた第10の使徒を圧倒する初号機。このままではシンジも初号機も元の存在には戻れなくなるとNERVの職員が危惧する中、一人ミサトだけはどこか泣き出すように声を振り絞り、見出しの言葉を発する。以下がその全文である。
「行きなさい、シンジくん! 誰かのためじゃない、あなた自身の願いのために!」
折り合いの悪かった父と仲直りできないまま死別したミサトは、ゲンドウとの関係に悩むシンジを、いつしか過去の自分と重ね合わせて見守るようになっていた。綾波の企画した食事会で、シンジとゲンドウのこじれた関係が、少しでも良い方向に向かってくれたら。心からそう願い、しかしそれは予想もつかない形で踏みにじられ、ついに二人の関係は破局を迎える。
ゲンドウに背を向けて、二度とエヴァンゲリオンには乗らないと宣言し、それでもシンジは戻ってきた。誰に命じられたわけでもなく、自分の意志で、大切な仲間を救うために。世界が終わるかどうかというこの瞬間に、彼は自分の足で偉大な一歩を踏み出そうとしている。ならばそれを応援するのは、もっとも身近な大人だった自分の責務だ。そう感じたからこそ、そう信じるからこそ、ミサトは叫ぶ。
本作のミサトが紛れもなく“大人”であり、シンジの“保護者”でもあったことを証明する名セリフ。迫力満点の映像に加えて、ベテラン声優である三石氏のすさまじい演技力にも圧倒される、本作のクライマックスにふさわしい劇的な場面。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
TV版とは異なる前向きな作風
社会現象を巻き起こした『新世紀エヴァンゲリオン』だが、熱烈なファンが大勢いる一方で「苦手だ」という人も少なくない。複雑怪奇な設定に理解が追い付かないという者もいるが、比較的多く聞かれるのが「話がヒステリック過ぎる」という声である。
TV版ではアスカは精神崩壊を迎え、リツコはゲンドウと愛人関係にあるも結局は捨てられる。多くのキャラクターが悲惨な末路を辿り、最終回付近の悲壮感はすさまじいものになっていた。それは作品の完成度を損なうものではないが、先ほどのような感想が出てくるのも仕方のないところはある。
しかし本作では、大まかな物語の流れは変わっていないのにも関わらず、全体的な雰囲気が非常に前向きに感じられる。製作者サイドの分析によれば、これは何人かのキャラクターがTV版とは異なる形で物語に参加しているためである。中でも顕著なのがアスカとリツコだ。
アスカは一見明るく社交的な性格だが、TV版では母親との死別や加持への恋心など、ある意味シンジ以上に厄介な問題を抱えていた。その内面も実際はひどく繊細で、心の拠り所であった「天才的なエヴァンゲリオンパイロット」という肩書きがシンジの成長と自身の不調で失われていくに従って精神の安定を欠き、最終的には廃人同然の状態となってしまう。
リツコはリツコで、TV版では「ゲンドウの愛人」という設定になっている。ゲンドウに利用されていただけだと知って冷静さを失い、彼ごとNERVを裏切り、どこかに隔離されたとも追放されたとも殺されたとも分からない形で退場。この二人の陰惨な結末はシンジの心をも追い詰め、物語をよりヒステリックな方向に導いた。
しかし、本作においては、「リツコとゲンドウは愛人関係にある」という情報はまったく出てこない。アスカについては設定自体は存在している節があるものの、彼女はシンジやミサトとの交流の中でそれを乗り越え、TV版では最後まで仲違いしていた綾波のために助け舟を出すまでに至っている。ミサトがシンジやアスカのために保護者としての面を強く出していることも、本作の雰囲気を明るくする要因になっている。
ラストシーンにて次回作のタイトル変更が判明する
エンドロールが流れた後、突如舞い降りるEVANGELION Mark.06。最後の最後に始まる急展開に観客が驚く中、ファンにはお馴染みの音楽と共に次回作の予告が始まる。
「序」、「破」と来れば、当然次は「急」だろう。実際、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』が発表された際にはそう紹介されていたのである。しかし見守る観客の前に表示されるのは、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』の文字。たった一文字の違いだが、なぜアルファベットに変わったのか、混乱するファンは少なくなかった。
ここでいう「Q」には「Quickening」という意味があり、意味合い的には「急」に通じるものとされている。同じ意味のある言葉だというなら、どうしてわざわざアルファベットに変更したのか。そういった謎についてあれこれと考察するのも、『エヴァンゲリオン』という作品の楽しみ方の一つである。
『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の主題歌・挿入歌
主題歌:宇多田ヒカル『Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-』
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目次 - Contents
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の概要
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』のあらすじ・ストーリー
- ベタニアベース壊滅
- アスカ、来日
- 第8の使徒との戦い
- 何もない日常
- エヴァンゲリオン参号機、侵食
- 男の戦い
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の登場人物・キャラクター
- エヴァンゲリオンパイロット
- 碇シンジ(いかり しんじ)
- 綾波レイ(あやなみ れい)
- 式波・アスカ・ラングレー(しきなみ あすか らんぐれー)
- 真希波・マリ・イラストリアス(まきなみ まり いらすとりあす)
- 謎の少年
- 特務機関NERV
- 葛城ミサト(かつらぎ みさと)
- 碇ゲンドウ(いかり げんどう)
- 冬月コウゾウ(ふゆつき こうぞう)
- 加持リョウジ(かじ りょうじ)
- 赤木リツコ(あかぎ りつこ)
- 日向マコト(ひゅうが まこと)
- 青葉シゲル(あおば しげる)
- 伊吹マヤ(いぶき まや)
- 第3新東京市の学生
- 鈴原トウジ(すずはら とうじ)
- 鈴原サクラ(すずはら さくら)
- 相田ケンスケ(あいだ けんすけ)
- 洞木ヒカリ(ほらき ひかり)
- その他の登場人物
- キール・ローレンツ
- ペンペン
- 碇ユイ(いかり ゆい)
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の兵器・使徒
- 汎用ヒト型決戦兵器エヴァンゲリオン
- エヴァンゲリオン初号機(EVANGELION TEST TYPE-01)
- エヴァンゲリオン零号機(EVANGELION PROTO TYPE-00)
- エヴァンゲリオン2号機(EVANGELION PRODUCTION MODEL-02)
- エヴァンゲリオン3号機(EVANGELION PRODUCTION MODEL-03)
- エヴァンゲリオン4号機(EVANGELION NEXT GEN TESTBED-04)
- エヴァンゲリオン仮設5号機(EVANGELION PROVISIONAL UNIT-05)
- EVANGELION Mark.06(エヴァンゲリオン マークシックス)
- 使徒
- 第3の使徒
- 第7の使徒
- 第8の使徒
- 第9の使徒
- 第10の使徒
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の用語
- 特務機関NERV
- 第3新東京市
- ゼーレ
- 人類補完計画
- ネブカドネザルの鍵
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- マリ「自分の目的に大人を巻き込むのは気後れするなぁ」
- アスカ「そっか、私笑えるんだ」
- シンジ「僕はエヴァンゲリオン初号機パイロット、碇シンジです!」
- ミサト「行きなさい、シンジくん!」
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- TV版とは異なる前向きな作風
- ラストシーンにて次回作のタイトル変更が判明する
- 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:宇多田ヒカル『Beautiful World -PLANiTb Acoustica Mix-』