天使なんかじゃない(天ない)のネタバレ解説・考察まとめ

『天使なんかじゃない』とは、矢沢あいによる漫画作品。少女漫画雑誌『りぼん』1991年9月号から1994年11号まで連載された。全8巻の単行本に加え、完全版コミックス全4巻、文庫本全6巻、さらに全8巻の小説が刊行されている。1994年にはOVA化された。創立されたばかりの私立聖(ひじり)学園の生徒会を舞台に、主人公冴島翠を中心とした生徒会の面々が繰り広げる、高校生の恋と友情を描いた青春群像劇である。ベテラン漫画家として知られる矢沢あいの出世作であり、その完成度から芸能人のファンも多い。

「踊ろーぜ」

須藤晃が冴島翠にダンスを申し込むシーン。

第一回聖祭の終盤。
翠は晃を探して、生徒会室まで来ていた。
片思いの晃をダンスパーティーに誘うためだった。

少し思わせぶりに翠は晃を誘うが、晃はどこ吹く風で大あくびをかます。
それを見て、くじけてしまった翠は悔し涙を浮かべる。

と、その時、晃がおもむろに立ち上がって窓を開けると、ダンスパーティーの会場から漏れ聞こえる『スタンドバイミー』。
その曲は晃が大好きな曲だった。

曲をバックに、晃は翠に「踊ろーぜ」と手を差し伸べる。
翠は心臓が痛いほど騒ぐが、晃の手をとってダンスを始める。

翠がさらに恋心を加速させたシーンである。

「おかげで 楽しかった」

冴島翠と麻宮裕子が仲良くなったきっかけのシーン。

第一回聖祭で、麻宮は片思いの相手である瀧川秀一とお化け屋敷を回ることになった。
これは麻宮の恋心に気づいた翠が、どうにか二人をくっつけようと画策してのことだった。
お化け役になった翠は、麻宮が瀧川に抱き着くようにとつい麻宮を怖がらせすぎて、なんと失神させてしまうのだった。

その後、意識を取り戻した麻宮は、生徒会メンバーと合流する。
体調を心配する翠に「とんでもない一日だったわ」と棘のある返答をした麻宮だったが、その次の言葉は上記の通り。

大輪の花火を見上げる彼女は、とても充実した顔をしていた。

「ほらね あたしの一番の願いごと 叶えることができるのは 晃だけなのよ」

冴島翠と須藤晃の初めてのキスシーン。

12月25日。
翠は母が手作りしてくれたケーキを片手に、晃の住むアパートに来ていた。

意気揚々とチャイムを鳴らす翠だったが、晃はバイトに出かけており不在。
そんなことはつゆほども知らない翠は、もう少し待ったら帰ってくるかもと思いつつ、あたりが暗くなるまで待ち続けた。

一方晃は、バイト先で得たクリスマスケーキを片手に家に帰るところだった。
直前に翠の家に電話をかけたが、不在を告げられておとなしく引き下がったのだ。

まさか翠が家に来ているとは思わなかった晃は、自分の家の前で膝を抱えてうずくまっている翠を発見し、目を見開く。
涙を流しながらしどろもどろに受けごたえする翠に、晃はクリスマスケーキを放り出して抱きしめた。

「どこ行ってたの?」と質問する翠に、「今日は駅前でケーキ売った サンタクロースになって」と返す晃。
スドーザウルスがサンタの恰好をしている姿を想像して思わず笑いだす翠だったが、気を取り直し「あたしにとっては晃がたった一人のサンタクロースだよ」と発言。

それを聞いた晃は、翠の顎に手を添えてキスをするのだった。

「あんたがあたしを嫌いでも あたしは好きよマミリン!」

冴島翠と麻宮裕子が初めて言い合いをしたシーンであり、二人の友情が芽生えたシーンである。

第二回入学式の日。
新入生としてやってきた美少女・原田志乃は、麻宮が恋心を抱いている瀧川秀一の彼女であった。
まさか志乃が聖学園に入学してくると思ってなかった麻宮は、新入生歓迎会の席で対面し、衝撃を受けた。
極めつけに、志乃に「劇、楽しみにしてます」と言われた麻宮は屈辱を受けることになる。

この日、新入生歓迎会で生徒会メンバーは『シラけた姫と七人分の大男』という劇をやる予定だった。
麻宮裕子は姫役で、瀧川秀一は王子役だった。
志乃の見ている前で恋人役なんかできない、そう思った麻宮は劇をボイコットするためにトイレに立てこもってしまう。

麻宮を探し、校内を捜索する他の生徒会メンバー。
外にまで捜索範囲を広げようかという話になったが、運よく翠がトイレに立ち、麻宮を発見する。

麻宮と瀧川をくっつけようと劇を企画した翠は、麻宮から「あんたっておせっかいよ!すぐ調子に乗って!そういうとこ大っ嫌い!」と散々なじられてしまう。
志乃の存在をさきほど知った翠は、罪悪感から涙をにじませる。

麻宮は言い過ぎたとハッとし、翠が外に出ていった気配を感じてしまったという顔をする。
しかし次の瞬間、大きな物音と共に、麻宮が立てこもってるトイレの上から翠が現れる。
トイレのドアをよじ登り、そして上記のように大声で返したのだった。

その強行に目が覚めた麻宮はトイレから出ると翠に約束し、ドアの上から降りられなくなった翠は須藤晃によって助けられた。
その後、劇は何事もなかったかのように大成功。
麻宮は自分がしでかしたことを謝り、生徒会室で翠と共に大泣きした。

「ばかみたいじゃないよ 恋をしたら 情けなくてみっともないこと いっぱいあるよ みんなそうだよ」

『新歓トイレ事件』の後、無事新入生歓迎会を終わらせた麻宮裕子と冴島翠が大泣きするシーン。

新入生歓迎会が終わった後、麻宮は翠と共に今日の健闘をたたえあう。
そして、瀧川秀一の恋人である志乃が原因で歓迎会をボイコットしようとしていたことを麻宮は反省する。

しかし、麻宮は志乃と瀧川とは中学が同じであり、二人がカップルだということは承知していた。
だが、生徒会でのイベントなど楽しい毎日を送っていたので、落胆が大きかったのだと泣き出す。

麻宮が楽しく感じてくれていたことへの嬉しさ、自分と同じように恋に悩んでいるという共感から、翠はもらい泣きしてしまう。

そんな翠の励ましの心情である。

「さよなら! また明日ね!」

新入生歓迎会が終わった後、長らく絶縁状態だった須藤晃と牧博子が挨拶を交わしたシーン。

中学時代、晃は家庭教師の将志とその恋人の博子と知り合った。
親の離婚で不安定だった晃にとって、二人はかけがえのない存在だった。
そしていつしか、晃は博子のことを将志の恋人以上に感じてしまう。

将志がパリに行ったとき、無理に笑う博子に耐えられなくなった晃は告白をする。
が、「晃くんのことは弟としか見れない」と玉砕してしまう。
それを馬鹿にされていると感じた晃は博子と絶交してしまい、口も利かない、目も合わせないという状態が続いた。

新入生歓迎会の準備の際、偶然博子と間近で会ったのを無視した晃は、自分が無視されたと勘違いした冴島翠を悲しませてしまう。
そのことから、博子との関係を翠に打ち明けることを決意した晃は、復縁のために博子に挨拶したのだった。

てっきり今回も無視されると思っていた博子は、頬を紅潮させて挨拶を返すのだった。

「これほど好きになれる人には 二度と出会えない 絶対に…」

冴島翠と須藤晃の2回目のキスシーン。

新入生歓迎会が終わった週末のこと。
翠と晃は遊園地デートに来ていた。

乗り物を粗方乗りつくし、あと乗っていないのが観覧車だけとなった。
しかし翠は、どうしても観覧車だけには乗りたくなくて、売店へと逃げてしまう。

というのも、翠はこの前まで牧博子と晃の関係を疑って大泣きしたばかりであり、この遊園地に来たのもそのことで話があるからと晃に言われたためであった。
もし、観覧車の中で二人きりになれば、必然的に博子の件について話を聞かなければならなくなる。
万が一失恋してしまったらどうしよう、聞きたくない。そう思っていた翠がマーブルチョコ片手に戻った時、晃を探すが見当たらない。

すると「至急観覧車の乗り場までお越しください」という園内放送がかかり、翠はやられたと思うのだった。

観覧車におとなしく乗りこんだ翠は、沈黙に耐えられずにマーブルチョコをむさぼる。
と、その時、手が震えていたせいでマーブルチョコの中身を全部床にぶちまけてしまう。

慌てて拾おうとする翠を遮り、晃は牧先生とは高校以前から知り合いだったこと、当時家庭教師をしていた将志という人物の恋人が牧先生であり、自分とは何も関係はないことを打ち明けられる。
その言葉に心底ほっとする翠だったが、それと同時に観覧車が一周し終わって扉が開いた。

マーブルチョコを拾い終わってない!そう思った二人はもう一周することに決め、言い争いながらマーブルチョコを拾い集める。
やっと拾い終わった、そう思った時、翠がまた盛大にチョコをぶちまける。
晃の罵声を浴びつつそれもかき集め、二人で「「終わった」」とため息をついた時、連日の不安が解消された翠はキスを求める。
その求めに応じた晃は翠に深いキスをし、そしてまたマーブルチョコを床に落とす。

マーブルチョコというキーアイテムを使った印象的なシーンだ。

「あたしは 冴島翠みたいになりたい」

冴島翠が感涙した麻宮裕子のセリフ。

翠の将来の夢は、得意のイラストを仕事にすることだった。
イラストレーターや絵本作家、漫画家と絵に関するさまざまな職業を取り上げて悩む翠に、麻宮は「あんたならなんにだってなれるわよ」と、サラッと褒める。
それに照れた翠は「マミリンは?」と質問すると、上記の答えが返ってきた。

麻宮曰く、うれしい時は喜び、悲しい時はちゃんと悲しむ。
そんな当たり前なことができる翠が、みんなに好かれ、須藤晃に選ばれる理由がわかるのだというのだ。

麻宮は今、叶わないだろう恋のために懸命に頑張っている。
翠に憧れを抱き、自分なりに頑張ろうとする麻宮を見て、翠は自分自身も勇気づけられた気がして『額に入れて一生飾っておきたいようなセリフだった』と心の中で思うのだった。

niwatori10218
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@niwatori10218

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