
『アウトブレイク・カンパニー』とは、榊一郎によるライトノベル、及びそれを原作とした漫画・アニメ作品である。原作小説は本編+外伝の全19巻、漫画は全4巻が刊行された。アニメは2013年に全12話放送された。引きこもりで自宅警備員だった加納慎一が、就職した先の異世界でオタク知識を活かしてオタク文化を広める異世界ファンタジーである。漫画やアニメに出てくるような種族のキャラクターたちが、オタク文化について学ぶカオスな状況や他作品のパロディ要素も多くあり、オタクだからこそより楽しめる作品となっている。
『アウトブレイク・カンパニー』の概要
『アウトブレイク・カンパニー(萌える侵略者)』とは、榊一郎によるライトノベル及びそれを原作としたテレビアニメ、漫画作品である。タイトルを英語表記にした時の頭文字を取って「OBC」という略称がある。
原作小説は本編18巻と外伝1巻の全19巻が刊行された。また『good!アフタヌーン』にてコミカライズされ、梶谷きりの作画で全4巻発売された。
テレビアニメでは及川啓が監督、荒川稔久がシリーズ構成、豆塚隆がキャラクターデザインを務め、feel.によるアニメーション制作で2013年10月から12月にかけて全12話放送された。
その他のメディアミックスとして、スマートフォン向けのカードコレクションゲーム「嫁コレ」にて、本作登場キャラクターであるペトラルカが登場した。また台湾で翻訳版が刊行されるなど幅広く展開されている。
本作は、主人公の加納慎一(かのうしんいち)が異世界に就職し、個性豊かなキャラクターたちと交流を深めながらオタク文化を広める異世界ファンタジー作品である。
オタクコンテンツが大好きな慎一にとって、異世界でオタク文化を広めるのは天職であり、慎一はコンテンツとして楽しんでいた世界観や実在するエルフなどの種族との出会いに興奮していた。しかし、次第に日本とエルダントとの文化の隔たりやオタク文化の境遇、政治的な軋轢などシリアスな問題も絡んでくる。それでも、現実では通用しないオタク知識も異世界なら使えることがあり、慎一はオタク知識を存分に発揮して異世界ライフを楽しむのだった。
作中にはオタク文化がメインとなるため、『新世紀エヴァンゲリオン』や『進撃の巨人』、『魔法少女まどか☆マギカ』などの有名な作品のパロディネタが豊富に登場する。そのため、オタクであればより楽しめる作品となっている。
『アウトブレイク・カンパニー』のあらすじ・ストーリー
引きこもりから異世界へ就職
引きこもりのオタクだった加納慎一(かのうしんいち)は、1年間自宅警備員として生活していたが、両親に強制終了させられ就職活動をすることになった。そしてネットで「オタク知識を活かせて、しかも高報酬」という慎一にぴったりの仕事を見つける。難なく一次試験に合格し面接に臨むが、会場で出された飲み物を飲むと気を失ってしまった。
目を覚ますとドラゴンが空を飛ぶ異世界に連れてこられていたのである。
その世界は「神聖エルダント帝国」といい、日本の富士の樹海に開いた穴から繋がっていた。偶然エルダント帝国を見つけた日本政府はとりあえず友好関係を結んでおり、慎一の仕事は日本のオタク文化を帝国に広め交流を深めることだった。
突然始まった異世界での生活だが、慎一の身の回りの世話をするハーフエルフのミュセル・フォアランや護衛を担当する自衛官の古賀沼美埜里(こがぬまみのり)、エルダント帝国の皇帝であるペトラルカ・アン・エルダント三世たちと共に騒がしくも楽しい日常を送ることになる。ペトラルカは慎一が初めて謁見に来た時に慎一を気に入り、その後頻繁に慎一が住む屋敷へ足を運ぶようになるのだった。
学校の設立
エルダント帝国は種族や身分により階級がある世界だった。慎一にとっては皇帝のペトラルカも使用人のミュセルも等しく友達だが、ペトラルカのミュセルに対する態度は身分の差を感じられるものだったのである。
そこで慎一はまず、どの種族も関係なく通うことができる学校を作ろうと決めた。そこで慎一自ら生徒たちにオタク文化を教育していくのである。
ようやく学校が完成し、慎一の初めての仕事開始の開校初日に事件が発生する。種族差別を肯定する過激派組織により、どの種族も平等に通える学校を潰そうと占拠されたのだった。慎一の機転とミュセルや美埜里の活躍で何とか事件は解決する。しかし慎一はテロ組織から言われた「侵略者」という言葉に引っかかっていた。そこで自分は本当に帝国にとってそんな役割になってしまっているのかを、エルダントと日本の国交を担う「極東文化交流推進局」局長・的場甚三郎(まとばじんざぶろう)に尋ねる。的場は否定する様子もなく、物の考え方だと返答するのだった。
事件から1ヶ月が経ち、学校では順調にオタク文化の教育が進んでいた。生徒の学習意欲は強く、授業内容も「男の子」と「男の娘」の区別という上級者向けの内容が行われていた。
ある日、慎一たちが学校から屋敷へ戻る途中、屋敷をスケッチしている獣耳の少女を発見する。少女は何も分かっていない様子だったが、敵対する隣国「バハイラム王国」のスパイ容疑ですぐに連れて行かれてしまった。美埜里によると本人にスパイの自覚がなくても処分されるのだという。
ケモナーでもある慎一はそれを許せず、ペトラルカに謁見してスパイ容疑で捕まった少女を助けてほしいと頼む。慎一の周りに女子が増えるのはおもしろくないペトラルカは最初はいい返事をしなかった。慎一は獣耳の少女・エルビアが絵を描けることは利用できると説得する。オタク文化を広めるには絵師が必要で、さらにこちらが指示した絵を描かせてバハイラム王国に送ることで間違った情報を掴ませることができるのだと主張した。そうしてペトラルカを何とか納得させ、エルビアは慎一の元で引き取ることになり慎一の周りはさらに賑やかになるのだった。
仕事や日常が穏やかに進み、学校のオタク文化教育も順調に進んでいた。しかしそれはオタクの派閥争いでドワーフとエルフの間で亀裂が入ってしまうほどに発展する。慎一はサッカーの親善試合を行い解決しようとした。異世界で行うサッカーは、ドワーフの身体能力の高さとエルフの魔法によってほぼバトルのようになってしまい壊滅状態となる。そんな中、観戦していたペトラルカが誰も立っていられなくなったコートに入りゴールを決めると、以前は差別対象として見ていたミュセルと2人で喜び合う姿を見せるのだった。慎一がエルダントに来てから種族間の関係は少しずつ変わってきているのである。
日本政府の企み
その後も自ら日本に帰り漫画という資料を調達に行ったり、忙しさから引きこもってしまったペトラルカと一緒に引きこもったり、みんなでバカンスに行ったりと慎一は異世界での仕事や生活を満喫していた。
そうして慎一の仕事は日本政府からも褒められるほど上手くいっており、オタク文化はエルダント帝国に広まっていた。しかしハマりすぎたエルダント帝国の人たちは、新刊を奪い合い争いを起こしたり、新刊を読むまで仕事を放棄したり、自作ラノベ制作に没頭したりするなど問題になり始める。慎一はオタク文化に熱狂的にはまったエルダントの人達を目の当たりにして、オタク文化がときには人をダメにすると改めて思い知らされる。また、需要と供給のバランスが崩れていると感じていたが、実はこれは日本政府による策略であった。日本からの供給を少し減らして、エルダント帝国の人々をコンテンツ飢餓状態にしておくことでコントロール下に置こうとしていたのである。慎一は、日本政府にとって自分はオタク文化を使ってエルダントを支配しようとするための駒の一つであることに気づく。
しかし、政府はこうなったきっかけである慎一のことを「侵略者」だと言い放つ。オタク文化を侵略のために使われ、その片棒を担いでしまった慎一。落ち込んだ慎一は、侵略者になってしまった自分はもう帝国にいるべきではないのではないかとミュセルに打ち明ける。ミュセルは、慎一のおかげで種族を超えた交流が増え、みんな変わり始めているのだと返した。ミュセルの言葉に励まされた慎一は、自分がすべきことを見つける。すぐにペトラルカに謁見し、エルダント帝国でコンテンツを作ってしまおうと提案した。
日本政府に背いて行動し始めた慎一は、政府から命を狙われることになる。すぐに24時間の護衛と監視をつけて対処していたが、政府は学校に火を放って慎一を誘き寄せようとした。ミュセルやペトラルカは心配したが、図書館にレアなコレクションがある慎一は、すぐに駆けつけた。
案の定、待ち構えていた自衛隊に捕まった慎一は薬で眠らされ学校と一緒に焼き殺されそうになる。そこへミュセルやエルビア、美埜里が助けにきて、ミュセルは慎一の元に辿り着いた。そうして何とか慎一は助かり、日本政府の高官と話すことを要求する。
政府からは慎一はいつでも始末できるとして、出過ぎた真似は自分が損をするのだと脅されるが、話を聞いていたペトラルカはそれを笑った。
日本政府はペトラルカが日本語を理解していることに驚いていたが、ペトラルカの日本語はすでに完璧になっていたのである。そして今後もし慎一がエルダントからいなくなるようなことになれば、国交を断絶するとキッパリと言い切った。こうして慎一は、引き続きエルダントで平和に仕事を続けていけることになったのである。
『アウトブレイク・カンパニー』の登場人物・キャラクター
主要人物
加納慎一(かのうしんいち)

CV:花江夏樹/内田真礼(幼少期)
本作の主人公で、日本のオタク文化をエルダント帝国に広める日本政府主導の総合エンターテイメント商社「アミュテック」の総支配人。
ずっと好きだった幼馴染に告白するも失敗してしまい、そこから自室に引きこもるようになった。引きこもりの生活が1年ほど続いて両親が我慢の限界に達し、慎一に復学するか就職するか離縁するかの3択を迫る。もう学校に戻る気はなかった慎一は就職の道を選び「アミュテック」に入社し、異世界でオタク文化を広める仕事をすることになった。
エロ原画師の母とラノベ作家の父、2つ歳の離れた妹・紫月がいる。
ごく普通の少年で戦闘能力はなく体力も人並みだが、観察眼や判断力に長けており窮地でも機転をきかせて解決する力がある。優しく思いやりのある性格をしている。
オタク故に、漫画に出てくるようなハーフエルフのミュセルや幼女に見えるペトラルカと初めて会った時にはかなり興奮していた。
ミュセルからエルダント語を教えてもらい、片言ながら意思疎通ができるレベルには習得した。また魔法も少し習い、初歩の魔法を使うこともできる。
ミュセル・フォアラン

CV:三森すずこ
本作のヒロインの1人。神聖エルダント帝国に雇われ、メイドとして慎一の身の回りの世話をしている16歳の少女。
ハーフエルフであり、エルダント帝国では人間からもエルフからもあまりいい目では見られていない。そのため普段は耳を隠して生活していた。
しかし慎一と出会い、ハーフエルフであることを受け入れられてからは耳を隠すことは無くなった。献身的で控えめな性格をしていて努力家でもある。
自分以外の亜人種に対しても分け隔てなく接する慎一を慕っている。
慎一から貰った平仮名の書かれた一覧表を元に日本語を勉強しており、日本語を習得した者の1人。慎一に勉強をみてもらい急速に上達した。その実力から学校では日本語を教える講師になる。
また過去に兵士をしていたこともあっていくつか魔法を使うこともでき、攻撃魔法はかなりの実力である。
ペトラルカ・アン・エルダント三世

CV:渕上舞/阿久津加菜(嫁コレ)
本作のヒロインの1人。神聖エルダント帝国の皇帝で年齢は16歳。
銀髪碧眼だが、見た目はかなり幼く、そのことを気にしている。初対面で慎一に幼女と呼ばれた時は打首にしようとした。
幼く見える見た目と同じくらい胸がないことも気にしており、ミュセルや美埜里に嫉妬することもある。
性格は強気で少し子どもっぽい言動が目立つ。また我儘で妹気質なところがあるが、負けず嫌いで、皇帝としての責務を全うしようとする責任感や思いやりもある。
ミュセルと同様に日本語を習得した者の1人で、慎一と日本政府との会話も難なく理解できるほどにマスターしている。
オタク文化に興味を持っていたが、日本語が読めないため最初は城を抜け出して慎一の元へ行き、読み聞かせしてもらっていた。
ミュセルが日本語を少し理解できると知ってからは競うように自分で勉強するようになり、急速に上達していった。
身分や種族からミュセルを毛嫌いしていたが、学校でのテロ事件でミュセルが身を挺して庇ってくれたことから見方を変えた。最終的にはかなり親密になり対等な関係になっている。
日本
古賀沼美埜里(こがぬまみのり)

CV:内田真礼
慎一の護衛と監視を担当する一等陸士の自衛官。
童顔で柔和な雰囲気を漂わせているが、スタイルがよく胸のサイズはFカップと巨乳の持ち主で、明るく親しみやすい性格をしている。
実はオタク文化に見識がある筋金入りの腐女子で、その特性を見抜かれて今回の仕事に抜擢された。1週間以上BL作品に触れられないと「BL欠乏症」になり禁断症状を起こす。慎一と帝国騎士でペトラルカの遠縁にあたるガリウスとの男同士の関係を常日頃から妄想している。
腐女子トークを繰り広げている時は暴走気味で手がつけられないが、戦闘能力が高く格闘技術に長けている。緊急事態のときは雰囲気が変わり、持ち前の格闘技術や戦闘能力で慎一達を危険から守る。
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目次 - Contents
- 『アウトブレイク・カンパニー』の概要
- 『アウトブレイク・カンパニー』のあらすじ・ストーリー
- 引きこもりから異世界へ就職
- 学校の設立
- 日本政府の企み
- 『アウトブレイク・カンパニー』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 加納慎一(かのうしんいち)
- ミュセル・フォアラン
- ペトラルカ・アン・エルダント三世
- 日本
- 古賀沼美埜里(こがぬまみのり)
- 的場甚三郎(まとばじんざぶろう)
- 綾崎光流(あやさきひかる)
- 加納省吾(かのうしょうご)
- 加納咲子(かのうさきこ)
- 加納紫月(かのうしづき)
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- 『アウトブレイク・カンパニー』の用語
- 舞台・国家
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- 神聖エルダント帝国
- バハイラム王国
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- 慎一暗殺未遂事件
- 憂国士団による誘拐事件
- 神聖エルダント帝国魔力低下事件
- 『アウトブレイク・カンパニー』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- ペトラルカ・アン・エルダント三世「何しに来たのよ!別に妾は慎一のことなぞ待っておらんのじゃからね!」
- ゴールを決め喜び合うペトラルカとミュセル
- ペトラルカ・アン・エルダント三世「今後もし慎一がエルダントからいなくなるようなことがあれば、妾は直ちに国交を断絶する」
- 『アウトブレイク・カンパニー』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- タイトルの「アウトブレイク」は爆発的感染拡大
- 異世界は未来の地球
- 公式サイトにて設定資料公開
- 『アウトブレイク・カンパニー』の主題歌・挿入歌
- OP(オープニング):三森すずこ「ユニバーページ」
- ED:ペトラルカ・アン・エルダント三世(CV:渕上舞)「私の宝石箱」
- 挿入歌:ちよこ「Magical Lucky LOVE」(第3話)