コクリコ坂から(ジブリ映画)のネタバレ解説・考察まとめ
『コクリコ坂から』とは、2011年に公開されたスタジオジブリのアニメーション映画。監督は宮崎吾朗で、キャッチコピーは『上を向いて歩こう。』。
港南学園高校2年生のメルこと松崎海は、毎朝庭で旗を揚げていた。それは戦争に行ったきり、帰ってこない父親へ向けた信号旗だった。ある日、学校新聞「週刊カルチェラタン」で、自分が旗を揚げる少女として取り上げられていることに気が付く。それは同じ高校の3年生、風間俊が書いた記事だった。メルはこの記事をきっかけに俊を気にするようになり、だんだんと彼に惹かれていく。
「あの人の子供だったら?会いたいわ…似てる?この写真と。」
メルは恋心を抱いていた俊の父親が、実は自分の父親と同一人物であることが分かり「兄妹」ではなのいかと、悩んでいた。これはメルが帰国したばかりの母親に、意を決して聞くことにした「もしも、風間さんが本当にお父さんの子どもだったら?」に対する返答だ。メルは母親から俊が風間家に引き取られた経緯を説明されたが、まだ父親の浮気を疑っており、母はこのことを知らないかもしれないと思っているのだった。だが母親は、それにはっきりとした否定ではなかったが、堂々と笑いながら「冗談」で返したのだ。この言葉には「嘘を言う男ではない」という夫への深い信頼も込められている。その証拠に「無鉄砲だけどあなたのお父さんは、本当にいい男だったの。」と愛しそうに微笑むのだった。メルの父親は、親友の息子である俊を本当は自分で育てたかったのであろう、だがメルをお腹に抱えていた母親にはその余裕がなかった。そこでメルの父親は、俊を引き取ってくれた風間家にずっとミルク代を送っていたのだ。「沢村雄一郎」という男は誠実で責任感の強い人物だったようだ。メルにとっては、揺るがない母の愛が確認できたシーンだ。
『コクリコ坂から』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
映画『コクリコ坂から』ができるまでの経緯
スタジオジブリのアニメーション映画『コクリコ坂から』が作られる数十年も前の、1990年代当時、宮崎駿氏は毎年夏になると信州の山小屋で合宿を開催していた。その合宿の目的とは、少女漫画などを取り上げて「映画になるかどうか」を議論するものだった。原作の「コクリコ坂から」が議題に上がった合宿で、寝食を共にしていたのが「新世紀エヴァンゲリオン」の監督である庵野秀明氏と、「攻殻機動隊」の監督である押井守氏だった。宮崎駿氏はこの漫画を気に入り、いつか映画にしようと考えていたのだという。ちなみにこの合宿で議題にあがったひとつ、「耳をすませば(近藤喜文監督作品)」も宮崎駿氏の脚本として映画になっている。
映画『コクリコ坂から』は、「借りぐらしのアリエッティ(米林宏昌監督作品)」制作中に映画化が正式決定し、“スタジオジブリ経営5ヵ年計画(開始3年で新人監督2人に映画を2本製作させ、残り2年で宮崎駿氏が超大作を作る計画)”をもとに企画された。この映画で、宮崎吾朗監督作品は2作目となった。
原作「コクリコ坂から」
原作漫画「コクリコ坂から」は、少女漫画雑誌「なかよし」にて1980年1月号~8月号に連載された作品だ。原作者は佐山哲郎で、作画担当は高橋千鶴。原作はジブリ映画の設定とは大きく違い、港南学園高校の制服もセーラー服ではなくブレザーで、時代背景は1980年代になっている。
メルは「松崎海」ではなく、「小松崎海」だ。メルの母親に至っては、「良子」ではなく「虹江」であり、職業も大学助教授ではなくカメラマンである。そして原作のメルは、コクリコ荘の下宿人である北斗(原作では男性で獣医、名前も「北見北斗」)に恋心を抱いていた。ジブリ映画では、メルの祖父が死亡している設定となっていたりして、登場人物がかなり整理・変更されている。さらに、賭け麻雀で負けた金を取り戻そうと学校で次々と騒動を起こす俊を、メルは当初嫌っていたようだ。ジブリ映画では「カルチェラタンを守るための騒動」であるため、メルは俊を好意的に見ている。二人が兄妹かもしれないと気付かせられるのは「父の写真」ではなく、「水沼から聞かされる」など、設定も随分変わっている。
原作漫画は全1巻で、少女漫画としては内容が男性的で難しく、「不発に終わった作品」であると脚本を担当した宮崎駿氏が語っている。
車のナンバープレート
メルと俊が乗った源さん(コクリコ荘の家政婦の夫)の三輪のナンバープレートは「5963(ごくろうさん)」、徳丸理事長の車は「1090(とくまる)」となっている。スタジオジブリらしい遊び心だ。
『コクリコ坂から』の主題歌・挿入歌
主題歌:手嶌葵『さよならの夏~コクリコ坂から~』
「さよならの夏」は本作で企画・脚本を手掛けた宮崎駿が愛聴していた曲らしく、原曲としては森山良子が1976年(昭和51年)にリリースした楽曲だ。そして本作では森山良子の原曲を手嶌葵がカバーし、『さよならの夏~コクリコ坂から~』として歌っている。彼女はこの曲をカバーするにあたって、「今の時代にこの歌を歌わせていただく20代として、切なさや優しさを大切にしながら表現したい」と語っている。今回、企画・脚本を手掛けた宮崎駿氏からのアドバイスとしては、「前を向いてしっかりと歩いている女の子をイメージしてほしい」と言われたそうだ。手嶌葵は、宮崎吾朗監督が手がけた「ゲド戦記」(2006年公開)の挿入歌「テルーの唄」に続き、『さよならの夏~コクリコ坂から~』で2回目の起用となる。そして今回は主題歌だけではなく、挿入歌『朝ごはんの歌』、『初恋の頃』、『紺色のうねりが』でも彼女の透明な歌声を聞くことができる。さらには主人公メル(松崎海)の友人役としても声優として参加している。
挿入歌
坂本九『上を向いて歩こう』
作詞:永六輔
作曲:中村八大
手嶌葵『朝ごはんの歌』
作詞:宮崎吾朗・谷山浩子
作曲:谷山浩子
手嶌葵『初恋の頃』
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目次 - Contents
- 『コクリコ坂から』の概要
- 『コクリコ坂から』のあらすじ・ストーリー
- 丘の上に揚がる旗
- 風間俊との出会い
- 週刊カルチェラタン編集部
- カルチェラタンの存続危機
- 出生の秘密
- 明かされた真実
- 『コクリコ坂から』の登場人物・キャラクター
- メル(松崎 海:まつざき うみ)
- 風間 俊(かざま しゅん)
- 水沼 史郎(みずぬま しろう)
- 横山 信子(よこやま のぶこ)
- 加藤 悠子(かとう ゆうこ)
- 松崎 花(まつざき はな)
- 松崎 空(まつざき そら)
- 松崎 陸(まつざき りく)
- 北斗 美樹(ほくと みき)
- 広小路 幸子(ひろこうじ さちこ)
- 牧村 沙織(まきむら さおり)
- 松崎 良子(まつざき よしこ)
- 沢村 雄一郎(さわむら ゆういちろう)
- 立花 洋(たちばな ひろし)
- 小野寺 善雄(おのでら よしお)
- 風間 明雄(かざま あきお)
- 徳丸理事長(とくまるりじちょう)
- 『コクリコ坂から』の用語
- コクリコ
- カルチェラタン
- ガリ切り
- タグボート
- 朝鮮戦争
- LST
- 『コクリコ坂から』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 俊の揚げる信号旗
- 「私、風間さんが好き!血がつながっていても、ズーッと好き!」
- 「古いものを壊すことは、過去の記憶を捨てることと同じじゃないのか!人が生きて、死んでいった記憶を、ないがしろにする事と同じじゃないのか!」
- 「あの人の子供だったら?会いたいわ…似てる?この写真と。」
- 『コクリコ坂から』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 映画『コクリコ坂から』ができるまでの経緯
- 原作「コクリコ坂から」
- 車のナンバープレート
- 『コクリコ坂から』の主題歌・挿入歌
- 主題歌:手嶌葵『さよならの夏~コクリコ坂から~』
- 挿入歌
- 坂本九『上を向いて歩こう』
- 手嶌葵『朝ごはんの歌』
- 手嶌葵『初恋の頃』
- 手嶌葵『紺色のうねりが』