ヒカルの碁(ヒカ碁)のネタバレ解説・考察まとめ

『ヒカルの碁』とは、ほったゆみ(原作)と小畑健(漫画)による日本の少年漫画。集英社『週刊少年ジャンプ』にて連載された人気漫画作品である。囲碁を題材にした作品で、小学生を中心に囲碁ブームを巻き起こした。
テレビアニメ、小説、ゲームなど、様々な形でのメディアミックスも行われている。
平安時代の最強棋士・藤原佐為に取り憑かれた進藤ヒカルが、囲碁を通して出会った人々との中で神の一手を目指して成長する物語。

『ヒカルの碁』の概要

『ヒカルの碁』とは、ほったゆみ(原作)、小畑健(漫画)による日本の少年漫画。
集英社『週刊少年ジャンプ』にて1999年2・3合併号から2003年33号まで連載された。囲碁を題材にした漫画で、話数の数え方は「第○局」。
日本棋院所属の女流棋士・梅沢由香里が監修を務めた。
2000年に第45回小学館漫画賞、2003年に第7回手塚治虫文化賞新生賞を受賞した。
単行本は全23巻で、累計発行部数2500万部と大ヒットとなり、多くの子供たちが囲碁を始めるきっかけとなり、囲碁ブームを巻き起こした。さらにアメリカ、タイ、シンガポール、フランスなど多くの国で翻訳されている。
この作品をきっかけに囲碁を始めプロ棋士になった者もいる。プロ棋士の中でも愛読者は多い。
この作品は日本棋院の全面バックアップにより、棋院内部や関連施設、イベントなど実際のものに忠実に描かれている。

小学6年生の進藤ヒカルは、祖父の家で見つけた古い碁盤に宿っていた平安時代の天才棋士・藤原佐為に取り憑かれてしまった。佐為の「神の一手を極めたい」という強い思いを受け、佐為の身代わりに囲碁を打つようになったヒカル。ヒカルは囲碁の面白さに目覚め、同じ年の塔矢アキラや囲碁に打ち込む人々の影響を受け、いつしか自分でも打ちたいと思うようになっていった。佐為が目指す「神の一手」を極めるために仲間と共に修練を重ねるヒカルの成長物語。

『ヒカルの碁』のあらすじ・ストーリー

佐為との出会い

進藤ヒカル(手前)の前に現れた藤原佐為(奥)

小学6年生の進藤ヒカルは、ある日祖父の家の蔵にあった碁盤に触れたことで、平安時代を生きた佐為(さい)という青年の幽霊に取り憑かれる。佐為は当時から天才的な棋士として知られていたが、政争によって地位を剥奪され、その絶望で自ら命を断ってしまった。それでもなお碁を極めたい、「神の一手」を打ちたいとの未練を捨てられず、こうして幽霊としてこの世に留まっているのだという。

江戸時代に天才棋士として名を馳せ、今なお棋聖と称えられる本因坊秀策(ほんいんぼう しゅうさく)も、佐為に取り憑かれた1人である。碁にまったく興味のなかったヒカルだが、自分では碁石を動かすこともできない佐為から「どうか自分に碁を打たせてほしい」と懇願され、渋々彼に付き合うこととなる。

碁石の持ち方からマス目の読み方に始まり、少しずつ碁を学んでいくヒカル。しばらくは祖父やコンピュータなど決まった相手とばかり碁を打っていたが、次第に佐為が「別の人と打ちたい」とせがみ始める。佐為さえいれば碁に関しては天下無敵だと調子づいたヒカルは、彼の頼みを受け入れて近所の碁会所へと通うようになる。

類まれな才能の持ち主・塔矢アキラ

碁会所に通うようになったヒカルは、そこで塔矢アキラという同い年の少年と出会う。アキラは現役最強といわれるプロ棋士・塔矢行洋(とうや こうよう)の一人息子で、父譲りの類稀な才能の持ち主だった。さらにはそれに胡坐をかくことなく碁を学び続け、小学生にしてプロからも注目される存在となっていた。

ヒカルの碁石の打ち方から、彼を完全な素人だと軽んじていたアキラだが、結果は惨敗。いかに麒麟児といえど、数百年に渡って碁の研鑽を続けてきた佐為にはまったく力及ばなかった。ヒカルが佐為の指示通りに打っていただけだと知らないアキラは、同年代の少年に完膚なきまでに敗れた事実に衝撃を受ける。

ヒカルの実力が本物かどうか見極めたいと考えたアキラは、彼との再戦を望むようになる。その熱意に負けたヒカルは、再び佐為の指示通りに打ってアキラを降す。ヒカルが自身をも上回る本物の才能の持ち主だと確信したアキラは、彼を自身の倒すべき目標だと見定める。

一方、アキラという“本気で碁に打ち込む同世代”に出会ったヒカルは、それに感化されるように碁の奥深さに魅せられていく。同年代では敵無しだったアキラを倒した少年がいると聞いた行洋もまた、ヒカルに注目するようになる。佐為は佐為で、行洋が「神の一手にもっとも近い男」と呼ばれていることを知ると、棋士としての闘志を刺激されて彼との対局を望み始める。

中学校囲碁部でのアキラとの対戦

佐為に言われるままではなく、徐々に自分でも碁を打つようになったヒカルは、区立葉瀬中学校に入学してすぐ囲碁部に入部する。「ヒカルの実力なら中学生の囲碁部など役不足で、暇潰しにでもそんなところに所属することはないだろう」と考えていたアキラは、これを聞いて驚く。

本格的に碁に打ち込み始めたヒカルは、佐為に頼るのではなく自分だけの力でアキラと戦うことを目標に定めた。そして「自分に十分な力がつくまでは」と彼との対局を避けるようになる。
アキラはこれを「お前などいつでも倒せるから戦うまでもない」という意思表示だと受け取り、かえって闘志を燃え上がらせ、ヒカルと対局するためだけに自身の通う私立海王中学校の囲碁部に入部する。囲碁の大会に参加して勝ち続ければ、いつか必ずヒカルと戦えると考えたのである。

しかし海王中の部員たちからすれば、エリートが暇潰しに自分たちの部活動を荒らしに来たようにしか見えず、アキラは彼らとの軋轢に思い悩む。それでも「ヒカルを倒せるのは自分だけだ」と周囲と自分に言い聞かせ、ついにアキラはヒカルとの対局の機会を得る。

彼の想いに応えるべく、ヒカルは佐為の力を借りてアキラとの対局を進めていく。しかし、次第に「どうしても自分だけの力でアキラと戦いたい」との気持ちを抑えられなくなり、佐為の指示無しで打ち始める。結果としてヒカルはアキラに負けてしまう。佐為がこれをヒカルの成長と受け止めて見守る一方、自分を上回るかもしれない才能の持ち主と雌雄を決する覚悟でこの場に臨んだアキラは失望に苛まれる。自分が心底恐れたヒカルの才能は幻想のものだったのかと悩みながらも、アキラは彼への未練を捨ててプロの棋士への道を歩み始める。

一方、佐為はヒカルが棋士として独り立ちを始めたことを歓迎すると同時に、彼に才能の片鱗を感じていく。

謎の打ち手「sai」

アキラに失望されたヒカルは、それをバネにして「自分だけの力でアキラを倒す」という想いを新たにする。その勉強と、佐為に好きなだけ碁を打たせやろうという親切心から、ヒカルは「sai」という名でネット碁を始める。顔も名前も分からないネット対戦なら、アキラとの間に起こったような擦れ違いが生じることはないと考えたのである。

佐為は大喜びしてネット碁に打ち込むようになるものの、その桁外れの実力はやがて世界的に注目されるようになり、saiの正体を探ろうとする者も現れる。アキラもまたその1人で、実際に対局してその恐るべき力に驚嘆すると共に、それがかつてのヒカルが見せた打ち方に酷似していることにも気付く。

saiの正体はヒカルなのか。大会で見せた素人同然の碁は、自分に本当の実力を隠すためのものだったのか。アキラはヒカルの下に直接押しかけてこれを確かめようとするも、危ないところでヒカルはこれを誤魔化すことに成功する。ヒカルの真の実力が読めず、腑に落ちないものを感じながらもアキラはいったん引き下がる。

一方ヒカルは、佐為と世界中の碁打ちとの対戦を見ながらその力の一端を学び取り、以降は彼との直接の対局で研鑽を重ねていく。

プロを目指して

アキラがプロの棋士になったことを知ったヒカルは、自身も同じ場所に立つことを目指して日本棋院の門を叩く。ヒカルの実力を測りかねていたアキラは、当初は彼を殊更に無視するように努める。しかし佐為との対局を重ねて飛躍的に実力を伸ばしたヒカルは、次第に院生の中でも注目される存在となる。

日本棋院で共に切磋琢磨する中で友人となった者たちや、韓国から来た同年代の棋士洪秀英(ホン スヨン)との対戦や交流を経て、佐為との対局ばかり繰り返していたヒカルの碁はさらに洗練されていく。

「アキラとの対局」を悲願に努力を重ね、やがてヒカルはプロの棋士をも唸らせるほどの力量を身に着ける。たまたま目にした彼の棋譜からそれを知ったアキラは、「かつて恐れた神懸かり的な力(=佐為の力)」への興味からではなく、今のヒカルがどれくらい強いのかを知りたいと考えるようになる。しかしプロ棋士である自分が不用意に院生であるヒカルと対戦するわけにもいかず、彼と対局する予定の院生を指導することでヒカルの力を測ろうと画策する。

結果として、ヒカルはその院生との対局に勝利。アキラはヒカルがすさまじい勢いで自分を猛追していることを認め、彼の真の実力は直接対局してみることでしか測れないと結論づけた。そして正式な形でヒカルと戦うことを望むようになる。

佐為と行洋の対局

プロの棋士となるための試験を突破したヒカルは、アキラから数歩遅れてプロの世界へと足を踏み入れる。そのヒカルにかつてアキラが執着していたことを覚えていた行洋は、新人棋士とトップ棋士が対局する「新初段シリーズ」に、自らヒカルを指名して参加することとなる。

現役最強の棋士と対局できると聞いて喜び、自分に打たせてほしいと懇願してくる佐為。アキラとの一件で彼に全て任せると余計な騒ぎを生んでしまうことを学んだヒカルは、絶対に全力を出さないことを条件にこれを承諾する。ヒカルは思惑通り行洋に敗北し、怪しまれずに済んだと安堵した。しかし行洋はヒカル(の中の佐為)が本気でないことを見抜いており、かえってヒカルに興味を募らせる。佐為もまた、直接対局して行洋の実力を感じ取り、全力での再戦を望むようになる。

直後その行洋が過労で倒れ、囲碁界は騒然となる。新初段シリーズでの縁からお見舞いに向かったヒカルは、行洋が入院中にネット碁をしていることを知り、「これなら佐為を行洋と全力で戦わせてやれるのではないか」と考える。かつてネット碁の世界で怪物的な打ち手として名を馳せたsaiの名を持ち出し、本気で彼と対局してほしいとヒカルが頼み込むと、行洋は首を傾げながらもこれを了承。
ここに「神の一手」を探し続けた幽霊と、「神の一手にもっとも近い」現役最強の棋士の対局が幕を開ける。

saiと行洋の対局は世界中の囲碁ファンから注目を集め、アキラもまたそれを目撃する。勝負はギリギリで佐為が競り勝つも、勝利の余韻に震える彼の隣で、「行洋は中盤でわずかなミスを犯している。それがなければ佐為の負けだった」とヒカルが言い出す。佐為も行洋も気付かなかった失策に、誰よりも先にヒカルが気付いたことに佐為は驚き、「彼という才能にこの対局を見せるために、自分は現世に留まり続けたのだ」と悟る。

佐為と行洋の対局からさらに多くを学んだとヒカルが無邪気に喜ぶ中、佐為は“ヒカルの導き手”としての役目を全うしたことに安堵しながら、唐突に彼の前から姿を消す。

次代への希望

今までずっと一緒にいた佐為が消えたことは、ヒカルに大きな衝撃を与えた。掛け替えのない友人であり、第一の師でもある存在を失ったことを受け入れられず、ヒカルはプロ棋士としての対局を放棄して佐為を探し始める。
彼の足跡を追い、かつての憑依主である本因坊秀策の墓まで押しかけるヒカルだったが、この世での役目を終えた佐為とは出会えないまま終わる。
棋士としての情熱までも失いかけていたヒカルの前にやってきたのは、日本棋院で切磋琢磨した友人の1人、伊角だった。自分より先にプロになったヒカルが碁を打たなくなったと聞いて納得できず、直接確かめようとしたのである。

むりやり彼との対局に付き合わされたヒカルは、忘れかけていた碁の魅力を思い出すと同時に、消えてしまった佐為が自分の打つ碁の中に宿っていることを知る。佐為を手本として研鑽を重ねたヒカルの碁は、その技術が洗練されていくに従い、自然と彼の打ち方をなぞらえるものになっていた。思わぬ形で佐為が残していってくれたものを見付け、ヒカルは涙を流す。

その後ヒカルはプロ棋士としての活動を再開。ついにアキラとの公式初対局の時を迎える。互いに譲らぬ大熱戦の中、アキラはヒカルの成長に驚嘆しながら「君の中にもう1人の君がいる。初めて対局した時の君だ」と語る。その“もう1人のヒカル”こそがsaiなのではないかと問われ、ヒカルはアキラの分析能力に驚きつつ、「お前にはいつか全てを話すかもしれない」と言葉を返す。この対局はアキラがわずかに上回る形で決着するも、この時から2人は互いをライバルと認め、交流を重ねていく。

その晩、ヒカルの夢の中に佐為が現れ、彼に一本の扇子を渡す。それが彼からの最後のエールであることを感じ取ったヒカルは、扇子を自身のトレードマークとして愛用するようになる。

北斗杯の開催

ヒカルが葉瀬中を卒業したあと日中韓の若手棋士同士が対局する北斗杯が開催されることとなり、日本からはアキラ、ヒカル、そして関西棋院出身の社清春(やしろ きよはる)が出場することとなる。

最初は海外のプロと戦えることを純粋に楽しみにしていたヒカルだったが、韓国チームの大将である高永夏(コ ヨンハ)が、「本因坊秀策は弱い」と発言したと聞いて激昂する。ヒカルにとっては、それはかつて本因坊秀策に取り憑いて碁の研鑽に励んだ佐為をも侮辱する言葉に他ならなかった。プロでの戦績から、日本チームの大将はアキラが務めることが決まっていたが、ヒカルは「自分を永夏と戦わせてほしい」と懇願する。

実際のところ、永夏自身は本因坊秀策のことを高く評価していた。しかし「今の日本の棋士が弱いから、本因坊秀策のような名人まで弱いと思われる」という言葉が、翻訳ミスによって“本因坊秀策をバカにした”と受け取られていた。チームの仲間たちから誤解されている旨を知らされた永夏だったが、「それで日本チームが本気でかかってくるならおもしろい」とあえて訂正せず、ヒカルたちの出方を見守ることにする。

中国戦

ヒカルの懇願を受けた日本チームの団長は、中国戦の結果を見て判断すると彼に言い渡す。
気合を入れて中国代表との対局に臨むヒカルだったが、熱意が空回りした上に国際戦独特の雰囲気に飲まれ、序盤は圧倒的な劣勢を強いられる。

どこでミスをしたのかと焦るヒカルだったが、「本因坊秀策の、佐為の名誉を守ることができるのは自分だけだ」と心を落ち着かせ、反撃を開始。しかしわずかに力及ばず敗北。アキラは大将戦に勝利するもののチームメイトの社は惜敗し、日本チームは黒星スタートとなる。

ヒカルの後半の猛追を見た韓国チームは、彼が並みならぬ打ち手であることを知る。しかし永夏は対局中にヒカルが犯した失策を指摘し、これを見逃すようでは自分の敵ではないと豪語する。
ヒカルの敗因は序盤に実力を出し切れなかったことだと見抜いた団長は、対局後半の様子から彼がすでにそれを克服していると判断。何より永夏との対局に臨む熱意を評価して、予定を変更してヒカルを大将に据える英断を下す。

これにはヒカル自身も驚くが、託された以上は必ず勝つと気合を入れる。

韓国戦

試合直前に大将を変えるという日本チームの奇策に関係者が驚く中、最終戦となる韓国チームとの対局が始まる。

まさか自分の発言がここまでヒカルを刺激することになるとは思っていなかった永夏は、「ヒカルと本因坊秀策には何か特別なつながりがあるのか」との疑問に囚われる。ヒカルの勝利を確信し、韓国の若手を打ち倒すアキラ。2人に負けじと実力以上の力を発揮して相手を追い詰めるも及ばず、苦杯を喫する社。勝負の行方はヒカルと永夏の対局の結果に委ねられた。

一進一退の死闘の中、永夏は何度も冷や汗を浮かべ、ヒカルがアキラにも匹敵する才能の持ち主であることを確信。全身全霊でこれを迎え撃つ。熾烈な攻防の末に、わずか半目の差で勝利を収めたのは永夏だった。永夏は口ではヒカルを挑発しつつ、内心では彼の実力を認めていた。

そして、対局前に問おうとした彼と本因坊秀策との関係について、またどうして碁を打つのかについてヒカルに尋ねる。「遠い過去と遠い未来をつなげるためだ」と答えるヒカルに、永夏は「過去から受け継がれてきたものを未来に届けようとしているのはお前だけじゃない」と伝えて、日本に現れた新たなライバルの前から去っていく。「本因坊秀策こそは、未来永劫称えられ研究されるべき古の大名人の1人だ」という、永夏なりの迂遠な謝罪の言葉だった。

ヒカルは本因坊秀策と佐為の名誉を守れなかったことに涙する。アキラはそんなヒカルに「行こう、進藤。これで終わりじゃない。終わりなどない」と声をかけて、立ち上がることを促すのだった。かくして、北斗杯の結果は黒星2つに終わる。

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@9xhiroyuki1111

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