陰の実力者『ヒカルの碁』加賀鉄男について
『キャプテン翼』でサッカーブームを、『スラムダンク』でバスケブームを巻き起こした『少年ジャンプ』。その影響力は、囲碁という文化系の競技にも及びました。ライバルがいて、成長があって。そんな王道を美麗な絵柄と囲碁という変わった題材でで描き上げた『ヒカルの碁』…の、陰の実力者にして立役者、加賀鉄男について。
『ヒカルの碁』
ごく普通の小学生、進藤ヒカルは、祖父の蔵で「血の付いた碁盤」を発見。その血は彼にしか見えず、「藤原佐為(ふじわらの さい)」を名乗る平安人の霊がヒカルに憑く。天才的な囲碁の腕を持つ佐為のために囲碁を始め、当初は彼の指示通りに石を置いていたヒカルだったが、ヒカルを介して打つ佐為の碁に「神の一手」を見出した少年塔矢アキラに好敵手と見なされるように。
ヒカル自身も対極を通し成長。大会の最中で囲碁の面白さ、次の手を試したいという気持ちに目覚めて自分の意思で打つように。彼もまたアキラをライバルとして意識するようになり日本棋院でプロ棋士訓練生「院生」となりプロを目指すのだった。ヒカルが初めて打った「自分の碁」の稚拙さに怒り、高みを目指してプロ入りしたアキラを追って。
加賀鉄男
中学生なのにタバコを吸うなど、一言で言えば不良少年風。将棋部在籍。囲碁を「石ころの陣取り遊び」と称し、着物姿で現れるという物凄い登場の仕方でした。
碁盤に火のついたタバコを押し付けたため佐為の怒りを買い、ヒカル(佐為)と対局。そこで彼の過去、実力が明らかになるのです。そもそも囲碁は父親により半ば強引に始めさせられたもの。小学生時代のアマチュア大会で父から叱咤されているところを見たアキラに「わざと負けられた」ことが決定打となり、囲碁もアキラも嫌ってます。しかしアキラには勝てなくても、相当な腕の主でした。
多岐にわたる実力
ヒカル(佐為)の碁に対し「やるな」と汗をかきつつも、加賀の蛮行に怒っていた佐為をワクワクさせるほどの腕前。「少し変わった楽しい碁」を打つようです。詰碁の問題(超難問)にも正解し、ピンチヒッターで参加した大会でも相手が強いかどうかすぐに看破できる上、相手の顧問教師を皮肉交じりで論破するなど、囲碁だけでなく頭脳面でも高度な才気を感じさせます(勉強しなくても高校に受かるとも言ってました)。
ちなみに大会では「囲碁なんか10分あれば勝てる」と豪語し、宣言通り10分で勝利。この時も相手を挑発する態度をとっており、皮肉屋な面ものぞかせました。ちなみに将棋だと5分で勝てるそうな。
ヒカルの背中を押した立役者
プロ入りのため、まずは院生になろうとするヒカルでしたが、院生は部活動大会などのアマチュア大会に出てはいけないという決まりが存在。となると囲碁部にいる意味もない(もともと人数少ない)ため退部しなくてはなりません。大体のプロ棋士が10代でプロデビューしていること、アキラがすでにプロ入りしたこともあって院生になりたいヒカルですが、大会出場の為「部活に引っ張り込まれた」同級生三谷から「自分だけ辞めるのか!」と突っかかられます。部長の筒井でさえ止められない状況を収めたのは、乱入してきた加賀でした。
ヒカルには「院生になりたいなら行け」とむしろ乗り気で勧め、三谷に対しては「部活をやるやらないは勝手だろ」と諫めます(「うるせえガキだ」と言いながら)。「じゃあ俺も辞めてやる!」という三谷に対してあっさりと「好きにしろ」。しかしこのままじゃ誰も納得がいかない、ということで、ヒカルの今の実力を皆に見せるため「三面打ち」を提案するのでした。
三面打ちとは一度に三人と対局するという、素人からしたらやや難易度の高いもの。ヒカルも当初は次々繰り出される三者三様の一手一手に混乱していましたが、二勝一敗で勝利。しかも、「途中」にもかかわらず「加賀の方が勝っている」と局面を見る目(実力)も養われていることが明らかに。
この三面打ちの結果は院生試験でも役に立ちました。棋院での職員相手の対局(実力を見るためのものなので負けたら落ちる、ということはない)の後、持参した「結果」を見せたところ、「初の三面打ち」で二勝もしたこと、負けの結果もかなりのところまでいったことを評価されて合格。唯一ヒカルが勝てなかった加賀も、「最初でこれだけ打てりゃいいんじゃないか」と、軽口の後に健闘を称えていました。その後で「受かるかどうかは知らねえ」と言ってましたが。
人気投票で2位獲得
そんな実力者、立役者、しかもイケメンな加賀のこと。第一回人気投票で2位を獲得しました。ちなみに1位は佐為。ヒカルは…第二回では5位でした。囲碁漫画の主人公だし、まあ妥当…うん。
番外編で織田信長を演じる
「本能寺の変」が起きた夜、織田信長が僧侶と時の棋士の対極を見物したという逸話があります。結果は滅多にない出ない「三コウ」と呼ばれる石並び。筒井演じる僧侶は「今夜は月が出ていない」こともあって気味悪がってそそくさと帰ってしまうのでした。そんな信長と囲碁に関するやり取りから本能寺の変に至るまでの経緯を『ヒカルの碁』メンバーが演じたわけですが、加賀の信長役がやたらはまってました。「滅多に見られないなら吉兆だ」と笑い飛ばすさま、武士風の話し方。無造作ヘアも相まって、漫画界で信長演じられる中学生キャラは彼くらいだろうと思わせるほど。ヒカルは脇役でした…主人公なのに。
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