『幸福の黄色いハンカチ』とは1977年に公開された日本の映画である。監督は山田洋次。刑期を終えて出所した島勇作は妻の島光枝へ、まだ自身を待っていてくれるなら家の前に黄色いハンカチを掲げてほしいという手紙を送っていた。それから勇作は故郷へ向かう道中、東京から北海道に来ていた花田欽也と小川朱美に出会い3人で行動することとなる。欽也の赤いファミリアに乗り、トラブルが相次ぎながらも3人の旅は続いた。光枝のいる家が近づくにつれ不安に襲われる勇作であったが、やがて真実と向き合う覚悟を決める。
朱美にだらしなく付きまとう欽也の節操のない態度を叱責する勇作。前の晩に旅館に宿泊した際にも隣の部屋に泊まる朱美の泣き声に気付き、強要しようとする欽也を止めに入ったのは勇作であった。勇作は同じ福岡出身の欽也に、九州男児が恥ずかしくないのかと一喝し、「そういうのを草野球のキャッチャーってんだ、ミットもないってことだ!」と捲し立てた。「ミット(グローブ)を持たない捕手」と、不節操で「みっともない」姿を掛けた駄洒落(オヤジギャグ)である。勇作は光枝を泣かせていた自身の過去を省みるようにして、男性は女性を守らなければならないと欽也に言い聞かせた。
渡辺勝次「まああれだな、つらいこともあるんだろうけども、辛抱してやれや。一生懸命辛抱してやってりゃ、きっといいこともあるよ。」
欽也の運転で旅をしていた3人だが、欽也が帯広のヤクザ風の男に絡まれたことで勇作が運転を交代する。その後、検問に引っかかり無免許運転が発覚した勇作は警察署に連行された。だが連れて行かれた新得警察署では、勇作の起こした殺人事件の担当警察官であった勝次との再会が待っていた。そして勝次が勇作を庇ったことで無免許運転が軽微な処分で済まされることとなる。一件が落着し、別れ際に勝次は「まああれだな、つらいこともあるんだろうけども、辛抱してやれや。一生懸命辛抱してやってりゃ、きっといいこともあるよ。」と勇作に語りかける。勝次は口数の少ない勇作に多くを訊くことはない。ただ彼は困ったことがあればいつでも来いと勇作に言う。殺人を犯した人物であっても、勝次は勇作の人間性を尊重し寄り添う人物であった。
夫の帰りを待つ合図として竿にぶら下げられた無数の黄色いハンカチ
出典: ameblo.jp
勇作からの葉書を受け取った光枝は多くの黄色いハンカチをぶら下げ、彼の帰りを待っていた。
6年3ヶ月の刑期を終え、光枝に葉書を書いた勇作。そこにはもしまだ勇作の帰りを待ってくれているのなら、竿に黄色いハンカチをぶら下げておいてほしいという内容が書かれていた。もしハンカチが無かった場合を想像し、弱気になる勇作の背中を欽也と朱美が押す。そうしてようやく家の付近に着くと、竿には以前、勇作との子供ができた際にぶら下げられた枚数を超える、多くのハンカチが下げられていた。数え切れないほどの黄色いハンカチは風にはためき、勇作に光枝が帰りを待ち続けていることを伝える。車の中から出ようとしない勇作よりも先にハンカチを見つけた欽也と朱美は大声で勇作を呼び、涙ぐみながら彼の背中を押した。黄色いハンカチは夫婦に通じる幸福の象徴である。流産の悲しみや、長い年月の孤独を乗り越えた夫婦に、多くの幸福が訪れることを予感させる『幸福の黄色いハンカチ』の名シーンは日本映画屈指の名場面となった。
『幸福の黄色いハンカチ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
倍賞千恵子の口ずさむ「幸せの黄色いリボン」を山田洋次が聴いたことで始まった本作の企画
本作が生まれたきっかけは倍賞が『男はつらいよ』(1969年〜)の撮影の合間に、「幸せの黄色いリボン」を口ずさんでいたのを山田が聴いたことから始まった。また倍賞が「幸せの黄色いリボン」を知ったのは、彼女が渡辺貞夫の家を訪問した際のこと。そこで英語歌詞を日本語に訳して紹介され、感動した倍賞が後に口ずさむようになる。歌詞の意味を知った山田は「樫の木に黄色いリボンが花のように咲く」イメージが浮かび、映画の中で光枝の待つ夕張まで黄色いものを撮らなかった。
2日間絶食して撮影に臨んだ高倉健
出典: ameblo.jp
食堂でビールと醤油ラーメン、カツ丼を注文した勇作。
6年3ヶ月の刑期を終えて出所した勇作が食堂でビールを一気に飲み干し、醤油ラーメンをむさぼるように食べるシーンを撮影するため、高倉は2日間絶食し水のみで撮影に臨んだ。リアリティの追求や演技に対する情熱、役者魂を見せる高倉。山田が高倉の体を心配して声をかけると「エサを与えると仕事をしなくなる。」と高倉は返した。
武田鉄矢が歌手から俳優の道に進むきっかけとなった作品
1976年当時の武田は「母に捧げるバラード」がヒットしたものの一発屋の歌手として、妻とともに飲み屋でアルバイトをして生計を立てていた。アルバイト後に深夜の東京を妻と歩いていた最中、彼女が「今がどん底だから、もうこれから先は下はない。これから良いことがやってくるわよ。」と言ったという。するとその直後、本作の出演の話が舞い込む奇跡が起きた。都会出身の朱美役である桃井はすんなり決まったものの、ともに行動する地方出身の欽也役のキャスティングが難航していた際に、プロデューサーが山田に紹介したことで武田へのオファーが入ったのである。しかし当時はまだ歌手としてのキャリアしかなかった武田は、山田から相当厳しく演技を教え込まれ、撮影前の食事はほとんど喉を通らなかったほど。また終盤で欽也らが勇作と別れるシーンの撮影時には、武田が台本通り泣けずにいたところ、高倉が武田の元に寄り長期間の撮影に対する感謝の旨を述べたという。この時の高倉の言葉に感激した武田は涙を零し、その瞬間に別れのシーンが撮影された。
『幸福の黄色いハンカチ』の主題歌・挿入歌
挿入歌:高峰秀子「銀座カンカン娘」
1949年に公開された映画『銀座カンカン娘』の主題歌として制作された同名の昭和を代表する名曲。歌っているのは映画の主演を務めた高峰秀子。本作では統一劇場という劇団が、のどかな山に囲まれながら集まった人の前で披露している。そこで使用されているのは楽曲の半分ほど。「カンカン娘」は監督の山本嘉次郎による造語である。当時、街娼を指す隠語として使われていた「パンパンガール」に対し、「カンカン娘」にはカンカンに怒っているという意味が込められている。この怒りが造語や緩やかな曲調、高峰の歌声により、柔らかくなった表現で届けられている。
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目次 - Contents
- 『幸福の黄色いハンカチ』の概要
- 『幸福の黄色いハンカチ』のあらすじ・ストーリー
- 北海道で出会った訳ありの3人
- トラブルの相次ぐファミリアの旅
- 島勇作と島光枝の間で吉報の合図となった黄色いハンカチ
- 『幸福の黄色いハンカチ』の登場人物・キャラクター
- 主要人物
- 島勇作(しま ゆうさく/演:高倉健)
- 島光枝(しま みつえ/演:倍賞千恵子)
- 旅の同行者
- 小川朱美(おがわ あけみ/演:桃井かおり)
- 花田欽也(はなだ きんや/演:武田鉄矢)
- 道中で関わる人々
- 渡辺勝次(わたなべ かつじ/演:渥美清)
- 旅館の親父(演:太宰久雄)
- チンピラ(演:赤塚真人)
- ラーメン屋の女性店員(演:岡本茉利)
- 警官(演:梅津栄)
- 警察署で泣く女(演:三崎千恵子)
- 検問の警官(演:笠井一彦)
- 町工場の社長(演:里木左甫良)
- 農夫(演:小野泰次郎)
- 農夫(演:河原裕昌)
- 帯広のヤクザ風(演:たこ八郎)
- 交通課長(演:山本幸栄)
- 朱美の同僚(演:川井みどり)
- 警官(演:長谷川英敏)
- 旅館の仲居(演:谷よしの)
- 警官(演:羽生昭彦)
- 統一劇場(とういつげきじょう)
- 『幸福の黄色いハンカチ』の用語
- マツダ・ファミリア
- 網走刑務所
- 民事事件
- 『幸福の黄色いハンカチ』の名言・名セリフ/名シーン・名場面
- 島勇作「そういうのを草野球のキャッチャーってんだ、ミットもないってことだ!」
- 渡辺勝次「まああれだな、つらいこともあるんだろうけども、辛抱してやれや。一生懸命辛抱してやってりゃ、きっといいこともあるよ。」
- 夫の帰りを待つ合図として竿にぶら下げられた無数の黄色いハンカチ
- 『幸福の黄色いハンカチ』の裏話・トリビア・小ネタ/エピソード・逸話
- 倍賞千恵子の口ずさむ「幸せの黄色いリボン」を山田洋次が聴いたことで始まった本作の企画
- 2日間絶食して撮影に臨んだ高倉健
- 武田鉄矢が歌手から俳優の道に進むきっかけとなった作品
- 『幸福の黄色いハンカチ』の主題歌・挿入歌
- 挿入歌:高峰秀子「銀座カンカン娘」
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